2015年11月04日

九転び十起き! 広岡浅子の生涯 産経新聞出版

九転び十起き! 広岡浅子の生涯 産経新聞出版

 書店でたまたま見かけて手に入れて読み始めました。その2週間ぐらい前、福岡県飯塚市内で見学した嘉穂劇場とか旧伊藤伝右衛門邸の記事が書中にあったことが読書のきっかけでした。現在流れているNHK朝ドラマの主人公のモデルとは知りませんでした。

 三井財閥の家系にある令嬢として京都で生まれ、数え17歳で大阪の豪商加島屋一族(大名に金を貸す仕事)の広岡信五郎に嫁ぐ。幕府が倒れて倒産の危機を迎える。当主も亡くなる。夫と夫の兄、自分で、経営を立て直す。そこから浅子の実業家人生が始まるという流れのようです。
 こういう人物がいたということを知りませんでした。最初に手がけたのが、炭鉱事業となっています。炭鉱というものはもう過去のこととして忘れ去られるものと思いこんでいたので、最近の話題復活には驚かされます。

 座右の銘とかペンネームが「きゅうてんじゅっき九転十起」となっています。人の名前とは思えませんが、野草のように踏まれても踏まれても立ち上がるとか、だるまの七転び八起きを想定してあります。

 男優り(おとこまさり)の女傑というのが、当時の人たちの印象として残っています。

 朝ドラのモデルにする人物探しのために、歴史に埋もれていた女性を発掘した。

 別腹で入家し、母親はだれなのかわからない。9歳のときに実父は59歳で死去した。けして幸せだったとは思えない子ども時代です。反発心、反骨精神、負けてたまるかの根性はそこで育ったにちがいない。

 本書は歴史書です。広岡さんと日本の歴史が併記されながら現代に近づいてきます。150年ぐらい前、明治維新の頃からのお話です。
 嫁いだ浅子は、勉強に集中します。無事で安らかな世の中は続かないと予測します。読書にいそしみながらいざという時に備えて、自己の能力開発に努めます。

 ご主人がお妾さんとの間に複数のこどもさんをつくったというくだりは、今の時代では考えにくいことであり、昔はそれがあたりまえだったわけで、されど、広岡浅子本人はどう感じたのだろうかとか、もともと外での活動が好きだった人だからとか思いが巡りました。夫の子づくりの相手が、広岡浅子のお手伝いさん(5歳下)で婚礼後一緒に三井家から来た人であり、なにもかもスケールが大きい。法律は別として、一夫一婦制が現実に確立したのはそれほど遠い過去ではないようです。

 日本女子大学校の開校に熱意を注ぎ込むあたりは、女性の人権向上のために奔走した人という印象です。

 晩年と言っても60歳付近では宗教活動に没頭されています。常に何かに夢中になり続けた人生と受け取りました。なにしら、複数の人生をひとりで体験した人という感じもしました。

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