2017年04月26日

言ってはいけない 残酷すぎる真実

言ってはいけない 残酷すぎる真実 橘玲(たちばな・あきら 男性)

 よく売れている本ですが、わたしには、合いません。途中から流し読みに入りました。知らなくてもいい情報です。日本離れしている内容です。
 いきなり別世界から始まります。ダーウィンの進化論です。不幸をもたらす者は排除されてきた。しかし、そういう人物が世の中には必要とあります。そして、「証拠がある」とつなぎます。

 文章は読みやすいが、内容は特異です。性をめぐる諸悪、一見常識とされる社会的圧力、精神病、遺伝、犯罪を分析していきます。
 それらは、「一面」であり、「全面」ではない。固定観念に満ちた論評にみえます。読んでいて幸福感はありません。
 大部分の人にとっては、知らなくてもいい知識です。

 脳の腫瘍によって起きる犯罪がある。脳科学の本です。だから、努力をしても無理なものは無理。
 統計学もあります。どうしたって、一定の割合で悪は誕生する。

 最後の50ページぐらいは、もう嫌になって読みませんでした。
 どうしてこんな本が売れるのだろう。

意味がとれなかった言葉として、「サイコパス:反社会的人格、精神病質」  

Posted by 熊太郎 at 18:45Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2017年04月22日

虹を待つ彼女 逸木裕

虹を待つ彼女 逸木裕 角川書店

 最初はとっつきにくいゲームの世界から始まりましたが、その原因が母親の愛情がなかったというところからおもしろくなってきました。

 人工知能とか、死者を蘇らせる。孤独な人向けのアプリ(人工知能が話し相手になる。フリクト。フレンド+コネクト)というような展開です。なぜ、フリクトをしなければならないのかが理解できない。相手がいなければしゃべらないだけ。
 何かしら不快感を受けるような文章が続きます。傲慢な雰囲気が文章に含まれています。人間味がない文章です。
生まれながらに天才、努力しなくても勉強もスポーツもできる。周囲の人を見下したような個性の人物が物語を引っ張っていきます。

 時代は2014年から、いっきに2020年に飛びます。

 いじめられるから登校拒否、親の愛情がないから、ゲームにはまる。
 生まれつき頭がいいから学校へ行かずとも学力はある。
 そんな話が続きます。

(つづく)

 工藤賢35歳(人工知能開発者・投資者)が、2020年の時代で、2014年12月に起きたテロ類似事件「リビングデッド・渋谷」の解明に取り組んでいく。その事件の首謀者は、水科晴(みずしな・はる)当時25歳の女性となっています。彼女は家庭に恵まれていません。そして彼女の特徴はその感情がわからない点にありました。(本作品にはそういった家族関係、友人関係の欠如のことが基礎として成立しています。)

 第一部「2020年11月」を読み終えました。

(つづく)

 第二部「2020年12月」の始まりです。
 160ページ付近を進行中ですが、物語の問題点が私にとっては不明です。ゲームをやる人ならストーリーとしての解決すべき問題点が存在するのでしょう。
 ゲームの中での攻撃が、現実に起こる。パソコン操作のクリックらしき動作が、ドローンを動かして町を攻撃する。あるいは、人を撃つ。

 後半は面白い。本来の太い柱にのっかっています。

「プロトタイプ:基本形、模範、手本」、「デイトレーダー:株式短期売買で利ザヤを稼ぐ」、「ソラリス:ゲームソフト」、「昔取った杵柄:きねづか。昔習得した技。きねの持つ部分。もちつきのときに使う道具」、「煽る:あおる。うちわであおぐように」、「慙愧:ざんき。自分を恥ずかしく思う強い気持ち」、「ビッグデータ:大容量のデジタルデータ」 「稚拙なブラフ:はったり」

良かった表現として、「誰かがささやきかけるように(画面で)文字が点滅している」  

Posted by 熊太郎 at 08:03Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2017年04月20日

すばこ 2017課題図書

すばこ 2017課題図書 ほるぷ出版

(タイトルを見ての読む前)
 小学生の頃、「すばこ」に興味をもって、実際につくって、里山にある木に設置したことがあります。鳥が来て、家にしてくれたかどうかはわかりませんが、中学生になって、十姉妹(じゅうしまつ)やセキセイインコ、文鳥、紅スズメなどを飼育して、繁殖させて、小鳥屋へ売却に行ったことは数度あります。一羽50円程度で(販売価格は800円以上だった)、そんな遠い記憶がよみがえりました。

