2021年12月24日

世界一孤独な日本のオジサン 岡本純子

世界一孤独な日本のオジサン 岡本純子 角川新書

 自分はオジサンなので、なにやらさびしくなるようなタイトルです。
 読む前の予想として、なんでもマニュアル(手順を示した手引き)で整理整とんするのだろうか。
 分析と問題提起、そして対策です。
 そっとしておいてほしいという願望と、老後はどうしようという思いが重なります。
 両親や兄弟姉妹がいて、彼らの子孫がいて、自分の配偶者や子どもや孫がいれば、オジサンであっても孤独とはなりません。(たいていは)
 
 おしゃべり下手とあります。
 それでも、歳をとると、勝手に口が動いて、ずらずらと言葉が流れ出るということはあります。
 自分の頭で考えなくても、口からすらすらと話がこぼれるということが老化のひとつだという実感があります。
 いらんことまで言ってしまいます。
 
 恵まれているけれど、不幸感でおおいつくされているのが日本だそうです。
 それは、人によりけりだし、気持ちのもちようだと思うこともあります。
 日本は高齢者が世界一不幸な国だそうです。
 そんなこともないと思いたい。
 思うに著者は「世界一」とか「日本一」とかいう言葉が好きなようです。

 オジサンとおばちゃんの比較があります。
 圧倒的にオジサンが不利です。
 なんだかオジサンはいないほうがいいみたいな文脈に思えます。
 『威張る、文句を言う、キレる』本人に自覚はありません。(女子のクレーマーもけっこうきついのに)
 
 『夫が逝くと妻は解放されたと思い、逆だと夫はしぼむように生気を失っていく』とあります。
 自分のことは自分でやりましょう。
 男は妻に自分の身の回りの世話をさせてはいけません。
 逆に妻にサービスするべきなのです。
 読んでいて共感した部分でした。
 
 近所づきあいというのはむずかしい。
 一定の距離が必要です。
 外から見ると健全そうでも、中に入ればうまくいっていないことがあるのが、たいていの家庭の事情です。
 知られたくないことを世間にさらしても幸せにはつながらないし、お悩み事の解決にもなりません。

 日本の内閣官房に孤独・孤立対策室という所属があることをネットで知りました。
 ひとりぼっちは集まれということだろうか。

 『孤独』が病気とは思えません。
 本では、高齢者は孤独だと定義されていますが、若かったひとり暮らし独身のころのほうが、孤独感が強かった覚えがあります。
 早く結婚したかった。こどもをつくって、家族のメンバーを増やしたかった。(ただ、結婚後、やっぱりひとり暮らしのほうが気楽で良かったと感じたことは何度かありました)

 『孤独死』というけれど、人間はいつどこで死んでもたいていはひとりで死にます。
 本人が死んだあと、まわりにいる人がこの人は孤独死をしたと判断するだけです。

 字数が多い本です。

 ニコチンとアルコールは人を幸せにはしてくれない。
 薬物の服用も同様です。
 
 形態が変わりました。
 婚姻届けを出す前から同居を開始するカップルが増えました。
 結婚式を挙げない。実態は夫婦だけれど戸籍の届は出さない。
 法令にしばられないカップルですから、別離は安易にできます。

 ひとり暮らしの割合が出ていますが、自分の実感としては、いなか暮らしの人も含めて、日本国全世帯の半分以上がひとり暮らしをしているような気がします。
 あるいは、同居者がいても実態は各自のひとり暮らしとか。

 人生で一番ハッピーなのは、外国では、退職後、日本は、十代のころだそうです。
 お金を稼ぐ時期は苦痛の連続です。しかたがありません。
 あまりあてにならない年齢別幸福度のグラフでした。
 働いているときは自分が自分のために使える時間が少なかった。
 リタイア後は時間ができたので幸福感があります。考えてみれば、人生の長さ=時間です。

 働けるうちは働きたいという発言は、世間体(せけんてい)を考えてのものです。
 だれだって、気を使って働くのは嫌です。

 日本のサラリーマンは忙しすぎるという文節には実感があります。
 最近は働き方改革で時短が言われるようになりましたが、サービス残業や休日・時間外夜間等の急な呼び出し出勤は普通のことでした。みかえりが昇進や昇給でした。されど、日本は勤務時間が短くなって、これからどうやって仕事を回していくのだろうか。

 たしかに本に書いてあるとおり、女性がパイロットや科学者、技術者、大型バスやトラックの運転手とか電車運転士をするようになりましたが、男子がキャビンアテンダントとかバスガイドは聞きません。ただ、それでも男性が多い職場はまだたくさんあります。

 読んでいると、よそとの比較が多い文脈です。
 そして、日本のオジサンのほうがだめなのです。
 読んで自分の生き方を考える本です。
 働いているときは、忙しいことに価値があるように内外からの視線で見えました。
 年金生活者になって、賃金獲得労働から離れると、忙しいことに価値はないことに気づきます。

(つづく)

 先日読んだ同著者の『世界最高の話し方』と対応が重なる部分があります。
 ほめることです。
 お世辞、社交辞令、おべっか、二枚舌はだめなのですという記述です。
 実体験としては、仕事上なら使うでしょうが、リタイアしたあとでは不要なやりかたです。
 もう媚びを売る(相手の機嫌を取る)必要はないのです。

 男は女子から『すごい』『ありがとう』『こんなの初めてと』と言われると嬉しいそうです。
 簡単に手玉にとられそうです。(思いどおりにあやつられる)

 仕事が楽しいと思うことはありませんでした。
 ひたすら生活費を稼ぐために耐えるのでした。
 欧米人は仕事を楽しいと考えるそうです。
 なにか意識のすれ違いがあります。

 外国の孤独防止施策、事例は、読んでも参考にはなりませんでした。
 
 なにかしら、徹底的にオジサンが叩かれている感じでした。
 そっとしておいてほしい。
 ストレスのはけ口にされたような読後感が残りました。
 リタイア後のオジサンは、ひとりでも特段悩んではいません。

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