2023年01月13日

トラのじゅうたんになりたかったトラ

トラのじゅうたんになりたかったトラ ジェラルド・ローズ(香港生まれ、イギリス育ち)/文と絵 ふしみ・みさを/訳 岩波書店

 タイトルを見て?
 トラはトラではないのか。
 トラはトラであるからして、わざわざじゅうたんになる必要はなかろうに。

 『インドのジャングルにトラがおったそうな』から始まります。
 歳をとってやせこけて、骨川筋衛門(ほねかわすじえもん)になっていたそうな。
 だから、サルがバカにしてトラに木の実をぶつけていたそうな。(うーー そのトラは、わしらあのような高齢者のトラか)

 インドの宮殿(きゅうでん)にトラが行くそうな。
 インドの宮殿といえば、タージ・マハルじゃな。
 (調べたらタージ・マハルは、宮殿ではなく、お墓じゃった(霊廟れいびょう)。絵本の絵は、タージ・マハルの絵です。まっ、いいか)

 発想がおもしろい。

 孤独でいることがイヤなトラです。
 王さまの一族の中に入りたい。
 そして、ぜいたくが好きです。
 お気楽なじいさんトラですね。
 そのようにありたいとは思う。

 じゅうたんに化けているから、洗濯されるのはしかたがない。
 トラの洗濯がおもしろい。
 こどもさんは、ここのページで、大笑いするかもしれません。

 どろぼう三人組の登場です。
 物語の『起承転結(きしょうてんけつ)』の流れの『転』の部分です。
 
 番犬代わり(ばんけんがわり)の番トラです。
 トラが、じゅうたんではなく、本物のトラであることがばれました。
 (わたしは、トラが、城の警備員に鉄砲で撃ち殺されると予想しました)

 わたしの予想は、ハズレーー
 さて、どうなったでしょう?
 知りたい方は、この絵本を買って読んでください。

 トラじいさんは、王族にとって、命の恩人です。
 いいお話でした。今年読んで良かった一冊です。
 この絵本を、こんど自分のきょうだいの孫たちに会ったときの、プレゼントにする候補の一冊にしようと思いました。  

Posted by 熊太郎 at 07:17Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2023年01月06日

年末にちびっこたちに読んだ絵本

年末にちびっこたちに読んだ絵本

 2022年の年末の夜に、うちに泊まりに来たちびっこたちに、おふとんの上で本を読んであげるからどれがいいか、本箱から本を選んでごらんと声をかけました。(孫たちです)

『かわにくまがおっこちた リチャード・T・モリス著 レウィン・ファム絵 木坂涼訳 岩崎書店』
 上流から下流へとくまが流されていくのです。くまだけではなく、川の両岸で暮らす動物たちもいっしょに流されていきます。
 本読みを聴いているこどもたちの気持ちは絵に集中していて喜んでいるようすでした。

『こんとあき 林明子 福音館書店』
 昔からある名作です。1989年(平成元年)の作品です。
 神妙な中身(しんみょう。人間とぬいぐるみの不思議な心の交流)なので、こどもたちは、しんみりした雰囲気で聴いていました。
 「砂丘(さきゅう)」ってわかる? と聞いたら「わかる」という返事でしたが、ほんとにわかっているかどうかはわかりません。

『パパ、お月さまとって! エリック=カール作 もりひさし訳 偕成社』
 ダイナミックな絵と構図の絵本です。
 こどもたちはうれしそうでした。

『トラのじゅうたんになりたかったトラ ジェラルド・ローズ文・絵 ふしみみさを訳 岩波書店』
 インドのトラの話で、王さまとか宮殿が出てきます。どこまで内容を理解できているのかわかりませんが、おとなに本を読んでもらっているという雰囲気を楽しんでいるようすでした。聴いていた小さい子は目を閉じてうとうとと眠りにおちそうでした。

 絵本を読んだあとは、おふとんの上で「ポケモンしりとり」をしながら眠りにつきます。
 ちゃんとしりとりをするのではなくて、カンニングをしながらのインチキしりとりです。
 雑誌「幼稚園」のふろくにあった「ポケモンおふろポスター」に五十音順でキャラクターが描いてあります。そこにボールペンで、ポケモンのキャラクター名をいっぱい書き込んであります。その名前を読みながらしりとりをして、やがてみんなおふとんの中で眠ってしまいます。おやすみなさいです。  

Posted by 熊太郎 at 07:02Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2023年01月05日

硝子の塔の殺人 知念実希人

硝子の塔の殺人(がらすのとうのさつじん) 知念実希人(ちねん・みきと) 実業之日本社

 34ページまで読みました。
 登場人物がたくさんです。
 長野県北アルプス南部蝶ヶ岳中腹に建つ『硝子の塔(がらすのとう)』で殺人事件があるそうです。蝶ヶ岳は実在します。
 硝子の塔:11階建て、地下1階あり。円錐(えんすい。とがった角みたい)の形をしている。11階に展望室がある。以下、壱の部屋から拾の部屋までが、各フロアーに順番にある。拾の(じゅうの)部屋は、2階にある。
 午後10時に、硝子の館(ガラスのやかた)の館長が重大な発表をすると告知して、関係者が硝子の塔に招待されたという設定です。

 一条遊馬(いちじょう・ゆうま):硝子の塔の館長である神津島太郎の専属医師。いきなり、一条遊馬が犯人だという記述から始まります。刑事コロンボ方式です。犯人ありきから推理が始まるのでしょう。(読み続けていたら、82ページに刑事コロンボのことが出てきました。偶然です。びっくりしました)
一条遊馬は、身長175cm。20代後半の年齢です。一条は家族の介護をしているそうです。車いすの少女の存在あり。(あとで、妹が、ALS(筋萎縮性側索硬化症。きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)を患っていることが(わずらっていることが)わかりました)

