2019年03月04日

うわさのずっこけ株式会社 那須正幹

うわさのずっこけ株式会社 那須正幹 ポプラ社文庫

 ハカセ(山中正太郎)、モーちゃん(奥田三吉)、ハチベエ(八谷良平)の三人で、資金を集めて、物を仕入れて、販売して、儲けて、出資者に利子を払うというような内容で始まりました。
 きっかけは、港でカタクチイワシがたくさん連れたところに、いっぱい家族連れが来ており、彼らをお客さんにして、ひと儲けしようという八谷商店の息子ハチベエの発想です。
 物語では、小学校の教室内で、起業の資金集めを児童たちからするのですが、現実にやったら大問題になるでしょう。小説の中ではなんでもできます。それが、小説のいいところでもあります。
 三人は役割分担をして商売を開始します。今は、お弁当や、ジュースなどの仕入れの段階です。

(つづく)

 釣り客目当ての飲食物の販売は順調に進んでいきます。
 株式会社の設立運営話もわかりやすい。株券はお金の預かり証みたいだと思いました。
 何のために働くのかという暗示もあります。お金を稼ぐことが楽しいから働きます。売るものを売りつくすと「快感」を得られます。
 ビールの販売に許可はいらないのだろうか。小学生たちがビールを売ります。まあ、細かいことはいろいろあるのでしょう。小説とわりきります。
 設立した会社の名称が楽しい。「HOYHOY商事株式会社(ホイホイしょうじかぶしきがいしゃ)」
 また今度払うと言って、払ってくれない人がいます。どうするのだろう。
 さかなは一年中同じ場所にはいない。お客さんも同様。商売の厳しさ、むずかしさがあります。
 書かれた当時はまだ週休二日制ではなかったので、小学校も土曜日は授業があります。
 モーちゃんの家は、母子家庭、お姉ちゃんが高校生で、そういう家庭内の事情を児童文学小説のなかで明らかにすることは、当時は珍しかったと思います。

 本のうしろにある石井直人さんという方の「解説」を読みました。その内容は、力強くて光っています。
 このシリーズは、こども向けに書いてはいけない当時のタブーを破って書いてある。ただし、下品なものではない。こどもは働かなくていい、勉強だけをしていればいいという社会の雰囲気の中で、本書では自然にこどもたちを働かせたところがいいポイントになっているという視点でした。小説ではタブーをもうけないということが基本だと再確認するのでした。
 調べた単語などとして、「売りかけ金:未収金」
 良かった言葉などとして、「売れる日もあれば、売れない日もある」  

Posted by 熊太郎 at 06:08Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2019年02月27日

ニルスの不思議な旅 講談社青い鳥文庫

ニルスの不思議な旅 セルマ=ラーゲルレーフ 山室静訳 講談社青い鳥文庫


 小学5年生11歳の頃に読みました。覚えているのは、ニルスが悪い子で、こびとにされて、鳥のガンの背中にのって、北ヨーロッパの半島あたりを旅して、さまざまな体験をつみながら、心優しい人間に成長していくことと、鳥のリーダーの名前が、アッカさん(メス)だったことです。
 最後のシーンで、ニルスがこびとから人間に戻って、アッカさんたちと会話ができなくなって終わりを迎えた気がします。何十年も経って再読してみるとどんな感想になるのか、楽しみです。

(つづく)

 後ろの解説から読みました。作者が女性とは知りませんでした。作者も解説者もすでに亡くなっています。1906年ですから、もう100年以上前の作品です。作者はノーベル文学賞を受賞されています。本は、昔のものでも、いろいろと人間の生き方を教えてくれます。
 ニルスは、昔読んだ時は、自分と同じ11歳小学5年生ぐらいだと思って読みましたが、今回の本を読むと13歳~14歳となっています。年齢は、思春期、反抗期なので意外です。彼は動物たちに「親指こぞう」と呼ばれます。
 3月20日の日曜日から始まって、同じ年の11月9日の水曜日までの期間でお話が続きます。
 ニルスの個性設定は、「勉強は大嫌い、好きなのは食べることと寝ること。生き物をいじめたり、人にいじわるしたりで、少しも優しい心はない」というところから始まります。弱い者いじめをするとんでもない悪い子です。

(つづく)

