2024年06月11日

アザラシのアニュー あずみ虫・作

アザラシのアニュー あずみ虫・作 童心社

 白い流氷の上に白いアザラシのこどもがのっているのが表紙です。
 アザラシのこどもと母親が出てくるこどもさん向けの絵本です。
 ひととおり読みました。
 これからまた最初から読んでみます。

 こどものアザラシに、『アニュー』と名前が付けられたのですが、現実社会では、野生のアザラシにおいて、(アザラシに限らず)アザラシの母親が自分のこどもに名前を付けるわけはなく、では、どうやって、その子が、自分が産んだこどもだとわかるのだろう? 不思議です。においでわかるというような話がありますが、そうだろうか。
 あんがい、母親がこどもを認識するのではなく、こどもが、母親を認識して、常に母親から離れないようにしているのではなかろうか。
 母親は、自分にくっついてくるこどもアザラシは、自分のこどもだと判断するのではなかろうか。
 そんな流れではなかろうか。
 アザラシの脳みそに記憶する領域があるとするなら、親子はいつまで親子だという記憶が残るのだろうか。あんがい、短期間で自分たちが親子であった記憶が、親子ともに消えるような気がします。
 こどもは自立して、すんだことは忘れて、自分の相方(あいかた。配偶者)をさがすような気がします。
 
 あかちゃんアザラシの体の色が、成長するにつれて変化していきます。
 黄色(おかあさんのお乳(ちち)を飲んでいる。甘くておいしいそうですが、甘くもないし、おいしいという感覚もないのが現実だと思います)→毛が白くなる(白い毛は、寒さ、冷たさから体を守ってくれる)→アザラシのこどもは遊ぶそうだけれど、何をして遊ぶのだろう。遊ぶための道具がありません→あかちゃんは、1週間で3倍の大きさになる→生まれて10日目に海に入る練習を始める(泳ぐ練習を始めます)→生まれて2週間がたち、春が近づいて、氷がとけ始めたそうです。母親は、自分だけが北極へ泳いでいくそうです。あかちゃんは、成長して毛が灰色になって、しっかり泳げるようになったら自分で北極まで来なさいだそうです→こどもアザラシのアニューに灰色の毛が生えてきました。海に入ってオキアミ(エビのような姿をしたプランクトン)を食べました。アニューは、いつまでもあかちゃんではありません。自立して自活しなければ死んでしまいます→アニューの全身が灰色になりました。流氷もだいぶ、とけてしまいました。さあ! 北極へ行こう→アニューは、外の世界を知ることになります。引きこもっていてはなんにも楽しくありません。失敗してもいいから冒険するのです。外の世界には、アニューが初めて見る生き物がたくさんいます。→シロイルカの家族に出会いました。ツノメドリという鳥たちといっしょに魚とりをしました→アニューは、3頭のシャチに襲われました。外の世界は、自分の味方ばかりではありません。自分を守るためにがんばろう→同じアザラシに出会いました。お仲間です。そのアザラシは、『トック』という名前だそうです→トックについていくと、アザラシがたくさんいる場所に着きました。サンクチュアリです(安全な地域という意味)あるいは、コロニー(生物集団の定着地)です→お母さんには会えないまま物語は終わりました。

 『あとがき』にこまかい話が書いてあります。
 タテゴトアザラシは、生まれてから2週間で親離れをしなければならないそうです。
 野生動物の世界では、食物連鎖(しょくもつれんさ。弱肉強食)という自然の流れがあるから、シャチなどの食べ物として命を終えるタテゴトアザラシのあかちゃんもいることでしょう。
 タテゴトアザラシの母親は、カナダであかちゃんを産む。そこは、安全な地域だそうです。(ホッキョクグマがいない)。
 地球温暖化で、あかちゃんが育つための海氷(かいひょう。海に浮かんでいる氷のかたまり)が減少しているそうです。
 地球温暖化をなんとしてもくいとめなければなりません。だけど最終的にはできそうもありません。これから地球はどうなるのだろう。人類にとっても生き物にとっても、ゆっくりと破滅に向かっているような気がします。
 
 ページをめくると、タテゴトアザラシの説明があります。
 タテゴトアザラシは、ごちそうを食べています。
 タラ、シシャモ、ニシン、エビ、カニなどです。お寿司みたいです。
 
 天敵は、ホッキョクグマ、シャチ、サメだそうです。襲われたらこわそうです。
 
 タテゴトアザラシは、成長するにつれて毛の色や模様が変化します。
 黄色→白→灰色に黒い点→灰色に竪琴(たてごと)に見える模様が現れます。
 
 実際には、自分のこどもに名前を付けることはないけれど、自分のこどもは、こどものにおいと声で見分けがつくそうです。
 (でも、たまには、間違えて、よそのこどもを自分のこどもと勘違いすることがあるかもしれません)  

Posted by 熊太郎 at 07:19Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2024年06月10日

ノツクドウライオウ 靴ノ往来堂 佐藤まどか

ノツクドウライオウ 靴ノ往来堂 佐藤まどか あすなろ書房

 タイトルの意味は、靴屋の往来堂(おうらいどう)です。なぜに、ノツクドウライオウなのかは、右から読む看板表示であり、老舗(しにせ)の歴史がある靴屋だからです。手づくりで靴をつくってくれるお店なのです。『オーダーメイドシューズの店』とあります。

 こちらの作家さんの作品は以前、『一〇五度(ひゃくごど)』を読んだことがあります。
 一〇五度というは、椅子の背もたれの角度のことでした。椅子をつくる職人の話だった記憶が残っています。
 以下が感想の一部です。
 一〇五度 佐藤まどか あすなろ書房
『105度』とは、温度ではありません。椅子の背もたれの角度です。この小説は中学生向けで、椅子のデザインを素材にしたものです。珍しい。
主人公は、大木戸真(おおきど・しん)、中学3年生ですが、身長177cmと高い。神奈川県逗子市内の(ずししない)の公立中学から、東京都内の中高一貫教育の大学付属校へ中学3年の4月に編入しています。
『イスが好き』と自己紹介したところから、『イス男』扱いです。椅子好きは、椅子職人の祖父の影響です。椅子に座った人たちの気配を感じることが快感だそうです。今後、スラカワという早川(同級生女子、同じくイスのデザイン好きらしい)とともに物語を進行していきます。

 さてこちらの本です。こんどはオーダーメイドの靴職人です。

木村夏希:今は、中学二年生か。14歳。靴屋の四代目の孫娘。祖父が四代目。木村夏希が5歳の時に、五代目になるはずだった父親が、家を出て行ったそうです。父親とは4年ちょっと会っていない。父親は再婚して遠くへ行った。

木村穣(きむら・じょう):木村夏希の兄。妹より7歳年上。21歳か。父が家を出たあと、靴屋の五代目を期待されたが、この物語が始まったとたん家出をしたようです。靴屋にはなりたくなさそうです。家出をして3か月たったあたりからこちらの話が始まっています。パスポートをとっていたので、外国に行っている可能性があります。

木村総一郎:別名、『マエストロ(イタリア語で、教師、達人、英語圏では、オーケストラの指揮者。一般的には、優れた知識や技術をもつ人物をさす)』。往来堂の四代目。65歳。さきほどのふたりの祖父。一本筋がとおったがんこ者。若いころにイタリアのフィレンツェという古都にあるオーダーメイドシューズ工房で修行をしたことがある。
 木村夏希のひいおじいちゃんはイタリアを旅したときにフィレンツェのオーダーメイドシューズ工房のマエストロと知り合った。そのマエストロは来日して木村夏希の家に泊まった。そのマエストロの息子がヤコポで、祖父のマエストロになった。ヤコポは75歳で店をたたんだ。

祖母:別名、『店長』

母:佐和子。40歳。別名、『事務室長』。19歳で妊娠して、できちゃった婚をした。長男と長女を生んで育てて離婚した。

政(まさ):引退した職人。今は夫婦で、ワゴン車に乗って日本国内を旅している。自由気ままな旅で、北海道とか三重県伊勢神宮なんかに行っている。

岸田:往来堂で20年間働いた。2年前に靴屋として独立した。

佐野宗太:木村夏希のクラスメート。中学2年生ぐらい。木村夏希は佐野宗太を嫌っているが、佐野宗太は、そう悪い人間でもない。往来堂の常連さんの水野老夫婦の孫であることがあとあとわかる。木村夏希いわく、佐野宗太は、クラスメートには態度がでかいが、年上には礼儀正しい。いやなやつだ。

