2024年10月27日

赤と青のガウン 彬子女王(あきこじょうおう)

赤と青のガウン オックスフォード留学記 彬子女王(あきこじょうおう) PHP文庫
(月刊誌『Voice』でのエッセイ掲載期間は、2012年(平成24年)4月号~2014年(平成26年)5月号まで。タイトルは、『オックスフォード留学記-中世の街に学んで』だった。単行本は、2015年(平成27年)に発行されています。2024年(令和6年)の文庫化にあたって、加筆後再編集されています)

 テレビ番組、『徹子の部屋』にゲストとして出られて、本を出していると聞いたので、取り寄せて読んでみました。
 皇族の方が書いた本です。
 
 彬子女王(あきこじょうおう):1981年(昭和56年)生まれ。学習院大学卒業後、英国オックスフォード大学マートン・コレッジに留学。大正天皇のひ孫。父親は、寛仁親王(ひろひとしんのう。2012年(平成24年)66歳没。大正天皇の孫。愛称『ヒゲの殿下(ひげのでんか)』)。
 最初の留学が、20歳の時、2001年(平成13年)9月から1年間留学した。2回目が、学習院大学卒業後の2004年(平成16年)からオックスフォード大学の大学院に入学して、2010年(平成22年)1月に博士課程を修了した。

 ざっと目を通して、たくさんの文章を書く方だとお見受けしました。(63ページに、オックスフォード大学で、たくさんのエッセイ(小論文)を書いたと記事があります)
 タイトルにある、『赤と青のガウン』は、入学するとまず黒一色のガウンを着る。博士号を授与されると赤と青のガウンを着るそうです。学位(がくい。学びを修めた(おさめた)者に対する称号)によってガウンの色が違う。

 皇族の一員として、『自由』が制限された立場でお生まれになった方です。
 『役割』を果たすために、『自由』が制限されているのです。
 ちょっと、『役割』について書いてみます。わたしは、人はだれしも、人間社会において、なにがしかの役割を与えられて、この世に生まれてくると思っています。
 先日、高齢となった親族のお見舞いに九州福岡県まで行って来たのですが、『(人の)役割』について考えさせられました。
 初回は、7月に病院に入院した時にお見舞いに行ったのですが、そのときは、意識がはっきりしていて、きちんと受け答えができていました。
 その後、病院から施設に移って、9月に施設へ面会に行ったのですが、なにかしら変なのです。喜怒哀楽の表情が薄くなって、意識がぼんやりとしていました。人の固有名詞である名前が、口から出てきませんでした。
 同行の妻が、『役割』がなくなったからだと解説してくれました。不自由な体であっても、衣食住の毎日の生活を自分の力で送っていれば、自分の『役割』がある。
 人間は自分に、社会的な『役割』、家族の中での『役割』があるときは、しっかりしなきゃという自意識がある。
 ところが、施設に入ると、まわりにいる人たちが自分の身の回りのことをやってくれる。本人はただ、生かされているだけになる。なにもしなくても生きていける。しっかりしなきゃという自意識が、だんだん消滅していく。脳みそにある意識が薄れていく。(なるほどと思いました)
 そのことに関連付けて考えてみると、皇族の一員としてお生まれになった著者は、自分の役割を果たしていく決断をどこかの時点でされて、がんばっておられるのだと思います。たいしたものです。

 エッセイ集です。
 
『1 百川学海(ひゃくせんがっかい)』:川は海を目標にして流れていく。常に修養・努力して、大きな海(目標)をめざす。
 2011年5月(平成23年):オックスフォード大学から博士号を授与された。(専攻は日本美術)
 ドミニク:スイス人の友人。学友。
 ベネディクト:英国人。男性。英会話ができなかった著者を救ってくれた。2学年上の上級生。
 父親に対する感謝があります。
 英会話ができなかったけれど、努力を続けた結果、ある日突然相手が話す英語が明瞭に理解できるようになられたそうです。(英語学習者にとっては、いいアドバイスになります)。
 英語がわからなかったゆえの孤独があります(日本に帰りたい)。それを救ってくれる学友の存在があります。人間は助け合いです。

 まず、2001年9月から1年間留学した。9月に入学して、翌年1月に突然英語が聞き取れるようになった。(その後、2回目の留学があります)。

『2 大信不約(たいしんふやく)』:本当の信義は約束しなくても守られる。信頼関係は大事。
 側衛官(そくえいかん):警察庁皇宮警察本部所属皇宮護衛官。国家公務員。
 警衛(けいえい):皇族を守ること。
 警護:要人を守ること。
 警備:モノを守ること。
 
 オックスフォード大学に行って、側衛官がつかなくなった。生まれて初めて、ひとりで街を歩いた。心細く辛かった。(つらかった)。慣れてきたら、楽しめるようになった。帰国してまた側衛官が付くことを心配するように変化した。(側衛官がつかないほうが気楽でいい)。

 皇族に関する内輪話が楽しい。
 清少納言の、『枕草子(まくらのそうし)』を読むようです。

『3 苦学力行(くがくりっこう)』:働いて学費を稼ぎながら勉学に励む。定時制高校とか夜間の大学みたいです。
 日本の大学と英国のオックスフォード大学は、組織と運営が大きく異なる。
 オックスフォード大学は、日本の学習院、慶応、早稲田、青山学院等をすべてひっくるめて、東京大学というようなもの(組織)。
 コレッジ(学寮):オックスフォード大学の中にある。40近くある。どのコレッジに所属したかが大事になる。
 著者は、皇太子殿下(現在の令和天皇)と同じ、マートン・コレッジに所属した。
 レクチャー:所属コレッジに関係なく学生が集まる。
 セミナー:コレッジで10人程度の専攻学生が集まる。
 チュートリアル:先生(チューター)と学生(3人まで)が集まって、個人指導を受ける。
 著者は、聴講生として、オックスフォード大学に留学した。(試験を乗り切る必要はない)
 
 ケルト人:紀元前から、ヨーロッパ大陸で繁栄した民族。
 著者の専攻は、最初が、『ケルト史』。その後、『日本美術』。
 トマス・チャールズ=エドワーズ:ケルト史のチュートリアル(先生)
 スティーヴ・ガン先生:特別科目『方法論』のチュートリアル。同級生が、ルイーズとエリッサ。

『4 日常坐臥(にちじょうざが)』:座ること、寝ることで、起きているときも寝ているときも。いつでもという意味。
 マートン・コレッジ:1264年設立(日本では鎌倉時代の元寇(げんこう)の頃)
 ポーターズ・ロッジ(守衛所):郵便受けの確認に行く。夕食の席を機械にカードを通して予約する。食堂で他の学生などから情報を収集する。
 英国映画、『ハリーポッター』の出てくる食堂風景は、自分が利用していた食堂の近くにある別の食堂でのロケだったそうです。
 
『5 合縁奇縁(あいえんきえん)』:人と人との縁(えん)。巡り合わせ。因縁(いんねん。運命)。
 番組『徹子の部屋』でのご本人の語り口調を覚えているので、読みながら、本人がしゃべっているように聞こえる文章です。わかりやすい。
 フレッド:マートン・コレッジ所属。偶然のような出会いがあった。原宿駅前で会った。
 著者は、私費留学だった。
 海外での留学は、日本での就職には不利になる。
 日本における研究者の世界は、学閥主義が多い。(同じ学校の出身者で集まる)。

『6 一期一会(いちごいちえ)』:茶道の用語。出会いは一度だけ。
 JR:鉄道ではない。ジェシカ・ローソン先生。とても厳しい人。マートン・コレッジの学長。妥協を許さない人。
 19世紀末から20世紀にかけて、西洋人が、日本美術をどのように見ていたかを明らかにする。なぜ、大英博物館は、明治時代に多くの日本美術を蒐集(しゅうしゅう。目的をもって特定のものを集める)したのか、理由を研究する。
 研究をしながら、自分が日本人であることを自覚したそうです。
 外国人は日本人を誤解している。(日本人はみんな寿司を握ることができる。日本には今も忍者がいる)。
 日本の絵画は、部屋の中に季節感を生む。

『7 千載一遇』:千年に一回の絶好のチャンス。
 ティム・クラーク先生:大英博物館の日本セクション長。完璧主義者。
 
 バッキンガム宮殿に招かれて、エリザベス女王陛下とふたりだけで紅茶を飲んだお話です。女王がお茶を入れてくださったそうです。
 2005年(平成17年)夏のことでした。日本では、愛知万博の開催、小泉純一郎政権の時代でした。

『8 危機一髪(ききいっぱつ)』:ほんのちょっとのことで危機におちいる瞬間。
 英国は電車が日本のようにちゃんとしていないということが書いてあります。時刻どおりに来ないとか、事故のときの代替え手段を用意してくれないとかです。
 でも、時刻どおりに来ないことには慣れるそうです。

『9 多事多難(たじたなん)』:平穏無事(へいおんぶじ)の反対。立て続けに悪いことが起きること。
 皇族のパスポートは、一般人とは異なるそうです。赤ではなく、茶色で、たまに、外国入国時に止められるそうです。一般人のようにフリー(自由)に移動ができません。
 付き添いなしのひとり移動の苦労が書いてあります。
 すごいなあ。冒険です。ヨーロッパ国内の空港移動は不安しかありません。節約のために格安航空会社を利用した時がうまくいかないことがあるそうです。(節約されるということが意外でした)