 神津島太郎(こうづしま・たろう):硝子の館の館長。70代の年齢。一条遊馬に命を狙われた。(一条は神津の主治医であり、なんだか変な設定です)重度のミステリフリーク(ミステリーに熱狂している人)。
神津島太郎は、薬がらみの製品『トライデント』を発明した。薬剤を適切な場所、量、作用時間で届けるドラッグデリバリーシステムが『トライデント』。遺伝子治療に使う(むずかしくてわたしには理解できません)トライデントのことで潮田製薬と新薬差し止め訴訟となっている。ALS(筋萎縮性側索硬化症。きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)の患者の治療がからむ。神津島太郎の父親はガラス職人。

 碧月夜(あおい・つきよ):女性。二十代なかば。公称(世間で通用している)『名探偵』だそうです。身長170cmちょい越えぐらい。薄いブラウン英国風スリーピーススーツ。ネクタイの男装。胸ポケットにハンカチ。ヒールの無い靴。ショートカットでメッシュの髪、細くて高い鼻、薄いくちびる、化粧っけなし。たれた二重の目。シャーロックホームズとか名探偵コナンみたいです。資産家の娘だった。こどものころ、いじめにあっていた。父親がミステリマニアだったので、父親の本を読んでいた。両親は殺されている。

 九流間行進(くるま・こうしん):73歳。小説家。ミステリー作家。一級建築士だった42歳のときに小説新人賞を受賞した。本人の作品中の名探偵が、戸塚開(とつか・かい)。
 (建築士という前歴から、この物語の硝子の塔の建築になにか関わりをもっているのかもしれません)

 加々見剛(かがみ・つよし):長野県警捜査一課刑事。喫煙者。

 巴円香(ともえ・まどか):硝子館のメイド。20代後半、童顔(どうがん)。

 老田真三(おいた・しんぞう):硝子館長神津島太郎の執事(しつじ。家事監督職)

 酒泉大樹(さかいずみ・だいき):茶髪の若者

 左京公介(さきょう・こうすけ):「月刊超ミステリ」の編集長

 夢読水晶(ゆめよむ・すいしょう):自称霊能者。『霊能探偵事件ファイル』というテレビ番組に出演している。

 不思議な事件を次々と解決している女医(天医会総合病院勤務)がいる。

 シニカル:冷笑的、皮肉っぽい。相手を傷つける言動。
 トライデント:先がみっつに分かれた矛(ほこ)。
 ギムレット:ジンベースのカクテル。ライムジュースを入れる。

 雰囲気として、娯楽小説です。

 来月第四週の週末に集まりがある。
 
 ナチスは、医学の発展に貢献した。(戦争で使用する薬物開発)

 医療推理小説という分野の作品です。

 ALS(筋萎縮性側索硬化症。きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)は、現実に起きた医師による嘱託殺人事件を思い出します。

 潮田製薬が、ALSの遺伝子治療薬をつくった。
 神津島太郎(こうづしま・たろう)が、潮田製薬の国への申請にストップをかけた。
 特許侵害があるそうです。申請について、承認差し止め訴訟となっている。
 神津島太郎は、憎まれる対象になりました。
 神津島太郎は、自分の利益のことしか考えない人間です。他人への思いやりはありません。
 一条遊馬は、神津島太郎を殺害することにした。

 読んでいて、なんというか、薬剤を扱う仕事は怖い仕事だという印象をもちました。
 薬物依存とか、薬物の転売で金もうけをしようとする怖い人間が、恐喝めいて、薬剤師に薬物を要求しそうです。現実にありそうな話です。

 作者は読者に、密室完全殺人犯罪の完成経過を紹介しています。
 ただ、それは、仕掛けでしょうから、これから複雑なミステリー話に発展するのでしょう。
 (読んでいて)ほら、ほころびが出ました。

 すべてが芝居だとしたらどうだろう。(先日読んだ伊坂幸太郎作品『ペッパーズ・ゴースト』を思い出します。

 ダイイングメッセージが『Y』
 (読み手である自分は『トライデント』が関係あるだろうとピンとくる)

(つづく)

 94ページまで読みました。
 この本は殺人事件を『一日目』『二日目』『三日目』と区切って進行していきます。
 最初は、一日ごとにだれかが殺されて、それぞれが解決されていく方式だろうかと予想しましたが違っていました。話は続いていきます。

 殺人の動機が判明しました。それなりの正義があります。

 読んでいて思ったことです。
 どうして、エレベーターがないのだろう。
 いくら建築主がミステリー好きだといっても、11階建ての建物にエレベーターがないのは理解できません。(現実的な話ではない。そう思ったら読書を中止する人がいるかもしれません)建築主はお金持ちです。エレベーターを設置できないことはありません。

 現地は長野県のアルプス山奥であり、雪景色になりました。

 推理小説通(マニア)が読む本です。古今東西の推理作品の名作のことが書いてあります。ちょっとわたしには、理解できない部分が多い。

 以下部屋番ごとの各自の部屋です。なにか秘密とヒントがあるにちがいない。
 1:神津島太郎  2:加々見剛  3:酒泉大樹  4:一条遊馬  5:碧月夜  6:巴円香
 7:夢読水晶  8:九流間行進  9:左京公介  10:老田真三

(つづく)

 第二の殺人が発生しました。
 また、ダイイングメッセージがあります。
 
 洋画『ゴースト(死にきれない夫の霊が現存する)』のシーンが出てきたと思ったら、悪夢でした。だれかさんがみた夢です。

 推理を楽しむ推理小説です。
 殺人事件が起きたというのに、みなさんは、ふだんどおり、朝ごはんを食べることができます。
 人が殺されていて、殺された遺体が、みんながいる同じ建物の中にあって、犯人が、自分たちの中にいるだろうという状態の中にあっても、平然と日常生活が送れる人たちです。
 登場人物のひとりが言います。『魅力的な事件が起こったので、……テンションが上がってしまって……(嬉しそうです)』

