2022年01月04日

無理ゲー社会 橘玲(たちばな・あきら 男性作家)

無理ゲー社会 橘玲(たちばな・あきら 男性作家) 小学館新書

 無理ゲー:難易度が高すぎてクリアすることが無理なゲーム。実生活で、実行が困難なこと。単純に無理ということ。

 自殺願望の話から始まります。たまたまこの本を読み始めた朝に、若い女性芸能人がホテルの高層階から転落して亡くなったというニュースが流れました。
 前日には、大阪のクリニックで放火事件があって、たくさんの人たちが亡くなりました。いたましく、気持ちがふさぐ昨年末になりました。

 まわりにいる人を殺して自分も死ぬという道連れをつくっての自暴自棄(じぼうじき。先のことを考えない)な自死発想は昔からあったと思いますが、最近は実行する人が現れるようになりました。
 動機を察するに、自分はなんのためにこの世に生まれてきたのだろうかという自問自答があって、地球上のこの時代に自分が存在していたという痕跡を歴史に残しておきたいという欲が生まれて、犯罪史に名前を残すことを発想して実行した。自分自身に催眠効果(暗示)を与えるほどの強い決心があった。
 まわりに止めてくれる人がだれもいないという『孤独』があります。

 荒れる原因が、お金がないということ。

 事例として、テロが多い(無差別大量殺人)。東京の繁華街で刃物を振り回して人々を襲った事件、ビルでガソリンをまいて火をつけた事件、施設での大量刺殺事件、バス停付近でのナイフ振り回し殺傷事件、本には書いてありませんが、電車内で刃物を振り回したり、火をつけたりした事件。
 アメリカ映画『ジョーカー』が重なります。自分の境遇の不遇を恨んで(うらんで)の凶行があります。
 正社員になれない。正社員になれても賃金が低い。
 大学へ進学できない。
 親の介護がある。負担がある。
 年金が少ない。
 税金が上がる。
 育児費、教育費がかかる。
 自分の寿命が自分で決められるなら計画的な人生を送ることができる。
 いろいろあります。
 本では、対処が無理な現実があると示されています。
 社会が不安定になって揺れています。
 今まではあった「秩序」がなくなりました。

 アニメのことが書いてあります。
 自分は、アニメ映画をたまに見ますが、絵はきれいです。ストーリーは、これまでにあった古今東西の名作の数々から、おいしいところを抜き出して、くっつけてあるなということが、正直なところの感想です。

 『知覧特攻平和会館』のことが書いてあります。
 訪れたことがあります。
 精神世界に引き込まれるのは、いいところもあるけれど、のめりこむと苦しくなります。
 
 『アメリカ人の4人に1人は親友がいない』とあります。先日読んだのは『世界一孤独な日本のオジサン』岡本純子著でした。どこもかしこもひとりぼっちばかりです。

 引用が多い内容です。
 攻撃的な文脈です。
 なんでも数値化して説明があります。
 著者の見えている風景と読み手である自分に見える風景に距離感というへだたりがあります。性別の選択とか確定の部分は理解できません。
 73ページまで読んで、内容はむずかしくてすんなり理解できません。

(つづく)

 メリトクラシー:能力主義。知能と努力。
 リベラル:自由な。自由主義。政治的には穏健な革新をめざす立場。
 ポピュリズム:一般大衆が、エリートや知識人の体制を批判する思想。
 きれいごと:体裁だけで実情にそぐわない。見かけや口先だけ。
 レトリック:言葉巧みに訴えて相手の感情を動かすこと。修辞法。

 幸福の基準をどこにおくのか。「地位とカネ」か。それ以外のことか。前者だとこの本の内容に合致してきます。

 就職先がないという話を聞きますが、採用したくても、本人の力不足で使えないということはあります。
 本に書いてあるのは、日本語が読めない日本人がけっこう多い割合で存在する。数的思考力が小学生程度しかない。パソコンが使えない。付け加えると、文章を読めない。文章を書けない。話し言葉で、ことがらを順序だててわかりやすく相手に説明する力がない。外国でも類似の傾向があるそうです。