『10 奇貨可居(きかおくべし)』:チャンスを利用する。
 ビジティング・スチューデント(聴講生)。
 オックスフォード大学で聴講生として1年間学んだのですが、生徒の立場できちんと大学院で学位をとりたい。
 お父上とのむずかしい関係が書いてあります。お父さんは、厳しい人だったそうです。烈火のごとく怒るときがあったそうです。大学院へ行くためには費用がいる。親から出してもらわなければならない。そんな交渉事が書いてあります。理論武装が必要だったそうです。
 でも、簡単に許可がおりたそうです。
 読んでいて、皇族の人たちも同じ人間だと感じました。
 なにかしらめんどうな父子関係があります。意外でした。お金がある人たちなのに。
 (なお、お父さんは2012年にご病気で亡くなっています)
 英会話学習と習得についての手法、経過が書いてありました。

『11 五角六張(ごかくろくちょう)』:なにをやってもうまくいかない日。
 最初の留学が2001年(平成13年)9月、20歳のときでした。
 二度目が、2004年(平成16年)9月、23歳です。
 マートン・コレッジ大学院生専用寮でひとり暮らしです。
 ワンルーム、キッチンは共用です。
 うまくいかないことが書いてあります。
 バレンタインデーの記事になって、(ヨーロッパでは、女性が男性にチョコレートを贈る習慣はないそうです。逆で、男性が女性にお花やお菓子を贈るそうです)
 日本の習慣に従ってやって救われたという話が書いてあります。

『12 一念通天(いちねんつうてん)』:固い決意で取り組めば必ず達成できる。
 2005年の夏休みに、大英博物館で、日本セクションのボランティア・スタッフになる。作品の整理整頓作業です。
 昔の英国人の筆記体が読めるようになる。(今の日本の英語教育では筆記体を教えなくなっています)

『13 日常茶飯(にちじょうさはん』:いつものこと。
 英国の料理はまずい。(まずくはないけれど、おいしくもないそうです)。英国人には、おいしいものを食べようという気持ちがない。宗教で贅沢(ぜいたく)を制止したことが原因のようです。
 当時の英国にある日本食は、日本食の味ではなかったそうです。
 自分で自炊して料理をするようになった。体が和食を欲する。
 マーケット(市場)の話になります。
 食事づくりにおいて、いろいろ工夫があります。野菜類の有効活用です。
 食事会の話しも出ます。
 外国人は、「甘い豆」が苦手(にがて)だそうです。
 英国人は、食器をきちんと洗うことをしない。洗剤がついたまま、カゴに入れるというような記事もあり驚きました。洗剤は体に毒ではないようですが、ちょっと気持ち悪いです。

『14 骨肉之親(こつにくのしん)』:血のつながりが濃い肉親関係。その間の深い愛情。
 ゴッドドーターがおられるそうです。(著者が名付け親になった)。『菜夏子グレース(ななこグレース。出版当時6歳。2008年(平成20年)6月生まれ)』。
 ゴッドファーザー、ゴッドマザー:キリスト教洗礼名の名付け親。
 『おもちゃのチャチャチャ』を歌ってあげた。(著者の父親が、著者が小さい頃に歌ってくれたそうです)

『15 前途多難(ぜんとたなん)』:未来に困難と災難がある。
 ロンドンの北東、ノリッチという町にあるセインズベリー日本藝術研究所長ニコル・ルーマニエール先生に半分だまされるようにして、フランス国内で巡回式の展覧会を企画実行したことが書いてあります。
 かなりしんどい思いをされています。

『16 一以貫之(いつをもってこれをつらぬく)』:ほかに目を奪われず、おのれの道を進む。
 ジョープライス:江戸時代の日本絵画の美術収集家。伊藤若冲(いとう・じゃくちゅう)を世界の人気者にした。(私がずいぶん前に読んだ本で、『若冲(じゃくちゅう、江戸時代中期の絵師) 澤田瞳子(さわだとうこ) 文藝春秋』があります)

 5年間の留学中に体調を壊された話が出ます。
 人間ですから長い人生の間には何度か病気に悩まされることもあります。
 自然光で絵画を観ることの大切さについて書いてあります。

 日本人は、絵画を見るときに、まず誰が描いたか、偽物ではないかを確認したがる。(お金目的だから)
 絵は、作者の名前を気にして鑑賞するものではないとあります。

 ロサンゼルスのディズニーランドに行ったことが書いてあります。
 ディズニーランドでの一日で、最後の花火を観ることへのこだわりがあります。

『17 玉石混淆(ぎょくせきこんこう)』:よいもの、つまらないものが入り混じっているようす。
 勉強以外の時間について書いてあります。散歩の時間です。
 植物園、映画館などです。
 自分にとっての留学期間は、自分の時間を自分のためにだけ使える贅沢な(ぜいたくな)時間であったそうです。
 
 英国のチャリティーショップ:日本とは趣旨が異なる。お金もうけではない。使わなくなったものをもらって、売れるものは店頭で売る。売上金は、発展途上国のために使う。売れないものは、そのまま発展途上国へ送る。物を提供した人にはお金は渡らない。

 ロンドンのノッテングヒル:高級住宅街。高級品がチャリティに出る。
 香合(こうごう):茶道で、香(こう。かおり)を持ち運びするふた付の容器。
 
 なんというかすごいことが書いてあります。
 皇族ゆえに、『鍵』を持ち歩いたことがない。(日本だと、皇族は、生まれた時から、だれかがいつもそばにいる)
 英国に留学して、学生寮に入って、部屋から出かけるときは、部屋に鍵をかけていたが、自分が部屋にいるときは、鍵をかけていなかった。
 ある夜、酔っ払った知らない寮生であろう男子が、部屋を間違えて、著者の部屋に入ってきた。その男性にかけた著者の言葉がすごい。
 『あなた、この部屋に住んでいる人ですか?』
 相手は、自分が部屋を間違えたことに気づいて謝って出て行ったそうです。
 ご無事でなによりでしたが、現代の一般人には、ちょっと考えられない鍵の扱いです。
<半世紀前の昭和の時代の庶民の鍵事情>
 さきほどの部分を話題にして、家族で半世紀ぐらい昔のわたしたちがこどもだったころの話をしました。いろいろ思い出話が出ました。
 日本、とくに農家では、農作業に出るとき、家に鍵をかけるという習慣はなかった記憶です。地域に固まって住んでいるのは、血縁関係がある親族でした。よそ者が来ることもありませんでした。
 都市部でも、木造平屋の長屋が並ぶ公営住宅とか、同じく炭鉱の木造長屋とかでも、鍵をかける習慣は薄かった記憶です。玄関は開き戸で、夜寝るときに、内側からねじを回して戸が開かなくするぐらいでした。
 そのころ、殺人事件のニュースはめったに聞きませんでした。現代では日常茶飯事です。
 人づきあいが濃厚な時代でした。長屋が密集する地域では、昼間は奥さんたちが集まって立ち話しをしていました。男は仕事、女は主婦の時代でした。こどもがたくさんいて、集落ではこどもたちが上級生から下級生までがグループをつくって集団で体を動かすお金のかからない遊びをして遊んでいました。
 女の子たちは、輪ゴムをつなげて、ゴム飛び遊びをしていました。男の子は、ゴムボールで、三角ベースの野球をしていました。お金がなくて、不便ではあったけれど、人間らしい生活を送っていました。

『18 古琴之友(こきんのとも)』:自分をよく理解してくれる友人のこと。
 ロンドン在住の日本人:京都出身のマキさんと山形出身のケイスケさんご夫妻。筆者が名付けた筆者がロンドンで泊る時の民宿『M&K』がご自宅。
 吉岡幸雄先生:染織工房で機織りの仕事をされていた。

 本来、お正月に皇室では、お雑煮が出ない話があります。
 『御菱はなびら』というものを召し上がるそうです。
 
 スコーン:パンが起源の焼き菓子。
 ジェイミー:オックスフォードの友人。英国人男性。おいしいスコーンをつくる。

『19 傾蓋知己(けいがいのちき)』:初対面で意気投合すること。
 スイスの話です。
 スイス人のお友だちが多いそうです。
 スティーヴ・ガン先生:コレッジ・チューター。中世史が専門。
 カミラ:イタリア人。一年先輩。
 著者はお酒をほとんど飲めない。
 ドミニク:カミラの先輩。スイス人。ベトナムの人類学専攻。
 バーバラ:ドミニクのパートナー。スイス人。
 パーティーのメンバー:カミラ、クリス、ドミニク、バーバラ、著者。

 スキー場のケーブルカーの駅、日本人が登山をしたときの写真が飾ってあった。
 写真に著者の見覚えがある顔があった。
 著者の祖母と叔母だったのでびっくりされたそうです。
 祖母である崇仁親王妃百合子様は、現在も存命で101歳であられます。びっくりしました。

『忍之一字(にんのいちじ)』:成し遂げるために最も大切なことは、耐え忍ぶことである。
 英国人とはという内容です。英国人は、融通がきくときと、きかないときの差が激しいそうです。
 同じことでも、人によって、許可されなかったり、許可されたりするそうです。
 
 もうひとつは、路線バスのことが書いてあります。
 日本の路線バスとはずいぶん違います。
 時間通りには来ない。そもそも定刻になっても来ない。最後まで来ない。来ないという案内もない。
 慣れるそうです。
 日本の親切で、ち密な対応のほうが、丁寧すぎるのではないかというようにも思えてくるそうです。

『21 当機立断(とうきりつだん)』:機会をとらえて、すばやく決断すること。
 2回目の留学が、当初2年間だったのが、5年間に伸びた理由と経過が書いてあります。
 2年間は、修士課程です。5年間は、博士課程です。先生に勧められたことをきっかけにして、最終的に博士号を取得されています。
 2006年(平成18年)6月に博士課程の学生になられています。2010年(平成22年)1月に博士課程を修了されています。