 ニルスはガンの背中にのっていたと記憶していましたが、読みなおし見てみると、ニルスの家にいた飼い鳥の白いガチョウのモルテンの背中にのっていました。鳥たちは、リーダーのアッカさんを先頭にして、13羽が、Vの字になって飛びます。スウェーデンの南端から北にあるラップランドを目指します。春の渡りです。
 文章は流麗で、情景描写が美しい。
 気づいたのですが、ずるい人間(キツネ)をガンたち(庶民)が叩く精神があります。
 54ページまできて、ここまで読んだだけで、本書が優れた作品であることがわかります。ニルスとおばあさん、鳥たち、読者とのコミュニケーションがあります。
動物、鳥の動きには、迫力と勢い、スピードがある文章表現です。
 ニルス=ホルゲルソンは、お父さんも、お母さんも、先生も近所の子も、だれも好きにはなれない。みなニルスの思いどおりにはさせてくれない。
 どうやったら人間に戻ることができるのか。白いガチョウのモルテンの世話をすることができたら人間に戻してもらえる。弱い者(ヒツジ、ガン)の味方がニルスです。食べるのに必要以上の殺しはしないという注意があります。
 弱人強食の食物連鎖に逆行する内容もあります。生きるための助け合いを優先します。ケガした動物を見捨てません。
 たくさんの動植物の名称が出てきます。動植物園の中にいるようです。
 千と千尋の神隠しみたいなシーン、東日本大震災のシーン、万博会場にあるペルシャの宝飾商店、マルコポーロ東方見聞録みたいなシーンも出てきます。
 「きつねのずる公」がニルスたちの対立相手です。
 206ページまで来ましたが、本の中では、まだ、4月20日の日付で、スタートの3月20日からあまり経っていません。289ページが最終で、11月9日の日付なので大丈夫だろうかと最後の解説部分を読んだら、全体で原稿用紙2000枚以上、55章のうち、24章を選んで乗せてあるそうです。この本では半分ぐらいの文章量です。
 ニルスの小さな姿を想像しながら、洋画のアントマンとか、民話の一寸法師、アイヌのコロポックル、ヨーロッパのこびと、みな、なにかしら関連があるのではないかと空想します。
 湖の埋め立てを中止するお話があります。作品に自然保護の精神があります。湖、鳥、バルト海、雪をかぶる山脈。スウェーデンの首都ストックホルム、
 ワシのゴルゴが強いがゆえにだんだん孤独になっていく姿は良かった。
 ニルスがワシのゴルゴを檻から逃がそうと、毎日少しずつやすりで檻を切っていき、ようやく格子が切れます。少しずつ努力を積み重ねて思いをかなえる姿も良かった。人にやってもらうのではなく、お金で解決するのではなく、自分の体を使って仕事を為す姿がいい。
 鳥とニルスは、スウェーデンの南部から北部のラップランドを目指すわけですが、その距離は途方もなく遠いわけではなく、ラップランドは、避暑目的であることがわかります。夏は白夜で昼間が長い。
 鳥たちの移動はときに、飛行機をイメージします。
 後半にあるカラスのバタキーが話す「オオカミに襲われた旅人の話」が良かった。読み方によっては、人の良いだまされやすい人間になりなさいともとれるのですが、結果はそうではありません。
 今年読んで良かった1冊です。
 産業革命によって動物たちの生息域が減ってきている。さらに、人間同士は戦争をして人間同士で住み場所を奪い合っている。もうそんなことはやめましょうというメッセージが、100年前の人にあります。
 ラストシーンでは、ニルスに永遠にさよならではなく、再見(また会いましょう)とガンたちは言っていたと思いたかった。
 調べた言葉などとして、「植物採集のどうらん:小型のかばん」
 気に入った表現などとして、「少年は心をひきしめました」、「ぼくのお母さんはまだ生きている。お父さんだって生きている」、「(キツネに)しかえしをせずに助けてあげた」、「自分にも他人にも、けしてはやまったことはしないように。きっと逃れる方法はある」、「この世界は、人間がひとりじめにしていいとは思わないで」  

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2019年02月24日

作家になりたい1 小林深雪

作家になりたい1 小林深雪(こばやし・みゆき) 講談社青い鳥文庫

 小学校4年生以上向けの本です。小説家希望者を小説の創作に導くマンガです。
 主人公は、中学2年生の宮永未央(みやなが・みお)で、家は裕福そうです。彼女は、私立中学生で、高校受験はありません。自動的に高校生になれます。ふたごの弟礼央(れお)と妹理央(りお)がいて、そのふたりは天才で、勉学がよくできるという位置づけです。小学3年生のふたりが姉の未央に小説の書き方をコーチします。
 中学2年生宮永未央のひとり語りで物語が進行します。彼女は明るくて活発な女の子です。どこかぬけた部分もあります。パパと仲良しというのが思春期の女子としては意外です。
 宮永未央の対立軸として、「北村由利亜(きたむら・ゆりあ)」がいます。互いのパパ同士が同じ会社で上司と部下の関係です。パパ同士は仲良しの設定です。
 よく練られて考えてある作品です。
 広い世界の中の一点に絞って記述する。外見だけの恋愛、相手をよく知らないのに所有物化、ありえない世界の詐欺化、信じこみやすい人をだます。小説は、「夢」の実現です。
 比較があります。
 気に入った言い回しとして、「だまっていれば美人なんですけど」、「わたし、作家デビューします。いつか、必ず。」
 調べた言葉などとして、「バンケットルーム:披露宴会場、パーティ会場」  