 『遺伝が半分、育ちが半分』

 トランプ前アメリカ大統領が、ドイツからの移民三世であることは知りませんでした。父親がニューヨークの二流地区にあった低所得者用アパートを開発して、不動産がらみで成り上がったとあります。
 ホワイト・トラッシュ:白人のくず。
 黒人以下と評価される白人がいるそうです。アメリカ人白人労働者階級の平均寿命は短くなっているそうです。ドラッグ、アルコール、自殺が原因とあります。『絶望死』と示してあります。
 高学歴(大卒)と低学歴(大卒以外)に区別されて、分断があるそうです。
 エピデミック:ある地域で流行する現象。パンデミックが世界的大流行。
 低学歴アメリカ人から奪われたものとして、「機会(チャンス)」具体的には、働く機会、恋愛の機会、結婚の機会、子育ての機会、幸せな生活を手にする機会、自分らしく生きる機会が奪われた。
 アメリカ社会ではすべてが自己責任とされる。
 いままで黒人のことをばかにしていた白人が、黒人よりも低レベルの生活に落ちたことがショックなのです。トランプ氏に熱狂する理由がわかりました。
 日本では大学入学が人生のゴールになっている人もいます。大卒でも働いていない人はけっこういます。大卒でなくても収入や貯蓄が多い人もけっこういます。昔ほど学歴にこだわらなくなりました。高校卒業時に教育資金がなければ、お金を貯めてから大学に入ることもできます。
 
 読んでいると疲労感を感じる内容です。
 テロ行為の加害者家族は社会的制裁を受けることになります。本には、加害者の弟が自殺した話が掲載されていました。弟の言葉で「もう生きる理由がなくなった」とあります。

(つづく)

 全体を読み終えました。
 文字数が多かったことと、言葉の意味がすんなり頭に入ってこなくて苦痛であったこともあって、速読で流し読むように読みました。
 
 弄ぶ:もてあそぶ。読めませんでした。
 デリバティブ取引:金融派生商品。
 レバレッジ効果:少額の投資で大きなリターン効果が期待できる。
 平等な世界をもたらするものとして:戦争、革命、統治の崩壊、疫病などのその後。
 億万長者の割合として日本では、4080万世帯。7.4% 100世帯のうちの7.4世帯。けっこう多いのではなかろうか。
 カーボンニュートラル:炭素中立。二酸化炭素の排出量と吸収量を同じ量にして地球環境を保護する。2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする。
 SDGs:持続可能な開発目標

 日本には100万人を超えるひきこもりの人がいるそうです。
 ひきこもりの基準がわからないのですが、家で過ごす時間が多い人はけっこういるような感じがします。なんらかの環境で、経済的に自活して生活ができるのであれば、問題視しなくてもいいのではないか。

 ベーシックインカム支給:全員一律に毎月定額を支給する最低所得保障制度。なぜ?という疑問が先にきます。お金をもらうと国家に従う「義務」とか「服従」が発生するような不安が生じるのです。
 本の後半に書いてあることは極端で、自分には理解できません。

 結婚に失敗すると社会の底辺に突き落とされるとあります。母子家庭の貧困について書いてあります。
 自分も死別でしたが中学から母子家庭で育ちました。経済的に苦しくて、着る物(私服)がないのと、食事が粗食だったことが苦痛でしたが、あのときの苦労があったから今はこうして平穏無事に生活できているということに感謝する気持ちはあります。やはり、なにくそ負けてたまるかという気持ちがないと社会で体験する困難に打ち勝てません。

 「結婚して子どもを産んでもなにひとついいことがない」と言われると悲しい。子どもや孫の姿をみているとほっとするときが何度もあります。

 子ども家庭庁という組織ができるそうです。いじめ対策とひとり親家庭の対策に力を入れてほしいというのが世間の強い要望でしょう。
 いつも、いじめが原因で死ぬ人のニュースが流れると、いじめた人間はどこかで今も生きているわけで、どんな気持ちでいるのだろうかと考えることがあります。案外ケロっとしているのではなかろうか。当事者意識が薄い人はいます。

 この本では、お金のあるなしが幸せの基準です。
 自分は、自分の自由になる時間があるかないかが幸せの基準のような気がします。

 日本国内の新型コロナウィルス死者の数が、18,381人(2021年12月21日現在)
 
 世界的に人生を送ることが『無理』だという人が増加している。
 社会制度に管理されることが息苦しい。
 自分らしく生きるために共同体から離れていく。
 すべてのものは『流れ』の中にある。
 流れにのることが目的で、到着地としての目的地はない。
 未来映画の世界の風景を見るようです。
 人間の脳にコードが付けられて、脳内の世界だけで人間が生活していく。
 インターネットを使って、地球上のどことでもつながって活動していけるのです。
 『メタ知能』というそうです。

 最近読んだディストピア小説を読むようでした。(ユートピア小説の反対「一九八四年」「動物農場」ジョージ・オーウェル作品。「ハツカネズミと人間」スタインベック作品)
 こちらの本は『そこには悲しみも苦しみもなく、(たぶん)よろこびもないだろうが。』で結ばれています。
 背筋が寒くなりました。

 現在の日本の若者は超高齢者社会を負担に思っているそうです。
 最近読んだどの本だったのかタイトルを思い出せないのですが、「自分たち」と「あいつら」と定義して対立するのではなく、お互いの違いをお互いが理解して認めあう『共存』が人類全体の生存を継続する手段だという意見が書いてあり共感しました。

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