『随類応同(ずいるいおうどう)』:人の能力や性質に応じて指導すること。
 スーパーバイザー:指導教官。著者の場合、ジェシカ・ローソン先生とティム・クラーク先生。それから、ティム・スクリーチ先生。
 ロンドン大学SOAS(ソアス):東洋アフリカ研究学院。
 アーネスト・フェノロサ:アメリカ合衆国の東洋美術史家。1853年(日本は江戸末期)-1908年(明治41年)55歳没。

『七転八倒(しちてんばっとう)』:激しい苦痛で、苦しみもだえるようす。
 博士論文を仕上げる苦労が書いてあります。孤独があります。
 5年間日本美術史の研究を続けた。
 ストレス性胃炎になった。
 『独りにならないことって大切なんだ』と改めて思ったそうです。
 日本からの入浴剤に助けられた。
 サンドイッチを出すカフェにも助けられた。
 しんどいときに、おいしいものを食べると、生き続けたいという意欲が湧くことがあります。

『24 進退両難(しんたいりょうなん)』:進もことも退く(しりぞく)こともできない状態。
 博士論文完成までの話です。
 アドバイスとして、『いちばん大切なことは、アキコが書きたいことを書くことだよ』だったそうです。
 博士論文にアキコさんの個性を出す。

『25 不撓不屈(ふとうふくつ)』:強い意思をもって、くじけない。
 ついに最後のエッセイになりました。
 博士課程の修了時の話です。
 人間がやることです。人間は感情の生き物です。
 『どこの国でも学者間の嫉妬(しっと)というのは大なり小なりあり……』(現実的なお話です)
 試験官の話です。口頭試問があります。
 慎重に行動されています。
 ふたりのうちの一人の試験官は、見た目は日本人だが、中身はドイツ人の試験官です。日本人父とドイツ人母をもつハーフの試験官です。
 口頭試問に合格します。
 意外なこととして、著者が、博士課程の試験に合格したことを日本社会に公表しないという考えの父上・宮内庁と公表したほうがいいと主張する著者との間で対立が起きます。非公表の理由は、前例がないからです。前例がないから著者のオックスフォード大学博士課程合格を日本社会に公表したくないのです。
 読んでいて、宮内庁という組織が不思議な組織に思えました。これまでと同じことをこれからもずっと続けることが仕事のようです。ずーっと考えていると、職員は、毎月決まった日に決まった給料がもらえればそれでいいと考えているだけではなかろうかという推測ができてしまいます。皇族のことは慮らない(おもんばからない。十分に考えない)。面倒な事務処理を前例どおりにこなしていけばよい。例外を好まない。不思議なサラリーマン体質です。公務員体質か。

 もうひとつ不思議だったことがあります。
 家族関係が他人行儀(たにんぎょうぎ。親子、親族なのに、他人と接する時のよう)です。(367ページ、『特別寄稿』の部分に、『(父と自分は)親子というよりは先輩後輩のような関係であったと思う』と文章があります)
 父と子の関係が?です。庶民の親子とは異なります。
 とりあえず、エッセイの部分は読み終わりました。
 なかなかいい本でした。今年読んで良かった一冊です。

『特別寄稿 父・寛仁親王(ともひとしんのう)の思い出』
 2012年(平成24年)6月6日薨去(こうきょ。皇族の死去)。355ページに、『66歳の6月6日に逝かれた(いかれた。亡くなった)』とあります。
 奉悼(ほうとう):死を悼む(いたむ。嘆き悲しむ)
 斂葬の儀(れんそうのぎ):お葬式の本葬のこと。

 お父上に対する深い感謝、愛情、が語られます。
 お父上の愛称は、『ともさん』です。裏表のない人だったそうです。お父上は、風貌(ふうぼう。見た目)や着ている服装から、警官官に職務質問をされたこともあったそうです。
 お父上は、極度のアナログ人間だった。ビデオ録画の操作、パソコン、メール、携帯電話の使用はできなかった。原稿は手書きだった。文字は小さく、悪筆だった。留学中、メールのやりとりはできず、父と娘は手紙で文通をしていた。そんなことが書いてあります。
 その部分を読んでいて、自分自身のこととして思い出したことがあります。
 もう10年ぐらい前のことになりますが、働いていた頃、わたしは、なにかの依頼文を複数の人たちに送る時は、封筒に手書きで住所氏名のあて名を書いていました。ふだんから付き合いがある人たちではないので、手書きで住所や名前を書きながら氏名などを暗記するように心がけていました。
 それを見ていた年下の社員から、宛名シール(あてな)シールをつくってはったほうが早くて便利ですよと、ばかにしたように声をかけられました。(ああ、何もわかっていないと思いました。IT化(インターネットテクノロジー)とか、ゆとり教育の影響なのか、なんでもかんでも省略して楽をしたがる世代が生まれました。知恵の水準が低下しています。これから先、日本の未来は暗くなるであろうと予測しています)。ちゃんとしたものをつくるためには、時間も手間もかかるのです。

 ずっと読み続けていて、とても不思議だったことがあります。
 著者のお母さんのことは出てこないのです。お母さんは、ご存命です。妹さんや父方祖母、伯母さんのことは文章に出てきます。お母さんは出てきません。
 触れてはいけないタブー(禁止事項)があるようです。
 その件について、これ以上書くことはやめておきます。どこの家でもいろいろあります。

 『柏さま、「多謝」。雪より。』(意味はたぶん、お父さんありがとう、なのでしょう。柏さまが、お父さんで、雪さんが著者なのでしょう)。

『あとがき』
 シェルドニアン・シアター:学位授与式の会場。
 父も留学体験あり。父が娘の留学を喜んでくれた。
 雑誌編集部への感謝。
 2014年(平成26年)9月の記述となっています。
 たくさんの人たちが関りになってくれてできあがった一冊です。

『ご留学に乾杯 解説にかえて 学習院大学元学長 福井憲彦(ふくい・のりひこ)』
 著者は、仲良し学生の間では、『宮ちゃん』と呼ばれていた。
 学習院大学での卒業論文は手書きが義務付けられている。400字詰め原稿用紙で100枚。
 2014年(平成26年)の記述になっています。

『文庫版へのあとがき』
 本を出したのは、2015年(平成27年)なのに、なぜ今バズっているのかという話で始まっています。
 バズる:インターネットやSNS上で大きな話題となる。
 2024年1月の記述になっています。

 本一冊を読み終えての感想です。
 国民に、開かれた皇室、皇族をめざして、有意義な一冊をこの世に送り出されたと、この本の価値を認めます。

 本の最初に戻って、巻頭にある白黒写真をながめていて、本に書いてあった内容が、すんなり頭に入ってきました。
 若い人は、『広い世界を知りたい』のです。  

Posted by 熊太郎 at 07:30Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2024年10月26日

愛人!? 困っちゃう… 保科有里(ほしな・ゆり) 山中企画

愛人!? 困っちゃう… 保科有里(ほしな・ゆり) 山中企画

 BS放送の番組の合間に、夢グループのコマーシャルが入ります。
 初めて見たときには笑いました。
 『DVD(デー・ブィ・デーという発音)』とか、『CD(シーデーという発音)』は、笑えるのですが、年配者にとってはわかりやすい! 買う人いるだろうなあ。
 小型液晶画面なのに、『大画面(だいがめん)』、やっぱり買う人いるだろうなあ。
 じょうずに宣伝してあります。
 くわえて、『しゃちょーー もっとお安くしてーー』のかけ声とそのあとの格安値段で、これは、買う人いるだろうなーーと思ってしまうのです。
 日曜夕方の番組『笑点(しょうてん)』で、桂宮路さんが、こちらの本の著者女性の物まねをします。『しゃちょーー』のかけ声に笑います。

 本を読んでみることにしました。
 『愛人(ではない)』ことが強調されている本です。
 愛人とは:いろいろ解釈がありそうですが、この本の場合、社長のお妾さん(おめかけさん)のような印象があります。奥さん以外の恋人(社長がお金を女性に渡している)。2号さん。一夫多妻制のなごり。半世紀以上前、わたしがこどものころにはよくあった話です。社会的な立場が確立されていた記憶です。お妾さんでもちゃんとした仕事だった記憶で、地位もありました。お金を持っている男が、おおっぴらに女性を囲っていた時代です。

 著者の場合は、まず、自分は社長の愛人ではありませんと否定されています。
 “夢グループ”という会社における社長と社員の関係だそうです。

 さて、読み始めます。

 『千鳥の相席食堂(あいせきしょくどう)』に出たそうです。わたしは、以前は相席食堂を見ていましたが、あまりにも下品なので観るのをやめました。
 ただし、先日は、鹿児島県沖永良部島編(おきのえらぶじま)で、島が、どんなところだろうかと興味が湧いたので見ました。女性のお笑いタレントさんが出ていて爆笑しました。8月6日放送、阿部なつき&オダ・ウエダの植田紫帆の旅!でした。植田紫帆さんのダイナマイトボディがすごかった。

株式会社夢グループ:通信販売事業会社。芸能事務所(コンサートの主催)。石田重廣社長。最初は、『狩人(かりゅうど。兄弟でのコーラス歌手。歌曲として、「あずさ2号」』のマネジメント担当会社としてスタートした。歌手三善英史が加入して、夢グループという名称になった。2022年(令和4年)5月、石田社長とこの本の著者保科有里さんがデュエットで歌手デビューした。(保科有里さんはもともと歌手で長い間歌っていたが、会社である夢グループの事務員もしていた)。

