2023年09月28日

ゆきがやんだら 酒井駒子

ゆきがやんだら 酒井駒子 Gakken

 絵画集のような感じがする表紙です。
 表紙をめくると、雪が降っています。
 白と黒の二色で降り積もる雪を表現した絵が目の前に広がります。
 雪国の体験がある人は、すぐに雪の風景を脳内にイメージすることができるでしょう。
 体験がない人は想像がむずかしい。
 心を豊かにするために、体験は大事です。

 タイトル『ゆきがやんだら』は、なにを意味するのだろう。(パパの帰宅でした)
 雪が降る空港の絵です。アメリカ合衆国にある空港です。
 パパは飛行機で、単身赴任先から帰ってくるのでしょう。
 
 人間ではなくて、うさぎの親子の絵です。
 うさぎだけど、うさぎのこどもは幼稚園に行っていて、だけど、きょうは大雪だから、幼稚園バスのお迎えがないから、幼稚園は休みなのです。

 うさぎの子どもは、女の子だと思っていたら男の子でした。だって、自分のことを『ぼく』と言ったからです。

 こどものうさぎの絵を見ていて、ルイス・キャロル作品『不思議の国のアリス』を思い出しました。1865年出版。日本だと江戸時代末期(明治元年が1868年)です。

 さて、うさぎにしろ、にんげんにしろ、ちびっこは雪遊びが大好きです。
 でも、うさぎママは、かぜをひくからだめだと、うさぎの男の子の外出を認めてくれません。

 うさぎの母子は賃貸マンションか公営住宅住まいのようで、男の子はしかたなく、ベランダに積もった雪でおだんごをつくってひとり遊びをします。絵では、建物の3階にお部屋があります。同年齢ぐらいで遊ぶ友だちもいないようです。ちょっと閉塞感があります。

 男の子はママとトランプ遊びをします。
 トランプ遊びは、3人以上でやるのが楽しい。
 だけどパパはいない。単身赴任かと思ったら違っていました。出張中でいないそうです。遠くへ仕事に行っているそうです。雪がやまないと飛行機で帰ってくることができないそうです。
 
 雪は、さらさらとふるのです。

 雪に閉じ込められて、この世界には、ぼくとママしかいないみたいなのです。

 夜になって、雪がやみました。
 絵が優しい(やさしい)。

 この絵本は、文章をすんなり読みながら読み聞かせる絵本ではなく、絵を見ながら、読み手と聞き手の両者で創作話をつくる素材となる絵本です。なんだかんだ、ああだこうだと、ふたり以上で話をつくりながらページをめくる絵本です。

 まっ白に積もった雪です。
 新雪ですから足跡もありません。これから足跡をつけるのです。
 男の子は、雪でおだんごとおばけをつくります。(雪だるまはつくらないのだろうか?)
 手が冷たくなってしまいました。

 雪のかたまりがみっつできました。パパとママと男の子です。
 こうやって、一日一日が過ぎて行って、こどもは大きく育っていきます。

 静かな雰囲気の絵本でした。
 ストーリー展開よりも、絵の雰囲気を楽しむ絵本でした。
 パパが慕われているということは、子どもさんとよく遊ぶパパなのでしょう。
 パパだというだけでは、子どもは父親を慕っては(したっては)くれません。
 子どものめんどうみがいい、うさぎパパなのでしょう。  

Posted by 熊太郎 at 07:11Comments(0)TrackBack(0)読書感想文