2015年08月10日

8年 堂場瞬一

8年 堂場瞬一 集英社文庫

 8年とは、プロ野球選手を目指していた藤原雄大の娘由佳里が生きた年数です。病死です。藤原はその8年間、プロ野球への夢をあきらめて、娘の看護をしました。すごい。決意ある動機と今後が期待できる展開です。
 8年後、武蔵野製菓野球部で33歳になった彼が、アメリカ合衆国のプロ野球入団に挑戦して、ニューヨーク・フリーバーズでピッチャーとして働き始めます。
 同時期にキャッチャー常盤哲也18歳、3月に高校を卒業したばかりも同球団に入団します。ホームランバッターですが、守備に難点があります。原因は、心の傷です。豪快ですが弱気です。
 ジャパンソフトというコンピューターソフト制作会社である日本企業がスポンサーの球団です。弱小球団です。下位球団3Aでの試合風景、そんなところから物語は始まりました。

(つづく)

 他の人たちの読書感想文を読んでしまいました。
 おおむね好感をもたれていますが、車いす監督タッド・河合が更迭されるらしい。それがよくないという意見でした。
 また、なにかしら力不足があるようです。

(つづく)

 ジャパンソフトの社長であり、ニューヨーク・フリーバーズのオーナーである西山大典(ひろのり)。1957年山梨県甲府市生まれ。社員5人から始めた会社は時勢に乗って急成長して大会社にまでなった。西山は病弱ガリ勉だったので野球はしなかったが、隠れ野球ファンではあった。父親もまた急成長したスーパーマーケットグループのオーナー。

 一部欠陥品であるピッチャー藤原雄大とキャッチャー常盤哲也は協力しながら、大リーグ球団であるニューヨーク・フリーバーズの3A(下位球団)でがんばります。藤原の言葉がいい。「彼のためでもなく、自分のためでもなく、強いチームをつくるために努力する。」
 その後、中盤に藤原のフェルナンデス選手に対する嫌なセリフが出てきます。「屈辱を味あわせてやりたい」
 そのあと、いいセリフが出てきます、「もう、フリーバーズの悪口はだれにも言わせない」

(つづく)

 藤原がライバル視している選手が、アレックス・フェルナンデスです。34歳ナショナルリーグのベスト5に入るバッターです。両親が強盗に殺された。静かなファイトをもつ選手。余計なことは言わない。やることはやる。打つ。ベースにすべりこむ。ボールにくらいつく。アマチュア時代ふたりはソウル五輪で対決して、藤原は精神的に打ちのめされる完ぺきなホームランを打たれています。

 投手とは何か。投手の精神状態とはどういうものか。プライドとは。そんな問いが続きます。そこが、彼がアメリカを目指した動機です。
 その彼の夢を阻んだのが8歳で亡くなった娘由佳里です。彼は病気の娘がいなければ、自分の野球での夢がかなったと強く念じています。そして、彼の妻瑞希はそれを見ぬいていて、ふたりの夫婦関係は冷たい。妻は日本、夫はアメリカで暮らしています。同居することはありません。そんな彼でも、球場に立つときは、娘の写真を抱いて心の支えにしています。奥さんはちょっとだんなさんに対して冷たすぎるんじゃないか。野球で成功するにつれて、藤原選手の頭から奥さんのことが確実に薄れていきます。タイトルにある「8年」の中身がまだわからない。何があったのかまだ、わからない。人生は苦しみと同居していくしかない。

 日本のプロ野球界に対する批判があります。人種差別です。日本選手の記録を破らせないために外国人選手にピッチャーがバッターを敬遠する。
 ふと、相撲のことが思い浮かびました。日本人横綱が消えてから久しい。

 「運」が必要で、運を手に入れるためには、代わりに何かを失わなければならないのが、この世の常です。結局人生はトータルで、プラスマイナスゼロなのです。

 気に入った表現です。「感情の欠けた口調」

(つづく)

 苦しい山場らしきものはあるようでなく、順風満帆でチームそして、選手たちは活躍していきます。
 あっけなくラストを迎える成功物語です。
 藤原の病死した娘へのこだわりに関する文章はなく、妻の様子に関する描写もありません。それらの点を物足りないと感じるのでしょう。
 また、書評にあった監督タッド・河合の更迭話もありませんでした。どうしたことだろう。


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