 保科有里:歌手、62歳、石川県金沢市出身。未婚。
 社長の愛人ではない。上司と部下ではある。社長と社員ではある。
 石田社長にとって、保科有里さんは好みのタイプではない。
 石田社長のご家族も、保科有里さん愛人説を聞いて笑っている。
 保科有里さんは、好きで、『シャチョー! 安くして~!』と言っているわけではない。ほんとうは、そんなことを言うような人間ではない。自分は男に甘えるような人間ではない。勉強が好きではなかったので大学に行く気はなかった。高校を出て、自動車販売会社に入って、総務課で経理事務をしていた。車の運転が好きで、運転手役もしていた。そんなこんなが書いてあります。

 まあ、すごい。有名人、芸能人がたくさんでてきます。
 反発も受けています。ヒット曲がないのに、どうして、同じステージで歌うのだと責められています。
 でも、彼女を誘った石田社長が自分のプライドをかけて、彼女を使い続けます。
 芸能界というところは、『メンツ(立場。上下関係。世間体(せけんてい)。プライド(自信))』の世界であることがわかります。
 保科有里さんについて思うのは、『人は変われる』ということです。

 52ページまで読んで、今年読んで良かった一冊になりました。
 非常に現実的なことが書いてある本です。
 学びがある本です。

『第一章 「愛人」じゃなくて、「社長と社員」!』
 保科有里さんは、1993年(平成5年)デビューです。1961年生まれですから、デビュー当時は、32歳ぐらいです。かなり遅いデビューです。
 1996年(平成8年)、東京品川駅前のホテルで歌っていた時にレコードディレクターの塩入さんから石田社長を紹介されて、採用された。石田社長は軽い気持ちだったようです。
 自分なりに思うのは、仕事は、才能と努力と人間関係です。自分の過去を振り返ってみてそう思います。自分だけの力だけでは伸びていけません。支えてくださる人が必要です。
 されど、保科有里さんは、歌手としては売れません。歌を出してもさっぱりです。

 夢グループのコンサートや舞台劇に出てくれた人です。
 狩人、三善英史、チェリッシュ、千昌夫、松方弘樹、小林旭、黒沢年雄、島倉千代子、新沼謙治、山本リンダ、浅丘ルリ子、そこに保科有里さんが入ります。(本にも書いてありますが、保科有里さんがそこに並ぶのは、何かしらバランスがとれないような……)

 本のつくり方に関する感想です。
 ご本人のお話の部分は、明朝体の文章でつくられています。
 石田社長ほか、お世話になった人たちの文章は、丸文字のゴシック体で文章が書いてあります。
 意図的に区別されています。いとてき:目的があって、わざとそうしている。
 思うに、文章は、出てくる各自が書かれたものではない。インタビューをもとにして、文章がまとめてある。まあ、そのような企画でつくられた本なのでしょう。

 人間界の現実的な話です。お金もうけとか、プライド(自信満々になりたい)とか。
 
『第二章 金沢・我が町』
 金沢市内でラジオ番組をもたれているそうです。ご自身の故郷が金沢市です。
 昭和6年生まれの亡父(89歳で死去。クリーニング店をしていたが設備投資で失敗して廃業。保科有里さんが23歳、妹さんが15歳だった。その後借金が理由で離婚。されど親子の交流は続いた。父の借金を保科有里さんと母親で返した。(たいしたものです。親族間での助け合いは必要なことです)。『父の人生は若い頃からずっとつらかった』とあります。
 昭和11年生まれの母。8歳年下の妹。4人家族だった。
 
 保科有里さんは、お歌はおじょうずだったようで、NHKのど自慢でチャンピョンになったこともある。(歌がうまいだけでは、歌手としては食べていけない。唯一(ゆいいつ)という個性が欲しい)

 石山奈穂美さん(高校時代からの親友)のコメントです。
 保科有里さんは、目立たないタイプだった。歌好きで歌謡教室に通っていた。文化祭ではバンドを組んでいた。
 二十代後半で、東京の有名な先生に誘われて、歌手になる最後のチャンスとして東京へ出て行った。
 歌手ではなく、『社長、安くして~!』のコマーシャルで出てきたのでびっくりした。
 そんな話が書いてあります。楽しい。

 吉田万里子さん(OL時代の友人)のコメントです。自動車販売会社です。
 保科有里さんは、仕事に厳しく怖いイメージの人だった。
 色気は皆無だった。付き合ってみれば、気さくでかわいい人だったので意外だった。
 
 お母さんと妹さんからのコメントがあります。
 妹さんからみて、8歳年上のお姉さんである保科有里さんは、父親のような存在だそうです。(実父は離婚している)。
 お母さんは、26歳ぐらいで東京に行くと行った娘に反対した。東京の先生には、『ダメなら早く返してください』とお願いした。

 苦労話があります。親子とかきょうだいとかって、なんだろうなあと考えながら読んでいます。歳をとってから売れるということについても考えさせられました。

 両親がトラブルで離婚すると、それを見ていたこどもは、結婚願望がなくなるということはあるようです。
 女性も自分で働いて自活できるようになると、結婚を必要と感じなくなるもののようです。
 (半面、女性にとっての『結婚』は、男性の収入に依存することと考えてしまいます)

 男女交際において、男が複数の女性と交際をする。複数の女性の中にいる自分が、ほかの女性と比較される。男性に選ばれる立場になることが苦しい。

 ご自身が、結婚相手ではなく、愛人の対象として見られてしまう。
 誘ってくるオジさんが多い。
 赤裸々な話がでます。(隠さない)
 お金をもっていてもクズみたいなオジさんがいます。
 (文句を言わなそうな女性が狙われます(ねらわれます))
 そして、石田社長は、そんなオジさんではないのです。
 石田社長は、宇宙人だそうです。視点が、へんなオジさんとは違うそうです。

 たくさん、有名芸能人のお名前が出てきます。
 夢グループでの歌謡ステージとか舞台劇でごいっしょされたのでしょう。びっくりします。
 松方弘樹(2017年(平成29年)74歳没)、島倉千代子(2013年(平成25年)75歳没)、浅丘ルリ子(84歳)、小林旭(85歳)、橋幸夫(81歳。先日『徹子の部屋』に出演されたのを見ました)、東てるみ(あずまてるみ。68歳)、桑江知子(くわえ・ともこ。64歳)、石井明美(59歳)、平浩二(たいら・こうじ。75歳)、ロザンナ(ヒデとロザンナ。74歳)、葛城ユキ(2022年(令和4年)73歳没)、あべ静江(72歳)、おりも政夫(71歳)、チェリッシュ(松崎義孝74歳、松崎悦子73歳)、西口久美子(73歳。フォークグループ「青い三角定規」)、黒沢年雄(80歳)、尾藤イサオ(80歳)、江木俊夫(72歳)、伊藤咲子(66歳)、大野真澄(74歳。フォークロックグループ元「ガロ」のメンバー)、あいざき進也(67歳)、元フィンガー5の晃(あきら。63歳)
 

 ユーチューブで、保科有里さんの歌声を聴いてみました。とてもおじょうずです。
 
床山(とこやま):俳優や力士の髪を結う人(ゆうひと)。

 この本は、保科有里さんの人生の集大成という位置づけで出された本だと理解しました。
 人はだれしも、自分があの世にいくときに、自分が地球上で、この時代に生きていた痕跡を残しておきたいと思うものです。ときに人は、その夢を『本』という形で残そうとします。そう思いました。

 橋幸夫さんのコメントがあります。
 橋幸夫さんと聞くと、NHK朝ドラ、『あまちゃん』を思い出します。夏ばっぱのあこがれの人でした。歌曲、『いつでも夢を』が良かった。
 ここまで書いてきて、『夢』という言葉が何度も出てくる本です。
 
 読み終えました。なかなかいい本でした。
 人には、いろいろな人生のパターンがあるわけで、標準的な就職、結婚、出産、育児というルートをたどらない人生もあるし、そのことを、いいとかそうでないとかと言うこともできないと思ったのでした。

 さて、まだ少し感想を付け足しておきます。
 橋幸夫さんのコメントがあります。(番組『徹子の部屋』で、一度引退したけれど、周囲に押されて復帰したと、先日お話しされていました。サラリーマンと違って、芸能人の方は、引退も復帰も自分次第です。ファンがいれば復帰はできます)
 保科有里さんは、色気がないそうです。サバサバしていて、男の話(恋話)も聞かないそうです。
 本格的なクラブ歌手で、松尾和子さん(1992年(平成4年)57歳没)とか、青江三奈さん(2000年(平成12年)59歳没)タイプの歌手だそうです。
 
 東てる美さんのコメントがあります。
 保科有里さんは、人柄がいい人ですとあります。また、運の話が出ます。ヒット曲が出るためには、運も関係してくるのです。

 桑江知子さんと石井明美さんのコメントがあります。
 みんな仲良しです。ひとりで歌う歌手は孤独なのですが、この世代の人たちはとても仲良しだそうです。
 
 第五章に、ご本人からこれまでやってくることができたのは、『奇跡』だとして、その理由が説明されます。(わたしもたまに、これまで長い間生きてくることができたのは奇跡だと思うことがあります。長生きするためには、運が必要です)
 人生の変化のタイミングについて書いてあります。
 お母さんと妹さんへの感謝があります。
 三十年ぐらい続く地元金沢でのラジオ番組の話があります。
 ピンチになると、いつもだれかが助けてくれた。
 小沢音楽事務所(芸能事務所)、菅原洋一(91歳)、伊東ゆかり(77歳)。
 10年以上ホテルで歌を歌えた。
 カラオケの先生をした。生徒は、60代・70代の女性(ご主人やご家族のことは忘れて、自分が女子高生だったころを思い出して、ステキな男性を思い浮かべながら歌いましょうというようなことが書いてあります。ずーっと、夫と家庭にしばられて、がまんしてきた自分を解放しましょうということでしょう)。うまい歌ではなくて、心にしみる歌をうたうことを指導されています。
 (人生に歴史ありです)
 保科有里さんは、自分のためにではなく、人のために歌うことにした。
 男にとことん尽くしますというのは、自分はにがてだそうです。
 自分には、ライバルがいなかった。(自分のようなタイプがいなかった)
 夢スター:夢コンサートが開催する昭和歌謡歌合戦のユニット(集団)。120分間のコンサート。

