2025年04月12日

三千円の使いかた 原田ひ香

三千円の使いかた 原田ひ香 中公文庫

 前々から読んでみたかった文庫本です。
 お金がらみの短編話が6本掲載されています。
 単行本は、2018年(平成30年)の発行で、文庫本は、2021年(令和3年)の発行で、2024年(令和6年)で25刷もされている、よく売れて読まれている本です。

 以下は、登場人物である御厨(みくりや)家の女性たちなどです。

御厨美帆:実家は、東京都北区十条駅から徒歩10分ぐらいのところにある。就職して、祐天寺(ゆうてんじ。東京都目黒区)でひとり暮らしを始めた。(貯金は30万円。う~む。少ない)。
 東京西新宿にあるIT会社で働いている。会社の規模は中堅。おっさん社員がいて、女性社員への蔑視(べっし。見下し(みくだし、差別))がある。宴会ではエロ話も出る。会社ではセクハラあり。(先日NHKニュースでとりあげられていた、「#私が退職した本当の理由」ということと同じ内容のものでした)

井戸(旧姓。御厨)真帆(美帆の姉。5歳年上):結婚する前は証券会社で働いていた。(貯金600万円ちょっと)。既婚。専業主婦。一人娘として、3歳女児の佐帆(さほ)がいる。こどもがいる幸せがある。
 夫の名前は太陽で、消防士をしている。月給23万円で高くはないが、公務員で収入は安定している。夫は、労働に関する考え方は古い。男尊女卑の意識がある。セクハラトラブルが起きたときは、女性にも責任があるという発言をする。

御厨智子(美帆と真帆の母親):習い事に熱心で向上心が強い。(貯金100万円弱)

御厨琴子(祖母):(貯金1000万円)

小田街絵(おだ・まちえ):御厨美帆の職場の教育係だったが、リストラされて退職した。44歳。母親と東京杉並区内にある大きな屋敷でふたり暮らし。未婚。お嬢さま。街絵は、母親が35歳のときに生まれたこども。

長谷川大樹:御厨美帆の彼氏。女性蔑視(べっし。差別する。女性を軽くみる)の考え方をもっていることがわかり、美帆の気持ちが彼から離れていきそうになっている。

南山部長:御厨美帆の会社の人事権をもったエロ上司


『第1話 三千円の使いかた』
 祖母の言葉、『人は三千円の使いかたで人生が決まるよ』で始まりました。
 
 いろいろと考察があります。
 自分という人間にとって大切なものとは。
家:自分がすむところ。終の住処(ついのすみか)。積立金や管理費がいる分譲マンションよりも一軒家がいい。新築でなくても、中古の一軒家でいい。
身体(からだ):健康な体
お金:生きていくために必要なもの

 これから自分は、どうやって生きていったらいいのだろう。

 100円貯金の話が出ます。
 お金の貯め方、増やし方のノウハウを教えてくれる短編集のようです。
 わたしも若い頃、100円ではありませんが、毎週1回郵便局のATMに行って、郵便局の通帳に1000円ずつ入金しました。コツコツ長く続けることは、わたしにとっては苦になりません。こどものころからのそんな性格です。
 ボーナスのときには、多めに通帳に入金しました。金額の数値が増えていくことが、生活していくことの楽しみでした。お金の増加は、つらい仕事に耐えることができる動機付けにもなります。
 へんな話ですが、顧客にガンガンどなられ続けていても、心の中で、(ああ、この人よりも、自分のほうがお金をもっているからだいじょうぶ)と思ったことはあります。
 毎週積立1000円貯金は、100万円たまったら、結婚10周年記念ということで、家族そろってハワイ旅行に行こうというのが夢でしたが、二人目のこどもが生まれたときに、妻が、制度が始まったばかりの無給の育児休業を、こどもが1歳になるぐらいまで取得して、貯めていたハワイ貯金は、生活費に充当して使い果たしてしまいました。でも、それはそれで良かったと思います。

 短編のタイトル、『三千円の使いかた』の意味が判明します。
 『黒船スーコさんの節約セミナーのセミナー料が、三千円です』というわけです。
 『8×12は魔法の数字』という本を出版されています。8万円×12か月です。1年で、96万円残ります。プラス夏と冬のボーナスで2万円です。合計100万円です。複利3%で運用すると将来、何千万円にもふくらむのです。その範囲以外のお金は、使い放題です!という黒船スーコ先生の激励があります。
 『8万円』というのは、支払いが義務である家賃相当額だなあと思うのです。家賃の支払いがなければ、自然に貯めることができる金額です。


『第2話 七十三歳のハローワーク』
 今回の主役は、御厨琴子(祖母。みくりや・ことこ):(貯金1000万円)です。銀行の金利目当てにお金を動かして、貯金を増加させていく方式の資産運用をしています。期間限定、特別金利の利用です。
 お金は現金で持ち歩きます。そうやって、手数料を払わなくてもいいようにして、お金をあっちの銀行、こっちの銀行へと動かして、お金を増やします。(じっさい、そういう人っています)。
 御厨琴子は、3年かけて、利子を貯めて、40万円以上するマッサージチェアを購入して愛用しています。
 夫は商社で働いて定年退職を迎えて、65歳まで子会社の役員をしていた。年金は、夫婦ふたりで、2か月に1回26万円ぐらいだった。夫が亡くなってひとりになったら年金は、月8万円ぐらいに減ってしまった。
 琴子はずっと家計簿をつけている。
琴子の母:大正13年(1924年)生まれ。家計簿が女性誌に登場したのが、1904年(明治37年)日露戦争があった。ちなみに、日清戦争が、1894年(明治27年)でした。

小森安生(こもり・やすお):御厨琴子の男友達。琴子より年齢がだいぶ下。近所に住んでいて、ホームセンターで安売りの花のかたまりをふたりで買って、割り勘(わりかん)にしたことが縁で友達付き合いをするようになった。
 季節に応じて、北海道や沖縄でアルバイトをする生活をしている。自由人。お金には汚くない男である。亡くなった築50年の祖母宅で、ひとりで暮らしている。おばあちゃん子だった。海外旅行が趣味。祖母宅を管理している。

御厨智子((みくりや)御厨琴子の嫁。夫は御厨和彦。智子は、御厨美帆と真帆の母親):習い事に熱心で向上心が強い。(貯金100万円弱)。英語とフランス語の学習が趣味

 御厨琴子は、御厨智子の依頼で、おせち料理をつくるための先生役を始めることになりました。生徒は、語学学習の生徒さんたちです。『おせち料理教室』です。1回だけの教室でしたが、御厨琴子に働きたいという気持ちが芽生えました。

牛尾みね:御厨琴子の母親。大正13年生まれ

三田(みた):十条銀座商店街にあるコンビニ十条店の店長

 後半はほろりとくるものがありました。
 他人さまから必要とされている。人の役に立つために、自分に、『役割』がある。
 そういう話でした。
 ほかに、『家計簿をつけること』の話がありました。戦前・戦中・戦後とか家計簿をつけ続けた主婦が、日本の復興を陰で支えてきたのです。

 御厨琴子は、十条銀座商店街に新規で支店としての店舗を開設する和菓子の、『湊屋(みなとや)』でおだんごを売る仕事につくことになりました。
 

『第3話 目指せ! 貯金一千万!』
 御厨家の三代目孫娘、高校同級生消防士男性と結婚した御厨真帆のお話です。
 結婚して、苦痛だった証券会社勤務を辞めて、専業主婦になって、3歳の娘佐帆がいてという家族構成です。
 なんだか、読んでいると、家計のつましさ、倹約、節約話がせつない。
 かなりきつい生計費です。
 働きたくなかったから結婚に逃げたという負い目の気持ちをもっておられます。
 そんな彼女が、同級生の婚約話がある食事会に招かれてみじめな思いをします。
 婚約者の結婚相手はお金持ちの家の坊ちゃんです。ダイヤの婚約指輪は、1.2カラットの大きさだそうです。御厨真帆は、婚約指輪は買わずに結婚しました。同級生と自分の財力を比較して、気持ちがへこむ御厨真帆ですが、話の後半で、盛り返します。結婚はお金ではないのです。結婚の基本は、愛情なのです。

御厨真帆の同級生友だち:小春(この人が今回婚約した話題の中心人物。婚約相手が幸太郎。新居は2億円のタワーマンションの部屋(夫の両親が用意した)。結婚式は高級ホテル、新婚旅行先はイタリア)、奈美(不動産会社勤務。未婚)、郁乃(小さな食品会社勤務。未婚)

 御厨真帆宅の1か月の家計状況です。
 旦那の給料:23万円。ボーナス
 4万5000円で生活する。
 食費:月2万円
 日用品代:5000円
 1週間に5000円で、4週間生活する。
 合計4万5000円
 さらに、
 だんなのこずかい:2万円
 家賃:8万8000円
 あとは、スマホ代(夫婦とも)、光熱費、生命保険料(夫のみ2000円)、予備費です。
 貯金:6万円
 貯金の目標は、1000万円です。用途は、こどもの大学費用がメインです。(現在までに貯めたのは、600万円ちょっと)

 節約の見返りは、お金が残るということです。

 最後に、商店街の和菓子屋で働き始めた祖母の話がチラリと出ます。家計簿をつけましょうねという話です。
 ちゃんと死ぬのにもお金がいります。祖母がそんな話をします。今の貯金額では、ちゃんと死ねないのです。先日観た、倍賞千恵子さん主演の邦画、『プラン75』を思い出しました。75歳になって、お金がない人は、本人の希望で、ガスを吸って死んで、焼却場でゴミとして焼かれるのです。(表向きは、ていねいに弔います(とむらいます)ということになっていました)


『第4話 費用対効果』
小森安生(こもり・やすお):御厨琴子(みくりや・ことこ)のお友達。もうすぐ40歳

れな:小森安生のバイト先(漁港)の二十歳の大学生。バイト仲間。小森安生に馴れ馴れしい(なれなれしい)。小森はそれを嫌がっている。手足が長い。髪の毛がふわふらしている。裕福な家の子ども。

本木きなり(もとき・きなり。30歳過ぎ。旅行ライター):小森安生が付き合っている女性だが、今はふたりの間に冷たい風が吹いている。本木きなりは、小森安生と結婚したいが、小森安生は結婚を考えていない。ひとりで気楽に生活していきたい。本木きなりは、職業的にも自立した女性で、お金がある。結婚したら、小森安生に、『主夫』になってもらうことを願っている。

 本木きなりと、井戸真帆(旧姓御厨)が会います。
 お金の話になります。
iDeCo:イデコ。個人型確定拠出年金(こじんがたかくていきょしゅつねんきん)。私的年金制度。税制で優遇される)
小規模企業共済:退職金の積み立て。税制上の優遇あり。
 