 学者というのは偏屈者です。(へんくつもの。ひねくれている。自分以外の人の言うことを信じようとしない。一点集中視点の行動で、自己中心的。思考や言動に偏りあり(かたよりあり))。「学者」という職だから食べていけるということはありそうです。業績は残せても人望はないというパターンがあります。本書では、登場する学者は、遺産を相続する身内もいない。(亡くなることで、恩恵がある方面はある)ゆえに、学者の死を悲しむ関係者がいないのか。

 なんだか、犯人は明らかに見えるのに、次はどうなるのか。(そして、第二の殺人事件が起きました。犯人像はわかりません)

 消去法で犯人を特定していく。
 だれだったら、殺害が可能だったか。

 最初は毒殺、次いで刺殺。
 最初は『Y』の字、次いで『蝶ヶ岳神隠し』ダイイングメッセージの意味はわかりません。(あとでわかりますが、13年前に起きた連続殺人事件だそうです。犯人は冬樹大介。現在も行方不明。雪崩で死んでるかも)長野県出身、高卒後東京の工場で働くも会社が倒産。その後、ペンションの経営者となる。
 
(つづく)
 
 雪の中の孤島状態にある硝子の塔に出入りした人間がいないという情報を読者であるわたしは信用しません。
 寒いとはいえ、ふたりの遺体が傷まないのか(いたまないのか。不信感あり)(331ページに、遺体が腐らないための手法が出てきました。遺体の保管場所にしている部屋は窓を開けて、氷点下の室温を保っているとあります。話は脱線するのですが、昨年から今年にかけて、自分は、複数の親族の葬儀等で複数の葬儀社を利用しているのですが、遺体の保存期間は、ドライアイスだと二泊三日か三泊四日ぐらいで、それ以上になると、遺体に処置をして、長期間もたせる。たしかそこの会社は「エバーキープ」という処置で、税込み15万円ぐらいでした)
 
 電話は通じない。スマホも通じない。
 車はパンクしている。(修理はできないのか)
 アテンザ:マツダの車種。
 
 フラグ:危険を避けるために自分の部屋にこもると言った人間が殺される。(これからが予想できる演出)

 ひとりめの殺人の犯人はわかるけれど、ふたりめの殺人の犯人はわからない。

 なぜ、20センチもあるような大きなネズミが酷寒の地にいるのか。

 『俺は刑事』(職業肩書きは、信用を判断する目安にはならない)

 ふたりが殺されて、犯人はふたり以上いるはずで、されど、ひとりの犯人がお互いに、ふたりともの犯人をひとりがやったことにするという設定が推理小説らしい。
 
 閂:かんぬき。
 エキセントリック:普通ではない。奇妙。
 扼殺(やくさつ):道具を使わずに手や腕を使って絞め殺す。絞殺(こうさつ)はひもやロープなどの道具を使用して絞め殺す。(今、同時進行で読んでいる本が『完全自殺マニュアル 鶴見済(つるみ・わたる)太田出版で、死に方の内容記述がかぶりました)
 
 殺された推理小説好きの硝子館の館長神津島(こうずしま)が発表したかったことがある。

 191ページで、テレビ番組『相棒』が目に浮かびました。杉下右京刑事の相棒です。(その後、192ページで「相棒」という言葉が出てきました。びっくりしました。読書の楽しみがあります)本書にもありますが、名探偵には相棒が必要なのです。
 
 納得する言葉の趣旨として『警察の捜査というものは基本的に……人海戦術なんだ(じんかいせんじゅつ。おおぜいの人間でやる。人が海の波のようになって押し寄せる)』
 
 モルグ街の殺人:史上初の推理小説。1841年発表。作者エドガー・アラン・ポー。

 3人目の犠牲者が出ました。
 登場人物10人中、3人が殺害されました。
 だれかを殺した人間が殺されているかもしれません。
 
 冬樹大介:蝶ヶ岳殺人事件の犯人。雪崩(なだれ)で遺体は見つからず(どうして見つからないのだろう。雪崩の雪は夏には溶ける)
 偽物らしきペンション経営者の冬樹大介は、年齢不詳で、ふちの太いメガネをかけていた。
 生き残っている7人のうちのだれかが冬樹大介で、だれかに変装、変身している可能性あり。性別は関係ないと読んでいる自分は思う。

 蝶ヶ岳殺人事件の被害者摩周真珠(ましゅう・しんじゅ)OLが行方不明。(生き残りの7人のうちにいるかもしれない。それとも犠牲者の中にいたのか)

 253ページから『三日目』がスタートです。
 エラリー・クイーンの「エジプト十字架の秘密」
 バーナビー・ロスの「Yの悲劇」
 1932年出版(昭和7年)ふたつの作品の著者の秘密が紹介されています。

 ホワイトブリム:メイドの頭飾り。
 スケープゴート:身代わり。いけにえ。
 
 中村青司(なかむら・せいじ):推理小説の中の登場人物。1939年5月5日生まれ(昭和14年)建築家。奇妙な館を複数建築する。そこで連続殺人が起こる。
 島田潔(しまだ・きよし):推理小説の主人公。
 
 遺体がごろごろ。
 人体実験。

 動機は『復讐』。テレビ番組『相棒』で、よくある動機です。

 殺人犯人の視点で物語が進行していくという珍しい形式に見えます。

 名探偵碧月夜の心の中で葛藤(かっとう。争い。迷い。不安。消化不能な思い)があります。
 
 天啓(てんけい):天からの啓示。神さまのお告げ。
 スタンガン:防犯グッズ。電撃銃。
 
 338ページの人の小さな絵のページは絵本のようです。

 343ページ『最終日』
 名探偵碧月夜の事件解決説明が始まりました。謎解き開始です。
 まだあと60ページぐらいはあります。
 349ページ。読みながら思う。人間はこんなふうにはしゃべらない。言葉が長い。
 
 『灰』か。なるほど。鋭い。

 密室へのこだわりがあります。

 368ページあたりからトリック(だますしかけ)が判明していきます。
 ほーっとうなります。なるほど。
 手品のようです。
 シンプル・イズ・ベスト(単純素朴(そぼく)が一番)
 381ページにサッカー・ワールドカップで話題になった言葉が出てきたのでびっくりしました。『ブラボーー』