 挫折と奇跡を繰り返す人生だったそうです。
 わたしも同じような世代ですから、健康に留意して長生きして、余生を楽しみましょう。  

Posted by 熊太郎 at 06:27Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2024年10月21日

傲慢と善良 辻村深月

傲慢と善良(ごうまんとぜんりょう) 辻村深月(つじむら・みづき) 朝日文庫

 昨年の秋ごろはやった文庫本の小説だと思います。やっと読む順番が回ってきました。(わたしは、ダンボール箱に読みたい本が何冊もあらかじめ入れてあって、基本的には購入した順番に読んでいます)

 最初の数ページを読みました。
 なんだかうっとおしい話が始まりました。
 『(男への)依存』、そして、ストーカーに追われているような女性の気持ちが書いてあります。
 『助けて。私を助けて。』です。

『第一部』 と『第二部』があります。
全体で、493ページある長編です。

西澤架(にしざわ・かける):男性です。39歳。東京都江東区豊洲のマンション303号室に住んでいる。(坂庭真実との結婚後の新居になる予定だった)。
33歳のとき父親から継いだブリューイング・カンパニーという会社を経営している。輸入業の代理店である。従業員5人。父親はくも膜下出血で急死した。実家は東京三鷹市にある。

あいつ:男性でしょう。ストーカー、さらには、ストーカーされる女性を殺したのではないかという殺人犯人のような雰囲気の書き方です。

坂庭真実(さかにわ・まみ):主人公となる女性でしょう。あるいは、西澤架(にしざわ・かける)のほうが主人公かもしれません。
英会話教室の事務員をしていた。うりざね顔。ひとえまぶた。和風な顔立ち。黒髪。父親似。35歳。結婚式を控えている。婚活で相手の西澤架(にしざわ・かける)を見つけた。

坂庭陽子:坂庭真実の母親。群馬県前橋市居住。二重まぶた。丸顔。パーマをかけた茶髪。

ミサキ:坂庭真実のいとこ。東京都内住まい。

岩間希実(いわま・のぞみ):坂庭真実の姉。東京都江戸川区小岩住まい。顔は、母親似。都内の証券会社勤務。夫剛志はデザイナーで、3歳の娘桐歌(きりか)がいる。
 
 単行本は、2019年3月(平成31年)発行です。今から読むのは文庫本です。

 2月2日深夜二時。坂庭真実が行方不明です。消えてしまいました。
 スマホは、電波が届かないところか、電源が入っていないそうです。
 
 不安をかりたてる文章がつづく。26ページ付近です。
 なにか、(読者をだます、あざむくための)しかけがあるのではないかという疑いをもちながら読んでいるわたしです。

大原:西澤架(にしざわ・かける)の友人。妻ミキと子2人(2歳児ゆうみともうひとり小学一年生)がいる。無精ひげ。彫りが深い顔立ち。

美奈子:西澤架(にしざわ・かける)と付き合いが長い。
梓(あずさ):美奈子とつるんでいる。

アユちゃん:三井亜優子。西澤架(にしざわ・かける)の元カノ。ほかの男と結婚した。西澤架(にしざわ・かける)より6歳年下。
 
 行方不明になったという坂庭真実は、なにか、本人の性格に問題があるのではなかろうか。
 読んでいて、本人の意図で、姿を消したようにも思えるのです。
 ストーカーという存在は、もともといないのではないか。
 
ペリエ:フランス起源の炭酸入りナチュラルミネラルウォーター

マリッジブルー:結婚する前の不安。

 58ページ付近、もうこれ以上読んでも得られるものはないような気がしてきました。

 坂庭真実と西澤架(にしざわ・かける)の結婚式の予定は9月です。
 場所は、麻布のミランジェハウス(西澤架(にしざわ・かける)の元カノ三井亜優子が結婚式をあげた場所であることがあとから判明する)

 西澤架(にしざわ・かける)は、坂庭真実を婚活で見つけた。
 
坂庭正治(さかにわ・しょうじ):坂庭真実の父親。元群馬県前橋市市役所職員。長身。

縁結び小野里(おのざと。群馬県県会議員の名前です。屋号かもしれません。(個人事業主が使う時の名称)):前橋市の結婚相談場所。県会議員の妻がひとりでやっている。元市職員の坂庭正治とつながりがある。

 坂庭真実は実家の群馬県で積極的に婚活をしていたが、断られたり断ったりで、かなりの人数の男性と面談をしたが、なかなか結婚相手が見つからなかった。
 (愛情のない、あるいは、愛情の薄い、結婚願望が見えます。西澤架(にしざわ・かける)の側にも同様のことがあります。西澤架(にしざわ・かける)も多数の女性と婚活をしていたが、元カノのことが忘れられず結婚に乗り気になれなかった)
 
 本音(ほんね)を突く。きれいごとを許さないところが、作者の特徴と持ち味でもあります。
 
 坂庭真実に紹介された男性はふたり。ひとりはすでに結婚している。(ふたりともストーカー犯人とは思えないタイプ)。ふたりの居住地は、前橋市と高崎市。紹介は、もう、6年前の話です。

 女性は出産できる時期があるから、いつまでも男を待てない。

 『高慢と偏見』:イギリスの小説。ジェーン・オースティン作。恋愛小説。結婚小説。
 
 結婚がうまくいかない理由として、傲慢さ(ごうまんさ)と善良さが要因になっている。
 自分と相手を比較する。自分は、何点の人間だからと仮定して、相手にも同様の点数を求める。(70点ではだめなんですとか)。点数的に自分にふさわしくない相手は、結婚相手にしない。
 
 143ページあたり以降を読んでいてですが、なんだか、お昼のラジオ番組である『人生相談』を聞くようです。
 母親が、娘の結婚相手をお見合いで、自分好み(職業とか収入、家柄においての母親好み)の男性を娘に夫としてあてがおうとしています。
逆に、お見合いにおいて、娘が好む相手男性は親に拒否されます。そこに見合い相手を紹介してくれた県会議員夫婦への恩義がからんできます。
 まあ、娘は苦しい立場です。
 この点を、小説では、『(親の)傲慢(ごうまん。相手を見下す(みくだす)。バカにする)』と位置付けます。
 でも、現実的な話ではあります。

カナイ・トモユキ:坂庭真実の見合い相手だった男性。前橋市内居住。市内の電子メーカー勤務のエンジニア。のちに、『金居智之 既婚』と判明します。
金居智之は体格がいい。体育会系に見える。日に焼けている。東日本大震災でボランティアの経験あり。金居智之が32歳、坂庭真実が26歳のときに見合いをした。金居智之は、坂庭真実には陰(かげ)があると気づいたとのこと。(見た目と中身が違うということ)。

 わたしの考えとして、そもそもこの話で設定されている坂庭真実に対するストーカーはいないのではないか。

傲慢とは(ごうまん。見合い相手の品定めをする):坂庭真実の母親である坂庭陽子のこと。自分好みの男性を、次女である坂庭真実の夫にしようとするから。

善良とは:傲慢な母親の言うことをきこうと努力する坂庭真実のこと。

 さらに、見合い相手である(結婚相手でもある)西澤架(にしざわ・かける)の実母が、息子夫婦との同居をさきざき希望している。(わたしが孫のめんどうをみてあげると言う)
 いろいろプレッシャーが、坂庭真実33歳にはあります。加えて、男性経験が33歳までなかったという事情が出てきます。
 坂庭真実はかなり苦しい。ストーカーに追われているというのは、口実で、じっさいは、ひとりで姿をくらましたような展開です。

 199ページまで読んで、これから先のページをペラペラとめくってみました。
 327ページから第二部が始まります。
 どうも、第二部は、行方不明になっている坂庭真実のひとり語りのようです。

(つづく)

 群馬県庁が出てきます。33階建て、上に展望台。自分に、なにかしら記憶があります。
 路線バスで鬼ごっこ太川陽介さんとEXILE(エグザイル)松本利夫さんの対決で、ゴール地点になった場所ではなかろうか。調べてみます。調べたら、違っていました。テレビ番組のほうは、前橋市役所21階展望室でした。群馬県庁は、高崎市にあります。
 群馬県の県庁所在地は高崎市です。以前、高崎か前橋か、どちらが県庁所在地になるかでかなりもめたという記事を読んだことがあるのを思い出しました。

 県の職員採用、その後の共働き結婚生活などを話題にして、地方で暮らす人間の暮らし方に関する記述が続きます。その標準的な暮らし方になじむことができなかった女子は、土地にいづらくなって、東京へと逃げるように出て行くのです。

有阪恵:群馬県庁の臨時職員(1年更新で継続就労中)。25歳で職場結婚した。坂庭真実と同じ年齢。35歳。

 お見合いにおいて、自分は、選ばれるほうの人間だと思いこんでいる(誤解している)。
 お見合いの相手を見下すことがある。(自分が断ったその相手が、その後別の女性と結婚してこどもができて幸せに暮らしているという事実がある)。

 坂庭真実は、ストーカーするほどの価値がある女性ではなさそうです。

 『(お見合いで)いい人がいない』→あなた自身が、いい人ではないという裏返しの言葉です。

 『在庫処分のセールワゴン』→30歳を過ぎて、売れ残り同士(男女)のお見合いと結婚のことをいう。

泉ちゃん:坂庭真実のにがてな相手。同級生女性35歳。高校は坂庭真美の姉である岩間希実と同じ。大学は、西澤架(にしざわ・かける)と同じ大学。商社で働いていたが出産子育てで高崎市に帰郷している。