 う~む。小森安生はいいかげんな人間です。いわゆるバックパッカー(個人旅行をする人。ときおり現地でバイトをする)は、わたしは、逃げる人だと思っています。今ある困難に立ち向かって、今いる場所に根をはって、しっかりと生活していく人ではありません。
 178ページに、自分でもこうつぶやいておられます。『昔から、ちょっと気まずいことが起きると逃げてしまう……』

 小森安生は、小森と結婚したいという本木きなりに、自分はこどもはいらないと言って、結婚の申し込みを保留にしたがる(結婚せずにだらだらと付き合うことはよしとする)。
 そんな小森安生が、一度の浮かれた関係を、れなと、もったところ、れなが妊娠したという。れなが結婚を迫ってくる。
 バカヤローと怒る(いかる)本木きなりです。

 すったもんだがあります。
 この短編部分は、ほかの短編とは毛色が違います。毛色:様子、種類
 
 『費用対効果(投資した費用にたいるする利益)を考えていたら、こどもはつくれない』
 
 なんというか、世の中は、不合理、不条理、理不尽、不公平が当たり前なのです。
 正義をふりかざして戦いを挑んでも(いどんでも)、仲間はずれにされることが多い。
 不合理等であることを受け入れながら、気持ちに折り合いをつけて、知恵を出して、粘り強く、したたかに生活していくことが凡人としての技術です。

『第5話 熟年離婚の経済学』
 離婚時の財産分けの話です。
 女性は、離婚すると、離婚後の生活費に困ります。
 健康保険とか、介護保険とか、国民年金とか、いろいろ考えると、仮面夫婦でもいいから、あるいは、家庭内別居でもいいから、戸籍上は夫婦の形態を維持しておいたほうがいいということはあります。されど、もうぜったいに一緒にいたくないのです。

 男尊女卑、女を家政婦扱いするご主人がいます。
 家事や料理はいっさいしません。(仕事をしているからいいじゃないかというお考えです)
 料理は、妻か、自分を生んでくれた母親の仕事だと思いこんでおられます。
 困った人です。

御厨智子(みくりや・ともこ):井戸(旧姓御厨)真帆と御厨美帆の母親。夫といっしょに暮らすことがイヤになってきた。(さきほど書いた家事・料理をいっさいしない夫です)。子宮体ガンのステージⅠが見つかって入院した。

御厨和彦:御厨智子の夫。長女真帆と次女美帆の父親。

河野千さと(こうの・ちさと):御厨智子の親友。こちらは、本当に離婚する気です。夫との離婚目的のために、弁護士が入っています。千さとについて、結婚前は、航空会社の客室乗務員だった。

河野義明:河野千さとの夫。大手航空会社勤務。不倫をしている。相手は若いスッチ―(スチュワーデスの俗語、航空機客室乗務員)

河野千晶(こうの・ちあき):河野義明と千さととのこども。長女。大学生

 御厨和彦について(わたしが思うこと)
 自分が食べるメシぐらい、自分でつくれないのだろうか。米をたいて、おかずを用意して、そんなにむずかしいことでもなかろうに。食器洗いだって、やらねばならぬ。なんというか、昔の男なのね。

 御厨智子にがんが見つかって、開腹手術をして帰宅したというのに、対応が悪い夫です。
 妻を家政婦か道具のようにしかみていません。(こんな男とはいっしょに暮せません。こどもみたいな夫です。この夫は、妻がだめなら、実母にメシを用意してもらうのです)
 御厨智子がつぶやきます。『これからもずっと私はこの人のご飯をつくり続けるのだろうか……』

 わたしはときおり、お昼のラジオ番組で、人生相談を聴きながらお昼ご飯を食べているのですが、親子、兄弟姉妹、親族間で、うまくいっていないところがたくさんあるのだなあということがわかります。
 うわべでは、何事もなく、仲良しそうに見えている家族や親族でも、一歩中に入るといろんなトラブルをかかえておられます。
 まあ、どこの一族にも、トラブルメーカーになりそうな身内のひとりやふたりはかかえています。
 
 女性の、『更年期(こうねんき。女性ホルモンの分泌が急激に減少する時期)』の話になります。
 熟年離婚のときの財産等の分割割合の話になります。
 
 『……この人(夫)は料理もできないくせに私の作ったものを感謝もなく黙って食べているのか……』(御厨智子さんの夫に対する怒りは爆発寸前です。よく話し合ったほうがいい。話し合いをしないで、いきなり感情的になって爆発すると、とりかえしがつかなくなることがあります)

 (男と結婚するときは、できれば相手に自炊体験がある人を選んだほうがいい)

 そして、相談料1時間3000円のフィナンシャルプランナー黒船スーコに相談するのです。

 『離婚は人生の終わりじゃない。新しい人生の始まりなんですよ』(なるほど)

 ばかな、だんなだなあ。


『第6話 節約家の人々』
 最後のお話になりました。
 御厨美帆(みくりや・みほ、次女、未婚)の話です。
 付き合っていた大樹とは別れたそうです。
 今付き合っているデザイン事務所勤務の沼田翔平と結婚しようとしたら、翔平に奨学金という借金があることが判明しました。550万円(月々3万500円の返済。利子3%。返済期間20年。最終的に700万円以上支払うことになる)。親が勝手に翔平の名前を使って借りていたそうです。
 そして親は、返済は、翔平がするべきだと主張しているのです。さて、どうしようです。(そんなことができるのだろうか。虚偽の奨学金受け取りについてです。まあ、本人が返すべきでしょうな。奨学金のおかけで、美術大学を卒業できて、デザイン事務所に就職で来たのですから。しかし550万円は多額の借金です)。御厨家からは、美帆の結婚に反対する声が出てきます。
 <後日の追記事項:たまたまですが、札幌地方裁判所で、似たような事例で、日本学生支援機構が敗訴するという判決が3月21日に出ました。親がこどもに黙って奨学金を借りています。親が返済していたのですが、返済できなくなって、98万円の(未返済分+利子)返済金が残っています。判決では、こどもに返済義務はないという判決になっています。借りた奨学金は、こどもの学業以外の別の用途に使われていました(こどもの母親のがんの治療費にあてたそうです)>

栄太:沼田翔平の父親。翔平はじめこどもたちは、父親をお父さんとは呼ばない。『栄太』と呼ぶ。上下関係のない、ざっくばらんな家庭です。
加奈子:沼田翔平の母親

 全体で337ページあるうちの294ページまで読んできて思ったことです。
 第1話の『三千円の使い方』の部分だけで、この本の趣旨は語りつくされているのではないか。
 3000円の授業料で、お金の貯め方、使い方を学ぶ。むずかしいことがあるときは、関係者一同でよく話し合う。
 話し合って、いろいろやりくりをして、ベスト(最上級)ではないけれど、ベター(最善策)な手法を考え出して実行していく。
 個々の話は、じょうずにまとめてあります。

 御厨美帆(みくりや・みほ)はブログをやっている。
 御厨美帆がブログに書いた言葉です。
 『お金や節約は、人が幸せになるためのもの。それが目的になったらいけない。』
 
 わたしの意見ですが、結婚話を親は反対しないほうがいい。
 とくに父親は、娘がどんな男を連れてきても、反対してはいけません。
 『おめでとう!』と一言(ひとこと)言えばいいのです。
 それが父親の役割です。
 反対してこじれると、あとあと取返しがつかない状態に発展することもあります。
 結婚するのはこどものほうです。結婚するのは親ではありません。


『解説 「他人(ひと)は他人、自分は自分」と、あなたは心の底から割り切れていますか?』 垣谷美雨
 かなり力の入った解説になっています。解説が、ひとつの作品のような内容でした。
 ご自身の経済状況や性格・性質をからめながらリアルなことが書いてある文章です。
 東京は経済格差が大きい。お金持ちにとっては楽しめるが、そうでない人たちは家賃から苦しむ。
 学生時代は平等でも、だんだん格差ができてくる。学生時代の友人でも、だんだん経済的に優劣ができてくる。年齢を重ねてから、いっしょに旅行をしようとしても、旅行の内容で話し合いがつかないから、旅行には行けない。
 旦那(だんな)の稼ぎで、妻について貧富の差が生まれてくる。
 お金のことに加えて、男次第の人生を送らねばならぬ女性の立場がせつないというようなことが書いてあります。  

Posted by 熊太郎 at 07:29Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2025年04月11日

伝える極意 思いを言葉にする30の方法 草野仁

伝える極意 思いを言葉にする30の方法 草野仁(くさの・ひとし) SB新書

 著者は、テレビ番組、『徹子の部屋』にゲストとして出演されました。
 徹子さんとのおふたりのトークは、おふたりともお話上手なので感心しました。清流が流れるように会話がはずみます。
 草野さんが本を出されているということなので、取り寄せてみました。
 読み始めます。読みながら感想を足していきます。

(1回目の本読み)
 わたしはまず、1ページずつ、ゆっくり最後まで、ザーッと目をとおします。
 受けた印象として、著者は、『仕事人間』です。
 1944年(昭和19年)生まれ。81歳です。
 もうひとつ、教訓本という印象です。(教え諭す(さとす)。成功するためのマニュアル(手引き))
 ありのままでいく。かっこつけない。
 就職する前から、スポーツが好きだった。NHKを取材記者になるつもりで受けたが、アナウンサーとして配属された。自分は、スポーツアナウンサーになる道を選んだ。
 黒柳徹子さんとの関りあり。番組、『日立 世界・ふしぎ発見!』です。
 著者に、鹿児島放送局、福岡放送局で勤務した時代あり。その後、大阪、東京です。
 オウム真理教、地下鉄サリン事件の報道体験あり。
 仕事上利害関係がある人間とは、なるべくケンカはしないそうです。
 統一教会問題に関する記事あり。
 
(2回目の本読み)
 NHKを取材記者になるつもりで受けたら、アナウンサーで採用された。
 希望とは違っていたが、やってみたら自分に向いていた。
 (仕事というものは、人事異動による部署異動も含めて、自分には向かないだろうなあと思っていた仕事をやってみたら、案外自分に向いていたということは、じっさいにあります。まずは、やってみること。できるように努力することで、やっていけるということは現実にはあります。100%できなくても、60%ぐらいできたら仕事を継続していけるということはあります。仕事はチームワークです。お互いの得手不得手を組み合わせて助け合ってやっていくものです)

 本のレイアウト(構造)です。学生さん向けの参考書のようでもあります。
 第1章から第4章まであって、最後に、『特別収録(有名人とのこと)』があります。
 本の構造と内容は、理論的です。