 靴屋の『靴ノ往来堂』が立っている場所です。高いビルの間に建っている。右隣が、10階建てのガラス張りビルで、1階にはレストランやカフェ、上にはショップや事務所が入っている。
 左隣は7階建てのビルだが、長期間使用されていないボロいビルで、『お化けビル』と呼ばれている。
 『靴ノ往来堂』は、3階建てで築100年。(100年前は、1924年、大正13年)。くすんだ色のレンガ造り。関東大震災(1923年9月1日。大正12年)で全焼したので、建て直した。第二次世界大戦の空襲ではかろうじて難を逃れた。
 
 12ページまできましたが、少ないページ数のなかに、たくさんの情報が書き入れられた文章です。把握(はあく。しっかり理解すること)がたいへんです。

 ぼんやりとした家族関係があります。
 お互いに本音(ほんね。正直な気持ち)を言って話し合わないと、なんとなく時間が過ぎていく家族関係になってしまいます。ただ、本音を言えないということはあります。夫婦や親子関係において、本音が言えない状態は、深刻な状態です。

 家業を継ぐということは、かなりしんどい話題です。

 長女木村夏希のひとり語りが続きます。
 彼女の夢です。靴屋はやりたいが、オーダーメイドシューズをつくる職人ではなく、シューズデザイナー(靴のデザインを考えたり練習で靴をつくったりする)になりたい。

 吉岡英次郎:85歳。往来堂のお得意さん(いつも買ってくれる人)。吉岡ウィング、マッケイ・ハンドソーン、ソールはメス入り生地仕上げの靴を履かれるそうです。

 セミオーダーメイド:来店せずに靴をつくる資料をやりとりして集めて靴をつくる。
 3Dプリンターで、靴の木型を樹脂でつくる。(3Dプリンター:立体的モデルを製造できる)
 祖父のマエストロは、セミオーダーメイドも3Dプリンターもやらない主義です。
 なんだろう。観察がていねいな記述の文章です。じょうずです。それなのに違和感があります。中学2年生14歳女子の語り口としては成り立たないのです。14歳はもっと幼い。

 クロッキーブック:白い薄い紙のノート。絵の練習に使う。
 日本製の革切り包丁(かわきりほうちょう)、シューメーカーナイフ、トリンチェット(細長くてすごくとんがっているナイフ)、メッザルーナ(大きなナイフ。日本語ではラウンドナイフ)、スチニングナイフ(長くカーブを描いている)、ドイツ製のハサミ、京都の握りバサミ、ワニ(表の革を裏の底まで引っ張る道具)、ボーンスティック(骨でできたヘラ)、タックスプーラー(クギを立ち上げたり抜いたりする)、すくい針、だし針、ふまず針、南京針(なんきんはり)、
 アシンメトリー:左右対称ではない。非対称。道具で、右利き用、左利き用がある。
 
 靴製作の描写はかなり細かい。 

 メタファー:隠喩(いんゆ)。『たとえ』のこと。たとえ話。

 ケミカル剤:化学洗剤。

 色:手づくりの靴の色は、草木染。自然の草木の色。

 水野老夫婦:きれいな色の革靴が好き。色は自然の草木の色。あとで、ご主人は亡くなる。本人お気に入りの靴をはかせて棺桶に入れた。

 読んでいて、数年前よくテレビに出ていた元横綱の若い息子を思い出しました。
 感じの悪い人でした。
 注文を受けて靴をつくっているのにいつまでたってもできあがらない。そんな話でした。ところがこちらの本を読むと、オーダーメイドの靴は、平均が6か月ぐらいだけれど、できあがるまでに1年間ぐらいかかることもあるそうです。そういうものなのか。
 オーダーメイドの靴づくりは、収入がたくさんあるわけではないけれど、食べていけないことはないそうです。まずは、商売をしていくうえで、家賃がないことが経営の条件のようです。
 金もうけだけのためにやる仕事ではありません。
 
 靴の用語の言葉はむずかしい。
 靴づくりのテキストか、図鑑を読むようです。
 
 マエストロいわく、靴づくりの仕事は、『意地(いじ。負けてたまるかという気持ち)』になってやるものだそうです。挫折したくない。(ざせつ:あきらめる。やめる。ほおりだす)

 みっちゃん:コンビニ店の娘。木村夏希の同級生。
 茜:レストランの娘。木村夏希の同級生
 亜美:和装店の娘。木村夏希の同級生。
 陽介:書店の息子。木村夏希の同級生。

 マッケイ式製法:靴のつくり方。イタリアではよくある。日本には少ない。
 
 靴店の不動産としての土地がほしい人間として、スーツを着た男サラリーマンがふたり出てきます。土地開発会社の社員です。ふたりの頭の中にあるのは、カネ、カネ、カネです。(お金のこと)
 年配の人:白いストライプ(たてじま)の入った紺色スーツ姿。
 若い人:グレースーツ姿。
 土地を売ってほしい。立派なビルを建てる。ビルの1階に『往来堂』が入る。最上階の高級マンション部分をふたつ、往来堂の人間にあげる。地下には駐車場ができる。上下は、エレベーターで移動する。
 
 ステータス:社会的地位。身分。

 77ページにある左右サイズが異なるシューズでもかまわないという部分に驚きましたが納得しました。オーダーメイドの靴です。(注文してつくる靴)。人間の足は、両方とも同じサイズとは限らないのです。
 
 このストライプさんとグレーさんというサラリーマンが出て来たあたりから、話がやわらかくなりました。いい感じです。読みやすい。

 木村夏希が靴づくりの修行をしています。
 小さめの靴をつくります。
 ミシン縫いと手縫い(ハンドソーン)です。
 
 吉岡美佐:吉岡英次郎85歳の孫娘。結婚式を挙げる。身長185cm。靴のサイズが28cm。バレーボールの選手。大きいです。米国プロ野球日本人選手オオタニさんの奥さんみたいです。
 吉岡美佐が結婚する相手が原という男性です。ウェディングドレスを着るときの靴をマエストロにオーダーしました。

 フィッティングシューズ:ファッション性の高い通気性があるニットのシューズ(ニットは編んだものという意味)。軽量で足にぴったり合う。

 職業選択のことが書いてあります。
 わたしの感想です。
 中学時代の希望で将来の進路(職業)が確定するということはあまりありません。(109ページの末尾にマエストロの意見が出ます。わたしと同じです)
 現実的には、お金を得るために仕事をするわけですが、まずは、世のため人のためと思って仕事をしないと仕事が続かないということはあります。仕事をするための動機付けは大事です。

 ずばぬけた才能があれば学歴はいらないということはあります。職人技で勝負します。

 一芸に秀でた(いちげいにひいでた)人は、一芸以外のことはできなかったりもします。そういう人は、心ある(道徳に従って思いやりをもって主役を支える)人に頼って、一芸に専念します。
社会的には有名でも、洗濯機の使い方やお風呂掃除のしかた、簡単な料理のしかたなどの衣食住のやりかたとか、生活をしていくうえでの契約ごと(部屋を借りる、電気・ガス・水道の契約をするなど)とか、それこそ電車やバスの乗り方を知らない有名人もいます。あわせて、食料品や物の一般的な値段を知らない人もいます。買い物体験がなければ、知らないのはしかたがありません。

 物語は、なんだか、恋バナ(恋の話)になってきました。
 
 都立高校への進学について書いてあります。
 昔は私立よりも公立のほうが、学力が高かったと思うのですが、今は逆のようです。半世紀ぐらい前は、公立高校に合格できない者が、すべり止めで私立高校を受験していました。
 
 プライドの話も出ます。
 お客さんの前でひざまずくのがイヤだろうみたいな話が出ますが、仕事です。かがまないと靴のサイズを測れません。
 
 月一の土曜登校日(中学ですが、完全週休二日制ではないようです。わたしが通っていた昔は、土曜日は午前中だけ学校がありました。世の中が週休二日制になったのは、わたしが大人になってからずいぶんあとのことでした)

 物語は、会話で話を進めていく手法です。
 中学生の男子と女子が、こんなにたくさん会話のやりとりをしないだろうと思いながら読んでいます。(199ページに佐野宗太からそのへんの事情の説明があります)

 『頑固者(がんこもの)』について考えます。
 わたしの考えですが、昔は、がんこなことはいいことだという慣例がありました。(かんれい:それが普通なこと。しきたり)。美談(びだん。いい話)扱いもありました。
 わたしが長い間生きてきて思うのは、人間は、がんこである必要はない。むしろ、がんこであるがために、うまくいくものもうまくいかなくなって、不幸を生むということがあるのです。とくにこどもの結婚には反対しないほうがいい。こどもが連れて来た相手に不満があっても、父親というものは、『おめでとう』と言うしかないのです。反対してこじれると、のちのち深く後悔することになります。ただひとこと、『おめでとう』と言えばいいのです。それが父親の役割です。