 ブリム:帽子のひさし部分。

 読みながらふと思いついたのです。『硝子の塔』自体が殺人のための凶器なのではないか。硝子の塔の構造です。円錐形(えんすいけい)をしています。
 386ページ、そういうことか。
 おそろしい。人間殺人の実験場です。
 
 知っているから殺した。動機は復讐です。(ふくしゅう:しかえし。報復。かたきうち)

 ピンときた自分の推理があります。変な発想が脳内に浮かんできました。(しかし、もしかして、加害者だと断定をした人間が探偵やその周囲の人間とグルだとしたら、この小説は読者をまんまとだますことができる)あと残り100ページぐらい。さて、どうなる。(違っていました)

 なんとなく、真実の気配の雰囲気が伝わってきた403ページ付近です。(すごいなあ)
 
 モリアーティ:教授。アーサー・コナン・ドイルの推理小説「シャーロックホームズシリーズ」に登場する人物。悪役。

 作者はこのままでは終わらないつもりです。最後のページまでまだあと90ページも残っています。
 『なにか重要なことを見落としている』
 いいなあと思った文節です。『つぶやくことで思考をまとめつつ……』

 434ページ以降、種明かしの部分は自分が予想した内容になるだろう。(基本部分はあっていましたが、さらに展開がありました)

 メタミステリイ:高次の視点に立った見方をするミステリー(推理小説)
 小説の中の人間、先日読んだ伊坂幸太郎作品『ペッパーズ・ゴースト 朝日新聞出版』を思い出しました。小説の中に小説があって、その小説の中の登場人物が小説から現実社会に出てきます。
 こちらの硝子の塔の殺人では、小説の中に小説が存在するようにした殺人事件ミステリーが入っています。
 プロット:企画。企て。企画書。

 そういうことか。自分の予想の下地はあっていましたが、作品はその上をいっています。
 仕組まれている。
 弄ばれる:もてあそばれる。
 犯人になる動機をもつ人間を犯人とする。
 筋書はある人物の登場で筋書き通りにいかなくなる。怪物(モンスター)の登場です。
 先日読み終えた本の内容を思い出しました。『完全自殺マニュアル 鶴見済(つるみ・わたる) 太田出版』自殺するためのテキストですが、殺しの犯行でも使えてしまう。その本に書いてあったことがこちらの本にも書いてあります。
 人間は、やろうと思えば、何だってできるということか。
 おもしろかった。
 種明かしの内容は、ここには書けません。本を買って読んでください。
 こちらの本に書いてあったこととして、綾辻行人(あやつじゆきと):小説家。推理作家。「十角館の殺人(じゅっかくかんのさつじん)」
 477ページ、うむ。そういうことってあるだろうな。うむ。なんでもありだ。
 おもしろい。
 ライヘンバッハの滝:スイスにある落差250mの滝。コナンドイル作品でシャーロックホームズと宿敵悪役モリアーティ教授が落下した。
 膂力(りょりょく):腕力。
 終わりました。
 やっぱり自殺はしちゃだめです。  

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2023年01月04日

100年たったら 文・石井睦美 絵・あべ弘士

100年たったら 文・石井睦美 絵・あべ弘士 アリス館

 絵を描かれたあべ弘士さんの作品に『あらしのよるにシリーズ』があります。自分はその作品のファンです。オオカミとヤギが親友、カップルになるのです。そんなことはありえないと思うと拒否反応を起こすのですが、わたしはいい話だと受け取ってしまうほうの人間です。お互いが生き残るために『共存』は大事です。

 こちらの絵本は、非常に評判がいいので取り寄せました。
 ライオンがアフリカの草原にぽつんとひとりです。つまりは、ひとりぼっちで、孤独なのです。
 世界でたった一頭のライオンになってしまったようです。

 ヨナキウグイスという鳥がライオンと出会います。ふつうならライオンに食べられてしまいます。
 むしろ、食べなさいよと鳥はライオンに言います。
 ライオンは鳥を食べません。
 ライオンは一時(いちじ)の空腹を満たすことよりも、自分の話し相手としての鳥の存在を認めます。(孤独からの脱却が目的です)
 カップル成立です。ライオンは、さみしくなくなりました。

 でも、鳥の寿命がきます。
 ライオンは悲しみます。
 鳥は、だらしがないやつだなとライオンをなぐさめます。励ましたりもしてくれます。

 鳥の言葉として、鍵を握る言葉が、100年たったらまた会えるよというものです。

 鳥は息絶えます。

 (あまり書きすぎるといけないので……)

 100年がたち、また100年がたち……
 
 空想のような寓話(ぐうわ。動物にあてはめた、たとえ話)が続きます。複雑です。
 読んでいいて、日本古来の風習、慣例、ものの感じ方としての『八百万の神(やおよろずのかみ)』を思い出しました。自然界にある草木、生き物のすべてに神さまが宿っているのです。

 そして、何百年もたって、ふたりは出会うのです。人間として。

 感動的なラストです。出会いにラブ(愛)があります。
 (このあとふたりはどうなるのだろう)
 作品『100万回生きたねこ 佐野洋子 講談社』を思い出しました。同じ系統の絵本だと思います。ようやく愛する人にたどりついたのです。

 絵本を読み終えて、先日観た邦画『ぼけますから、よろしくお願いします。』を思い出しました。老いた夫婦のいい映画でした。  

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2023年01月02日

人生計画の立て方 本多静六

人生計画の立て方 本多静六(ほんだ・せいろく) 実業之日本社

 本多静六:1866年(江戸時代。明治維新が1868年)-1952年(昭和27年)。85歳没。林学者。造園家。株式投資家。「公園の父」。投資で得た巨万の富を匿名で教育機関、公共機関に寄附した。

