2013年03月17日

きりこについて 西加奈子

きりこについて 西加奈子 角川書店

 女子向きです。きりこをはじめとした同世代の男女について、乳幼児期から20代までの出来事が簡略に書かれています。きりこがぶすであるという話が延々と続きます。途中でその話は消えるものの再び後半にぶす話が登場してきます。「ぶす」という人には会ったことがありません。ただし「老い」というものはよくわかります。10代から20代の頃はぴちぴちです。中抜きして、20年ぶり、30年ぶりに再会するとかなりショックを受けます。もちろん自分自身も老いています。
 ラムセス2世というのが、きりこの飼い猫です。ひきこもりになってしまった娘さんと猫の会話で成り立っていく物語です。ブス話と性描写、文章の向こう側には暗い世界があります。リズム感はあります。ただなにかしら現実から乖離(かいり)している。
 文章は、文章ではなく、文字という漢字・ひらがなに分離されて、視覚には字という物体が見えるだけで、意味をなさない。字という物体が脳に届いて、書いてあることとはまるっきり違う印象が脳に残るのです。これが意図的になされたとすれば、この作家さんはすごい能力をもった人です。

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