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2019年02月21日

つるばら村の大工さん 茂市久美子

つるばら村の大工さん 茂市久美子(もいち・くみこ) 講談社

 短編12本プラスあとがきです。1編が7ページぐらいです。(あとでわかることですが、12本は、1年間12か月の移り変わりを表しています)
 全体をめくりながら目を通します。動物で、モグラ、キツネ、ウサギ、カモシカ、クマ、タヌキ、カエルなんかが出てくるようです。
 あとがきから読みました。作者の祖父が大工をしていたことが本作品の発想のきっかけとなっているようです。昔は中学を出て職人さんになる人がたくさんいました。
 主人公は、大森勇一さんという若い大工さんです。
「おじいさんの小屋」
 大森勇一さんの祖父大森勇吉さんの知り合いだというもぐらのもぐたが登場します。このはさんが、つるばら村にある理容店のおばさんです。
 勇一さんは幻の少年に会って、勇吉さんが建てた小屋を修理します。あたり一面に咲くカタクリの花がでてきます。以前、愛知県足助(あすけ)で、斜面一面に広がるカタクリの花を見たことを思い出しました。
「モグラの井戸」
 モグラが本当にいて、生きているようでした。ハッピーエンドです。
「カエルのラジオ」
 昔の大工さんのお話です。現代では、雨戸は金属製のものになりました。
 お話しは良質です。落ち着いて安心できる味わいがあります。
 すがすがしい。
「キツネのお面」
 盆踊りのお話しです。若い世代への伝承が少なくなった今日この頃です。
 くるみ味噌:田楽、五平餅などにつける。
「よもぎ堂の入浴剤」
 つるばら村には、よもぎ平があり、そこには、よもぎ堂というお店があります。店主はウサギさんです。ヨモギの葉っぱで入浴剤をつくって売っています。
 それから、つるばら村には、月見が原があって、そこには、キツネの子どもたちが通う小学校があります。
「もみじの茶店」
 紅葉風景が広がっています。もみじがとくにきれいなのは、つるばら村にある笛吹山です。
「冬の合宿所」
 合宿所は平屋建てですが、屋根裏部屋と地下室があります。
 妖精や虫が出てくるお話でした。
 白いカモシカはロマンチックです。
「初夢の眠る部屋」
 小さな天狗が登場します。
「タヌキのダイコン」
 寒干しダイコンがおいしい。
「南風のプレゼント」
 春一番、春二番、春風のプレゼントです。
「クマのわすれもの」
 クマがコックさんを目指します。
「山小屋のレストラン」
 フキノトウやタラノメが入ったオムレツです。

 いろんな植物が出てきます。カタクリ、オキナグサ、ノイバラ、ヤマザクラ、もみじ、ヤマボウシ、コナラ(けっこう大きい、小さくない)、ホオノキ、ヤマボウシ、(わからないものはネットで調べて写真を見ました。見かけたことがある樹木ばかりです。カタクリで始まってカタクリで終わります)
 読んで気持ちのよい短編集でした。  

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2019年02月19日

古事記 ~日本の神さまの物語~ 須田淳

古事記 ~日本の神さまの物語~ 須田淳 Gakken

 こどもさん向けの本です。10歳までに読みたい日本名作と表示があります。
 博士(太安万侶おおのやすまろ)が712年に書き上げた。完成までに40年ぐらいかかっているようです。
 前提としての絵と説明がわかりやすい。読み進めながら幾度か「登場する神さまたち」のページを見ました。
 題して、「古きことの書」

 「黄泉の国(よみのくに)」のお話は怖い。死者の国の話です。男の神イザナギが亡くなった女の神イザナミに会いに行きます。

 壮大な物語です。まず、神々がいて、ようやく初代天皇の時代が始まります。(神武天皇紀元前711年~)現代人の感覚とは異なる部分もあり、理解できないお話しもあります。
 
 「スサノオ」という神さまは勇猛果敢な神だと思っていましたが、書中では、乱暴者です。赤ちゃんのようなわがままでがまんがきかない部分ももっています。

 「ヤマタノオロチ」の部分では、怪獣、怪物映画の創成期を思い出します。「キングギドラ」という怪獣がいます。頭は八つ、尾も八つ、目は真っ赤です。ヤマタノオロチは、「水害」とか「火山の噴火」を表現しているとあります。
 生けにえの部分では、食べてもまずい大人の男はいらない。娘やこどもがほしいとあり、まあそういうものだろうなとユーモアを感じました。

 「根の国の物語」は、島根県が場所だと思うのですが、意地悪さと愛情が同居している物語でした。
 離婚再婚みたいな話もあります。

 「小さな神さま」は、その後の一寸法師のお話の元になったのでしょう。

 神話時代の結婚は、「ウミサチとヤマサチ」を読むと、見た目から恋仲になることがわかります。昔も今も恋愛は見た目から始まります。

 気に入った部分として、「巻物を読み終えた」という最後近くの文章がありました。  

Posted by 熊太郎 at 06:55Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2019年02月18日

へんなかお 大森裕子

へんなかお 大森裕子 白泉社

 こどもさん向けの絵本です。
 へんなかおが、ものすごくへんなかおなので笑えます。くまさんですー
 しまうまさん、かわいい。でも、へんなかおー
 かえるくんも、へんなかおー
 らいおんくん、ぶたくん、そしてさいごはあなた自身です。
 鏡が出てきましたー  

Posted by 熊太郎 at 06:33Comments(0)TrackBack(0)読書感想文