 学歴とか、卒業校をばかにしている。学歴の優越感で生きている人がいる。

(そして、第一部を読み終えました)

 ジャネット:坂庭真実が結婚のために退職した英会話教室での同僚台湾人女性。

 花垣歯科医院(群馬県高崎市にある)→代替わりして、フラワー・デンタル・クリニックに名称変更をする。坂庭真美が6年前に見合いをした相手の弟が後を継いでいる。見合いをした相手(長男)が歯科助手をしている(わけあり。長男が跡継ぎになれていない。次男が跡を継いでいる)。

 坂庭真実が行方不明になってから3か月が経過している。今は、5月です。

 美奈子、梓、渚、多佳子:西澤架(にしざわ・かける)の友人。男女の友人で、恋人関係はない。

 坂庭真実は、西澤架(にしざわ・かける)の元カノ三井亜優子(みついあゆっこ)のことを知ったのではないか。(当たりでした)

 坂庭真実は、お見合いの相手であったふたりの男性に、傲慢(ごうまん)な態度をとった。自分よりもレベルが下と、見下した(みくだした)。

 『皆が行くから大学に行き、親が決めたから就職し、そういうものだからと婚活する』

 西澤架(にしざわ・かける)という男性は、婚活の場において、『(坂庭真実にとっての)掘り出し物(いい商品、物件)』だった。

 『自己評価は低いくせに、自己愛が半端ない……』(坂庭真実に対する厳しい人物評が続きます)

 読んでいると、(30歳過ぎの男女の結婚って)何なのだろうなあという気分になります。
 まわりがそういうから(結婚しろと言うから)、婚活をする。
 
 坂庭真実のストーカー話は、つくり話であることが判明しました。

『第二部』
 ストーカー事件に巻き込まれたというウソつき話を西澤架(にしざわ・かける)に持ち出した坂庭真実の語りでしょう。

 自立できない女子の悲しい話です。
 母親の言いなりになって育って、大人になって、自分の脳みそで自分のことが決められないのです。
 男(西澤架(にしざわ・かける))に依存しようとしますが、彼は坂庭真実のことを自分にとっては、70点と点数付けした人間です。せめて、80点は欲しかったと坂庭真美がつぶやきます。西澤架(にしざわ・かける)にとっての100点満点の女性は、彼の元カノの三井亜優子なのです。

 『いつ結婚するんだって、親にせかされるのは、もう嫌なの……』
 坂庭真実はあせっていた。西澤架(にしざわ・かける)で手を打つことにした。ふたりとも打算(ださん。損得勘定をすること)で結婚するのです。
 
 西澤架(にしざわ・かける)に恋愛感情をもつ女性たちは、西澤架(にしざわ・かける)の婚約者である坂庭真実を激しく攻撃します。彼女の人格を貶めます。(おとしめます。さげすむ)。ありがちな人間的社会です。人の不幸が嬉しい、悪人がいます。

 これは、女の生きづらさを書いてある本だろうか。

 母親の言いなりです。世の中での生き方を知らない、母親にコントロールされた自主性のない女性が坂庭真実です。坂庭真実は、現実を知りません。
 
 『真面目でいい人』→結婚相手の対象にはなっても、恋愛の対象にはなりにくい。

 31歳にもなって、親から、帰りが遅いと言われる坂庭真実です。(親がおかしい。娘を高校生扱いしています)
 
 居場所がない坂庭真実です。

 坂庭真実の部分を読みながら、この人は、結婚には向いていないと判断します。『無理』です。『無理』が完成しています。今は、374ページ付近を読んでいます。

 偽名を使って、仙台市内で生活する。東日本大震災復興のためのボランティアスタッフとして生活する。

 プロセスネット:震災復興の民間組織。
 谷川ヨシノ:プロセスネットのスタッフ。三十代はじめぐらいの明るい美人。背が高い。
 樫崎写真館(かしざきしゃしんかん):館長が、樫崎正太郎、白髪の老人。芸術家っぽい。その孫が、樫崎耕太郎、彼女あり。
 樫崎写真館で寝泊まりしているスタッフが、早苗(38歳)とその小学生のこども男児で力(ちから。11歳)。
 震災で汚れた写真を洗ってきれいにする作業をする。

 仙台は観光で去年訪れたので、読んでいてイメージがつくれます。

直之:坂庭真実のいとこ。離婚した。

板宮:五十代の男性。地図製作会社の社員。ベテラン地図調査員。地図づくり担当。震災で、家がなくなって、新しい建物がそこにできる。地図でそのことを表示していく。

花垣学:坂庭真実のふたりめのお見合いの相手だった人。しゃべらない人だった。朴念仁(ぼくねんじん。無口で愛想がない(あいそがない))だった。花垣学は、こどものようにオレンジジュースを飲む。

高橋:30歳。地図づくりのアルバイト。背が高くて肩幅が広い。茶髪、ピアスをしている。

 震災で被災した写真をきれいに洗って持ち主に渡すという内容は、邦画、『浅田家』を思い出します。
 『浅田家』という家族の看板を掲げて、写真家が、『家族』のありかたについてこだわる映画でした。

仙石線:仙台駅から石巻駅。(わたしは乗ったことがあります。読んでいると実感が湧きます)

ネルシャツにチノパン:表面を起毛させた暖かいシャツ。綿やポリエステルのズボン。

(ストーカーの話から、うまくいっていない婚活の話になって、話題は突如、東日本大震災に飛んで、う~む。これでいいのだろうか……)

幸子(さちこ):被災写真の花嫁さん。

健太:幸子さんのこどもさん。

 石母田(いしもだ)とその娘:三波神社(みつなみじんじゃ)の人

メグちゃん:坂庭真実が、群馬県庁で働いていたときの同僚。既婚者。

 なんというか、亡くなった人が大事に保管していた昔の写真というのは、扱いが難しい。
 子孫にとっては、知っている人がだれも映っていない白黒写真もあります。
 最終的には処分することになるのですが、簡単そうで、そうでもないのです。放置することが多い。そうすると、時が流れて、さらに縁遠い子孫は困ります。ここにある古い写真を届けるという発想は、届ける人の側の自己満足の感情があります。届ければ、喜ばれると思いこまないほうがいい。相手にとっては迷惑なこともあります。

権禰宜(ごんねぎ):神社の役職。禰宜(ねぎ。役職。一社にひとり。責任者ということか)の補佐役。複数設置可。

 472ページあたりから先、ひょうしぬけするような結末へ移行しました。(力が抜ける)。
 坂庭真実にとっては重大なことであっても、読み手である傍観者にとっては、その程度のことで、そのような気持ちになるのかと、主人公の思考に寄り添えなくなります。やはり、まだ、気持ちがこどもなのです。

 自分に70点という点数をつけた男とこれから先、どうするのか。
 傷ついた自分の気持ちをどうするのか。

 物語の結末は、わたしには、そうなるとは思えません。

 人生は、しんどい。(骨が折れる。難儀(なんぎ)だ)

 『私とお母さんは違う人間だということを、どうしてわかってくれないの……』
 『母にとっては、私は一生自分の一部のようなもので……』

 486ページの展開、うまい!
 こういうふうに話をもっていくわけか。

 されど、この先は、けっこうしんどい。
 親族・身内を拒んで(こばんで)、個別単体で生きていけるほど、世の中は甘くない。

 『結婚』というものは、たいてい、こんなはずじゃなかったと思うものです。
 そこを乗り越えて、これはこういうものだと、気持ちに折り合いをつけて、やっていかないと結婚生活は長続きしません。

 親戚づきあいをしたくない人、親戚づきあいがにがてな人は、結婚は、思いとどまったほうがいいです。
 戸籍の届を出して、戸籍ができると、法的に権利義務関係が発生します。扶養の義務も発生します。
 
 人生は障害物競争みたいなものです。
 病気や事故、自然災害や事件に巻き込まれることもあります。
 一生元気で健康な体を維持できる人はほとんどいません。
 ひとり、あるいは、夫婦ふたりだけでは生きにくいのです。
 助け合いが必要です。精神的・金銭的援助を親族同士ですることはふつうのことです。そこを割り切れない人は、戸籍をいっしょにせずに、事実婚状態のほうがベターです。

 読み終えてわたしは、坂庭真実は、自分をバカにした女友だち複数をもつ西澤架(にしざわ・かける)とやっていけるとは思えないのです。
 尻すぼみの終盤でした。

 辻村深月作品の特徴は、本当のことを追求して、本当のことを把握して、じゃあどうするんだと考えることです。
 例として、作品、『琥珀の夏(こはくのなつ)』があります。
 善人とされていた男性指導者の脳みそにあったのは、エロ(性的興味が強い)だったと暴かれています。(あばかれています)。

(その後のこと)
 こちらの小説作品が映画化されて現在公開中であることを知りました。
 う~む。わたしは観に行かないと思います。  

Posted by 熊太郎 at 07:32Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2024年10月13日

ユダヤ人大富豪の教え 本田健

ユダヤ人大富豪の教え 一生もののお金と人生の教養 100万人に読み継がれるビジネス書を変えた金字塔 本田健 だいわ文庫

 単行本は2003年(平成15年)の発行ですから、もう20年ぐらい前の本になります。

 自分としては、ユダヤ人でなくてもいいと思って読み始めます。

(1回目の本読み)
 わたしが実用書を読むときは、まず、最初から最後まで、ゆっくりページをめくりながら、どんなことが書いてあるのかをだいたい把握してから2回目の本読みをします。