 自分がまだ二十代のころ、職場の先輩から、10年先の自分はどうあるべきかを考えて、プランをつくって目標に向かっていくというようなことを教えられました。
 先輩はその後病気になって、職場に顔を見せなくなりました。
 計画を立てても思うようにはならないのです。
 自分もその後、体を壊したりもしました。まずは健康第一です。スタイルがかっこよく、イケメンや美女で、背が高くてスタイルがいいということよりも、健康な体であることのほうが大事なのです。

 そんなことを思い出してのこの本の読書の始まりです。

(1回目の本読み)
 ざーっと最後までゆっくりページをめくってみました。
 1952年(昭和27年)に発行された本を2005年(平成17年)に出版しています。本は昭和26年に書かれています。(昭和20年(1945年終戦の年)にできあがっていた原稿に手を加えて、著者が亡くなる昭和27年の前年に書籍化されています)
 ページをめくっていて目に留まった部分です。
 『文芸家を志す人々には、とくに直覚力、識別力、記憶力等にすぐれ、綿密なる観察力……』と続き、好きだからではできない。簡単なものではないと書いてあります。できないのに、取り組んで、一生をむだにしないようにと忠告があります。
 
 先日ニュースで、宮崎駿監督(みやざきはやおかんとく)の映画が来夏に公開されると聞きました。タイトル『君たちはどう生きるか』は、吉野源三郎氏の本にあり、自分は読んだことがあります。1938年(昭和13年)の本です。公開される映画は、タイトルだけ同じで、内容は異なるようです。雰囲気として、今から読むこの本と似ているなと感じました。

『計画結婚・計画産児』
 計画結婚はしませんでしたが、計画産児はしました。計画出産です。共働きの子育てだったので、4月にこどもが保育園に入れるように、1月か2月で出産になるようにしました。だから、うちの子たちは2月生まればかりです。

『本多式貯金法のすすめ』
 たいへんな資産家の方です。学びたい。

『結婚はどうしたらいいのか 恋愛の導き方』
 最初はひとめぼれで、見た目で入る人が多いのでしょう。
 見た目と中身は違うので、だんだん中身で考えるようになるのでしょう。
 縁(えん)がないとなかなかくっつけません。
 最近は、婚活アプリでマッチする相手を探す人が増えているようです。
 昔は、学校の同窓生とか、職場結婚が多かった。見合い結婚も多かった。恋愛感情よりも経済的に生活していけるかいけないかが優先だったような気がします。昭和20年代後半に出たこの本にはなんと書いてあるのだろう。男尊女卑の時代です。(だんそんじょひ。女性は家政婦、道具のような扱い)女性が選挙で投票できるようになったころです。(昭和21年女性参政権実施)

『若い未亡人について』
 夫が第二次世界大戦で亡くなった女性のことだろうか。何が書いてあるのだろう。2回目の本読みの楽しみです。

 この本全体は、だれに向けて書いてあるのだろうか。
 読者の対象者はまだわかりません。(読後:青少年に向けて書いてありました。ただし、男子に向けて書いてあります。女子に向けてではありません。そういう男尊女卑の時代の人です)
 何十年もたって、ご自身の死後読まれているとは想定されていなかったのではないか。

『遺言状を常備せよ』
 そうか。実はわたしも今年、公正証書遺言の手続きをするつもりでいます。うむ。自分の考えは、間違っていないなとこの部分を見て安心しました。

(2回目の本読み)
 最初に白黒写真を背景にした人生訓のような短文が掲載されています。
 説得力があります。読みながら同意する内容です。
 『世の中には、濡れ手で粟を摑む(つかむ)ような旨い(うまい)ことがそうザラにあるわけのものではない……』
 『蓄財を通して、われわれは色々の蓄財法を学ぶ。力の蓄財、知識体験の蓄財……』
 『……学校で学び得るぐらいは知れたもの 職業の精進によって初めて本当の人格は磨かれ……』

 ご本人の経歴です。慶応2年生まれ。(1866年)11歳で父を失う。19の春、東京山林学校入学後、試験に落第し古井戸への投身自殺を図るも死にきれず。(死ななくて良かった。生きていたからこそ大金持ちになれました)
 その後努力して成績優秀者となる。
 決めた人生計画として、40歳までは『勤倹貯蓄』、60歳までは『専心究学』、70歳までは『お礼奉公』、70歳からは『晴耕雨読の楽居』とあります。晴耕雨読:いなかで心おだやかに暮らす。悠々自適(ゆうゆうじてき)。晴れた日は畑を耕し(たがやし)、雨の日は家で本を読む。

 (読んでいて、いろいろと、なかなか力強い)

 『希望をもつ』(どこまでも明るい希望をもつとあります。楽観的になる。めげない。くさらない)心を快活に保つ。人は気持ちの持ち方ひとつで陽気にも陰気にもなるとあります。
 
 人生計画といっても、本を読んでいる年金生活者の自分の場合は、もう最後のほうまできてしまいました。
 本の目次でいえば『楽老期をどう過ごすか』です。なんだか、楽しくなれそうな項目です。

 計画について:仕事なら、ずいぶん先のことまでプランが組まれています。ゆきあたりばったりではありません。プランを立てて行うことの根拠が仕事にはあります。

 『向上心が必要』
 『満40歳までの十五年間は、馬鹿と笑われようが、ケチと罵られ(ののしられ)ようが(がんばると続きます)』

 まずは生きていなければなりません。健康第一です。
 
 江戸時代から明治時代へと、社会が大きく変化する時期に人生を送られた方です。
 第二次世界大戦も体験されておられます。
 日本人は、たいしたものだと感心します。

 目標を立てる。
 『続ける』ことが大事です。
 そして、筆者は前向きです。

 個々の事情として『…… 生まれつきの貧富、境遇並びに時流の変化に伴って……』こども時代が貧しかったからといって、一生貧しいと決まったわけではないのです。

 アブハチ取らず:ふたつのものを同時にとろうとして、どちらもとれない。よくばらないといういましめ。

 筆者は好奇心が強い人です。関心をもつことが多く、調べることが好きです。「めんどうくさい」とは言わない人です。

 お金の話があります。
 収入の4分の1と臨時収入は貯える(たくわえる)。
 師弟関係を大事にする。師匠への恩は忘れない。
 お金は貸さない。お金はくれてやるもの。
 
