2014年05月25日

ホタルの光は、なぞだらけ 2014課題図書

ホタルの光は、なぞだらけ 大場裕一 くもん出版 2014課題図書

 本の中で主役となるホタルは、蛍ではなく、ホタルミミズでした。発光する生き物たちの生態調査と発光機能を人間生活に活用する発想、そして、探究心を育て「新発見」の喜びを語る内容となっています。最終的には、科学者になってよかったという満足とこれから科学者を目指す少年少女の育成をしたいという気持ちが伝わってくるお話でした。
 発光する生物はなぜ光を出すのか。読み手は、光ることは、擬態(周囲にまぎれて自分を食べようとする敵から身を守る)の反対に思えるのです。生物は天敵を避けるために周囲 の色と同色になってその身を守るのですが、発光すると自分の姿が目立ちます。最初に抱いた疑問です。 謎とも言い替えることができます。
 カラー写真が多量に用いられている本です。まず、写真を見る。それから文章を読む読書になりました。2011年1月9日、日曜日の名古屋大学構内にある自転車置き場で著者はホタルミミズを見つけます。同大学へは昔、英検の試験を何度か受けに行ったことがあるので、大学の構内風景が目に浮かびました。
 発光生物には、体そのものが光る(ホタル)ものと体の外に出した液が光るもの(ホタルミミズ)のふたつのタイプがある。著者が数えたところ、日本には発光生物が約70種類いて、そのうちの約50種類がホタルの仲間である。発光キノコは10種類ぐらいだが詳細はまだわかっていない。日本にいるミミズは80種類ぐらいだが、そのうち光るのは2種類、ホタルミミズとイソミミズと解説があります。
 イソミミズが紹介される第二章で、1936年(昭和11年)にイソミミズの発光を確認したふたりの博士、神田左京博士、羽根田弥太博士が紹介されます。ふたりのことを「発光生物の研究に一生を捧げた世界的な科学者です」と讃える文節に魅力を感じました。
 発光するミミズは希少な生物と思う人が多いでしょう。ところが、そうではないのです。たくさんいるのです。珍しくはないのです。気づいた人たちはいたでしょうが、それをどこかで発表しようと考えた人がいなかったのです。発表すると「新発見」になるのです。著者は、興味をもって発表する行為を推奨します。わたしはここで、興味をもって調査と研究はするけれど、発表はしないという選択枝もあると考えました。生き物を保護するためです。発表すれば、対象となった生物は、乱獲されて絶滅する場合もあります。
 イソミミズは、海の近くで暮らしています。長さが5cmから10cm、赤色です。春から秋の間はいつでもいるけれど、冬には少なくなる。
 第三章では、発光の「役割」について解説がなされています。著者が山形県に住んでいた小学生の頃、独自でハガキサイズの「みどりのカード」をつくった。上半分に絵を書き、下半分に文章を書いて記録とした。カードづくりが楽しかった。著者は、昆虫であるウチワヤンマという名のトンボ、植物であるキリンソウ、石である火打ち石など、ジャンルを問わずになぜという疑問をもち「みどりのカード」をつくっています。
 「なぜを三つに分けて考える」という項目があります。その意味は、「役割」、「しくみ」、「進化」です。
 発光の役割のひとつめは、「種の保存」です。ゲンジボタルやヘイケボタルのオスとメスは両者とも光を出しあって存在を確認しあい、カップルとなってこどもをつくるのです。人間と同じです。
 役割のふたつめは、「光る生物は食べてもおいしくない」ということを自分を食べようとする相手に記憶させるのです。実際、光る生き物は食べるとまずいそうです。明治時代の生物学の博士、渡瀬庄三郎博士は蛍を食べています。にがくて、臭い匂いがして、食用には適さないと評価を下しています。光る生物は、食べてもまずいという記憶を相手に植え付けるために光るのです。役割のみっつめは、「敵をおどかす」ことです。役割のよっつめは、「目くらましの術」です。ホタルイカが ぱっと光って逃げていくさまが書かれています。役割のいつつめが、「自分の影を消す」です。海底から 海面を見上げたとき、ホタルイカは発光することで、自分の影を消しているのです。役割のむっつめは、 「エサをおびきよせる」のです。チョウチンアンコウを例に出して、頭の上についている発光器でエサを 集めてばくっと食べることが書いてあります。
 章と章との間に書いてあるコラムで、著者がこれまでに見た発光生物の中で一番明るかったのは、ゲンジボタルの成虫のオスであったことが記されています。同ホタルが日本一で、外国にはもっと明るく輝くホタルがいると紹介されています。
 第四章では、オワンクラゲが光るしくみを調べた名古屋大学の下村脩博士のことが書いてあります。同博士のは、青色の光を緑色の光に変えるタンパク質を見つけました。「緑色蛍光タンパク質」と名付られました。ガンに緑色蛍光タンパク質を付けるとガン細胞が緑色に見えることを活用して、ガン細胞の広がりを観察することができるようになりました。医学の発展に貢献したことで下村博士とチャルフィー博士、そしてチェン博士の3人に、2008年、ノーベル化学賞が贈られました。
 本の中盤まで読み続けてきて、著者は、本を読む側ではなく、書く側の人間になることを読み手に勧めていることがわかりました。そのような文章の記述はないのですが、行間からそのような気持ちが伝わってきます。
 第五章で、解説は、ホタルの「進化」に達します。進化と遺伝子のお話です。進化については、他の何冊かの本でも読んだことがあります。進化は、「突然変異」が繰り返されてきた結果と理解しています。この本では、遺伝子が変化したと表現されています。生き物をつくる設計図が変化して、新しい性質をもつ新しい生物が誕生した。
 第六章を読みながら、相対(そうたい。向かい合うふたつのもの)とか、バランスについて考えました。対立と協調、生物の宿命です。個体が複数になれば、対立が生まれる。闘争が発生するけれど、最終的には共存するために妥協して協調する。
 著者は、昆虫が好きだった小学生時代をふりかえりながら、正しく疑う力を新発見につなげていくことを語ってくれます。小学校1年生のときに父親の転勤で、北海道から、山形県の自然がいっぱいのところに引っ越した。シマヘビを家の中で飼っていたお話には笑いました。いとこに「どうして、しかられないの?」と聞かれています。著者の父親は、大学の岩石学者でした。このへんは、親に対するメッセージが含められているのでしょう。お母さんは科学者ではありませんが、息子である著者がする話のよき聞き手でした。
 第七章で、著者が取り組む「発光生物の遺伝子図鑑」作成の夢が語られます。深海魚調査の様子はおもしろい。漁師さんに頼んで深海魚を譲ってもらうのですが、漁師にとってごみ同然のお魚は、博士にとっては宝物なのです。
 最後の章では、研究のおもしろさについて書かれています。大学というところは、人類に貢献するという崇高な目的をもって研究しているところという定義があるけれど、ひとりの研究者としては、調べることがおもしろいからという理由で研究している。著者は24歳で発光生物の研究から離れたあと、他の研究に移り、6年後に発光生物の研究に復帰しています。ここで、何かを始める時期についてのメッセージがあります。何かを始めるときに年齢は関係ないのです。夏目漱石が小説家になることを決めたのが40歳であったことが紹介されています。あわせて、恩師が再会研究開始からわずか25日後に事故死されたことが書いてあります。著者は、それを受けて悲しみを味わい、「危険に近づかない勇気をもつ」ことを決心されています。
 ラストページで、発光生物を見学する場所として、富山県にある魚津水族館、東京の多摩動物公園、八丈島が紹介されています。ページ数はそれほど多くない119ページの本でしたが、内容は盛りだくさんでした。