 見習い職人長という肩書の夏希。

 木村夏希の母、佐和子の言葉があります。
 『結婚するまでは勢いで、夫婦になったら忍耐力……かな?』
 わたしの思い出です。
 結婚しようとすると、たいていだれか、反対する人が出てきます。やめといたほうがいいよと、よけいなことを言う人がいます。
 自分が思うに、『なにがあってもこの人と、なにがなんでもこの人と必ず結婚するんだ』とばかになって思いこまないと結婚式までたどりつけないということはあります。

 家出をした長男の穰は、もしかしたら再婚した父親のところに行ったんじゃないだろうか。(結局、行き先の明記はありませんでした)

 ミュール:女性の履物。サンダルの一種。

 木村夏希は、参考書を3冊使って勉強しても勉強ができるようにならないというような話題が出ます。
 わたしは、中学生のときは貧乏な母子家庭だったので、参考書は1冊しか買えませんでした。その1冊を何回も解きました。同じ問題を繰り返しやって、数学のテストのときは、暗記していた解き方のパターンに数字をあてはめて解いていました。数学は自分にとっては暗記科目でした。
 物語では、佐野宗太が木村夏希に学習のしかたをアドバイスします。どうも、木村夏希は成績が芳しくない(かんばしくない)ようです。それでも、靴づくりでは、木村夏希のほうが佐野宗太より先輩です。佐野宗太は将来靴職人になりたいみたいなことを言い出しています。

 靴づくりに合わせて、離婚した親とその子の微妙な気持ちが表現されている作品です。
 親の気持ちとこどもの気持ちは違います。
 親権を失った父親は、いっときはこどものことを考えますが、そのうちにこどものことは忘れると思います。
 こどもは、失った父親を追いかけると思いますが、心変わりをしていく父親の態度にいずれ気持ちが冷めると思います。
 たいていの男はそんなものです。
 木村夏希の両親は離婚していますが、佐野宗太の両親も似たようなものだそうです。離婚はしていないけれど、仮面夫婦、家庭内別居とか、そういうことなのでしょう。
 佐野宗太の兄である佐野将暉(さの・まさき)に関しておかしなことになっているそうです。兄は23歳で亡くなっています。
 家族というものは、外から見ると仲良しそうに見えても、一歩中に入るとうまくいっていないということはあります。あんなに仲が良かった親子が心中(しんじゅう。親がこどもを道連れにして亡くなる)するなんて驚いたということが、現実にはあります。外面(そとづら。見た目)がいい家族は、演技をしているのです。

 等価交換(とうかこうかん):同じ価値のものを交換する。ふつう、不動産取引で使う言葉。

 中学生が労働をするとまずいみたいな表現がありますが、老齢者から見ると不思議な考えです。時代が変わりました。半世紀ぐらい前は、こどもは労働力でした。農家なら農作業、漁業なら船で魚とりにこどもでも出ていました。
 わたしが初めて働いて他人からお金をもらったのは、小学二年生のときでした。その当時は、地域に小学生の縦型社会があって、上級生がボスになって下のこどもたちのめんどうを見ていましたが、ボスが、小銭をもらえる仕事を探してきて、みんなで働いていました。集落にある万屋(よろずや。今のコンビニみたいなお店)のまわりの草取り作業をしました。労働賃は、5円でした。5円ですがお菓子が買えました。お菓子1個が50銭で、自分が小学生にあがる前でしたが、1円玉をもってお店に行くと、お菓子が2個買えたりもしました。わたしは、たまに家の中に落ちている1円玉を拾ってひとりで駄菓子屋へお菓子を買いに行っていました。お店のおねえさんがやさしかった。家の中で50円玉を拾ってお店に行って、こくごや、さんすうのノートを買ったことがあります。そこのおねえさんが、買い物をしたときに、ひらがなとか、数字を教えてくれました。
 話がずれました。自分は、中学生のときは新聞配達をしていました。あとで知りましたが、アルバイトをするときは、事前に学校に届けがいったようですが、だれもそんなことは気にしていない世の中でした。
 自分が高校生のころは、長期休みの時は土方仕事(どかたしごと)をしていました。ともだちの父親の知り合いの建設会社で肉体労働のアルバイトをしました。一日、朝8時から夕方5時まで働いて、2300円ぐらいの日当でした。そのことでだれかになにか言われたことはありませんでした。お金がほしかったら、おとなもこどもも働くことは当たり前のことでした。
 213ページに、中学生が学習塾から帰るのは夜の11時と書いてあります。異常です。なんだかへんな世の中になってしまいました。中学生が働くことはだめで、塾なら真夜中になってもかまわないのです。

 かなり時間がかかりましたが読み終えました。
 物語は、完成していない話です。
 これから先、まだ続きがあるような状態で終わっています。  

Posted by 熊太郎 at 06:50Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2024年06月05日

ごめんね でてこい ささきみお作・絵

ごめんね でてこい ささきみお作・絵 文研出版

 こどもさん向けの本です。

 はなちゃん:小学一年生ぐらいに見えます。
 おばあちゃん:この本のおばあちゃんは、かなり年配に見えます。ふつう、孫が1年生だと、祖父母の年齢は60代で、比較的まだ若いことが多い。前期高齢者ぐらいです。(65歳以上)
 ゆうちゃん:はなちゃんのなかよしのともだち。

 タイトルからすると、相手に、『ごめんね』が言えないというお話だろうか。
 読み始めます。

 事情があって、一時的に、おばあちゃんが、はなちゃんの家に来て、同居するらしい。

 きんちゃく:開口部をひもでしばって締めるようにした袋。

 はなちゃんとおばあちゃんでクッキーをつくるそうです。
 ちびっこは、食べ物が大好きです。
 ちびっこは、甘い食べ物が、なおさら好きです。
 公園からの帰り道で、ふたりは、チョコレートを食べながら歩きました。

 とはいえ、はなちゃんにとって、いいことばかりではありません。
 おばあちゃんは、口うるさかったりもします。ああしなさい。こうしなさいです。
 ふつうは、ママが、口うるさいのですが、この本では、おばあちゃんが口うるさくなります。
 ちゃんとあいさつしなさいとか、宿題をやりなさいとか、ごはんをこぼしてはいけないとか、歯をみがきなさいとかです。おふろあがりは、きちんと体をふきなさいもあります。電気をつけてから本を読みなさいもあります。(う~む。うっとおしい)

 食事のおかずの内容についての話があります。
 おばあちゃんは、魚や煮物などの昔風のごはんのおかずです。(ちょっと古い世代のおばあちゃんですな。今の80代の年齢の感じです。ひいおばちゃんの世代に思えます)
 はなちゃんが食べたいのは、カレーライスやスパゲティやハンバーグです。
 なにかしら、祖母から孫へのおしつけの意識と状態があるような雰囲気がただよいだしました。

 絵本のようです。
 マンガを読むようでもあります。
 ページをごとに絵と文章があります。
 祖母の孫に対する過干渉があります。
 孫のはなちゃんが委縮していきます。

 ちょうどこの本を読んだ時に、同時進行で読んでいた本のことを思い出しました。
 小学校5年生の長男さんが、母親に抗議します。反抗期の入口です。
 『ニワトリと卵と、息子の思春期 繁延あづさ(しげのぶ・あづさ) 婦人之友社』
 自立したいという、お子さんの反抗期の始まりがあります。
 これまでは、おかあさんの言うことをきいてきた。でも、これからは、おかあさんのいうことをききたくないのです。母は母で、どう対応したらいいのかわからず悩みます。まっこうからダメと言えなくて、条件闘争になったりもします。(そうしたかったら、こういう条件をのみなさいというパターンです)
 『お母さんがなんと言おうと、オレは放課後ゲームを買いに行く!』
 強い主張があります。オレの人生はオレのもので、お母さんのものではない。オレの人生をお母さんが支配することはできないというこどもさんからの強い主張が母親に対してあります。オレのことはオレが一番わかる。オレのことは、お母さんにはわからない。
 ゲーム機を買うと吠えていた(ほえていた)ご長男が、ゲーム機ではなく、ニワトリを買ったというところがおもしろいエピソードです。理由は、卵がとれるからでした。

 こちらの本では、おばあちゃんがはなちゃんに、『でもね』と言い返します。
 はなちゃんが、こうしたい、ああしたいと思っても、おばあちゃんが、『でもね』と否定します。
 一般的に世間では、日常会話で人が言ったことを否定する人は嫌われます。否定されるとその場の雰囲気が冷たくなります。否定する人は嫌われて、ひとりぼっちになります。

 文章からは、おばあちゃんが、はなちゃんのことを思っての言動であることが伝わってきます。
 だけど、はなちゃんはおもしろくありません。
 おばあちゃんが、おせっかい者です。(でしゃばり。不必要な世話)