 学校では、職業的な、なんらの素地は養われない。
 義務教育だけで、働くのもよし。15歳から20歳に覚えた職業は確かなものとなる。

(つづく)

 『できるだけ自分自身で考え、判断し、取捨し、適用もしくは適応して生かし……』(同感です。働いていた時、質問ばかりされて、イヤになることがありました。自分の頭で考えて、判断して、決断して、実行して、反省してほしい。うまくいかなかったからと言って、あのときあなたがこう言ったからこんなことになったと、質問に答えた相手のせいにしないでほしい。責任転嫁(せきにんてんか。人のせいにする)のずるい手法をとる人がいます。試行錯誤も自活・自立もせず、他者に依存する生き方をする人がいます。

 著者はまじめな人です。
 楽しみながら目標を達成していく。食べすぎ、飲み過ぎ、ぜいたくしすぎに注意するとあります。
 近道、裏道を選んではいけない。(正直であること)
 
 項目『職業はどう選ぶか』のところに、『政治家は職業ではない』とあります。
 『政治家』は、『奉仕(ほうし。利害を離れて、国や社会のために尽くす)』であるとして、政治家は、政治家という職業で生計を立ててはいけない。ほかに本職をもちなさいとあります。
 他の職業で成功した人が政治家をやりなさい。経済的に後ろ盾がある人が政治家をやりなさい。そのように書いてあります。(利権(りけん。利益をともなう権利)をつかんでお金もうけをしたがる政治家にこの本を読んでもらいたい)
 公職は、無報酬でやりなさいが著者の考えのようです。

 古い言葉がいくつかあります。
 日華事変(にっかじへん):日中戦争。1937年(昭和12年)~1945年(昭和20年)。大日本帝国VS中華民国。
 耄碌(もうろく):歳をとって、頭の働きや心身の状態が悪くなること。
 隠居(いんきょ):老夫婦は、他の家族とは別居すること。
 老耄(ろうもう):歳をとってぼけること。
 規矩準縄(きくじゅんじょう):規則、法則、手本。
 叫喚怒号(きょうかんどごう):大声をあげて怒鳴る(どなる)

 現代の感覚では違和感がある表現もあります。
 『時至れば良妻を迎えて家庭生活に入ること』(良妻という言葉でもめそうです。良妻とは、男にとって都合のいい女性をさすとわたしは思います。反対語が「悪妻(あくさい)」なのでしょう)
 
 不幸や災厄、失敗した時のために、保険に加入したり、貯蓄したりしておきなさいという教えがあります。こちらの助言には従いたい。

 仕事に関しては、なかなか、なりたいものにはなれないし、つきたい仕事にはつけないというようなことから始まって、たいがいのことは、努力をし続けていれば、ある程度の熟練ができるので、うまくいくようになると思うというようなことが書いてあります。(お金を得るためと割り切ればいいのです)
 
 以前渋沢栄一氏の『現代語訳 論語と算盤 渋沢栄一 守屋淳・訳 ちくま新書』を読んだことがあります。その本と似通ったような(にかよったような)この本の文章構成です。講演会の原稿、あるいは、台本、脚本のようでもあります。
 このあとNHK大河ドラマの主人公だった渋沢栄一氏のお話が出てきました。著者と同じ時代を生きた人です。(渋沢栄一:1840年(天保11年)-1931年(昭和6年)91歳没 1868年が明治元年)
 
 25歳で20歳の妻を娶る(めとる。妻を迎える)→こどもを3人から6人つくる→こどもたちを大学まで出す(子育てと嫁入り費用がかかるので用意する)→なんだかんだとあり『辛抱(しんぼう)はお金を貯める基本』というようなお話があります。
 (そういえば、先日の夕方、スーパーを出たところで、不動産屋の営業をしているという若い女性に声をかけられて、アンケートのような質問に答えました。「どうして家を買ったのですか?」と質問されて絶句して、言葉がすぐに見つかりませんでした。どうしてと言われても困るのです。学んで、就職して、結婚して、こどもをつくって育てて、いつかはマイホームという夢をもって、そのようにすることが一般的な人生の過ごし方だと思い込んでやってきたから、理由と言われても答えようがないというように返事をしたらびっくりされました。ほかに理由があるのだろうか。たとえば、資産として保有するためとかが考えられますが、自分が住む家ですから、売ったらホームレスになってしまいます。自分が住む家は、資産のようで資産ではない感覚です)

 お金が貯まらないパターンが書いてあります。
 アルコールとタバコはだめです。お金も健康もそこなうとあります。
 
 利子でお金を増やすとあります。
 
 著者が就職した時は1ドル=2円だった。今は、1ドル=360円とあります。覚えています。わたしが中学生のころは、1ドル=360円の固定相場制でした。1973年(昭和48年)から変動相場制です。自分が新婚旅行でグァム島へ行ったときには、1ドル=178円ぐらいだった記憶です。旅行社の人と、ずいぶん円高になりましたねぇと話した記憶が残っています。

 『結婚はどうしたらよいか』という項目があります。
 おもしろいのは、時代感覚の違いで、男女は7歳を過ぎたら、学校では、別々の教室にして、遊戯場も便所も休息場所も男女別にしたほうがいいと書いてあります。
 自由恋愛は失敗に終わるとまで断定されています。
 配偶者選択の基準もすごい。『血統が純潔であること』『(女子が)必ず高等教育を受けた者であること』『容貌の美しいものであること』『財産のあること』『性質順良温和であること(従順な女性)』炎上しそうです。こわい。

 結婚観がおもしろい。『結婚の幸福感はそれほどながくつづくもではない……』(現実的で合っています)

 媒酌人(ばいしゃくにん。仲人(なこうど))の話が出ます。確かに、自分たちの時代には、結婚式の時に両側に仲人さんが座っていました。結婚式では、必要なポジションの人でした。今どきは聞かなくなりました。それだけ、昔は手配や段取りがたいへんでした。今の時代の人たちは楽ができていい環境にあります。