 『第6の秘訣 スピーチの天才になる』
 現在進行中のアメリカ大統領選挙の活動を思い浮かべました。

 つくりとして、先日読んだ、『きみのお金は誰のため ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」 田内学 東洋経済新報社』と類似しているという印象をもちました。そちらは、2023年(令和5年)の発売です。

 45ページにある『不自由人』と『自由人』のところが目に入りました。
 自分は、定年退職前までは、不自由人だったが、定年退職後は、自由人になったと理解しました。

 ゲラーという老齢者が出てきます。
 わたしは、ユリ・ゲラーという人しか頭に浮かんできません。イスラエルの超能力者を名乗る人です。スプーンを曲げる人です。ハンガリー系ユダヤ人。

 『金持ちになるためには、最初に稼がなくてはならない……』(わたしが思うには、なるべく無職の期間を短くすることが、お金で苦労しない秘訣です)
 稼ぐことができないと、次のステップにいきにくい。
 『必要なものと欲しいものの違いを知る』
 『貧乏人の口癖は、「ふだん頑張っているご褒美(ほうび)に買っちゃおう!!」』(なかなかおもしろい)
 『たくさん稼いで、がっちり守る』
 『投資家の道を経ずして、金持ちになるのは難しい』(なるほど)
 『分かち合う』
 『社長のスミスさんでなければ……』(だれでも対応できるようにしておく)
 
 『ミリオネア・メンタリティ』(豊かさ意識。百万長者(富豪)の精神)
 
 マニュアル本ですな。お金持ちになるための手引きです。

 『幸せに成功するためには、夢を見ることが必要だ……』(ああなりたい、こうなりたいという目標をもつ)

 『……経済的に成功した人間の多くが個人的にはボロボロの生活を送る……』(家族、パートナー、友人に関連してのことです。仕事だけ集中だと、そのほかのことで人望を失う)。職場で輝いている人は、家に帰るとひとりぼっちということはあります。


(2回目の本読みです)

 本には、17の秘訣が書いてあります。

僕:二十歳ぐらいの日本人学生。ボランティア団体の招きで、アメリカ合衆国で講演活動をしている。とありますが、年齢・実績からして不思議で不可解ではあります。アメリカ合衆国に一年間滞在した。大企業に就職するつもりはなかった。起業するつもりだった。

ゲラー氏:アメリカ人。『僕』はこの人と出会って、この人の話を聞いて、人生が変わったというような出だしの記述です。場所はフロリダ州です。アメリカ合衆国のメキシコ湾に面した南東部の半島です。南にキューバ、フロリダ州には、都市としてマイアミがあります。
 なお老人であるゲラー氏は大金持ちです。屋敷には、バトラー(執事)がいます。老人は、オーストリア生まれのユダヤ人だそうです。父親は実業家。ナチスドイツから逃れるために、ヨーロッパ→シベリア→日本を経て、アメリカ合衆国へ移住されたそうです。ゲラー氏は、不動産業。ホテル、ショッピングセンターを展開している。

 『困難をアイデアで乗り越える』
 『幸せなお金持ち』になる。『不幸せなお金もち』にはならないようにする。
 『自己責任をもつ』(うまくいかなくても人のせいにしない)
 『幸せなお金持ちになるノウハウ(知識とやり方)を、あとの世代に伝授する』
 『自分らしい人生を生きることに集中する(お金のことを忘れる。お金にこだわると幸せなお金持ちにはなれない)』
 『「現実」をしっかり見る。成功するために、「学歴」、「家柄」、「才能」、「運」はまったく関係がない』

『第1の秘訣 社会の成り立ちを知る』
 読んでいて思うのですが、番号順で書いてある秘訣のタイトルを見ても、すぐにピンとはこないのです。いまひとつ、びしっと決まっていないフレーズ(文章)です。

 比較です。
 年収500万円の人と、年収5億円の人は、どちらが忙しく働いているだろうか?
 年収500万円の人の方が忙しく働いているのです。
 年収5億円の人は、年収500万円の人たちを雇って働かせているから、自分はその人ほど忙しくはないのです。
 さて、お金もちになるにはどうしたらいいかです。
 人はその手法を教えてくれません。
 自分の脳みそで一生懸命考えるのです。
 
 サービスを提供した分だけ、自分に利益が返ってくる。
 
 世の中には、依存しない人間と、依存しない人間に依存する人間のふたとおりがある。
 自由な人と、不自由な人ともいう。
 不自由な人は、会社員・公務員、大企業の社員、自営業者、中小企業の経営者、医者、弁護士……
 自由な人は、印税が入る作家、画家、家賃収入を得る人、スポーツ選手、株式等の投資家……と続きます。

 大金持ちになりたかったら、会社員や公務員を続けてはいけない。
 できるだけ早くサラリーマンを辞めて、自由な人になったほうがいい。
 従業員がなるべく少ないビジネスシステムをつくる。

 勉強ができるから成功するという考えは幻想でしかない。

 不動産や株をもっている人は自由人だ。

 自由人は、『義務』が少ない。

 自由人は、アイデアノートをもっている。

『第2の秘訣 自分を知り、大好きなことをやる』
 この部分の内容を読み終えての感想は、う~むでした。
 ちょっとわたしとは意見が異なります。
 著者の主張は、自分が好きなことを仕事にするというものです。
 それで、食べていけるならいいですが、たいていは食べていけません。わたしの考えでは、自分の好きなことは趣味にします。利益を求めません。

 好きとか嫌いとかではなく、自分はこれしかできないから、給料が高かろうが安かろうが、これ一筋で行くという人はいます。たいていは、そうなります。

 ローンのことが書いてありますが、ローンは、『消費』ではなく、『資産の形成』につながることもあります。土地付き一戸建ての購入は、ローンの返済が終われば、売却してお金に変えることができる不動産という資産が残ります。

『第3の秘訣 ものや人を見る目を養い、直観力を高める』
 人を判断するときの物差しはもっていたほうがいい。以下は、わたしの物差しです。
 タバコを吸う人やながらスマホをする人には近づかないほうがいい。人に迷惑をかけても自分は許されると勘違いしている人たちです。
 お金を貸してくれという人も避けたほうがいい。貸したお金は返ってきません。金の切れ目が縁の切れ目です。
 自分がやるべきこと、自分でできることを人にやらせようとする人にも近づかいほうがいい。相手の都合のいいように利用されるだけです。
 奇人でも善人(ぜんにん。いい人)と付き合ったほうがいい。心が優しい人が一番です。

 『直観力』(ひらめきは大事です)
 うまくいくとはまります。うまくいかなかったときは、あきらめるだけです。

 『成功するのに必要なのは、流れを読む力だ……』
 
 いいなと思ったフレーズとして、『シーソーゲーム』。人生はシーソーゲームなのです。自分の力ではどうすることもできない運が悪い時期、運がいい時期という波があります。
 『……考えなさい。今は、ブレーキを踏むときか、それとも、アクセルを踏むときなのか……』
 (書いてあるとおりだと思いました)

『第4の秘訣 思考と感情の力を知る』
 わかりにくい理屈ではあります。
 『ふだん考えることが現実の人生をつくる』
 考える+行動する。それが人生であるとのこと。

 内面で起きている自分のことを紙に書く。
 (わたしはメモ魔なので、そうしています)
 紙に書くことで、考えを整理整頓することができます。
 この本では、書くことで、自分で自分とコミュニケーションを図るというように書いてあります。

『第5の秘訣 セールスの達人になる』
 (あなたの人生の成功を応援するという内容で)1000人の署名を集める:署名のお礼として、折り鶴をプレゼントする。

 1000個の電灯を、1個1ドルを超える価格で売る:電気器具への電球の取り付けまでを料金込みにする。

 わたしは、『仕事は、才能と努力と人間関係』だと思っています。この本では、『仕事は、アイデア(工夫(くふう))と努力と人間関係(自分を応援してくれる人を付ける)』と読み取れます。

 う~む。本に書いてあることについてですが、現実はそんなふうにうまくは運びません。

 行動心理学:どうすれば、人間は、(自分のために)動いてくれるか。
 動機付けが大切だそうです。まず、自分への動機づけ、そして、他人への動機づけです。

 セールス:最初は、新規顧客を得るために、ものすごくがんばる。ある程度顧客の数が増えて安定期に入ったら、がんばりを減らす。お得意さんをつくって、末永くきてもらえるお客さんになってもらう。
 自分なりにさらに考えてみました。
 まず、お金を持っている人たちの集団に入っていく。そのなかの何人かと親しくなる。その後、定例的に購入してくれる顧客を付ける。昔は、そういう商売をする人が多かった。

 MBA:経営学修士。
 
 お金持ちの学歴が高いとは限らない。
 セールスとは何かを知る人間は、学歴がなくとも、学歴がある人間を雇用してお金持ちであることを維持しているそうです。
 『セールスは感情だ』そうです。
 絶対売る。顧客との信頼関係が大事。イメージを描ける話し方をする。商品とサービスの完璧な知識をもつ。契約までに至る技術をもつ。(なかなかむずかしい。テレビのテレホンショッピングみたいです)

『第6の秘訣 スピーチの天才になる』、『第7の秘訣 人脈を使いこなす』、『第8の秘訣 お金の法則を学ぶ』
 167ページまで読んできて思ったことです。
 『これから』という未来がある人が読む本です。
 もう老齢のわたしにとっては、終わったことです。
 書いてある内容は、わたしには役立つことでもありません。
 なにしろわたしは、現役の労働者ではないのですから。無職で、さきざきは、お葬式待ちの年金生活者です。お金より健康がだいじです。できるだけ長く、自分の足で歩きたい。老後を楽しみたい。
 142ページあたりまで読んで、もう読まなくてもいいかなあという気持ちになりましたが、もったいないので、最後まで読んでみます。
 なんというか、この本のとおりにやれば、商売で成功できるのかもしれませんが、つまらない人生になりそうです。お金持ちになるための教科書に従った人生です。