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この記事へのコメント
何を書いたらいいのかわからないというこどもたちのために、書き方のコツをここに置いておきます。
次の文章は2008年につくったものです。今は、違うやり方で感想を書いています。それぞれで工夫してください。
それでもどうしても書けないという子は、熊太郎の記事を読んで同感だと思った部分を自分の頭で文章をつくって書いてみてください。

【読書感想文の書き方】

 わたしの書評はおじさんの書評ですから真似して書いてもこどもが書いたとは思ってもらえないでしょう。自分の感じたことを自分の言葉で書きましょう。
 わたしが本を読むときには、本の末尾にたくさんのインデックス(付箋ふせん)を貼っておきます。インデックスは栞(しおり)としても使います。そして本を読みながら感じたこと、考えたことをインデックスにメモしていきます。インデックスには番号を付して順番に書きながら再び巻末近くのページに順番に貼り付けていきます。
 読み終えると付箋を並べてから文章をつないでいきます。類似の項目ごとに固めます。起承転結とか序破急という文章の構成を考えながら固まりをつくってつなげていきます。かなり長い文章になります。完成後は感想文をしばらく寝かせます。3日間程度のこともあれば1年以上になることもあります。時間が経ってから推敲(すいこう)します。そのときには、不要な部分をできるだけ削っていきます。要点を明確にします。
 本を全部読み終えてから感想を書こうとするとなかなかまとまった文章を書くことができません。少しずつの積み重ねがコツです。付箋でなくて、メモ用紙でもよいでしょう。
Posted by 熊太郎熊太郎 at 2014年07月27日 18:14
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