 とちゅうまで読んできて、う~む。こういうきちょうめんでまじめな人が(おばあちゃんのことです)認知症になるんだよなあと思ってしまいました。
 
 ついにはなちゃんは、あたまにきて、おばあちゃんに、あんたなんか嫌い!というような感じで強く抗議しました。

 両親との関り(かかわり)がでてこない本です。めずらしい。どうしたのだろう。
 いまどきは、祖父母と交流が密にある孫というのは減りました。
 少子化の影響です。
 昔でも、祖父母と交流がある孫というのは、祖父母のこどもである長男・長女、次男・次女あたりぐらいまででした。
 兄弟姉妹のちゅうくらいから下になると、そのこどもである孫たちと祖父母との交流は希薄になります。両親や祖父母のお墓参りの習慣も下の世代は薄くなります。お墓参りに行くのは、兄弟姉妹たちの上のほうの世代です。
 今は、高齢化社会ですから、仕事場での営業の場面では顧客が高齢者ということが多いのですが、高齢者と触れ合ったことがない孫世代の社会人は、仕事場の窓口などで、高齢者の相手をうまくできなかったりもします。イライラするようです。高齢者相手の接遇は、マニュアルを読んで簡単にできるようなことでもありません。いまどきは、上下の世代間の気持ちの距離が開くようになりました。
 
 はなちゃんは、おばあちゃんに言います。『いいから、あっち いって。』

 う~む。なんというか、血のつながりがある祖父母と孫たちというのは、この話のように気まずくはならないものです。
 わたしも孫にどなることがありますが、(逆に小学生の孫にどなられることもありますが)少し時間がたてば、お互いにケロッとしています。孫は血を分けた自分の分身です。気まずくなる前に、コノヤローといいながら、スキンシップでじゃれあえば、こどもが小さいうちは、気持ちは元に戻ります。変にまじめだと、修復がむずかしくなります。

 ああ、やっぱり。本の中のおばあちゃんは、体の具合が悪くなって入院しました。(やっぱり認知症みたいになってしまいました)
 
 この本は、道徳の本みたいな面もあります。
 ちゃんとあいさつしましょうです。
 最近は、無言の無表情で接客接遇をする若い人が増えました。
 どういうわけか、基本は、知らん顔です。人口知能ロボット人形ですな。最近はAI(エーアイ)がはやっています。きのうテレビで、大きな液晶画面の中の女の人がお客さんと会話ができると紹介されていました。それこそほんとうの人工知能型接客ですな。

 う~む。年寄りの側の願望なのかなあ。
 この絵本を読んで、ちびっこは、どう思うのだろう。
 お年寄りを大切にしようということですな。

 絵本のテーマである『ごめんなさい』がでてこない理由をつきとめよう。
 自分が悪くないから、ごめんなさいが言えないということがあります。
 世間では、自分が悪くなくても、ごめんなさいを言う時があります。
 物事がスムーズに流れていくようにするために、本当は、あやまる気持ちはないのだけれど、あやまるかっこうをすることがあります。
 それが、人間です。そういうことを身に付けましょうということなのかもしれません。う~む。それでも社交辞令とまではいえません。(しゃこうじれい:関係をスムーズにするために本心ではないことを、あたりさわりのないように言うこと)。人間の自然な感情の動きです。正しいか正しくないかだけではなく、総合的に考えてうまくいくかいかないか、集団の中の一員(いちいん)として自分が集団と調和していけるかいけないかで考えるということはあります。
 深く考えると、内部告発をした人間がまわりにいる人間たちに干される(ほされる)のはどうしてかというところまで考えが及びます。明確な答えが出せない課題というものは、人間界にはたくさんあります。不合理、不条理、理不尽である状態がふつうの人間界だからです。たいていの人は、気持ちに折り合いをつけてがんばります。それぞれ娯楽を見つけて楽しむのです。気晴らしです。気持ちをそらします。その場しのぎですが、苦痛を忘れようとします。  

Posted by 熊太郎 at 06:42Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2024年06月03日

ドアのむこうの国へのパスポート 岩波書店

ドアのむこうの国へのパスポート トンケ・ドラフト&リンデルト・クロムハウト・作 リンデ・ファース・絵 西村由美・訳 岩波書店

 19ページまでとりあえず読んでの情報収集として、どこの国のお話だろうか。
 書いた人たちのことを確認しました。
 トンケ・ドラフト:オランダの児童文学作家。1930年生まれ(昭和5年)。現在93歳。男性かと思っていたら女性でした。
 リンデルト・クロムハウト:オランダの児童文学作家。1958年生まれ。現在65歳。児童養護施設暮らしの体験あり。夜学で幼児教育について学び作家を志した。図書館勤務後、作家となった。
 リンデ・ファース:オランダのイラストレーター(イラスト(絵)を描く職業の人)。1985年生まれ。現在39歳女性。
 西村由美:翻訳者。オランダ在住歴あり。

 出てくる場所が、『マックス・ベルジェイス小学校』です。
 以下、登場人物です。
 
 ラヴィニア・アケノミョージョ役をするのが、トンケ・ドラフトとあります。『明けの明星(金星(きんせい))』みたいです。

 ラウレンゾー:児童の名前。男の子。クラス29人の小学校から、クラス10人のマックス・ベルジェイス小学校に変わってきた。いつもひとりぼっちでいる男児。ふだんはほとんどしゃべらない。なにか障害があるような書き方がしてあります。
 マンションの8階にママとふたりで住んでいる。マンションは同じタイプが2棟並んで建っている。最上階が13階である。そこから砂丘と海が見える。ラウレンゾーは、海が好きです。
 パパは3年前に家を出て行った。じぶんの国イタリアへ帰って行った。(オランダからイタリアへということでしょう)。さびしい母子家庭の雰囲気がただよっています。ママは仕事で疲れています。
 教室では、本読みの授業をしています。今教室のみんなで読んでいる本が、『追跡――ひきょう者を追って』、作者が、ラヴィニア・アケノミョージョという人です。担任のトム先生のお気に入りの作家です。
 主人公の少年エドゥが、命がけで森を進んでいく。少年は牢獄の鍵を探している。少年は、無実の罪で牢獄に閉じ込められている父親を救い出すために、父親が閉じ込められている牢獄の鍵を探している。敵がいっぱいいる。

 ロベルトとイゴール:ケンカしている。

 テヤ:机の上に座っている。

 フランス:トイレに行った。

 トム・ヴィット先生:クラス担任の先生です。

 メーリー:学校は楽しくなくちゃと言った。

 イドゥナ:イドゥナとクリスティンは、教室の中で、特別な座席を使っています。なんというか、この学校自体が、障害児のための学校のような雰囲気がありますが、今は、最初のほうを読んでいますが、まだ明確にはそのことを書いてありません。イドゥナは、人からいやなことを言われるとすぐに泣きだすそうです。
 教室には10人用の普通の席がある。クラスの人数は10人ですから、そのうちの8人は普通の席に座っていて、イドゥナとクリスティンは、しきられた小さな席に座っているそうです。壁を目の前にして座っているそうです。先生を見るわけではなく、壁を見て授業を受けています。不思議です。

 クリスティン
 ヨリス
 バルト

 イワン・オソロシ:黒猫の名前です。

 この本のタイトルは、『ドアのむこうの国へのパスポート』です。
 本の冒頭に、本の表紙にある絵を見てくださいと読み手に対して指示があります。
 少年が家のドアを開けて、顔と右腕だけをドアから出して、外のようすをうかがっています。
 玄関の階段を黒猫がおりいく途中です。
 ドアの向こうに別世界があるようです。このパターンは、『ナルニア国物語』とか、『ハリーポッター』とか、『不思議の国のアリス』とか、『クマのプーさん』とか、『ドラえもんのタイムマシンとかどこでもドア』とかと似ています。こどもさん向けの児童文学です。

 パスポート:国家が、その人の国籍と身分を証明する証明書。公文書

 さて、読みながら感想をつぎ足していきます。

 ドア:ドアを開けると、別の世界がある。本を読むことは、ドアを開けることと同じことというお話があります。

 先日読んだ本と同じ言葉が出てきました。
 『ディスレクシア』です。読字障害。難読症。読み書き障害。
 『宙わたる教室(そらわたるきょうしつ) 伊予原新(いよはら・しん) 文藝春秋』
 主人公の柳田岳人(やなぎだ・たけと)に学習障害があります。文章を読めない。ディスなんとか。(読み進めていたら31ページに『ディスレクシア』という言葉が出てきました。文字の読み書きが困難。俳優のトム・クルーズ、アメリカ大統領だったブッシュ、映画監督のスティーブン・スピルバーグがディスレクシアですという記事を読んだことがあります)
 文字のフォント(デザイン)で、ディスレクシアの人でも文字や文章を読めることがある。
 
 こどもたちのほとんどは、スクールバスで通っている。
 ラウレンゾーは、母子家庭で母親が働いているので、自分でサンドイッチのお弁当をつくってきて教室で食べる。
 児童たちは、小学校の高学年でしょう。日本の制度だと、5年生とか6年生とか。
 メーリーが言います。『……この学校は、ばかとへんな子の学校よ』
 
