2016年02月14日

あの日 小保方晴子

あの日 小保方晴子 講談社

 本屋にて、お目あての文芸書を探していましたが見つかりません。
 (ほかのお客さんたちが)小保方さんの本がない。
 レジにて、予約されていました。

 翌週、大量の「あの日」が棚に並んでいました。
 (いつもは興味がない世界だけれど)読んでみるか。

 装丁の「純白」は「潔白」の証明なのでしょう。
 
 思い出してみる。
 STAP・スタップ細胞なるものが、iPS細胞並みの発見と報道される。iPS細胞発見の苦労話は聞いたことがあるが、スタップ細胞は簡単にできるのですと説明があった。そんなことがあるのだろうかという疑問が生まれました。
 発見したのが、彼女と報道される。若い。
 どういうわけか、映像の中の彼女は白いかっぽう着を着ている。
 (研究作業で汚れるのか)
 マスコミが彼女をアイドルのような扱いで報道している。
 テレビ局は、彼女を徹底的にもちあげて、次にどん底に突き落とした。
 (マスコミがやりそうなことだ)
 スタップ細胞はありますという彼女の言葉を聞いて、
 (どこにあるのか、見せてください)本書を読んで、細胞関係の専門用語をこんなにたくさん書けるのに、あのとき、なぜ、小学生のような受け答えしかできなかったのか。本を読むと、精神的に追い込まれていたことがわかります。

 自殺者も出たらしい。
(「間違いでした。すいません」では、とおらないのか。残された者(家族・親族)の生活はどうなるのだ。人間がやることに間違いはつきものです。再起・再生の機会の提供は必須です。明日は我が身です。)

 だれが、どんな犯罪を冒したというのだろう。
 マスコミは、ターゲットを定めて、徹底的にいじめぬく組織です。ときにだれかが死ぬまで追い込みます。その責任を問われることは少ない。

 著者は、物書きを本業としていません。
 そういう立場に配慮して、読み始めることにしました。(接続詞がありません。内容は、難解ですが読みやすい。編集の力量でしょう。著者としては、慣れた研究論文形式もあるでしょう。)
 人間、なかなか、200ページを超える文章は書けません。
 (ちゃんと読む人、いるのだろうか。)

(つづく)

 第一章を読み終えました。
 世間を騒がせたことへの謝罪、細胞論文偽内容の否定、目的は、真実を書くとあります。
 お世話になった、あるいは、いまもなっている人たちへの感謝があります。読み手は、お互いを「先生」と呼び合う世界に違和感をもちます。
 「再生医療」、細胞を再生して医療に生かす研究を始めた動機があります。子どもの頃、小児リウマチだった親友の同級生がいたとあります。
 細胞をつくって、移植して、たとえば、火傷の跡を治すとあります。尊い仕事だと思います。ハーバード大学「バロンティマウス(細胞からつくった人間の耳形を移植して、背中にくっつけたねずみ)」が紹介されました。

 著者はまだ若い。研究者としての活動期間は、10年そこそこではなかろうか。そんな短い経歴で、大発見ができたとは思えない。どうして、こんなことになってしまったのか。全部が彼女の責任なのか。そう考えるのが社会人としての常識です。

 「自家移植」、「他家移植」、細胞話は、専門家が読んだらどう思うのだろう。一般の読み手には内容を理解できない。引用なのか、著者自身の言葉なのか、区別がつかない。顕微鏡から見た細胞の美しさは読んでいて伝わってきました。細胞には、「救い」がある。

 わからなかった言葉として、「修士課程・博士課程:説明を読みましたが、よくわかりませんでした。著者は高学歴に誇りをもっているようで、本書の冒頭付近から頭のよしあしの記述が始まります。大学とか医学、大企業の研究所等、研究者の世界で食べていくためには必要な資格なのでしょうが、一般社会では学歴は関係ありません」、「ラクロス:球技。スティックを使って、ボールを相手ゴールに入れる。(見たことありません)」、なんか、全般的に、違う世界の人です。「アニマル カウス:動物にたとえた造語。カウスは植物細胞」、「エピジェネティクス的観点:細胞を研究する世界の言葉で、なんのことかわかりません」、「ニッチェ:成体幹細胞がある場所」、「アーティクル:5ページほどの長さの論文。科学誌ネイーチャーの場合」、「ポスドク:ポストドクター、ドクター(博士号取得者)を目指す人、なったばかりの人(なんだか未熟者という表現)」、「オーサーシップ:原作者」、「リバイス:見直す」、「テラトーマの写真とか図表とか:細胞の奇形種」、「バンドとかゲル、電気泳動、定量的データ、定性的データ:ちょっと、調べる気力がわきませんでした。電気泳動は、解析手法、バンドはたんぱく質、ゲルはどろどろした液状のものだろうか。わかりません」「プロトコール:手順」、「シーケンサーの解析:DNAなどのなんとかを解析する装置?」、「Oct4:遺伝子がらみのたんぱく質」、「RT-PCR:実験方法、検査方法、逆転写」、「理研CDB:神戸市内、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(当時)」、「PI:研究室主宰者」、「GFP:タンパク質」、「GD:グループディレクター」、「TCRの実験:遺伝子の実験らしい」、できれば、アルファベットの羅列(られつ)ではなく、手間がかかっても、単語・言葉で表記してほしい。そうしないと、素人の読み手には、何が書いてあるのかわかりません。