 結婚前の注意事項も不思議です。
 ほかの男女関係をきっぱり断ち切ってあるか確認すること。
 花柳病(はなやぎびょう。性病)にかかっていないか確認してかかっていたら治療しておくこと。
 (昔は、そういう人が多かったらしい。そんなことが書いてあります)
 
 なかなかおもしろい。人間は、いかようにも生きていけるという発想が自分に生まれました。

 『人生の不幸として起こりうる再婚の問題……』(そうか。再婚は不幸なのか。自分には、理解できません)
 男子の再婚は勧める。老女ではなく、若い方がいい。(そのあと、連れ子とか、異母弟妹(いぼていまい)、相続のこと、今の時代だったら怒られそうなことがたくさん書いてあります。

 人生の成功者の助言です。助言に従うか否かは、自分の意思で判断して決めます。
 この本は、自分のために人間を管理する本、人生をコントロールする本です。
 ご本人の人生を肯定する本です。わたしのようにやりなさい。(そうするかどうかは読者自身で考えます)
 
 『尉と姥(じょうとうば)』人間最後の幸せな生活を示す。年寄り夫婦が掃除をするようす。

 貧乏、失敗、苦悩、悲哀は、貴重な体験で、乗り越えることで、いい人生を送ることができるというような表現があります。

 昔の相続の方法が独特です。今だったらもめそうです。財産は後継ぎ(長男)が全部もっていくのです。その当時はあたりまえだったのでしょう。(この本は、昭和20年当時の原稿です(1945年))

(読み終えました)
 参考になるかどうかわかりませんが、自分は自分なりに10年ごとにテーマを決めてこれまでやってきて老齢を迎えました。

三十代のテーマが『迷い』
 いろいろやってみる。試行錯誤を繰り返して、体験を積んで、その後の人生に生かす。(かなり悩みます)

四十代のテーマが『頑固(がんこ)』
 三十代で体験したことを下地にして、最善の方法で物事に取り組む。ひとつの手法を決めて貫く。(敵が半分、味方が半分、それでよしという気持ちでやりましたが、10年経ったら、まわりは敵だらけでした)

五十代のテーマが『謝罪』
 四十代を頑固に過ごした結果、たくさんの人たちに迷惑をかけたと気づきまた。
 素直に反省して、人に優しくなることにしました。

六十代のテーマが『転換』
 これはこうでないといけないという考えをやめる。良かれと思ってやって嫌がられることが多かったので、基本的には何も働きかけない。頼まれたら手助けする。
 相手の勧めに従う。鍵を握る言葉は『おまかせします』
 (ただ、なかなかむずかしいです)

予定ですが、七十代のテーマが『行動あるいは活動』
 人生最後の力ふりしぼりで、燃え尽きる前を過ごしたい。

生きていられたら、八十代のテーマが『無限』です。
 子孫と後世につなげたいことを遺したい。(のこしたい)

 2023年の方針を決めました。『がんばりすぎない』です。さてどうなりますか。

(追加記載 2024年2月8日木曜日)
 70代が近づいてからの自分のテーマを決めました。
 『あきらめる、そして、忘れる』です。
 あきらめればいいのです。あきらめても、物事はなるようになります。なるようになった状態で、ものごとは進んでいきます。いき止まりになるということはありません。それが、自分にとって悪い状態になったとしてもしかたがありません。
 そして、忘れるのです。過去を変えることはできません。前(自分にきっと明るいと言い聞かせる未来)を見るほうが、気持ちが楽になれます。  

Posted by 熊太郎 at 07:33Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2022年12月23日

風が吹くとき レイモンド・ブリッグズ・さく

風が吹くとき レイモンド・ブリッグズ・さく さくまゆみこ・やく あすなろ書房

 先日読んだこども向け絵本作品『さむがりやのサンタ』の作者です。
 こども向けの原子爆弾とか核兵器使用の反対を訴える作品かと思ったら、こどもさんには無理な話の運びです。おとな向けです。とにかく、長い。マンガのコマ割り形式なのですが、とにかく長い。

 登場人物は、イギリス国に住む夫婦で、夫がジム、妻がヒルダです。年配のご夫婦です。
 ロンドンの街から離れた農村地帯で暮らしています。(定年退職後に引っ越したいなかです)
 以前、ロシアのミサイルを迎撃するためのウクライナの迎撃ミサイルが誤ってポーランドに堕ちて(おちて)犠牲者が出た場所のような、いなか風景を思い出すような絵です。

 SILENCE:サイレンス。沈黙。最初のページに注意喚起の表示があります。図書館です。新聞紙が広げて置いてあって、図書館の利用者が読むようになっています。「お静かに」でしょう。

 日本での発行は、1998年(平成10年)の本で、けっこう有名な作品のようです。
 イギリスでの初版は、1982年(昭和57年)です。
 
 国家という組織の末端で暮らしている人間の生活とか気持ちを表現した作品です。
 組織の上層部にいる人間は、末端にいる人間の気持ちはわかっていません。
 上層部にいる人間は、命令や指示をすれば、末端にいる人間は自動的に自分たちの指令に従うと勘違いしているときがあります。庶民にはできることとできないことがあります。

 『予防戦争』があるかもしれない。
 戦争をしないための戦争?