 こどもたちが、先生の指導のもと、本の作家に手紙を書きます。『追跡――ひきょう者を追って』、本の作者が、ラヴィニア・アケノミョージョという人です。女性です。トム先生のお気に入りの作家で、どうも先生とその女性作家は知り合いです。
 児童のうち、ふたりだけが、作家と作家の家で会ってくれることになりました。
 ラウレンゾーとテヤが、ふたりだけで作家宅を訪問することになりました。
 
 学校でともだちがいなと、かなりさびしい思いをすることになります。
 ひとりでも話ができるともだちがいてほしい。
 そのために、遊びがあります。
 遊びは、ともだちづくりをするためにあります。
 いろんな遊び方を覚える。
 いろんな人と接してみる。
 気が合う子を友だちにする。

 オランダらしい。交通手段に、『渡し船』があります。オランダアムステルダムは、運河の街です。
 渡し守(わたしもり):おじいさん。いっけん、こわそう。歯が黄色い。
 乗船料が、『2ユーロ50セント』とあります。これを書いている今日の日本のレートだと、1ユーロが、168.83円です。
 
 作家ラヴィニア・アケノミョージョの家の所在地が、『外見と実体通り 76番』というところです。変な地名です。外見(がいけん):見た目。実体:存在の基本。

 クロウタドリ:ヨーロッパほかに生息するツグミの一種。日本には迷い鳥として来ることがある。黒い鳥。くちばしは黄色い。

 作家ラヴィニア・アケノミョージョ:背の高い女性。はなやかな色のワンピースを着ている。ストッキングは白い。サンダルをはいている。指に、青い石の大きな指輪をつけている。

 作家ラヴィニア・アケノミョージョの家にある部屋のドアに、『KR』という文字がはってある。その部屋には、ちゃんとしたパスポートをもっている人だけが入ることができる。
 ドアのむこうには、『コスモポリタン連邦』がある。コスモポリタン連合は、何十もの国からできている。それぞれの国に入るためには、それぞれの国の許可(ビザ。入国許可証。査証)が必要になる。
 コスモポリタン:世界のどこででも、だれとでも、うちとけられる人のこと。
 ドアの色が変わるらしい。最初のときはみどり色だった。次のときは、青色だった。その後、赤色、次に黄色に変化します。大使が、ドアを塗っているらしい。虹の七色があるらしい。(せきとうおうりょくせいらんし)赤橙黄緑青藍紫です。
 
 イワン・オソロシ:黒猫の名前。

 大使:パスポート発行の決定権者。

 『小さき門をくぐれぬ者が、パスポートを送る』(まだ、この言葉の意味は明かされません)
 しんぼう強くまっていれば、答えはしぜんにやってくるそうです。

 (イワンという黒い猫は、このあと、しゃべるんじゃないかと思いつきました。さて、どうなりますか)

 『送り主 コスモポリタン連邦大使代理 ラヴィニア・アケノミョージョ』
 パスポート申請書あり。
 この申請書は、12歳より年上の人は対象外とあります。
 なんだか、ピーターパンのお話みたい。こどもだけが対象です。おとなにならない少年少女です。
 パスポート申請書に書く変なことです。声の色、目の数、職業など。ビザを希望する国の名前というのもありますが、そもそもどんな国があるのかは教えてくれません。
 
 パスポートは10通、児童全員分が交付されました。

 コスモポリタン連邦は、有名な子どもの本の国々である。
 ビザ(入国許可証)としての国々です。
 『カラスが海にぷかぷかういている島のビザ』、本は、なぞなぞの答えとしては、『わたしたちの島で』です。スウェーデンの小さな島で冒険する子どもたちの話だそうです。本当の本の題名は、『ウミガラス島』だそうです。ややこしい。
 『木の枝のあいだに住める国のビザ』はなんという本か。『マジック・ツリーハウス』という本です。
 『ひょろひょろと細長い人たちの町のビザ』、答えは書いてありません。ラウレンゾーが持っていた本ですが、パパが家を出たときにイタリアへもっていってしまいました。
 『割る口(悪口のこと)をいいあいっこしない人たちの国のビザ』、それは、ヨリスが考えたビザです。
 この物語ではときおり、両親の不和についてふれます。
 『むずかしいことをしなくちゃならない学校がない国のビザ』
 『おねえちゃんのいない国のビザ』
 『わたしたちみたいな子どもだけの国のビザ』
 『楽しいことだらけの国のビザ』
 『長い鼻の国のビザ 一年に十回有効』
 
 ラウレンゾーのパパの話が出ます。パパは、ママとケンカしたのか、家を出て行ってしまいました。
 新しいママとふたりのこどもたちがいるそうです。ふたごだそうです。
 パパは、オランダから、イタリアへ行ったそうです。

 ラヴィニア・アケノミョージョが7歳のときに、ラヴィニア・アケノミョージョの父は、船で海に出かけて、それっきり、父には会っていない。やさしい母はいた。
 ラヴィニア・アケノミョージョは言う。『……父親ってみんな、自分の子どもが好きなのよ』(そうともいえないと熊太郎じいさんは思います)
 
 『ピノッキオの冒険』、お父さんにうそをつくと、鼻が長くなる木の人形の話です。

 『大使』は誰なのか。
 作家であるラヴィニア・アケノミョージョが大使ではなかろうか。
 
 渡し守が言います。
 『人はいそいでいなければ、自分の目でそれを見ることができる』

 ラウレンゾーは、ラヴィニア・アケノミョージョと家を出ていたパパに手紙を書く。

 大使(アムバサドゥーア。オランダ語でしょう):ambassadeur

 わたし船に黒いネコのイワン・オソロシが座っていた。

 本のタイトルとして、『メネッティさんのスパゲッティ』

 『頭がぐるぐるする』
 
 メナウレス・ヴィット:トム先生の父親

 クラス全員10人がビザをもつことができました。
 トム先生が同伴者として、こどもたちといっしょにコスモポリタン連邦へ行けることになりました。
 訪問は、あすの午後2時です。
 
 渡し守にはちょっとした秘密がありました。(ここには書きません)

 ドアは、虹の七色に塗られていました。
 銀色の鍵でドアを開けました。
 コスモポリタン連邦へ続く通路が見えました。
 通路の先に階段がありました。
 階段をくだって、階段をのぼります。
 黒いドアがありました。
 金色の鍵で黒いドアを開けました。
 ドアのむこうには、大きな鏡がありました。
 (ここからさきは、日本人とオランダ人の国民性の違いなのか、文章を読んでもピンときません。オランダ人には理解できて、日本人にはちんぷんかんぷんな気がします)
 
 ラウレンゾーにイタリアのパパから手紙が届きました。
 (このあたりも、文章を読んでいて複雑な気持ちになりました。息子のことを思うのなら、再婚はしないし、(結婚を継続するし)、再婚後の妻との間にこどもももたないでしょう)
 なにかしら、消化不良な気持ちで読み終えました。

 本の末尾には、作者のコメントがのっています。
 作者ふたりの出会いとそれからのことです。
 長い付き合い、互いに親友だそうです。
 
 こどもに本を読みましょうと応援メッセージをおくる本でした。
 コスモポリタン連邦は、本を読む世界です。
 
 訳者あとがきがあります。
 この本は、2023年4月に発行されています。
 オランダ人ふたりの作家について書いてあります。
 トンケ・ドラフト:女性。現在92歳とあります。
 リンデルト・クロムハウト:男性。現在64歳ぐらいでしょう。
 ふたりの出会いは、リンデルト・クロムハウト氏が19歳のときだったそうです。
 長い付き合いです。
 その出会いのときのことが、この物語の下地になっているようです。  

Posted by 熊太郎 at 06:39Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2024年05月29日

恋愛脳 男心と女心は、なぜこうもすれ違うのか 黒川伊保子

恋愛脳 男心と女心は、なぜこうもすれ違うのか 黒川伊保子 新潮文庫

 男と女の本です。
 読むと、男と女の心もちは、正反対というぐらい違います。
 どうやって折り合いをつけていくのかが、永遠の課題です。
 著者は、男女の心理を観察して分析することが得意そうな方なので、書かれた本を読んでみることにしました。

 結婚しない人が増えました。
 結婚しない人は、この本を読んでも有益とは言えないのだろうか。
 自分の身のまわりを見渡すと、知り合いは、未婚が多い。結婚していても、子どもなし、孫なしが多い。
 いっぽう自分の親族は、子だくさん、孫だくさんです。
 どうしてそうなるのかわかりませんが、両極端な世の中になりました。