第1章 著者の実体験や実例をもとにして記述してあります。項目は、『プロが「伝える」前にやっている10のこと』です。「準備」ですな。

 日本人は歴史的に話し言葉がにがてということが書いてあります。書くことは学ぶけれど、話すことは学ばないのです。自分の脳みそにあることを、言葉にして、口から声で表現するという習慣が乏しかった(とぼしかった)。同一民族であるから、『察する(さっする。言わなくてもわかる)』ことに期待していた。そういうことについて書いてあるとわたしは理解しました。
 対して、多民族国家である外国では、『対話』をしないとお互いを理解することができなかったので、会話技術が発展した。

 相手に会う前に、相手についての情報を収集しておく。さらに、相手と同じことを自分も体験しておくと話がうまくいく。話がはずむ。

 お勉強の本です。

 マニュアルに従って、AI人間(人工知能で動いているような人間)を目指すのか……
 人間は、感情の動物です。仕事中はしかたがありませんが、仕事を離れたときは、感情のままに生活したい、話したい。

 じっさいにあった事例を提示しながら考察が続きます。
 
クレバー:ずる賢い、抜け目がない。

 日常会話のレベルを高める。
 誰にでもわかる易しい(やさしい)言葉を使って、相手が瞬間的に理解できる話し方をする。
 
 (なかなかむずかしい。わたしが思う雑談は、思いつくことを、単語でぽつりぽつりと口から出していって、時間を埋めていくものです。
 案外、人って、自分の言いたいことは言いたいのですが、相手が話していることは聞いてくれていません。
 雑談は、気持ちの交流です。仕事で行う会話ではないのです)

『第2章 相手の心をつかむ「伝え方」ベスト16』
 この章はけっこう長い。61ページから146ページまで、86ページあります。

 「言葉をひらく」文章:聞いた瞬間に理解できる言葉、平易でわかりやすい言葉を使う。わかりやすい言葉に言い換える。
 
 成功談よりも失敗談をする。

 いろいろな有名人が出てきます。
 亡くなった人もいます。
 最近自分が思うことですが、自分が三十代始めだったころに、五十代、六十代だった人たちのほとんどは、もうお亡くなりになりました。生きていても、入院されているか、認知症などになられて施設に入られています。時の流れを感じます。
 
 会話の秘訣を簡潔にまとめてある本です。
 読んでいて思うのは、著者は、『仕事人間』として人生を送ってきた人です。
 108ページに、『「?」で終わる質問をする』というようなことが書いてありますが、その手法は、わたしは好みません。なぜなら、相手に質問をするということは、相手に答えを考えさせる負担を強いる(しいる。強制する)ということです。嫌がられます。
 わたしは、質問と回答を繰り返すパターンの会話をする人との会話は疲れます。だから、自分は相手に質問はなるべくしません。自分が思うことをだらだらと話します。

 こちらの本では、全般的に、上流階級の人たちとのつきあいでの会話について書いてあります。
 凡人にはムリです。能力の水準が、著者さんほど高くはありません。
 凡人は、たわいない言葉で、気持ちの交流をするだけです。自分の言いたいことは言うけれど、相手の言うことは、聞いているようで聞いてはいません。だれしも、マイペースです。

『第3章 「伝えた」後に実践したいシンプル4習慣』
 ザ・ワイド:テレビ番組。1993年(平成5年)から、2007年(平成19年)まで放送された。14年半の長寿番組。ワイドショー。著者が出演した。
 番組での思い出話が書いてあります。

『第4章 マスターに聞く! 伝える極意・10のQ&A』
 研修のテキスト本のようでもあります。
 だれもができることではありません。
 一定の学力水準がある人向きの本です。

『特別収録 マネしたいあの人の「伝える力」ベスト6』
 なんというか、頭のいい人の傾向として、ランク付けをしたがるというものがあります。
 順位付けです。
 学力テストの延長を人生で行っているような感じがします。
 そこに、今どきのこととして、AI(人工知能)がからんできます。
 アナウンサーの業務はいずれ、AIがやるようになる。
 人間は、『ブロードキャスター』を目指すとあります。
ブロードキャスター:個人が個性をもち、自分の言葉で情報に関する自分や組織の思いを伝えていく。人間としての能力を発揮する。分析と判断に自信と責任をもつ。

 本全体を読み終えて、人間界の知識人という上層部で生活している人についての、そういうこと(会話手法)が書いてあると理解しました。  

Posted by 熊太郎 at 07:04Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2025年04月09日

ママはいつもつけまつげ 神津はづき

ママはいつもつけまつげ 母・中村メイコとドタバタ喜劇 神津はづき(こうづ・はづき) 小学館

 テレビ番組、『徹子の部屋』に、神津カンナさんとこちらの本を書いた神津はづきさんがゲストで出演されました。そのときには、すでにこの本を手に入れていました。番組を見てから本を読み始めました。本に書かれていることが、番組内で発言されていることに気づきました。本のほうが、内容が詳細です。

 まあ、すさまじい。おふたりの母親である中村メイコさんは、一般的な母親像とはかけ離れていました。中村メイコさんは、2歳から子役で人生を送られた方です。特殊な環境で育った方です。ふつうではありません。驚きました。

 中村メイコさんは、2023年(令和5年)のおおみそかに、87歳で亡くなっています。著者61歳で原稿を書き始め、62歳にな られている2025年の今年(令和7年)、この本を出されています。

 番組を観ているときに驚いたのは、中村メイコさんは、アルコール依存だったのではないかということです。
 娘さんおふたりは、(仕事の時を除いて)母親がシラフ(アルコールを飲んでいない)だったときの姿を家では見たことがないと発言されました。ストレスがあったのだろうか。
 車いす生活になっても、両足の間にお酒の瓶(びん)があって、両足で持ち上げて中身を飲んでいたそうです。びっくりしました。

 人間にはいろんな人がいるという感想をもちました。

 お金の苦労はないご家族です。
 中村メイコさんは、洋服や靴も大量に購入されたそうです。(それなのに、死後確認したら、品物のほとんどはなくなっていたそうです。自分なりに終活をされていた。高価なものも人にあげていた)

帯揚げ(おびあげ):着物の帯の上辺を飾る小物

 著者が4歳のときに、うちの母親は、よその母親とはなにか違う。変であるということに気づかれています。
 読んでいると、中村メイコさんは、常に、女優として、『演技』のことが頭から離れたことがない人だったということがわかります。
 本を読むことで、自分が知らない世界を知ることができると、この本を読みながら納得しました。
 著者は、父親である神津善行(こうづ・よしゆき)さんに相談します。中村メイコさんを普通のママにしてほしいと。神津さんの返答です。お母さんは、普通の母親はできない人だからあきらめなさい。パパもがまんするからあなたもずーっとがまんしなさい。
 著者はその言葉に納得してあきらめました。

 まあ、ちょっと考えられないようなリアクション(反応)をされる中村メイコさんです。
 中村メイコさんのモットー(目標、行動方針)が、『人生は喜劇的でありたい』です。人間界の暮らしにおいて、言動が常識を超越しています。
 中村メイコさんは、悲劇を嫌い、ユーモアを大事にします。

 有名人のこどもとして生まれての著者のご苦労があります。
 以前、歌手の森昌子さんが書いた本でも、息子さんふたりが両親に、小学校に来ないで欲しいと言われたと書いてあった記憶です。森進一さんと森昌子さんが学校にくると大騒ぎになるのです。

 こちらの本では、美空ひばりさんと、中村メイコさんと神津善行さんが、ひとつの大きなベッドで、固まって寝ておられます。
 まあ、一般家庭では考えられません。たしか、安藤サクラさんも、柄本明さんご夫婦といっしょにひとつのベッドで寝ていたことがあるとテレビ番組で聞きました。
 まだ、10代のショーケンさん(萩原健一)も中村メイコ宅のじゅうたんの上で寝ています。

 親ガチャという言葉がありますが、(生まれてくるこどもが家庭や家庭環境を選べない)、生まれてくる家を間違えたという言い方もあります。
 神津家の娘さんふたりは、あきらめたのです。ふつうのママを望めません。
 まあ、そういうことってたまにはあります。親をやれない親というのはいます。こどもにとっては不幸なのでしょう。
 こどもに不満があれば、自分がおとなになったとき、自分好みの家庭や家族を自分の力でつくればいいと思います。親には期待しないほうがいい。期待してもかなわないのですから。

(つづく)

 全体で303ページあるうちの、214ページまで読みました。
 なんというか。驚きの連続です。フツー(普通)ではありません。
 超越しています。だれもが体験できるような家庭環境ではありません。
 お金はある。だけど、母親は(中村メイコさんは)、母親ではない。女優さん(演技を演じる人)です。母親役の演技は、何パターンでも演じられるけれど、演じるだけで、中身も結果も伴っていません。女優は演じることができればいい。実際にそのことができなくてもいいと書いてあります。中村メイコさんは、仕事人間です。生まれながらの根っからの女優です。
 まあ、驚きました。そして、中村メイコさんには、ご自身が好きで、ちゃんと取り組んだ趣味というものがありませんでした。(仕事が趣味だったのかも)。おしゃれして食事に行くことと、買い物好きですが、趣味とはいえないようなやりかただったそうです。買い物は爆買いをして、買った品物を知り合いにあげるというやり方だったそうです。
 中村メイコさんがいっしょに遊ぶ友だちは、美空ひばりさんひとりしかいなかったそうです。
 でも、ご主人(中村メイコさんは23歳のときに結婚した)と娘さんふたりがいたので良かった。助かりました。

 中村メイコさんは、自転車に乗ることができなかった。

 ご家族の楽しみが、花札遊びだった。
花札:カードゲーム

 ふたりの娘さんたちには、まだこどものうちから、テレビや映画、舞台に出ている有名人さんたちとの出会いや交流があります。有名人の人たちもまだ若い。
 美空ひばりさん(昭和27年、中村メイコさんが18歳のときに、15歳の美空ひばりさんと出会っています)、黒柳徹子さん、草笛光子さん、浅丘ルリ子さん、伊東四朗さん、佐藤栄作さん(元総理大臣)、三島由紀夫さん、勝新太郎さん、小松左京さん、石原慎太郎さん、井伏鱒二さん(いぶせ・ますじさん)、今日出海さん(こん・ひでみさん)、郷ひろみさん(まだ16歳です。著者は9歳でした)、ゲイボーイの男性たちの訪問もあります。日野皓正(ひの・てるまさ)さん、森繁久彌さん、森公美子さん、松山善三さん(映画監督)、一の宮あつ子さん(女優)、笑福亭鶴瓶さん、阿川佐和子さん、黒柳守綱さん(黒柳徹子さんのお父さん)