 核戦争の死の灰を避けるために、3日以内に各自が家の中に室内シェルターをつくりなさいとの指示がでたそうです。
 図書館でもらった『自宅でのサバイバル・ガイド』を参考にして準備をします。
 室内核シェルターは(屋根の部分を)60度の角度でつくる。分度器を買いにいかねばならないという話になります。

 息子の名前がロンで、現在は、ロンドンに住んでいるらしい。
 カブスカウト:ボーイスカウトのうち8歳から11歳まで。ボーイスカウト:国際的な少年のための教育団体。ロンが所属していた。

 ページをめくっていくと、たまに、原子爆弾の不気味な絵や戦闘機・爆撃機らしい飛行機の影が2枚開きの絵として出てきます。
 恐ろし気(おそろしげ)な絵です。
 
 『長距離ミサイル』とか『コンピューター管理』という単語が出てきます。
 なにやら、リアルに重なる今のウクライナでの戦闘です。1982年(昭和57年。東西冷戦が終結した1990年前後の前)にできた本なのに、2022年のロシアの核の脅威を予想しています。
 第二次世界大戦中のイギリスの事情が年配夫婦の言葉で思い出ばなしとして語られます。『防空シェルター』『灯火管制』『警報解除』など。

 核爆弾が落ちるかもしれないというのに、定年退職をして田舎に引っ越してのんびり暮らしているジムとヒルダの年配夫婦はのんびりしています。
 世間話を楽しみながら、パンや分度器を買いに行くだんなさんのジムです。
 みんなが買い占めをしているのでパンがありません。(この部分もリアルです(現実に起きた)。コロナ禍(か)が始まったころのマスクとか体温計、トイレットペーパー不足を思い出しました)
 
 原子爆弾投下の話ですから、広島の話が出ます。以降、何度か広島のことが話題として登場します。白い服や布は、放射能をさえぎるという迷信があります。
 (絵本に描いてあることとして「広島のときは、太陽1000個分の熱さだった」)
 最近のテレビ報道で、日本の総理大臣が、核廃絶をアピールしながら、同時に、戦費の増額をするというメッセージを出していることが理解できません。相反することです。あれもこれも立ててその場しのぎをする手法です。戦力を増強すると、外国は日本の軍事力に脅威を感じて警戒して、戦争が起きる危険度が高くなります。相手のある話です。軍備増強の流れは止められそうにありません。この絵本のように覚悟をしておいたほうがいいのかもしれない。そのときの対応を考えておいたほうがいい。絶対に戦争は起きないと思い込まないほうがいい。

 ジムとヒルダの老夫婦はのんびりしています。(まさか、自分たちが核兵器の被害者になるとは思っていないようすです)老齢者夫婦の毎日の生活です。のんびりしています。庶民の暮らしがあります。

 1982年(昭和57年)に作者が立てた未来予知が半分当たっています。『ロシアが中央ヨーロッパに先制攻撃をしかける……』そして、アメリカ空軍が(防衛のために)押し寄せてくる。(2022年の現実では、米軍空軍はウクライナに来てくれませんでした)
 ロシアは降参して、共産主義国家はなくなる。自由で公正な選挙が行われる。(ジムの未来予想です。今回の本当の戦争については、どうなるのか。わたしにはわかりません)

 絵がきれいです。
 ただ、お話はかなりくどいです。
 読むのがちょっとつらかったりもします。

 核ミサイルが発射されました。ミサイルが向かって来ます。
 されど奥さんのヒルダが『洗濯物をとりこまないと……』
 そんなものなのです。庶民の暮らしは。

 まっしろのページが登場しました。
 ピカ・ドーンです。
 一瞬でなにもかもがなくなる(2022年の今、ロシア大統領は脅しを(おどしを)かけています)。
 この世の終わりだと思ったら、ジムの声が聞こえました。『なんてこった!』
 
 老夫婦は、手づくり室内シェルター内で生き残っています。
 ふたりが家の中に隠れたまま日にちがたっていきます。
 『核爆弾なんて、毎日落ちてくるわけじゃないんだから』
 水道は出ないし、水もきていません。電気もストップです。(ウクライナみたいです)
 テレビも映りません。情報がありません。電話もつながりません。老夫婦は、息子の心配をしています。

 戦争が終わったのかどうかもわかりません。
 アスピリン:解熱鎮痛剤(げねつちんつうざい)。痛み止め。この絵本では頭痛の薬。
 放射能の後遺症の話が出ます。
 ロシアによって原子爆弾がロンドンに投下されたという設定です。
 イギリスはロシアに負けたような書き方です。
 老夫婦は、ロシア兵が来たらどう対応するかということについて話し合っています。
 ロシア兵と対立はしないことを心がけるそうです。
 第二次世界大戦中のドイツナチスによるユダヤ人虐待の話が出ます。
 なんとか、ロシア兵を受け入れようと気持ちを整理する老夫婦です。(生きるために)
 
 放射能を浴びた症状が、ふたりに出始めます。
 細胞が溶けて(とけて)いくような症状です。
 出血があります。だんだん人間であるふたりの姿が消えかかっていきます。
 助けが来ません。
 ふたりは歌を歌って励まし合います。
 神さまに祈るふたりですが、そこで絵本は終わります。
 先には『死』しかないのです。

 戦争反対です。
 されど、攻め込まれたら立ち向かう。
 やはり人間は、この地球においては地球を壊して滅ぼす『悪の存在』でしかないのか。
 『風を吹かせてはならない』風を吹かせた者には、大きな制裁を与えなければならない。
 絵本の表紙の老夫婦の表情が複雑です。嬉しそうで悲しそうな顔をしておられます。
 世界的なベストセラーになった絵本だそうです。知りませんでした。

(追記 絵本を読んで、数週間後にふと思ったこと)
 この絵本では、ロシアが攻め込んできたら、アメリカ合衆国の空軍が波のように押し寄せて来てくれて、自国を守ってくれると予言しています。
 だけど、今年ロシアに攻め込まれたウクライナには、アメリカ合衆国の空軍は来てくれません。
 日本もウクライナと同じ対応になるのではなかろうか。
 日本が攻め込まれて戦争になったとき、もしかしたら、アメリカ合衆国の軍隊は動いてくれないのではないか。約束は、見た目だけのもろい信頼関係のうえに立っているのかもしれない。ウクライナのように、武器供与と金銭援助だけかもしれない。心中は複雑です。アメリカ合衆国はアメリカ合衆国のために働くのです。  

Posted by 熊太郎 at 08:05Comments(0)TrackBack(0)読書感想文