 女性は飴玉タイプ(あめだまタイプ)だそうです。
 女性は何回でも同じ話題を繰り返して盛り上がることができる。
 いっぽう男性は、効率優先で、機械的、ロボットのように動く。男には、『気持ち』というものがない。
 女性は長電話、男性は短い電話と例示があります。男の電話は、情報伝達だけ。

 この本を書いた当時(2003年です。もうずいぶん前です)、著者にはご主人はいないようです。(男関係に関して、よくわからない文章表現がしてあります)。11歳小学5年生の息子さんがいます。(本人は、作文はにがて。165cm、75kg、足のサイズが、26.5cmです。小学5年生にしては、かなり大きい体格です)
 ご主人はいないようですが、カレシはおられるようです。
 よくわからない家族構成です。

 文章にリズムがあるので読みやすい。

 『(三十歳までは)恋は、発情すればできる。』
 誤解を伴って恋をして、事実を知って恋が冷めて、そこから湧いてくる愛情はあると思います。
 女も男もお互いさまです。相手に不満が多くても、相手になにかひとつでも尊敬できるところがあれば、関係は継続できるということもあります。

 男性脳と女性脳の違い:脳梁(のうりょう)の太さが、男性より女性のほうが太い。男性のほうが細い。脳梁とは、右脳と左脳をつなぐ場所のこと。

 男性脳:キーワードは、『空間』。仕事の時は、家庭を忘れることができる。脳内に複数の、『空間』をもっている。浮気をしているときは、妻のことを忘れられる。
 男は、正しいか、正しくないかを基準にして物事を判定して行動する。
 男たちは、予算に応じて、形式が整うように物事を計画し構築する。

 女性脳:情緒は、時間がたつごとに、ゆったりと蓄積されていく。キーワードは、『時間』。仕事のときも家庭のことを考えている。女性は、『空間』をひとつしかもっていない。浮気をしているときもご主人のことは忘れていない。
 女は、好きか嫌いかで物事を判定して行動する。
 女子たちは、何が大切かを基準にして、優先順位をつけ、創造的なものをつくりあげる。男子のように、最初から形を整えることにはこだわらない。

 文章を読んでいて、これほど男性と女性の違いにこだわることはなかろうにという感想に達します。
 男性も女性も歳をとってしまえば、最後は、男性でも女性でもない中性になる感覚があります。
 人格もおぼろげになってきます。
 三十代から五十代は、しっかり者で、リーダーシップがあって、人に愛されていた人でも、歳をとればだれしも、ぼんやりとした人格に変化していきます。
 ときには、しっかり者だった人が、認知症になって、乱暴でへんな感じの人格に変化して、施設でないと対応ができなくなることもあります。人間とか人生の悲しみがあります。

 まずは、心身ともに健康でありたい。次に、男女に関係なく仲良しであるように努力は続けたい。文章を読んでいて思うに、男性は女性に頼り過ぎてはいけない。自分の身の回りのことを女性にやってもらおうと思ってはいけない。自分のことは自分でやる。衣食住についてです。
 さらに、女性のことも考えて、女性にサービスを提供していく気持ちを持ち続けなければならない。提供したサービスはいずれ自分に戻ってきます。
 そんなことを思いながら、こちらの本に書いてある文章を読んでいます。
 男性ならだれしも、熟年離婚は避けたい。
 男性は女性に、『(あなたに)おまかせします』と言えるようになったほうがいい。そう思いました。女性の言うことをきくのです。だまってやるのではなく、やる前に前もって女性に相談するのです。女性から断られたらあきらめるのです。
 女性が男性にかけるいい言葉が紹介されています。
 『しょうがないわねぇ』。男性も女性も満足できる女性の返答だそうです。
 男性のだめな部分を女性に受け入れてもらうのです。

 この本は2003年(平成15年)に単行本で出したそうです。
 もう21年も前になりました。今回わたしが読んだのは、文庫本です。
 なにかしらの縁があって結婚をして、どこのうちでも、他人同士がいっしょになれば衝突があって、それでもなんとか折り合いをつけて、子育てをして、働いて、夫婦の歴史を刻んでいきます。
 歳をとって、仲がいい夫婦というのはあまり見かけませんが、腐れ縁となってもいっしょにいられるのは、こどもたちや孫たちや、とりまく親族たちや友人のおかげということもあります。
 男脳でも女脳でもどちらでもいいから、就労能力も衰えてきて、生きていける時間の限りが見えてきた老齢期に入ってきたら、夫婦としてなんとか最後までお付き合い願いたいと思うのです。

(以上の文章を書いたその後のこと:先週の日曜日に愛知県半田市にある雁宿ホール(かりやどホール)で、『中高年のアイドル、綾小路きみまろ爆笑スーパーライブショー』を夫婦で観てきました)
 綾小路きみまろさんの毒舌(どくぜつ。厳しい悪口。毒をはくような言葉)がかなりきついのですが、大爆笑の館内でした。おもしろい。行ってよかったです。
 夫婦にもいろいろありますが、少なくとも、そのとき館内におられた中高年ご夫婦のみなさんは、山あり谷ありの長い人生を経て、今は、平和な位置にいて、いずれくるお迎えの日まで、これから先、一日一日を楽しんでいかれるのだろうと理解した次第です。  

Posted by 熊太郎 at 07:11Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2024年05月27日

私の職場はサバンナです! 太田ゆか

私の職場はサバンナです! 南アフリカ政府公認サファリガイド 太田ゆか 河出書房新社

 前回読み終えた本が、『アフリカで、バッグの会社はじめました 寄り道多め仲本千津の進んできた道 江口絵里 さ・え・ら書房』でした。アフリカつながりで、今度はこの本を読んでみます。

 こちらの本には、アフリカの写真が何枚かあるのですが、著者がどの写真でもカメラ目線です。モデルさんかアイドルさんのようだという印象をもちました。
 あとの写真は、ライオン、リカオン、ハイエナ、ゾウ、クロサイ、キリン、ミナミベニハチクイ、ムナオビオナガゴシキドリ、ブレスボック(鹿みたい)、昆虫もいます。フンコロガシ、シロアリなど、動物園と違って、動物は原野にいます。

 著者は何をしている人なのだろうか。これから読み始めます。読みながら、感想をつぎたしていきます。
 この本の出版社である河出書房新社の建物は、今年一月、東京見物に行ったときに、国立競技場の敷地から見ることができました。

 本の構成です。
 第1章から第6章まであります。
 目次に目を通します。
 書いてあることを読むと、毎週日曜日午前10時過ぎから流れているNHKラジオ番組、『こども科学電話相談』を思い出します。
 こども科学電話相談のジャンルとして、『昆虫』、『動物』、『科学』、『天文・宇宙』、『鳥』、『心と体』、『岩石・鉱物』、『植物』、『水中の生物』、『恐竜』、『コンピューター・ロボット』、『天気・気象』、『鉄道』などがあり、多岐(たき。たくさん)にわたっています。
 これから読む本は、『動物』とか、『鳥』、『昆虫』、『水中の生物』などが該当しそうです。

 この本で、動物の生態ほかを紹介してもらえそうです。
 サバンナ:熱帯・亜熱帯の草原地帯。夏に雨季、そのほかに、乾季がある。
 著者である太田ゆかさんの職業は、『サファリガイド』だそうです。南アフリカ共和国で働いておられます。
 サファリガイド:自然の中で野生動物を観察しに行くアクティビティ(体験型の遊び)の世話人。
 サファリ:スワヒリ語で、『旅』という意味だそうです。

 アフリカ諸国は、西洋の(ヨーロッパ諸国)の植民地だった歴史がある。
 
 人間も自然の一部とあります。
 地球の自然を人間が壊している。地球温暖化、大気汚染、森林破壊などです。

 この本では、自分がサファリガイドになった理由、サバンナの動物たちの生態、現地での環境問題について語ってくださるそうです。
 本の読み方として、サファリツアーに参加するような気分で読んでくださいというようなメッセージがありました。

(つづく)

『第1章 どうしてもアフリカで働きたい!』
 どうしてアフリカで働きたいのだろう? そう思いました。ふつう、アフリカで働きたいとは思いつきません。
 著者は、14歳のころ獣医になりたかった。動物が大好きだった。
 自分がもつ獣医のイメージは、ペットの治療ではなく、たとえば、北海道の牧場で牛の出産の処置をするとか、肉牛やヒツジ、ニワトリの対応をするというような産業動物・経済動物の管理で収入を得て生活をしていくというものです。楽な仕事ではありません。(著者は、理系がにがてで獣医になることをあきらめています。人間相手でも動物でも、医療は理系です。また、血を見る仕事です。ほのぼのとした仕事ではありません)

