2023年03月24日

『ロストワールド』『メトロポリス』 手塚治虫文庫全集

『ロストワールド』『メトロポリス』 手塚治虫文庫全集 講談社

 第二次世界大戦、戦後間もなくの漫画作品です。
 先日赤塚不二夫さんの『これでいいのだ 赤塚不二夫自叙伝 文春文庫』を読んで、読んでみたくなりました。
 恐竜好きの小学生の孫にプレゼントしてみるつもりです。(読み終えて、ちょっと今の小学生には理解しにくい作品でした。プレゼントはやめておきます)

 『ロストワールド(地球編)』 1948年(昭和23年。終戦が昭和20年)発行
 『ロストワールド(宇宙編)』 1948年発行
 『メトロポリス』 1949年(昭和24年)発行
 ロストワールドというのは、恐竜の世界(恐竜が絶滅した世界)ととらえての前知識です。読んでみて、恐竜がメインの作品ではありませんでした。人造人間の話です。鉄腕アトムが誕生する前、鉄腕アトム誕生に向けての経過的前作品でした。おおもとは、著者がまだ中学生だったときからの作品づくりの続きです。

『ロストワールド』
 やわらかいマンガの絵です。
 ヒゲオヤジが出てきました。ヒゲオヤジは、名探偵「伴俊作」さんだそうです。
 冒頭付近のシーンで、鉄砲で撃たれて死んだのが、理学士の邪我汰良平(じゃがた・りょうへい)です。
 邪我良平氏の左の義眼が大事な宝石だったそうです。(黒曜石のようなみごとな宝石は、敷島健一博士から預かったものです)

 ミイちゃん(男子。あとで、女子にもなれることがわかる):敷島健一博士(まだこどもだが博士)がつくったウサギのロボット。動物の脳みそを手術で人間の脳みそのようにつくり変える。(なんだか、現代のAIロボットのようです)

 花輪さん:撃たれて殺された理学士邪我良平(じゃが・りょうへい)の執事(しつじ。ご主人さまの身の回りのことをする仕事)

 敷島健一博士の研究所は、ポケモンの研究所のようでもあります。ポケモンの研究所のほうは、オーキド博士がいます。

 ホールス:悪者(わるもの)
 ジプュール:悪者

 豚藻負児(ぶたも・まける)博士:敷島博士の知り合いで植物の研究をしている。
 
 山野穴太(やまの・あなた):鉄砲で撃たれて死んだ理学士の邪我汰良平(じゃがた・りょうへい)の執事

 ママンゴ星:星。500万年ぶりに地球に接近している。地球からちぎれて飛んでいった星だそうです。次回、4月4日13時13分13秒に地球に近づくそうです。
 
 山の上に流れ星が落ちて、ママンゴ星と落ちた流れ星とは関係があるらしい。
 アセチレン・ランプ:テンプラ新聞社に勤める記者
 ママンゴ星がらみで発見をした者に、ジュピター博士から1000万円の贈呈がある。
 流れ星が地球に流れ落ちて小さな石になって、その小さな石に電圧をかけるとものすごいエネルギーが生れる。
 そんな流れなのですが、ストーリーをすんなりとは飲み込めません。昭和23年、戦後それほどたっていないので、初期作品だからだろうか。小学生低学年にはむずかしい話の流れです。(作品の構想自体は、作者が中学生のころ、戦前・戦時中、昭和10年代ころだそうです)
 
 コマが大きい部分、ふたりの男の戦いの部分に迫力があります。
 静止画ですが、動きがあります。
 
 悪者が『結社(けっしゃ)』の人間です。『ママンゴ星秘密結社支部』です。
 アフィルが結社の主人です。メンバーとして、ホールスという人物がいます。
 合言葉は『ママ』と『ンゴ』です。
 登場人物の言葉づかいは、まるで、チャンバラ映画のようです。時代が感じられます。

 ウサギの人造ロボットミイちゃんが、エネルギー石のひとつを持っています。(全部で3個)

 エネルギー石=石炭をイメージします。

 理学博士豚藻負児(ぶたも・まける)は、植物を人間化する研究をしている。

 敷島健一博士はママンゴ星に行って、エネルギー石をたくさんとりたい。

 ロケットに乗って、宇宙へ出発です。
 ママンゴ星でエネルギー石を採集します。
 メンバーは、敷島博士(機長)、ヒゲオヤジ(名探偵「伴俊作」。監督のポジション)、うさぎタイプのロボットミイちゃん(命令伝達役)、山野穴太(やまの・あなた。観測、計算、記録担当。鉄砲で撃たれて死んだ理学士邪我汰良平(じゃがた・りょうへい)の執事)、大場加三太郎(おおば・かみたろう。直接発動機担当)、力クン(ちからくん。大場の補佐)、花輪重志(はなわ・おもし。雑役係)、もみじとあやめ(植物からつくった人造人間ふたり女性タイプ)、どういうわけか宇宙へ向かうロケットなのに密航者が三人います。陰謀団だそうです。そのうちのひとりが、新聞記者アセチレン・ランプ(その後、宇宙船から外に飛び出て、星になってしまいます)。ほかに、アフィルとグラターンという人物がいます。