生成りのタフタ生地(きなりのたふたきじ):そのままの状態の平織の生地(きじ)。光沢とハリがある。
手習子(てならいこ):師匠について習うこどものこと。
かもじ:婦人の髪に添え加える髪の毛
アイスペール:氷をいれておく専用の容器
今生の(こんじょうの):この世に生きている間

母方祖母(中村メイコさんの母親):若い頃、小劇場の看板女優だった。祖母が姉のカンナさんにかけた言葉として、『人生、やりたいと思ったことはやってみたらいいよ!』
まだ小学生だった姉のカンナさんは、東京新橋あたりで、サンドイッチマン(広告塔)をやりました。祖母が経営するレストランの宣伝でした。

母方祖父:若い頃、座付き作家だった。

 中村メイコさんの酒癖はいいとはいえません。ちょっとこわい。めんどうみるのはたいへんです。

ラブラブショー:テレビ番組。1970年(昭和45年)~1979年(昭和54年)。トーク番組がありました。

 『今日はママ、ハッスルしたよおー!』(「ハッスル」という言葉を何十年ぶりかで聞きました。一生懸命がんばるという意味です)

 結婚してから6軒の借家に住んだけれど、中村メイコさんは、次に住む借家の下見を一度もしなかった。(ちょっと考えられません。家に関心がない。舞台やテレビ局が家のようなものだったのでしょう)

 中村メイコさんは、テストの、「赤点(落第点(らくだいてん。単位をとれない。進級できない))」の意味を知らなかった。戦時中の召集令状、「赤紙」のようなものだと誤解していた。

 1977年(昭和52年)に、姉のカンナさんが、高校卒業後、ニューヨークへ留学した。15歳の著者と5歳の弟が両親と家に残った。カンナさんが、家族のまとめ役だった。いろいろとあります。
 1980年(昭和55年)に、著者がニューヨークへ留学した。語学学校に行ったら、藤圭子さんが学生という立場でいた。藤圭子さんは、29歳か30歳ぐらいだった。その後、藤圭子さんのご主人になる宇多田さんと三人で食事をした。ふたりは結婚して、宇多田ヒカルさんが生まれた。
 
 中村メイコさんについて、あとのご家族3人がいろいろ忍耐されています。
 家族って、お互いに助け合うものなのだということを再認識しました。

 ニューヨークでの豪快な買い物があります。
 コースターを30個、ペーパーナプキンを50個、靴下全色(20色)を5足ずつ。大量買いです。

 父である神津善行さんの言葉です。
 『うちは、子供に財産は遺さないよ』、娘ふたりがニューヨークに留学した時に渡す分のお金は全部使ったそうです。

(つづく)

 全体を読み終えました。
 なんというか、中村メイコさんは、すごい人です。ご家族もすごい。普通の家庭ではありません。
 中村メイコさんは大量飲酒者なのに、体に悪影響が出ていません。不思議です。肝臓ほか、内臓がぐちゃぐちゃになっていてもおかしくありません。でも、検査結果はOKなのです。そんなことがあるのだろうか……(飲んでいるふりという演技をしていたのだろうか)

 森繁久彌さんの、『屋根の上のバイオリン弾き』の話が続きます。たまたまですが、うちは、4月に愛知県芸術劇場である市村正親さんの、『屋根の上のバイオリン弾き』を観に行きます。楽しみです。
 
 中村家は、11人で生活していたことがある。場所は、世田谷区上祖師谷(かみそしがや)です。8LDK+スタジオ(地下、防音室)の母屋と4LDKの家で、ふたつの家は、地下でつながっていた。
 神津ファミリーが、両親とこども3人の5人
 父方の祖母(介護が必要)
 父方の祖母の付き添いさん
 母方の祖母
 母方の祖母の秘書
 お手伝いさん2人
 
 すっとこどっこい:久しぶりに聞いた言葉です。ばかやろう、ばかなやつだなという意味

 読んでいると、『これでも人間は生きていける』という勇気がもらえる内容です。なんだか、すごい!
 お米はとげない、洗濯機の使い方もわからない、そんな中村メイコさんです。う~む。女優と結婚する時には、勇気がいります。

 中村メイコさんは、超人(ちょうじん)です。(スーパーマン)
 まわりにいるご家族は、寛大でないと付き合いきれない。あきらめて、楽しむのです。
 
 最後のほうに、実は、ご夫婦は、こどもたちがいないところで、すさまじい口論のケンカを繰り返していたそうです。ご主人の神津善幸さんは、温厚そうに見えるけれど、実は、泣くわ、わめくわ、怒鳴るわだったそうです。
 夫婦にケンカはつきものです。先日読んだ本、『我が家の問題 奥田英朗(おくだ・ひでお) 集英社文庫』でも、新婚夫婦が、お互いを理解するために、すさまじい口論を展開します。感想メモの一部です。
 「お互いの本音をぶつけあう激しい夫婦ゲンカ(口論)が始まりました。お互いを理解するための猛烈な夫婦ゲンカです。そうやって、夫婦は、夫婦になっていくのです。人生の長い道のりを歩んでいくのです。理解したあとは、協力しあうのです」  

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2025年04月03日

50歳になりまして 光浦靖子

50歳になりまして 光浦靖子 文春文庫(文藝春秋)

 先日読んだ同著者の本が、『ようやくカナダに行きまして 光浦靖子 文藝春秋』でした。
 時期が前後することになってしまいましたが、これから読む本が、カナダ留学に行く前の著者の心境を語ったものです。
 読みながら、感想をつぎ足していきます。

 まえがき部分がおもしろい。
 著者の本音がいろいろ書いてあります。
 『私は独身です。旦那も、子供も、彼氏もいません……』
 『私は誰にも必要とされていない……』
 わたしが思うに、人というのは、なにかしらこの世での役割を与えられて、人として生まれてきているのです。著者のこの世での役割は何だろうと考える読書になりそうです。(結果的に、読後、著者は、著者のためにこの世に生まれてきたと判断しました。そういう生き方もあります。ひとりで自己完結する人生です)

 留学先をカナダに決めた理由です。
 知人がカナダで商売を始めるという話から始まります。
 アメリカ合衆国には、アジア人いじめがある。
 アメリカ合衆国の特にいなかの国民は、米国経済不況の原因は、アジア諸国からの製品輸入にあると考えている。
 カナダには、その差別意識がない。カナダ人は、優しい。
 著者が2018年にカナダを訪れて、その知人をまじえて3人でホテルのバーで飲んでいた時に、たまたまエレベーター前で、元プロレスラーの佐々木健介さん、北斗晶さん(ほくとあきらさん)ご夫婦に遭遇した。(そうぐうした)
 光浦靖子さんは、女子プロレスのファンだった。おふたりの息子さんが、カナダバンクーバーに留学していた。光浦靖子さんが、自分も留学してみたかったとおふたりに話をしたら、留学することを勧められてその気になったという経過が書いてあります。

 時は、コロナ禍で、予定したバンクーバー留学へ出発できなくなり、住んでいた賃貸マンションは解約済みで住めなくなり、妹さんご家族の家に居候(いそうろう。同居)させてもらって、ようやく、バンクーバーへ出発できたそうです。
 なかなかたいへんなご苦労があります。

 2020年(令和2年)4月にカナダのバンクーバーへ留学しに行く予定でしたが、コロナ禍で行けなくなりました。
 2021年(令和3年)7月にようやくカナダバンクーバーへ出発できました。
 いろいろたいへんです。

 幼いこどもさんが好きだけれど、自分自身のこどもは、もうもてそうにない。
 そんなことが書いてあります。
 ふわ~とした雰囲気がある文章です。

 著者の孤独感が伝わってくる内容です。
 タレント仲間の話が出ます。清水ミチコさん、黒沢かずこさん、白鳥久美子さんです。ライングループがあります。
 著者は、まじめな人です。まじめすぎて、人が近づきません。
 同級生グループの話が出ます。8人中、6人が独身です。
 
 結界:修行のための一定のエリア(著者の場合は、「独身」でいることなのか)
 
 人間の哀しさ(かなしさ)、女性のたいへんさのようなことについて綴られて(つづられて)います。
 『結婚相手もいなければ、彼氏もいない……』
 神さまにお願いする。『いい具合に、諦めさせてください(あきらめさせてください)』
 
 著者が喫煙者であったことは意外です。(今は吸わない)
 人のたばこの煙が臭かった。人から、自分も吸えば臭いと感じなくなると言われて、ご自身も吸い始められたということだそうです。おろかなことです。

(つづく)

 132ページ以降の記述からは得るものは少なかった。

本をジャケ買いする:本の中身ではなく、パッケージ(包装)デザインを気に入って購入すること。

 学校での出来事について書いてあります。
 学校は人生のゴールではありません。人生の通過点です。
 学校でなにがあったかは、社会に出ると関係ありません。
 社会に出て、日にちが経つごとに、学校という組織は、自分の人生からは遠ざかっていきます。

 『比較』について書いてあります。相方の大久保さんと自分との比較です。
 コンビのようで、コンビではない活動をされているそうです。
 大久保さんとは、小学1年生のときからの付き合いだそうです。
 まあ、いろいろあります。縁がある人とは長続きします。

スノードーム:置物。球形の透明容器に、人形や建物などが入っている。
出オチ:終わり芸人が舞台に出てきたとたん奇抜なかっこうや一発芸で笑いをとること。

 人間ドックを受診した結果、著者は、100歳ぐらいまで生きることができるタイプだったそうです。

『解説 私が光浦さんに一目置く(いちもくおく。自分よりも優れていると認め敬意を払う)ようになった理由 清水ミチコ』
 この部分を読んでいて思ったことです。
 『人生は自分の居場所探し』。人生は、自分の居場所を探すための旅路(たびじ)です。
 清水ミチコさんは、カナダバンクーバーにある光浦靖子さんのお宅を訪問しています。
 光浦さんはバンクーバーでは、あきれるほどのびのびしていて、まるで憑き物(つきもの。人にのりうつって、災いや(わざわいや)不幸をもたらす霊)でも落ちたかのようだったそうです。
 全身に充実感と幸福感が現れていたそうです。

 五十代で単身海外留学するという、ほかの人から見て、不思議に見えることでも、本人にとっては、精神衛生上の安定を維持していくためには、だいじなことなのです。  

Posted by 熊太郎 at 06:57Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2025年03月28日

ようやくカナダに行きまして 光浦靖子

ようやくカナダに行きまして 光浦靖子 文藝春秋

 もうだいぶ前のことになりますが、光浦靖子さんが、番組、『徹子の部屋』にゲストとして出演されて、この本のことをお話しされていました。
 出演後は、本が売り切れたようすで、日にちがだいぶたって、たぶん増刷されて、今回の注文ではすんなり手に入りました。