 だれが、どんな、被害をこうむったのか。よくわからない。

(つづく)

 アメリカ・ボストン・ハーバード大学留学を経て、63ページ・第四章「アニマル カルス(カルスは植物細胞)」まできました。
 いろいろな細胞があるのだなあ。東北大学ミューズ細胞(Muse)、ES細胞(これがSTAP細胞なるものに混入したらしいがそこには計略があったとあとで出てきます)、キメラマウス(本来の細胞プラスアルファでふたつの細胞からできたマウス。キメラマウス=初期胚∔スフェア細胞。スフェア細胞は、Oct4陽性のスフェア細胞を作成する)、多能性幹細胞など。細胞シートを使うことが実験なんだ。細胞が光るのか。輝きは成功なのか。感動的です。

 みんなが好意で支えてくれたのを台無しにした。追放されたのだからもうボストンへは行けないだろう。
 嘘の論文を出して、認めなかったわけか。今も認めていないようだ。ただ、もう終わっている。済んだことです。
 肝心な部分の記述はまだ始まらない。
 読み返してみると、PNASという科学雑誌は、一度は、論文採択をやめようとしたのに、どうして、採択したのかという疑問が生じました。外部から何か力が働いたのか。内部でひっくりかえす意見が出たのか。不審です。

 著者は今、毎日、何をしているのだろうか。
 失業して、ひきこもりを想像します。
 この本を書いていたときは、エネルギーに満ちていたでしょうが、今は、放心状態ではなかろうか。

(つづく)

 問題の日、2014年1月28日午後の記者会見まできました。
 おそらく、92ページあたりから始まる大学教授に対する攻撃に問題があるのでしょう。なれ合い、教授の作為ともとれる行為があります。とくに作為(つくりごと)は過去から継続して、その後も続きます。
 小保方さんは、はめられた。利用された。
 こんな経験の浅い若い女性を前面に立てて発表させておかしいんじゃないか。
 結局、組織の管理能力がなかったということか。事の重大性に関する危機感もなかった。警鐘を鳴らした人物はいなかったのか。発表を止められなかった。権威者のなすがままにさせた。放置した。知らん顔をした。関係者全員が罪を背負う立場にあります。こういうことは、どこの労働の世界にもあります。だけど、たいてい、だれかが体を張って阻止します。先輩から教えられるのです。この件は、日本の学術界の汚点でしょう。

(つづく)

 読み終えました。
 細胞研究に関する記述を理解することはむずかしい。
 
 騒動に関することは、おそらく事実が正直に語られている。
 その点で、読んで良かった1冊です。
 こういうことは、別の仕事の世界でもある。
 それでも、人はしのいで、生きている。
 がんばって下さい。

 印象に残った記事部分として、63ページの「若山研究室は、マウスと血の匂いがした」、68ページ付近の割烹着をめぐる祖母とのやりとり、82ページ、まとわりつくようなぬるい空気に迎えられた(ボストンからの帰国時)、141ページ、自分の偽物がテレビに映っている、非現実感。混乱と不安で涙がこぼれた。悪の象徴にされている。ただただ恐怖だった。

 後半は「復讐」です。パワハラが横行していました。大きな権力でいち個人を叩きつぶしています。大手新聞社、有名放送局、記者や職場の個人名まで登場します。マスコミの攻勢はすさまじい。人権侵害です。犯罪じみているのに警察も助けてくれません。

 個人が平和に暮らすには、何もしないという選択肢を選ぶしかないとまで思わせてくれます。それは、未来に夢のない世界で、残念です。

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