 オーストラリアの山林火災からコアラを救出する:そういうことがありました。2019年(令和元年)にそういうことがありました。

 著者は、動物を守る仕事、動物に携わる仕事を選択した。
 大学の観光学部に所属して、モンゴルやマレーシアを訪れた。野生動物の保護、自然環境保護について学んだ。
 野生動物の王国は、『アフリカ』であると悟った。(さとった。はっきりと理解した)
 大学2年生の時、アフリカ大陸南部のボツワナ共和国でのサバンナ保全ボランティアプロジェクトに参加した。そこで、将来への進路が決まった。

 サファリガイド:フランス出身の若い女性がガイドだった。彼女にいろいろ教えてもらった。仕事を学ぶ時には、師弟関係が必要です。自分ひとりだけでは、仕事はなかなか覚えられません。自分が覚えたら今度は自分が師匠になるのです。

 2015年(平成27年)、南アフリカ共和国にあるサファリガイド訓練学校の1年間コースに入学した。日本の大学は1年間の休学です。(休学中の授業料は払わなくていいと聞いたことがあります)
 現地で勉強して、サファリガイドの資格を取得されています。
 イギリス人やインド人の人たちが仲間です。
 
 著者は、アメリカ合衆国ロスアンゼルス生まれですから、世界を移動することに抵抗感がないのでしょう。(でも、英語はにがてだったらしい。努力と勤勉で、克服されています)

 ご両親は娘さんがアフリカで働くことに反対だったそうです。ご両親からみれば、なんでそんなことを言い出すのかと驚いて、たいへん心配されたことでしょう。
 親は、ゆくなと説得はするけれど、最後はあきらめるしかありません。こどもの人生はこどものものです。

 サファリガイドとしての就職活動は簡単ではありませんでした。
 日本人が現地で働くにはハードルが高い。
 救命救急の資格、特別な運転免許証の取得、観光局への登録などが必要だったそうです。
 現地の人にとっては簡単でも、日本人にはむずかしい。大変です。
 男社会なので、日本人女性を受け入れてくれない。就職のための面接も設定してもらえない。
 ようやく見つかったのは、観光客相手の仕事ではなく、世界各地からボランティアでやってくる人たち相手のサファリガイドの仕事だったそうです。著者は、サファリロッジで働きます。
 車にボランティアの人たちを乗せながら、毎日サバンナの草原に出ます。ヒョウやライオン、ゾウなどの生態を調べます。
 
 言語のことが書いてあります。
 南アフリカ現地のこどもは、小学二年生までは地域の言葉で学習するが、三年生からはすべて英語で授業をするそうです。たいへんですが、習得すればなかなかいい技術です。日本人の英会話教育の遅れを感じます。某アメリカプロ野球選手も自分で英会話ができれば、通訳トラブルに巻き込まれずに済んだのかもしれません。(このあと読んだ投資家の本にも日本人の英会話能力が低すぎるというような文章が書いてありました。『わが投資術 市場は誰に微笑むのか 清原達郎 講談社』)

 新型コロナウィルス禍があります。
 お客さんが来ません。
 生配信するオンラインツアーの開始です。
 
 40ページにある一日の日程はなかなかハードです。
 午前3時45分起床、4時15分出勤、5時から車で出発です。
 3~4時間回るそうです。
 午後は、16時から2回目のツアーです。
 20時に仕事は終了です。
 好きでないとできない仕事だと思いました。

『第2章 想像を超えたサバイバル リアルな肉食ライフ』
 本は、各動物を個別に紹介するパターンになるようです。
 本の中のサファリツアーです。
 (まず、ライオン)
 好きな動物はライオンだそうです。
 百獣の王ライオンには魅力があります。
 野生のライオンは、大きなネコだそうです。かわいいところもある。
 プライド:ライオンの群れのこと。1頭から数頭のオスと10頭前後のメスとこどもによる構成です。血族が中心です。
 狩りはメスがします。チームワークがいいそうです。
 ライオンの敵はライオンだそうです。
 オスはリーダーです。リーダーの地位を維持するために、ライオンのオスと戦います。
 もうひとつ、ライオンの敵は人間です。密猟者がいます。罠(わな)もあります。

 (ハイエナ)
 世間で思われているほど悪い奴ではないそうです。むしろサバンナにとってはいなくてはならない存在だそうです。
 賢い。(かしこい)。思考が、人間と似ている。頭がとてもいい。意思決定をする脳の部分が発達している。
 複数でコミュニケーションをつくっている。
 弱肉強食の野生動物の世界について説明があります。
 生態系のバランスをとってくれているのが、ハイエナだそうです。

(チーター)
 見かけることは、珍しいそうです。頭数が少ない。
 足は速いけれど、力はそれほどない。
 1歳半で自立ですが、なかなか1歳半まで育たないそうです。

(リカオン)
 生態が人間みたいです。
 社会性が高い。手塚治虫アニメの、『ジャングル大帝』を思い出します。
 ライオンとの接触をさけるために広範囲で行動するそうです。
 人間と接触する機会が多いので、家畜を襲うこともある。ゆえに人間に殺されてしまう。日本でいうところのクマとかイノシシを思い浮かべました。
 リカオンが狂犬病になって、いっぱい死んでしまったと書いてあります。
 そして、密猟者がいます。

 モニタリング:野生動物を継続的に観察し、記録すること。

 チーターとライオンは、ネコ科で、リカオンは、イヌ科だそうです。

 南アフリカについて書いてあります。
 人口が、5939万人。日本は、1臆2300万人ぐらいです。
 南アフリカで暮らしている日本人は、1505人しかいません。
 南半球だから、11月~3月が夏で、冬は、4月から10月だそうです。

『第3章 生き抜くために手を取り合う サバンナの草食動物たち』
 肉食動物から命を狙われている草食動物の話です。
 (インパラ)
 シカのように見えるけれど、ウシ科だそうです。肉食動物のおもな食糧源になっているそうです。人間にとっての産業動物・経済動物(ニワトリ、ブタ、ウシなど)みたいです。
 インパラは、500万年前から地球上にいるそうです。姿かたちもほとんど変わっていないそうです。(大昔はもう少し小型だった)
  500万年前というのは、日本の縄文時代は1万年前ぐらいですから、かなり前です。恐竜時代が、BC(紀元前)2億年~BC6600万年前です。
 インパラがいるサバンナにはたくさんのダニがいるけれど、毛づくろいでダニを退治している。ダニをとりやすい前歯をもっている。そんなことが書いてあります。

 (キリン)
 背が高い。オスだと5m以上の個体もいる。
 草食動物は、草食動物同士で固まってエサをとる。敵が来たらお互いに教え合って逃げる。キリンは背が高いから遠くが見える。助け合いがあります。
 名古屋東山動植物園のキリンのあかちゃんを見たときを思い出しました。あかちゃんでも、身長が165センチぐらいありました。名前は、『カンナ』です。
 キリンのあかちゃんは、サバンナではライオンに狙われるそうです。
 
 (アフリカゾウ)
 体重は6トンです。一日中食べているというように書いてあります。
 東山動物園のアフリカゾウ、『ケニーさん(メス)』は、午前11時ごろに飼育員さんから木の葉っぱとか枝をもらってむしゃむしゃ食べていました。ケニーさんは歳をとって、2020年8月10日に老衰で亡くなりました。
 ゾウのフンのことが書いてあります。消化が下手なので、ゾウのフンには栄養素が残っており、たくさんの虫がフンにむらがるそうです。その虫を食べる動物がやってきて、良好な食物連鎖につながっているそうです。
 ゾウは嗅覚がいいので、地下水のありかを、においをかぐことによって見つける能力があるそうです。
 2種類のゾウがいる。
 アフリカゾウ:東アフリカ、南部アフリカのサバンナにいる。危機(今後の個体数の減少について)。
 マルミミゾウ:中央アフリカ、西アフリカの森林地帯にいる。個体の減少が深刻な危機にある。

 ゾウの好物となる樹木:マルーラ、ノブソーン、バオバブ

 保護しすぎて、数が増えて、ゾウが保護区から出て、人間のエリアに入ってくるようになったとあります。数のバランスをとることがむずかしい。

 (サイ)
 シロサイ:口の形が違う。主に草を食べる。口の位置が低くて横長。生息していた場所の土が石灰質で、白い泥が体についていた。
 クロサイ:葉っぱや枝を食べる。おちょぼ口。名前は、シロの反対でクロにした。

 サイの天敵は、ツノを売るためにサイを捕る密猟者たちです。
 ひどいことをするものです。
 いろいろ課題があります。
 密猟者が密猟をしなくても食べていけるように雇用を確保するとか、保護する立場の人間たちで、先にツノだけをとって生かすとか、いろいろ考えられて実行されています。
 
『第4章 見た目も能力も陸とは一味違う! 空駆ける鳥の世界』
 サバンナにいる鳥たちの紹介です。
 (ダチョウ)
 身長2m以上、卵の大きさは、ニワトリの卵の24個分。ビッグです。
 鳥だけど飛べない。