 スピーチがうまい人になろうと書いてあります。
 アメリカ合衆国大統領候補のトランプ氏みたいになろうということです。人を引き付けるのです。
 『感情』がだいじだと書いてあります。なめらかに話すのではなく、感情をこめて話すのです。真実を話す。ウソを話してはいけない。(トランプさんはウソが多いけれど)
 なんだか、人を洗脳(マインドコントロール。人心を操作する)するようでもあります。

 人脈の話です。
 今絶頂にある人とつながるのではなく、キーパンソン(コネクター。人と人をつなげる役割を果たしている人)とつながりをもつ。
 
 学校ではお金のことを教えてくれない。
 理科、社会、算数などを、小中高12年間教わるよりも、お金のことを学校で教えるべきだ。(う~む。教職員や教育関係者でも、金銭的に破たんしている人もいそうです)
 
 稼ぐ、使う、守る、投資する、分かち合うことが書かれています。
 金持ちになりたかったら、投資することは必須です。

 『お金は社会を流れる川のようなもの』(同感です)

『第9の秘訣 自分のビジネスをもつ』
 価値や物を提供することで利益を得ることがビジネスである。
 人がお金を払ってもいいという価値がある物とサービスを提供する。
 
 読んでいて思うのは、優秀な人ばかりではない。だからといって、優秀でない人(平凡も含めて)を切り捨てるわけにはいかない。
 努力すれば、だれでも、100%のうちの60%ぐらいはできるようになる。
 あとは、メンバー同士の助け合いで、能力のすき間を埋める。
 それが、チームワークである。

『第10の秘訣 アラジンの魔法のランプの使い方をマスターする』
 この本は、お金持ちになるためのマニュアル本です。

『第11の秘訣 多くの人に気持ちよく助けてもらう』、『第12の秘訣 パートナーシップの力を知る』、『第13の秘訣 ミリオネア・メンタリティを身につける』
 194ページから221ページまで読んでみて、ためになるようなことは書かれていないと感じました。ゲラーさんの自慢話が続くだけです。

『第14の秘訣 勇気をもって決断し、情熱的に行動すること』
 このへんからまたいい内容になってきました。
 自分という主体性がない人がいます。
 自分のことなのに、人に決めてもらおうとする人がいます。
 うまくいかなかったときに、あのとき、あの人がこう言ったからと、人のせいにして、自分を守る人です。卑怯者です。ひきょうもの:正々堂々としていない人間。

 先延ばしはいけないことと説明があります。同感です。すぐやったほうがいい。たいていのことは、すぐに済みます。

 『決断に失敗はない』
 『……間違ったり、失敗しなければ何も学べない……』

『第15の秘訣 失敗とうまくつき合う』
 『「失敗」は、あきらめたときに失敗という。』
 
『第16の秘訣 夢を見ること』、『第17の秘訣 人生がもたらす、すべてを受け取る』
 この世で起きることはすべて、『中立』とあります。良いも悪いもない。(同感です)
 世の中は、白か黒かではなく、たいていは、濃淡のある灰色です。
 仕事に専念すればするほど、家族との距離は離れていきます。
 もうかったら、もうかっただけ、不幸が訪れます。病気や事故、事件や災害に巻き込まれます。
 (わたしが常日頃思う、厄除け(やくよけ)のためにお金を使うということにも通じます)

 最後の感想です。
 書いてあることを書いてあるとおりにやれる人ばかりでもありません。ちょっと現実的ではない部分もあります。それでも、大きな冒険はできないけれど、小さな冒険はできそうです。  

Posted by 熊太郎 at 07:33Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2024年10月12日

ぱんつさん たなかひかる

ぱんつさん たなかひかる ポプラ社

 表紙のカバーの絵のことです。
 おーっ!! 60人もぱんつさんがいます。
 ぱんつの模様(もよう)のデザイン本だろうか。
 ぱんつのカタログみたい。(商品目録)
 あれ?
 ひとり、ぱんつをはいていない人がいます。
 『のーぱんつさん』と紹介があります。

 カバーの下にある絵本の裏表紙に、『ほんぱんつさん』の絵がありました。
 ばんつに、ぱんだの顔が表紙に描いてある本の絵があります。

 『もこ もこ もこ もこ』(なんだろう?)
 (ほほーう)
 『ずぼ ずぼ ずぼ ずぼ』(男たちが現れました)
 ラジオ体操みたいな体操が始まりました。
 おもしろいリズムがあります。
 こっち向いてホイ! あっち向いてホイッと!
 
 あれ? マンガの『進撃の巨人』みたい。
 大きな腕が出てきて、ぱんつさんが、大きなてのひらでぎゅっとつかまれてしまいました。
 なんじゃこりゃ?
 栓抜き(せんぬき)じゃん。ポン!
 おもしろい!
 ぱんつさんが、ぱんつさんをつかんでにぎりしめています。
 綱が伸びてきました。
 なになにまたか!
 おもしろい! マトリョーシカ状態です。(ロシアの玩具がんぐ。人形の中に人形が入っている)
 きりがない。(終わりがない)
 ぱんつさんは出てきますが、ぱんつの柄(がら)の紹介記事はありません。
 ぱんつさんが、おもちゃです。
 なーるほど! ふたりのぱんつさんが、おせんたくものを留める(とめる)洗濯ばさみです。
 ありゃありゃりゃーー 人生に災難はつきものです。雨が降り始めて、おせんたくものが濡れます。
 どしゃぶりじゃーー これ、どうなるの?
 『あめ やんだ』(そうそう、終わりのない苦労はないのよ)
 
 最後のページあたりは、すごいオチです。(話の締め(しめ))
 感服しました。(かんぷく:おそれいりました)
 なかなかない発想です。  

Posted by 熊太郎 at 07:27Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2024年10月09日

絵本 『じゃない!』と、『やっぱり じゃない!』の2冊

絵本 『じゃない!』と、『やっぱり じゃない!』の2冊

『じゃない! チョーヒカル フレーベル館』
 不思議な絵本でした。
 本の帯にある、『固定概念をくつがえす』というとおりの絵本でした。

 作者のチョーヒカルさんを、最初は男性だと思って読んでいました。
 読み終えたとき、最後のページにある写真に女性が映っていたので勘違いをしていたことに気づきました。

 絵のバック(背景)が真っ黒だから、物体が映えます。(はえます:目立つ。引き立つ)

 『きゅうり』、『みかん』、人間の思いこみを、そうじゃないと指摘します。
 見た目の形と、切ったあとの中身が一致しません。
 何かの暗示があります。
 人間も同じく、見た目と中身が違う人がいます。
 たまたま、先日お昼の、『ラジオ人生相談』という番組で、だんなさんが、外面(そとづら)はいいけれど、家では、妻子にきついと嘆く(なげく)奥さんのお悩み相談がありました。けっこう深刻でつらそうでした。お気の毒です。

 『いちご』です。
 へぇーっ、奇想天外(きそうてんがい。想像、予想できない)です。
 なかなか思いつきません。
 『いちご』を開くと、中身は、貝(かい。あさり)でした。

 すごい発想です。
 今までにない絵本です。
 『ピーマン』、『レモン』、『ナス』の中身は、鶏卵(けいらん)です。
 
 次のページでの絵は、絵を見てもなんだろう?と首をかしげます。かしげる:かたむける。
 パンかなあ。くるみのような木の実だろうか。
 見た目で、何かわかりません。
 切ったら、中身は、すいかでした。
 予想もつきませんでした。

 チョコがついた穴あきドーナッツと、穴のないドーナツみたいなお菓子(ちょっとわたしには名称がわかりません(その後、『マカロン』だということがわかりました)、あとは、コーヒーがあります。
 切ると、中身はくだものがいっぱい。
 リンゴ、ネーブル、オレンジ、みかん。(なるほど)。

 アイスクリームは……
 さらに、トッピングものりました。
 中身は、人間の5本指でした。
 ちょっとグロテスクかもとびっくりしましたが、そうでもない。
 なかなかいい感じの絵本です。

 『じゃないかもしれない』と考える。思考する。
 このアイデア、じゃない!というアイデアの発想のきっかけは、いつ、どこであったのか、興味津々です。(きょうみしんしん:あとからあとから関心や疑問が湧いてくる)

 おもしろい絵本でした。


 もう一冊、続編も読んでみました。

『やっぱり じゃない! チョーヒカル フレーベル館』
 二冊目も同じパターンです。読み終えて、二冊で、一冊を読むような感じがしました。

 ピザの中身は、カボチャです。
 甘い和菓子や洋菓子、みたらしだんごの中身は、みかんやかんきつ類でした。
 煮干しのような小魚は、そら豆のような豆類でした。
 
 今度は電球です。
 中身はなんと生卵の黄身と白身でした。
 
 宝石です。
 真珠、エメラルド(?)、サファイアかな。
 ぶどうみたいなもの、リンゴあるいは柿みたいなもの、あけびあるいはアボカドみたいなものでした。
 
 花束は、サラダです。(これはおもしろい!)
 
 絵を描くときの筆は、人間の手のひらです。
 このパターンは、前作と同じです。
 前作と同じなので、出来栄えも同じです。
 なにか、もうひとひねりほしかった。
 
 作者が、絵が大好きなことが伝わってきました。  

Posted by 熊太郎 at 06:42Comments(0)TrackBack(0)読書感想文