 愛知県渥美半島のご出身で、お勉強ができることが売りのお笑い芸人さんです。
 パラパラっとページをめくって、それほどの文章量でもないので、短時間で読めそうです。
 読み始めます。

 読み始めて思うことです。
 結婚、出産、育児体験のない方です。
 53歳の方です。年齢的に、それらはもうなさそうな気もします。
 ひとりの人の個性として、光浦さんは、勉強をする人、勉強を続けたい人だった。だから、カナダへ行った。(どうしてカナダなのかといところも考えさせられました。フランス語の領域と英語の領域がある国です。どうして、留学先に、アメリカ合衆国とかイギリスを選ばなかったのか。そのあたりも読み手のわたしは関心があります。二番手が好きな性格なのか)(読み終えて:結局カナダを選択された理由は書いてありませんでした)

 1年間の留学が3年に伸びています。
 語学学校→カレッジ(卒業)→3年の就労ビザをゲットした(ボスグラという名称の就労ビザです。何の仕事をするのだろう?)
 本の内容は、2021年(令和3年)7月~2022年(令和4年)7月までの1年間の記録で、語学学校時代のものだそうです。 50歳で留学して英語を習得する。う~む。もっと早い方が英語の習得には良かったような。

 いろいろ疑問をもちながらの読書の始まりとなりました。

 目次を見ると、『ヘレナさん』という女性の名前がたくさん出てきます。現地でできた親友でしょうか。

 2021年成田空港から出発です。
 コロナ禍です。(日本においてはおもに、2020年~2022年)
 静かな成田空港です。関係者の見送りがあります。
 ゲートをすぎると、ひとりぼっちです。
 なんだか、18歳のときの自分を思い出しました。博多駅のホームで、高校の友だちに見送られて、新幹線に乗ってから、ひとりぼっちになりました。でも、そのときのわたしは、まだ十代でした。光浦さんは五十代です。お笑い芸能にうちこんだ何十年かがありました。
 まだ、日本国内である成田空港にいるのに、『日本に帰りたい』という気持ちが、光浦さんに芽生えました。

 本の記述のベースになっているのは、日記だと思います。
 なんのネタもなしに、文章を書き続けることはむずかしい。
 光浦さんも日記をつけておられるのでしょう。

 カナダといえば、作家の西加奈子さんが住んでおられます。途中、光浦さんとの交流もあったようで、本に出てくるのでしょう。(199ページにありました)。西加奈子さんは、お笑い芸人さんたちとつながりがあるようで、テレビ番組で対談を見たことがあります。お笑いコンビオードリー春日さんの相方若林正恭さんとお話しをされていました。わたしは、若林正恭さんの本も何冊か読みました。若林正恭さんは、ぱっと思いつくと、ひとりで海外旅行へ行く人です。
 
 こちらの本の内容は、雑誌、『オール讀物』に2022年・2023年(令和4年・5年)に掲載されたものが下地になっているそうです。

 ああ、コロナだから、バンクーバーで指定されたホテルに三日間滞在して、感染の有無を確認するのか。たいへんです。

 チップの習慣があるからたいへんそうです。タクシー代支払いのチップをいくらにするかです。

 現地に住む60代後半の夫婦宅でホームスティです。
 ホストファミリーです。ホストファーザーが、やせたメガネのおじいさん(ケンさん)、ホストマザーが、小柄でかわいらしいおばあさん(グレンダさん)、彼女は家事がうまい、趣味が、パズルと読書の方だそうです。
 大きなお屋敷です。1階と2階に留学生の部屋が合計4部屋あります。

 コロナだからマスク着用です。
 (今になって、ときおり、コロナ禍ってなんだったのだろうと思い出すことがあります。たいへんな目にあいました。コロナ禍がなければ、スムーズに運んだ話がいくつもありました。されど、それも、過ぎた話になりました)

ハル・ベリー:アメリカ合衆国の女優

エミ、ナホ(19歳):同じ家にいる留学生。お互いに助け合いが必要です。他人に頼るしかありません。

 ちょっと光浦靖子さんのパソコンオンチ、スマホオンチ(知識がない)には、驚かされます。
 まあ、操作を勉強したことがない中高年は、こんなものなのかなあ。そんなものなのでしょう。
 英会話もパソコンもできないし、おまけにコロナで、お互いに近づけず、距離をおいて離れての会話です。外国人たちとの意思疎通がたいへんです。
 留学生たちは、二十歳前後の若い女性たちが多い。コロナ禍という特殊事情のため、入国できる国籍で日本人が多い。若い世代のなかに、50歳の著者が入るのはさすがに場違いです。芸能人扱いされることもあって、最初はかなり苦労されています。
 読んでいると、そこまでして英会話の勉強をしなければならないのだろうかと疑問をもちます。
 なんというか、光浦靖子さんは、自己完結型の人生の送り方です。結婚、出産、育児、介護という体験がありません。

 有名人ゆえに、日本では周囲の目が監視の目に感じていた。
 カナダでは、自分は知られていないから、自由になれた。
 リラックスできる。
 そんなことが書いてあります。

 上級、中級、初級の3クラスがある。著者は、中級に所属する。日本人が4人(若い女性が2人と30代男性が1人、そして著者がいる)。ほかに、19歳南米エクアドル人女性、29歳中米エルサルバドル人男性、21歳ベルギー人男性がいます。合計4人です。

バンクーバー:移民の都市。白人系40%、中国系・インド系が多い。いろんな言語が街に流れている。
 ゆったりしている。東京の生活とは異なる。
 
 ひとつの項目で、長い文章が続きます。著者は勉強をする人です。

カナダプレイス:海の見える広場。ここで、初級・中級クラスのメンバーは昼食をとる。

 親切にしてくれた人たち
ジョーダン:上級クラス。20代女性。美人、アニメオタク、おしゃれ。黒髪、足にはタトゥーがある。
 
ヘレナ:南米コロンビア人女性29歳。初級クラス。大きな声、ハイテンション、笑って、怒る。学校のムードメーカー。睡眠時間3時間だそうです。ヘレナが15歳のときに産んだ、14歳の息子がいる。夫は浮気症で、ほぼ離婚状態。リモートで、コロンビアにある会社で働いている。カナダでの永住権獲得を目標にしている。

 著者の自称ニックネームは、愛知県渥美半島(あつみはんとう)のミス頑固(がんこ)だそうです。渥美半島には、伊良湖岬があります。農業と観光の地域です。
 
フラストレーション:欲求不満

ラティーノ:ラテンアメリカにルーツをもつ人々

テキーラショット:小さなグラスに入ったテキーラをいっきに飲み干すこと。

カナダドル:2021年夏が、1ドル90円。2024年7月が、1ドル118円。ホームスティは、3食付きで、ひと月100ドル。ヨーロッパ人の一部は、留学目的ではなく、観光目的でカナダに来て、ホテルよりも安いホームスティに泊まって勉強しながら(しているふり?)観光で遊びまくっているそうです。
 
 読んでいて、バンクーバーはやはり外国です。日本とは違います。
①落し物は届けない。現金が落ちていても届ける先がない。裸の現金は、拾った人間がポケットに入れてしまってあたりまえ。おとがめもない。
②変なユーチューバーがいる。男が、『今日家に泊めて』と腕をつかんで話しかけてくる。その撮影シーンをユーチューブで流している。
③相手に対する、『手伝いましょうか』というような声かけは、現実的には迷惑だからといやがられる。小さな親切大きなお世話のようなものです。各自が、自分のやり方、自分のペースをくずしたくない。
④人生で一番大切にしているものはなんですか?という質問があります。コロンビア人の答えは、『家族』。著者の答えは、『好奇心』(ドン引きされたそうです。質問の意味がわかっていないのではないかと疑われたそうです)
⑤日本のパスポートをうらやましがられる。日本のパスポートをもっていれば、世界中のほとんどの国へ行ける。(ほかの国のパスポートでは、いろんな国には行けないそうです)

チナミ:新しいホームメイト(ホームスティ先の仲間)

カトラリー:ナイフ、フォーク、スプーンなどの総称

ドリトスのチーズ味:チップ(ポテトチップみたい)。菓子。

『イヤスゥコ』:ホームスティ先の奥さんからの著者の呼ばれ方

カミラ:クラスで、著者の隣席に座るコロンビア人。超美人。19歳。

 学校の35%が日本人。25%がコロンビア人。残りは多種多様

 スイス人のひとりとうまくいかないあれこれが書いてあります。著者はアジア人だから存在を否定されるのです。人種差別のいじめですな。
 その部分を読んでいて、洋画、『クールランニング』を思い出しました。いい映画でした。
 ジャマイカのオリンピック選考陸上競技100mの選手4人が、コーチとともに、冬のオリンピックのボブスレーに挑戦するのです。とてもいっしょうけんめいな態度です。でも、スイスのボブスレーチームがジャマイカをばかにするのです。ジャマイカチームのメンバーはくやしい思いをします。
 こちらの本では、スイス人のひとりによるアジア人差別があります。日本人だけではなく、中国人も差別されるそうです。
 スイス人は、アルプスに囲まれた小さな村や街で育つ。広い世界、広い社会を知らない。だから差別をするという考察があります。
 でも30代のいいスイス人もいたそうです。まあ、個人単位で判断したほうがいいのでしょう。

バーン:クラスの先生

ヘイト:憎む。憎悪。人種差別

 著者による細やかな人間観察の記録が有益です。いい人もいれば、そうでない人もいます。

 235ページあるうちの121ページまで読みました。(同じようなこととして、その後のページの分も追加して記述しておきました。日本と外国の生活の違いがおもしろい)
 外国(あるいはカナダという場所で)で学ぶ日本人留学生に対する現地の関係者(不動産屋とか家主とか)の話が興味深い。島国日本、単一民族で暮らしている日本人ではなかなか気づけないことです。
①日本人は、『商品価値』が高い。まじめ、借家を清潔にきちんとする。家賃の滞納がない。おとなしい。従順。ルールを守る。礼儀正しいなどです。日本人は、『いい商品扱い』なのです。
②もうひとつ驚いたのは、不動産会社の人がスペアーキーを持っていて、まだ居住中の留守宅へ、次にその部屋を借りたいという人を連れて、内覧に入ることができるのです。問題ないのです。びっくりしました。
③ウィキペディア(Wikipedia)が、身元保証になる。著者の場合、日本の有名な芸能人として、信用してもらえたそうです。
④カナダは、室内の電灯が暗い。これは、日本のほうが、異常に明るいそうです。
⑤スーパーで売られている野菜はパッケージされていない。量り売り(はかりうり)。納豆はすべて冷凍されている。豆腐はあるが、硬い。消費期間は長い。
⑥バンクーバーで生活する人は軽装(lululemonという銘柄が多い。ルルレモン。ヨガウェア)。男は、短パンで上半身は裸(筋肉質の体が自慢の衣装。自信満々)、日本でユニクロは安価だが、カナダでは高価なおしゃれ着扱い。MUJI(むじるしりょうひん。無印良品)もおしゃれ着扱い。
⑦路線バスはいろいろ不都合があるそうです。満員だと乗車を断わられるそうです。路線バス事情は、イギリス留学をされた彬子女王(あきこ女王)も書かれていました。『(イギリスの路線バスについて)日本の路線バスとはずいぶん違います。路線バスは、時間通りには来ない。そもそも定刻になっても来ない。最後まで来ない。来ないという案内もない。慣れるそうです。日本の親切で、ち密な対応のほうが、丁寧すぎるのではないかというようにも思えてくるそうです』(ふ~む。太川陽介さんのテレビ番組、路線バス乗り継ぎの旅は、イギリスではできませんな)
⑧青ネギは、頭のほうが切られて売られている。白い部分が1,緑の部分が2ぐらいの割合で売られている。