 (ハヤブサ)
 地球上でもっとも飛ぶのが速い鳥だそうです。急降下の時のスピードは、時速389km、日本で一番速い新幹線『はやぶさ』の最高時速が、320kmだそうです。
 
 (ハゲワシ)
 最初、「ハゲタカ」のことかと思いましたが、「ハゲワシ」です。
 地球上でもっとも高い位置を飛ぶ鳥だそうです。
 「マダラハゲワシ」は、高度1万1000mの上空を飛べるそうです。マイナス50℃の世界です。寒さに強い体をしているそうな。気圧は陸上の4分の1です。すごいなあ。宇宙まで届きそうです。(調べたら、高度100kmから宇宙だそうです。マダラハゲワシでもまだ遠い)
 
 ハゲワシの主食は死肉です。ハゲワシは、生態系にとって、必要な存在です。
 ハゲワシには知恵がある。カラスみたいです。
 鳥類は、恐竜の子孫と聞いたこともあります。
 視力も優れている。
 上空1kmから6cm角のお肉が見える。
 ハイエナ:サバンナのお掃除屋さん。
 ハゲワシ:同じく、サバンナのお掃除屋さんです。
 ハゲワシの敵は人間です。お金に目がくらんだ人間が、化学製品の薬をいろいろな手段に使って、ハゲワシが間接的に毒薬を口にしてどんどん死んでいきます。そんなことが書いてあります。
 思うに、ライオンの敵はライオンで、人間の敵は人間です。遠い未来に人間は自分たちの手で滅びる危機を迎えるかもしれません。核戦争です。そうならないように人間はがんばらなければなりません。
 アフリカにいる9種類のハゲワシです。たくさんいるのね。日本の和牛のブランドみたいです。
 1 コシジロハゲワシ
 2 ズインハゲワシ
 見た目で、お名前が付いているみたいです。
 3 カオジロハゲワシ
 4 ミミヒダハゲワシ
 5 ケープハゲワシ
 6 エジプトハゲワシ
 7 ヤシハゲワシ
 8 マダラハゲワシ
 9 ヒゲワシ
 このうち7種類が絶滅危惧種に指定されているそうです。そのうち4種類が、さらに深刻な近絶滅種だそうです。なんともはや。手遅れではなかろうか。
 
 アフリカというところは、密猟が多いところのようです。
 ちゃんとした仕事があれば、密猟なんぞしなくても済むのでしょうに。
 詐欺行為もあります。
 ハゲワシの体から薬(伝統薬(ムティ)をつくって、目が良くなるとか、祖先と話ができるようになるとか、そんなはずないでしょと、それがウソだとわからない人がいます。『信仰療法』です。だまされてはいけません。
 ハゲワシにとっては、人間の行動範囲が広がることで災難ばかりです。人間が電柱をつくったから、電線に触れて感電死するハゲワシが出てきます。

 (ミナミジサイチョウ)
 わたしにとっては、聞いたことがない鳥です。
 体長1m、翼を広げると幅が1.8mにもなるそうです。かなりでかい。
 70年近く生きる長寿の鳥だそうです。
 ハゲワシと同じように伝統薬(ムティ)にされるそうです。
 人間の行動範囲が広がって、生息域が狭くなったそうです。
 
 アフリカの野鳥を日本でペットにしないでほしいそうです。
 人間の『欲』は、ときに『悪』です。
 野生動物がお金もうけに利用されています。
 野生動物にとっては残酷な仕打ちです。
 人間のわがままは尽きません。
 人間の仕業(しわざ。行為)で、自然の生態系が崩れます。
 
 『フクロウカフェ』を素材にして問題提起がなされています。
 お金もうけのためなら、もっともらしい口実(こうじつ。言い逃れの理由)をつくって、しれっと(なにごともないように平気な顔で)商売をするのが人間です。

 (コサイチョウ)
 ライオンキングに出てくるザズーというキャラクターのモデルとなった鳥だそうです。
 コビトマングースとの協力関係があるそうです。コビトマングースのエサのおこぼれをいただくかわりに、コビトマングースの天敵となるワシが来たときは教えてあげる。

 (ノドグロミツオシエ)
 ハチの巣の場所を教えてくれる。
 ハニーガイド:ハチミツの案内人

『第5章 縁の下の力持ち サバンナを支える小さなヒーローたち』
 分解者:生態家のバランスを支えてくれている小さな生き物たち(昆虫、カビ・キノコ(菌類)、微生物、ミミズ、ダンゴムシなど)
 分解するもの:動物の死骸(しがい)、フン、枯れて腐った植物、落ち葉、有機物(炭素を含む物質)を取り入れて分解して、栄養分を土に還す(かえす)役割を果たす。

 (シロアリ)
 54ページにあるアリ塚の白黒写真には驚かされます。とても背が高いアリ塚です。
 そういえば先日、我が家の建物に沿って、大量の小さなアリが行列をつくって通り過ぎていきました。引っ越しだったようです。女王アリが移動したのかもしれません。そんなことがこちらの本に書いてあります。
 アフリカのサバンナには、シロアリ帝国があるそうです。かなり文化が発達した社会が形成されているそうです。
 シロアリは食糧源になるそうです。センザンコウという動物とか(鎧(よろい)のような体をしている)、ツチブタ、カエル、トカゲ、鳥などがシロアリを食べるそうです。
 東山動植物園に、アリクイという動物が展示してあるのを思い出しました。
 
 (フンコロガシ)
 なかなか詳しく書いてあります。おもしろい。
 動物のフンを丸めてころがすのです。2~3cmぐらいの体だそうです。
 体重の50倍の重さのボールをつくって、ときには、200mぐらい移動するそうです。途中で、お嫁さんも見つけるそうです。
 フンコロガシには、方角を見定める能力が備わっている。フンコロガシは、太陽や月の位置を使って方角がわかる。風、太陽の偏向パターンで判断できる。すごいなあ。(レイリー散乱)
 先日読んだ本に書いてあったことと同じようなことが書いてあります。
 『宙わたる教室(そらわたるきょうしつ) 伊予原新(いよはら・しん) 文藝春秋』
 レイリー散乱(さんらん):地球の空は青い。夕焼けは赤いという理由の説明があります。昼間は、波長の長い青色の光が散乱する。日没時は、太陽光が大気を通る距離が長くなり、散乱されにくい赤い光が生き残って夕焼けになる。火星ではその逆になるそうです。火星の昼間は赤色の空で、日没のころは青い夕焼けだそうです。空気が薄い、塵(ちり)が多いことが理由だそうです。
(フンコロガシは、レイリー散乱を利用して方向を判断する能力があるそうです)
 
 (アフリカマイマイ)
 おおきなカタツムリです。人間のげんこつぐらいあります。

 (サソリ)
 サソリは、靴の中に入るので、靴をはく前に必ず靴の中にサソリがいないか確認してから靴をはくそうです。
 サソリは、人間が死ぬほどの毒はもっていないそうです。昔の日本映画ではときどき出てきて、人間が死ぬようなふうでした。

 (ヘビ)
 毒蛇がいて、かなりの猛毒だから気をつけるそうです。
 自分の命を守るためには、『めんどくさい』と思ってはダメなようです。ゆっくりていねいに、いつも危機感をもって、もしかしたら、そこに毒をもった生き物がいるかもしれないと常に注意をはらいながら行動するのです。
 好きでないとやれない仕事です。

『第6章 夢は死ぬまでサバンナ 動物と共に生きる未来のために』
 たった100年間の間に、アフリカにいたライオンが20万頭から2万頭に減ってしまったそうです。
 たった100年間です。日本では90歳以上の人がけっこうたくさんいます。ネットで調べたら206万人もいます。100歳以上の人は、9万2000人ぐらいいます。ライオンよりはるかに多い数です。
 そう考えていたら、日本人という人種も少子化で、やがて、絶滅の危機を迎えそうです。

 人類の暮らし方が大きな変化を遂げる中で、これまでの地球環境のバランスがくずれてきていることは事実です。
 著者は、野生動物と人間の共存できる地域づくりをしましょうとメッセージを出しておられます。
 南アフリカにある著者が担当してサバンナ、『クルーガーエリア(国立公園)』は、四国ぐらいの広さがありますが、だんだん土地開発の手が入って来てトラブルがあるそうです。
 なんだか、日本でいうところの、熊の出没にも似ています。野生動物が食べ物を求めて家畜や果樹を狙います。
 
 お金もうけのために野生動物が殺されていくそうです。
 なかなかむずかしい課題に取り組まれています。
 特殊な仕事だと思いました。
 ベースは、野生動物たちへの愛情です。  

Posted by 熊太郎 at 06:54Comments(0)TrackBack(0)読書感想文