2023年03月01日

子うさぎましろのお話 ポプラ社

子うさぎましろのお話 佐々木たづ・文 三好碩也(みよし・せきや)・絵 ポプラ社

 良書です。今年読んで良かった一冊になりました。
 こどもさん向けの絵本です。

 白いうさぎの話です。
 たまたま今年はうさぎ年です。
 絵を見ると、王さまがいて、トナカイがいて、トナカイにうさぎがまたがってのっています。
 うさぎが人間みたいな立ち位置で、擬人法が用いられているのだろうかという読む前の推測です。(王さまは、王さまではなくて、サンタクロースでした)
 北欧フィンランドあたりの話だろうかと思っていましたが、あとがきを見ると、作者の住まいがアメリカ合衆国ボストンで、クリスマスのころは雪深いところですとあるので、作者は、ボストンをイメージしてこの作品を仕上げたのでしょう。
 作者も絵を描いた方も、もうおふたりとも亡くなっています。

 白うさぎの子のお名前が『ましろ』です。
 サンタクロースからのプレゼントは、ひとりにつき1回だけですが、ましろは、うそをついて、2回もらおうとします。欲深いのですが、人間はたいていの人が欲深いと、読んでいて、擁護(ようご。かばう)したくなります。
 
 サンタクロースは、ましろがうそを言っているとわかるのですが、わざとましろにだまされます。
 (オレオレ詐欺のだまされ作戦が思い浮かびました)
 うそつきうさぎといえば日本神話の『因幡の白うさぎ(いなばのしろうさぎ)』を思い出します。サメをだまして海を渡り終えるところでサメにばれて皮をはがされるのです。

 ひとつぶの種が出てきます。
 外国民話『ジャックと豆の木』を思い出しました。ジャックが植えた豆が巨大な樹(き)になって天まで伸びて、ジャックがその豆の木を登って行くのです。

 サンタクロースは、心のやさしいおじいさんです。
 
 うそがばれるとバチが当たる。(悪いことが起きる)
 ましろは、体がまっ白ではなくなりました。
 うさぎは反省して涙を流します。うそをついたことを深く後悔します。
 
 途中にある両開き2ページに広がる雪の森の中の絵がとてもきれいです。白い部分が雪だとわかります。

 作者の発想の流れがステキです。なかなかないパターンです。
 そして、うさぎは、白い体に戻る。

 なるほど。『もみの木』登場です。
 1年の『時(とき)』が経過します。
 宗教的です。
 
 ちびっこは、おもちゃとたべもの、そして絵本が好きです。
 クリスマスツリーのもみの木には『実』がなる無限の世界があります。
 そうか、この本は、クリスマスの時期に読む本です。
 昭和40年代にあった人の心のぬくもりを感じました。昭和45年第一刷の絵本です。
 サンタクロースの立場にたって考えました。
 人づきあいと人を育てるときのコツとして、いきなりの否定はしない。いきなりの𠮟責もしない。(しっせき。注意する。怒る(おこる))
 いったん受け止めて、包んで、気づかせて、育んでいく(はぐくんでいく)。  

Posted by 熊太郎 at 06:45Comments(0)TrackBack(0)読書感想文