 読んでいて思うのは、50歳独身の著者です。
 一般的には、50歳の女性は、結婚していて、こどもがいて、たいてい、50代で祖母になります。
 やっていることは、同じ50歳でもだいぶ違います。
 人生いろいろです。

 英会話はなかなか上達しません。
 3か月ぐらい現地にいると、ある日突然聞き取れるようになるということがあるようですが、著者はまだそうなれません。50歳という年齢だと、どうなのかなあ。
 イギリスに留学された皇族の彬子女王の手記を読んだことがあります。
『赤と青のガウン オックスフォード留学記 彬子女王(あきこじょうおう) PHP文庫』
 英会話ができなかったけれど、努力を続けた結果、ある日突然相手が話す英語が明瞭に理解できるようになられたそうです。(英語学習者にとっては、いいアドバイスになります)
 英語がわからなかったゆえの孤独があります(日本に帰りたい)。それを救ってくれる学友の存在があります。人間は助け合いです。

 こちらの本では、話し言葉の文章が続きます。

ホームメイトたちの進路:ナホ(進学)、エミ(就職)、チナミ(進学)。一般的に留学生は大半が半年以内に日本へ帰国するそうです。現地での進学や就職は異例だそうです。

オバンジャーズ:バンクーバーに住む日本人女性たち。日本人ママ友会。作家の西加奈子さんからの紹介がありました。現地は、治安の面で、いいことばかりではありません。情報交換があります。

メディテーション:瞑想(めいそう。心を静めて無心になる)

 著者は、勉強はできても、事務仕事はにがてです。引っ越しの段取りがうまくいきません。

 2022年(令和4年)2月です。
 著者は現地では、ジャパニーズセレブリティだそうです。(日本人の有名人)
 公立カレッジの授業料が、2年間で、450万円近いそうです。(高いなあ)
 週に20時間以内の労働ができる。1日4時間5日間ぐらいで少ない。2年コースを卒業すると、3年間の就労ビザを取得できる。うまくいけば、永住権がもらえるが、著者はもう50歳なのでほぼ無理だそうです。若くないと永住権はもらえない。50歳は年齢加算が0点だそうです。

フードハンドラー:食品取扱関係者(職業)。資格
Moodle:ムードル。授業や学習管理で使用するソフトウェア(プログラム)

 バンクーバーにある古い木造アパートに住んで1年が経つ。(2023年(令和5年)春)
 24世帯で、共同の洗濯機が2台ある。(会社の独身寮みたいです)
 
 レイシスト:人種差別を行う人

 著者は、ひとり暮らしが長い人です。苦にならないそうです。
 カナダのバンクーバーで日本食にしたら、体重が5kg減った。
 ウクライナで戦争が始まって、野菜が高くなった。
 円安で、負担が増えた。
 卵もハムも高い。
 
 カナダでは、平均4回か5回職業を変えるか、会社を変える。

 なんだか、いいかげんなところもあります。
 どの学校に通おうかと迷い、複数の学校で説明を聞いて選択して入学したのですが、事前説明と実態が一致しません。入校してしまえば、あきらめるしかないようです。

フェアウェルパーティ:送別会

 165ページあたりまで読んできて、後半は、あまり参考にならないかなあと思いましたが、再後半部もなかなか良かった。
 2022年(令和4年)著者は、カナダバンクーバーで友だちになったヘレナに会いに、ひとりで、南米コロンビアまで行って、1週間ぐらい現地にあるヘレナの自宅で過ごしています。
 52歳の大冒険、ひとり旅でした。けして、治安がいいお国ではありません。麻薬事件がときおりテレビニュースで取り上げられるお国です。マフィアみたいなギャングもいます。でも、一般人は、犯罪に警戒しながらも力強く暮らしています。現地人のヘレナが、コロンビアで思いつくものは、コーヒーとドラッグしかないと言います。
 記述内容は、映画の中にいるみたいでした。
 コロンビアの首都ボゴタは、標高2625mだそうです。初日の夜、著者は、眠っているときに呼吸が苦しくなりました。慣れるようですが、息ができなくなったそうです。気圧が低い。空気が薄い。
 記述を読んで、著者は、コロンビアで過ごして、幸せだったことが伝わってきました。

 コロンビア訪問の話題の前に、バンクーバーで、光浦靖子さんが、出会い系サイトに挑戦した話があります。西加奈子さんもからんで、オバンジャーズ(日本人妻の会)仲間の協力で偽名、年齢査証(52歳なのに47歳)しながらのマッチングアプリ登録です。そのうち、相手の50歳外国人男性に、著者が、日本で有名な芸能人であることがばれてしまいますが、恋仲にはなれませんでしたが、友だちにはなれた気分だったそうです。

 いろいろあります。作家の西加奈子さんに誘われて、お宅へご飯を食べに行って、女優の二階堂ふみさんと会って、映画、『SHUGUN 将軍』の話題が出たということもありました。
 アメリカ合衆国のハリウッドは撮影にお金がかかるので、費用がハリウッドほどかからないバンクーバーで撮影する映画製作が多いそうです。

 日本人がバンクーバーで、医療機関にかかるたいへんさが書いてあります。以前、西加奈子さんの本、『雲をつかむ』でも同様のことが書いてありました。
 現地の人は、医療費はただだけれど、制度があって、ホームドクターをもっていないと手続きがたいへんなのです。
 バンクーバーでは、6か月以上滞在する留学生は、月75ドルの保険料支払いのような義務があるそうです。

 文字を読むことで、異世界体験ができました。読書の醍醐味(だいごみ。深い味わい。本当の楽しさ)を堪能(たんのう。満ち足りて十分なこと)しました。本書は、良書です。なかなか良かった。

(その後のこと)
 上記の感想メモをじっさいに書いたのは、3月2日のことでした。
 その後、3月28日から読み始めた本が、『50歳になりまして 光浦靖子 文春文庫(文藝春秋)』です。
 『ようやくカナダに行きまして』を読んだ時に疑問だった、“著者がどうしてカナダを留学先として選択したのか”の疑問が解消しました。『50歳になりまして』の冒頭付近にある、『はじめに』に、しっかりとカナダバンクーバー選択の理由が書いてありました。

 アメリカ合衆国に住んでいた知人の話として、アメリカ合衆国では、都市部ではそうでもないが、いなかへ行くと、現地の人たちのアジア人に対する差別意識がとても強い。
 不況の原因が、貿易不均衡にあり、アメリカ合衆国の経済が衰退化したのは、アジア諸国からの輸入製品の増加にあると考えられている。同国のいなかでは、こどもでもあからさまに、アジア系民族を差別してくるそうです。アジア系の人間に対するいじめがあります。
 アメリカ合衆国西海岸の道路を車で北上しながらカナダに入ると、その差別意識が消える。カナダの人たちは、人種差別の意識が薄く、人が優しいという情報があります。
 加えて、留学の話がまだないころ、光浦靖子さんがカナダを訪れたおりに、偶然ですが、建物のエレベーター付近で、日本人元プロレスラーご夫婦である佐々木健介さんと北斗晶(ほくと・あきら)さんに会いました。
 光浦さんは大の女子プロレスファンだったのです。ご夫婦の息子さんが、カナダバンクーバーに留学されています。ご夫婦から、その気があるなら、エージェンシー(代理業、代理店)を紹介すると声をかけられています。
 人との出会いが、光浦靖子さんの人生の目標を定めることにつながっています。  

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2025年03月25日

猫のお告げは樹の下で 青山美智子

猫のお告げは樹の下で 青山美智子 宝島文庫

 神社に猫がいて、猫が人間にお告げをする。お告げを受けた人間は幸せになる。そんなお話でした。
 短編が7本あります。
 お告げは、『タラヨウ(モチノキ科の常緑高木。葉につまようじなどで傷を付けることで文字が書ける。)』という植物の葉っぱで行われます。この物語では、神社にいる猫が、爪で文字を書くのです。
 そんなわけで、短編1本ずつに、「(タラヨウの葉が)一枚目、二枚目……」と、順番が付けられています。

『一枚目 ニシムキ』
ミハル:主人公女性。21歳。美容院で、美容師をしている。佐久間に恋をしている。

佐久間:ミハルの美容院で働いている5歳年上の男性。26歳

時子:ミハルのおば(母の妹)45歳。離婚歴あり。2LDKの中古マンションを買った(これが、タイトルの「ニシムキ」につながります)

バリトンボイス(佐久間の声質):あたたかみと力強さをもつ声

 ミハルは、佐久間に、告白めいたことをするのですが、振られます。
 佐久間は、近々、結婚するのです。そして、佐久間は、別の支店へ異動してしまいました。
 ミハルは、失恋してしまいました。

(ミハル)『走ったら忘れる』(ミハルは、中学・高校と陸上部でした。ミハルは走ります)
 この部分を読んで、はたと立ち止まりました。
 この本の前に読み終えた本が、『我が家の問題 奥田英朗(おくだ・ひでお) 集英社文庫』でした。短編集で、最後の作品が、『妻とマラソン』でした。奥さんが、ストレスをかかえていたのですが、ストレス解消のために走り始めて、ご家族の励ましで、東京マラソンに参加されたのです。
 なんだか、前に読んだ本と話がつながって、楽しい気分になりました。

 ミハルは、走っている途中で、たまたまお告げをする猫がいる神社に入っていったのです。

 詩的な文章です。うまいなあ。

『二十一歳にして初めての、失恋。』(ミハルは、かなり落ち込んでいます。人は、良かれと思ってやったことが、相手にとっては迷惑だったことがわかるとしょんぼりします)