 途中でロケットがエンコ(故障)してしまいました。
 心配されましたが、ロケットは、ママンゴ星の引力に引っ張られて動き出しました。4月4日13時13分13秒の出来事でした。(時刻は、地球への衝突時刻ではありませんでした。最接近時刻でした)

 ママンゴ星に到着しました。
 ママンゴ星探検の始まりです。
 太古の恐竜がいます。地球だと恐竜時代は、紀元前2億年から紀元前6600万年ぐらいです。三畳紀、ジュラ紀、白亜紀があります。
 恐竜がいるママンゴ星は、地球がまだ若かった時の状態なのです。
 エネルギー石は、レアアースみたいな位置づけです。(希少金属。テレビやパソコン、スマホなどに使われる)

 昭和23年頃の作品です。今の時代だとけっこうやばい表現があります。セクハラ、パワハラ、女性蔑視(べっし。さげすむ)な表現があります。

 最後のドタバタは『正義VS悪』です。

 読む前にたぶんこんなお話だろうと思っていたものとは内容が違います。洋画、ジュラシックパークのような恐竜ものだと思っていました。されど、静止画が動画のように見えておもしろい。

 ジュピター博士:ママンゴ星の状態を明らかにした者への1000万円の提供者。
 ママンゴ星には、地球の過去の姿があった。(ロストワールド(前世紀))
 そして、ママンゴ星は、これから未来に向かって、地球と同じような歴史を刻み(きざみ)始める。

 このお話の部分のあとに、作者のコメントがあります。
 このマンガの素材となる創作は、作者の中学生時代からということだそうです。第二次世界大戦中が作者の中学生時代です。
 漫画の中には、戦争の影はありません。

『メトロポリス』
 メトロポリスというのは、中心都市とか大都市というそうです。
 恐竜たちの絵から始まりました。
 ベル博士の話です。
 氷河時代にサーベルトラが現れた。(ネコ科に属する食肉獣)
 時代は経過して、人間が誕生した。
 人間は発達した科学のために自分を滅ぼしてしまうのではないか(核戦争。ロシアや北朝鮮の脅威がある今、現実味を帯びています。1949年、昭和24年ころの作品ですが、予言書の意味をもった漫画作品です。その時期がこの本では「19××年夏」と書かれています。今はもう2000年代に入って、だいぶ年数がたちました)

 国連警察、まぼろしの死の商人秘密組織「レッド党」。
 メトロポリス(大都市)で、全世界科学者総会が開催されます。レッド公爵(こうしゃく)がいて、チャールス・ロートン博士の腎臓細胞のデータを狙っているそうです。

 総会の最中に、太陽に黒い点がたくさん発生します。(その後、黒い点のことはうやむやになっています)(中盤で「人工黒点」として再登場します。人工黒点は、地表の温度が上昇することにつながる。南極の氷を解かすために利用する。人工黒点は人造細胞をつくるのに役立つ)

 地球上の人間が混乱します。
 人造たんぱく質。
 この漫画のころ(昭和24年)、鉄腕アトムは誕生していません。誕生は1951年(昭和26年)です。
 この漫画のなかで、鉄腕アトムにつながるらしきキャラクターが描かれています。『ミッチイ』という名前の女の子です。(ただし、ボタンを押すと男にもなれる)
 ケン一という男の子(ケン一の叔父(おじ(父母の弟)が、ヒゲオヤジ探偵伴俊作)がミッチイの世話をしてくれています。
 
 警視総監ノタアリン。
 ガニマール警部:パリから来た。
 名探偵オホンシャーロック・ホームズ氏:ロンドン在住。
 フィフィ:奴隷ロボット。
 
 児童虐待というのは聞きますが、ロボット虐待は初めて聞きました。

 トロンガス:おそろしいガス
 オモテニウム:引力を遮断する物質。オモテニウムは、長靴島に存在する。
 エンミイ:すみれ売りの少女
 ヨークシャ・ベル博士
 ミキマウス・ウォルトディズニーニ:ねずみの姿をした動物。
 科学、宇宙、ロボット、人造人間、親子の情愛、鉄腕アトムの前身(前の形)となるキャラクター。
 アトランチス号:豪華船。世界航路船
 キン肉マンみたいなロボットが出てきます。

 静止画に動きがあります。
 この漫画家さんの特徴です。
 奴隷として使われていたロボットの反乱です。
 ロボットが人間を攻撃します。

 あとがきに手塚先生の言葉として『……主人公のミッチイは、……あとでアトムを生み、サファイアに発展するのです(リボンの騎士のサファイア姫でしょう)……』
 作者の言葉を読むと、いろいろな作品の模倣(もほう。まね)を下地にして、創造力を発展させてキャラクターや事象を描いておられることがわかります。

 最後の解説部分には、手塚治虫さんの父親が漫画好きで、たくさんの漫画本を息子の手塚治虫さんに買い与えたということです。
 資金があるのであれば、こどもにたくさんのことを提供することは良いことだと受け止めました。むだづかいではないのです。  

Posted by 熊太郎 at 07:21Comments(0)TrackBack(0)読書感想文