手水舎(ちょうずや):神社や寺院で、手や口を清める場所

 猫がいます。黒と白の模様です。全体的に黒い。
 ハチワレ:物語に出てくる猫は、額(ひたい)から鼻にかけて、八の字を描くように白い。瞳は透き(すき)通るような金色をしている。おなかと足が白い。左側のお尻に、白い星のマークがある。
 人間と意思疎通ができる猫です。猫は、爪で、タラヨウの葉っぱに字を書きます。その猫を、『ミクジ(おみくじからきているらしい由来の名前)』と呼ぶ。ミクジは、人間に、『お告げ(おつげ)』をする猫なのです。

 タイトルにある、『ニシムキ』の意味は、分譲マンションの部屋が西向きであることにやがてつながります。
 
クロノグラフの時計:ストップウオッチ機能を備えた高精度の腕時計

 『…… 誰かを好きになるって、その人が自分に混ざるってっことだもの』
 『まあ、失恋には時薬(ときぐすり)が必要だよ』(いいセリフです)

 つらい気持ちを、『お金に助けてもらう』
 (そのために、コツコツ節約してお金を貯めておく)

 以前、東京のホテルの部屋で見た、夕映えを思い出しました。
 西向きの部屋は、夏は暑くて苦手ですが、ほかの季節ならだいじょうぶです。


『二枚目 チケット』
 なかなか良かった。良質です。ドラマ化されるといいのに。
 今回は、父と娘(中学二年生)のうまくいかない話を、猫のお告げが幸せに導いてくれるのです。

 父40歳はクサイというところから始まります。(父の思い違いで、父親自体がクサイのではなくて、父の食べる納豆キムチがクサイのでした)。
 父親の名前を最後に出す手法が、斬新(ざんしん。めったにない)で、うまいなあと感心しました。
 父は、小さなガラスメーカーで営業をしている。父が、出張先にあった細い道をゆくと、神社の鳥居が見えて、お告げをする猫『ミクジ』に出会います。
 神社では、『(中2の娘である)さつきと、うまいこと、やれますように』と祈ります。
 タラヨウの葉っぱに、『チケット』の文字があります。(この文字は、父親だけにしか見えないそうです。奥さんには見えませんでした。おもしろい)

さつき:ひとり娘。中学2年生。父親を嫌う時期を迎えている。アイドルグループ、『キュービック』のたっちん(葛原達彦)のファン

妻美枝子:38歳。さつきの母

 タイトルのチケットは、CD購入とか、コンサートを観るための『チケット』です。
 チケットのゲットは、スマホじゃないと申し込めないのです。QRコードがいるのです。(わたしもよく利用しています。最初の頃は緊張しましたが、今は操作に慣れました。便利です)
 この家庭では、父親しかスマホをもっていないのです。母の携帯は、ガラケーです。
 まあ、猫のお告げのあといろいろあります。対立もありますが、心温まるシーンも多い。
 なかなかの良作です。娘のいる父親が読むとほろりとくる部分もあります。
 わたしにも娘がいます。ふり返って、けっこういろいろ反省しています。

 相手が若いからといって、嫌ってはいけない。中年男は、ついつい若者を下に見てしまいます。
 『誰に対しても彼は同じように人あたりよく接することができるんだろう……』と父親が、若い男子のいいところに気づきます。

 いいなと思ったフレーズです。
 『家族って、電車に乗り合わせたようなもんだ。最初は一緒に乗っていたって、いつか乗り継ぎの駅がきて、子どもは違う場所へといってしまう……』

 なんというか、お話の中で、父と娘が、『気持ち』でつながります。感動するシーンがあります。 かなり、練られている(ねられている)作品です。

 いい話でした。本当に、ドラマにでもなるといいのに。


『三枚目 ポイント』
 就職活動がうまくいかない大学生の話です。

竜三:25歳フリーター。バンドマン。アマチュアのロックバンドを組んでいる。ボーカル担当。作詞作曲をしている。ふだんは、CDショップの店員。三男だから、親に将来を期待されていなかった。

田島慎:S大学経済学部の大学生。就活生。主人公。竜三の店でバイトをしている。無気力人間、『僕は、「欲しいもの」が欲しい。』と書いてあります。夢も希望ももっていない男です。
 父親につぶしがきくからと勧められて経済学部に入った。
 なんでもだれかに決めてもらって、運ばれるように生きてきた。
 求職活動面接では不採用が続いている。
 自分の人生を自分ではなく、だれかが(父とか母とか)が決めている。就職先もだれかに決めてほしい。
 見た目はいいらしく、女が寄ってくるが、中身がないので、女は離れていく。『あたしたち、なんか合わないかも』と言われる。
 給料が良くて、楽で、休みが多くて、残業が少なくて、転勤がなくて、定年までいられる仕事に就きたい。(こういう動機の人は採用できません。こういう人がさきざき、会社や組織、人のお金を自分のポケットに入れます。まずは、世のため人のために働くという強い意思をもつことが重要です)
 そんな彼が、お告げ猫、『ミクジ』に出会います。ミクジは、神社にあるタラヨウの木のまわりをグルグル回って、彼に、『ポイント』と書かれた葉っぱをプレゼントしたのです。

(つづく)

 最後まで読みました。なかなか良かった。

 ギターの話が出てきます。ギターの弾き方を知っている人が読んだら、より味わいが深まることでしょう。コードとして、C、G、D7、B7が出てきます。コード:左手の指でギターの弦を押さえて和音(わおん。たいてい3つの音)を出す。

 タイトルにある、『ポイント』は、『ポイントカードのポイント』、そして、『位置のポイント』につながっていきます。

 田島慎の心の中にある、『対立』がじょうずに書いてあります。人がうらやましい。人がうらめしい。人が成功することがねたましい。田島慎の心の中に、『偽善(悪意がある善意)』が存在します。田島慎の心は汚れて(よごれて)います。
 田島慎は、就職活動がうまくいきません。対して竜三は、音楽バンドがデビューに向けて着々と話が進んでいます。
 田島慎は、竜三に怒り(いかり)をぶつけます。『あなたはいいな!(わたしはだめだ。くやしい)』

 竜三の田島慎に対する問いです。『大学って、どんなとこ?』(竜三は、家庭の事情で大学へ進学できなかった。家族ともめた。仲良しこよしの家族は少ない。家族なんてそんなもの。そんなこんなが書いてあります)

 いいなあ。NHKの夜ドラ(22時45分~23時)でやればいいのに。この本を読んでいたころは、『バニラな毎日』をやっていました。蓮佛美沙子さんと永作博美さんが出ていました。
 この本をこれまで読んできて、その時間帯の15分間連続ドラマ月曜から木曜で一話完結方式にのせるとちょうどいいのになあと思いました。

 ツイッターのリプとは:返事をする。答える。リプレイ

 わたしが思うに、人がこの世に生まれてくるときは、人それぞれに、この世での、『役割』を与えられて生まれてきていると思っています。
 その、『この世での自分の役割』を探すことが、各自の人生のありようだと思うのです。
 
 田島慎の行動があります。これまでの彼の人生は、ほぼ、両親が決めて来た。言われたとおりに生きてきた。親に世話をしてもらうことが当たり前だった。(それでいいのか。主体性がありません)
 田島慎は、わからないことがあるとすぐに対応のしかたをスマホに聞いていた。
 スマホに聞くのではなくて、自分で考える。スマホに聞き続けていると、最後に、『闇バイト』にあたる。人生がだいなしになる。
 結論(答え)よりも経過の中に人生がある。

 TAB譜(ふ):たぶふ。タブラチュアふ。弦楽器の譜面(ふめん)

 終活において、マニュアルを見ながらのエントリーシート記入をやめる。
 自分の現在地を見つけて、自分はどうしたらいいのかを自分で考えて、決断して、実行する。
 
 『ありがとう』という気持ちを忘れない。
 
 田島慎について、32社目の就職採用面接が始まりました。

 いい話でした。


『四枚目 タネマキ』
主人公 木下哲(きのした・てつ):68歳。やっかい者のジジイ。老いぼれ(おいぼれ)。息子の嫁と孫と三世代同居をしている。
 3年前まで、プラモデル屋をしていた。『木下プラモデル』。今は年金生活者
 『神』なんていないと思っている。いても、ワシを見てくれてはいないと思っている。
 元気で、ぽっくり死が希望です。

木下繁子:木下哲の妻。3年前に離婚届を置いて家を出ていなくなった。
 看護師をしていた。無口だった。こどもを保育園に預けながら看護師として働いていた。

木下夫婦の息子 木下弘人(きのした・ひろと):大阪へ転勤。単身赴任をしている。

息子の嫁 木下君枝:義父木下哲と同居。30歳そこそこ。こどもがいる。ざっくばらんな人柄
 義父にもずけずけと言いたいことを言う。
 こどもを保育園に預けて、近所の雑貨屋で働いている。
 旧姓、『水沢』。両親と兄夫婦がいる。

木下哲の孫 未央(みお):2歳児。木下君枝が母親

曽根:ご近所さん。骨折で入院中

杉田のばあさん:息子三人は独立した。木下哲宅のお隣さん

ヨシ坊(現在の宮司(ぐうじ)宮司の前は、中華料理屋をしていた)←喜助(昔の宮司。木下哲の三つ年上の幼なじみ。ヨシ坊は喜助のひとり息子。喜助は三年前に他界した)

 猫からのお告げのシーンがワンパターンですが、それはそれでいい。
 『かつてワシのすぐそばにいつもあった、あの白い星のマーク……』(なんのことだろう。伏線です。プラモデルと関係あるのか)

 お告げとなる葉っぱの文字は、『タネマキ』です。

(つづく)
 
 読み終えて、こちらもまたいい話でした。
 今年読んで良かった一冊になりました。

 店をたたんだプラモデル店での出来事昔話、離婚届を置いて出て行った看護師を定年退職した奥さんの話、いつも仕事のことばかりを優先して、妻子に冷たかったご主人の話、いずれもありがちな、昭和時代の男の話です。
 ご主人は、こどもです。自分の好きなことはやって、そうでないことはやらずに来ました。その結果、人が離れていきました。
 やりたくないことでも、やるべきことは、がまんしてやるのが、おとなです。ご主人はこどもでした。

 されど、捨てる神があれば、拾う神ありです。いい話でした。胸にじ~んと広がる幸福感があって、お話は終了しました。泣けてくるようないい話です。

まちコン:男女の出会いの機会をつくるイベント。街ぐるみで開催される合同コンパ


『五枚目 マンナカ』
 小学4年生の転校生男児が学校でいじめられています。かわいそうな話です。
 暗い雰囲気で始まりましたが、この短編集では、最後は、幸せな状態になりますから、安心して読めます。健全なお話集です。

深見和也:転校生。4年3組しゃべらない根暗なやつ。コケ(苔)が好き。父親の会社がだめになって、転校してきた。一戸建ての家から、アパートになった。父親はガラス工場の工員、母親はスーパでレジ打ちをしている。ひとりっこ。

岡崎:いじめっこ。柔道を習っている。体が大きい。とりまきがいる。学級委員長。優等生を装っている(よそおっている)。

楠田:学級副委員長

日下部(くさかべ):クラスメート男子

手塚:深見和也の隣の席に座っている男子

牧村由紀先生:4年3組深谷和也のいるクラスの担任。児童40人のクラス。新卒後3年目の女教師。頼りない。クラスで起きているいじめを認識していない。逆に、いじめっ子といじめられている子がいるのに、ふたりが仲良くしていると勘違いしている。先生として、あてにならない。頼れない。

山根正先生:4年2組の担任。牧村由紀先生と同じぐらいの年齢。男性だけど、ひょろひょろで色白、朝礼のときに倒れた。いつもおどおどしていて、ガリガリの体をしている。

姫野さゆり:小学校養護の先生。パワフルな体格。児童からはきらわれている。太っている。チリチリの髪の毛、腕も足も太い。

 『ぼくにとって最高に美しいものが誰かにとっては気味の悪いもので(苔(こけ)のこと)……』から始まりました。

 まあ、今どきの小学生は、プレステ(ソニーのゲーム機)とかウィー(任天堂のゲーム機)とか、ゲーム遊びばっかりですな。外で体を動かす遊びもしましょう。

 深見和也は、悩んでいます。でも、相談相手はいません。
 今は幸せじゃないけれど、神社で、猫の『ミクジ』に会うと幸せになれるよ!(わたしの声です)

 深見和也は、おとなしいいい子だけれど、もっと正直に、イヤなことはイヤと言ったほうがいい。がまんしないほうがいい。

 いじめがない学校なんてないんじゃないかな。社会に出てからだっていじめはあります。負けちゃだめです。

 深見和也は学校だけでなく、学習塾でも、いじめっ子の岡崎に出会ってしまいます。
 最悪ですな。

 神社です。
 『学校に行くのが、つらくなくなりますように』
 人は、自力で、願いを達成できそうもないときになると、神さまや仏さまを頼ります。
 深見和也が、クラスメートを自宅に呼んで、家にあった、『エゾスナゴケ』、『ナミガタタチゴケ』をかわいいだろと言ったら、気持ち悪い奴(やつ)という反応があった。
神社に行ったら、『ホンモンジゴケ』があった。
『……学校に行くのが、つらいんだ』
 
 猫のミクジが出てきました。
 葉っぱにかかれたメッセージは、『マンナカ』です。
 はて? どういう意味だろう。どういうことだろう。

(つづく)

 合唱コンクールの指揮者とピアノ演奏者を決める。
 指揮者:岡崎(学級委員長)
 ピアノ演奏者:もめる。松坂(腱鞘炎でできませんとの申立てあり)、遠藤(やりたくないと言ったのに、岡崎の誘導でなんとなく遠藤に決まる。担任牧村由紀も岡崎の後押しをした。無理やりです。形だけ整えばそれでいいといういいかげんな仕事です。無伴奏で歌えばいいだけのことです)

 養護の先生姫野さゆりが、深見和也に言います。
 『(君の居場所があるよという意味で。保健室に)机と椅子があるよ』

 親は無力です。とくに父親が無力です。こどもを怒るだけです。
 教師は悪の味方です。こういう教師の人っています。地元の有力者や権力者のほうに顔が向いているのです。彼らの関係者がいじめっ子ということもあります。
 
 つらく当たる人もいれば、優しく包んでくれる人もいます。それが、人間界です。

 『マンナカ』は、中心という意味以外にも意味がある。『中立(ちゅうりつ。どちらにも属しない』。物語では、さらに解釈が発展していきます。まんなかとか、はしっこというのは、人間が勝手に判断しているだけだと。自分で自分が自分としてまんなかにいると思えば、自分はまんなかにいるのだと。(なるほど。ステキな解釈です)

 なんというか、相手のことが怖い(こわい)と思っていても、いざ対決してみたら、自分のほうが強かったということはあります。
 わたしは、小学二年生のときに、いつもわたしをいじめてくる男の子ふたりと女の子ひとりと、体育のすもうの授業でそれぞれと戦って、三人とも土俵の外へ投げとばしてやったことがあります。なんだ、弱いじゃんか。お~れは、あんがい強いじゃんか。自信がつきました。


『六枚目 スペース』
芝浦千咲(ちさき):悠(ゆう。5歳)の母親。35歳。日に当たっての頬骨付近の小さなシミ複数が気になる年齢。外出時は、サングラスに長そでシャツで完全防備。
 十代のころから漫画家志望だったが、あきらめた。
 幼稚園の広報班で、『ひまわりだより』をつくっている。マンガ絵がじょうずなことに周囲が気づいた。

孝:千咲の夫

里帆(りほ):きららの母親。25歳。半そでTシャツに、クロップドパンツ(クロップドは、切り取られた。袖丈(そでたけ)が短い。6分から8分のパンツ)

添島(そえじま):幼稚園における広報班の班長
『ひまわりだより』を班員たちとつくっている。こどもの名前は、瑠々(るる)

輝也パパ:『ひまわり』のコラムを書く人。拓海くん(5歳)の父親。主夫をしている。妻が働き手の大黒柱。(輝也パパは、実は、トリックアートのアーティスト)。
 すっきりとして感じがいい男性。保護者ママたちに人気がある。女ばかりの集団の中で、男の華となっている。
 妻は広告代理店で働くキャリアウーマン。スーツとバーキンのバッグ姿。バーキン:エルメスが発表した高級ブランドバッグ

露吹ひかる(つゆぶき・ひかる):漫画家。アシスタントを募集している。53歳女性。ヒューマニズム系の漫画を描く人

ネーム:漫画をおおまかに表したもの。
漫画を描く時の道具:ケント紙、インク、ホワイト、スクリーントーン(半透明の粘着性のあるシート)、ペン先、ペン軸

女性の厄年(やくどし):33歳、37歳が本厄。その前後が、前厄と後厄、三十代はほとんどが厄年

 『ちゃんと夢をあきらめますように(漫画家になりたい夢です)』

 猫からのメッセージが、『スペース』です。範囲とか、領域とか、場所、区域だろうか……

 コンビニの雑誌購入から、『断捨離』へ。
 2LDKの自宅マンションです。
 だんなの書斎はあるけれど、妻やこどもの部屋がありません。
 ついでに、だんなの妻に対する興味もありません。

 『ぽかーんとする』、『神様が入るスペースを作るんです』(なるほど)
 神様は、自分の外にいるのではなく、自分の心の中にいるのです。ときおり、神様が自分にメッセージをくれるのです。

 柴崎千咲は、もんもんと悩みます。漫画家になりたい夢にきっぱりと別れを告げたいけれど、それができない35歳です。

 新しいものを入れるためには、まず、今あるものを外に出さねばならぬ。出せば、新しいものが入る、『スペース』ができる。(なるほど)

 読み終えて、ほろりとくるいい話でした。なかなかいい。光っています。


『七枚目 タマタマ』
 最後のお話になりました。

 占い師の彗星ジュリア(すいせいジュリア。ジュリアは、チェッカーズの歌からきている。『ジュリアに傷心(ハートブレイク))。派手なかっこうをしてテレビに出ている。メイクを落とすと、ジュリアだとは、わからない。
 本当の名前は、『笑子(えみこ)』で、同級生からは、『ニコ』と呼ばれている。45歳。バツイチ。ひとり暮らし。居住地は東京。25歳で結婚して、36歳で離婚した。こどもはできなかった。

ともちゃん:彗星ジュリアの高校の同級生(岐阜県)。友谷茂(ともや・しげる)。税理士。自分の税理士事務所をもっている。
 仕事以外のときは、リーゼントでかっこをつけている。
 居住地は、東京。名古屋の大学を卒業した。眼光鋭い奥二重の目、キリッとした太い眉(まゆ)、鼻筋が通っている。美形だが、ヤバい人に見える。ただ、見た目と中身は違う。優しい人である。高校野球の球児だった。

 以上のふたりは、偶然東京で1年前に再会した。

清水:彗星ジュリアが出版した本の出版社で編集を担当している。トークイベント担当でもある。

玉木たまき:83歳。高級老人ホームの入居者。息子が東京に、娘が海外にいる。5年前にホームに入った。

中川:老人ホームの施設長。ショートカットの小柄な女性

 占いの実態として、『自分はうまくいっていない』というお客さんが多い。話を聞くと、そうではなくて、『うまくいかないと(自分で)思っている人』が多いのが実態である。

スガキヤのクリームぜんざい:名古屋の人だとわかります。地元のラーメン屋です。こどもさんから高校生向け、家族連れ向けです。うちの孫たちも大好きで、たまにいっしょにお店でラーメンやチャーハンを食べます。まだ、小学校低学年の孫はいつも、ちいさい体のくせに、『チャーハン大盛り!』と注文します。

 神社のネコからのお告げは、『タマタマ』です。
 
ワンオラクル:タロットカード占いの用語。シャフルしてカードを1枚引く。カードのメッセージが書かれている。

 玉木たまきは、大切な小箱の鍵をなくして困っている。(小箱は、父のフランスみやげ。たまきが7歳のときに父からもらった)
 玉木たまきは、その小箱の鍵がどこにあるか、彗星ジュニアに占ってほしい。
 さて、どうなる。

 それからなんだかんだあります。

ラベリング:この人は、〇〇な人と、決めつける。評価する。あるいは、自分は、役に立たないと自分で自分を評価する。
ホロスコープ:天体図

 オチです。(話の締め(しめ))
 そうか…… すごいなあ。そういうことか。(ここには書きません。本を買って読んでください)
 人が生きるヒントがあります。ヒント:手がかり

 人の縁(えん)のことが書いてあります。
 出会いです。つながりです。

 なかなか良かった。


『ここだけの話』
 巻末に、この文章が加えられています。
 掲載されている短編に出ていた人たちのその後のことが書いてあります。
 それから、猫のことが書いてあります。

 単行本は、2018年(平成30年)に発行されています。
 文庫本は、2020年(令和2年)に発行されて、2024年で14刷発行されています。
 よく売れている本です。
 いい本でした。  

Posted by 熊太郎 at 07:23Comments(0)TrackBack(0)読書感想文