(読み始めて)
 すばこの初期目的から始まります。すばこは鳥のためのものではなかった。人間が鳥を捕まえて食べるためのわなだった。それが、180度変化して、育てるための愛情になっていった。
 その道理をつくったのが、ドイツの貴族、ベルレプシュ男爵だった。
 「人」の面として、社会貢献していきましょうという作者からのメッセージがあります。一見ムダに見えるサービス行為は、実は循環していて、恩とか幸福は自分自身に戻ってきます。社会貢献をしましょうという呼びかけが聞こえてくる絵本でした。また、男爵の伝記でもありました。

 「人生」の面として、人生において、ひとつのことを成し遂げて、なにかを残してこの世を去るという達成感があります。

 文章を楽しむと同時に絵も楽しめます。色合いがなにかしら日本的です。画家は、日本の浮世絵の影響を受けているのかもしれません。
 写実的で、絵は、鳥や植物が生きているようです。木々の緑は濃い。
 レイアウト(配置)を楽しむ絵でもあります。色の対比もまたしかり。

 害虫のハマキムシは、たばこのハマキのように葉っぱをくるくるとまるめるからハマキムシなのでしょう。
 薬でハマキムシを殺すよりも、益鳥に食べてもらったほうが、人間の命にとっても「安全」です。

 巣箱の形状を記した絵は多種多様で、アイデアと創造の成果です。

 すばこには、コウモリ、モモンガ(両手両足を広げて木から木へと空中移動する)、ペンギン(驚きました)も住む。
 
 
 自然破壊をやめて、「自然保護しよう」のメッセージがあります。  

Posted by 熊太郎 at 19:07Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2017年04月09日

劇場 又吉直樹

劇場 又吉直樹 新潮2017年4月号

 まだ、読みかけたところです。増刷版で手に入れました。
 評判はいい。前作「火花」より充実しているそうです。
 前知識から、舞台は、北海道小樽にあった劇場だと早合点していました。東京都内の劇場です。素材としての小樽でしょう。

 出だしよし。印象に残る「まぶた」の話から導入しました。

 8月、しょぼい底辺の生活です。
 まともに9時-5時の仕事ができない舞台芸術家を目指す貧困な若者たち。金にならない演劇に生活活動を集中させる。おとなからみると、距離をおきたくなる。ただ、こういうタイプの男子は多い。

 男がいて、女がいて、出会いがあった。

 伏線として「靴」がある。「靴」は、見た目が違っていても、はいている人がもっている「個性」が同じ(似ている)ということはある。

(つづく)

 脚本を書いている大阪出身の主人公男子永田と女優を目指している青森出身の沙希です。
手づくり劇団のプロデューサーが、永田の中学時代からの同級生野原です。
沙希には魅力があります。しかし、永田が書く脚本の内容は良くない。そんなアンバランスがあります。物語は落ち着いた雰囲気で淡々と進んでいきます。
昔のフォークソングで、かぐや姫の「神田川」を聴いているようです。

 みんな役者志望者だから、討論しているときも演じているのではないかという懐疑心(信頼できないと思う気持ち)が生まれます。

(つづく)

 エロいシーンがないのはGoodです。(もう村上春樹作品は読まない)
 沙希には、永田に対する愛情がある。しかし、永田には、沙希に対する愛情がない。そこは、Badです。読み手は永田に、「ちゃんと働けよ!」と抗議します。とくに永田の沙希に対する責任追及行動はDV(男女間暴力)に該当します。この本は、恋愛小説ですが、女子から男子への一方的な純愛であり、双方向性のものではありません。アルコール依存になってしまった沙希が可哀想でした。

 劇団「おろか」のメンバーは、中学同級生の野原と永田(脚本家。演出家)しかいない。演じる俳優メンバーとは分裂状態。
 脚本家・演出家である小峰の作品「まだ死んでないよ」は、そのタイトルにメッセージ性が含まれている。

 永田が黙々と脚本を書く姿は良かった。単純なのである。勉強とは、ひとりで黙々とするものである。

 青山と永田のふたりのメールは、実は、自問自答部分であり、にじゅうかぎかっこの連続部分は、読みづらく、作者の雄弁さよりも、身を引く思いのほうが強かった。また、自分だけかもしれないが、女性である青山が男性と思われた。

(つづく)

 永田は、沙希との大切なふたりの時間を無駄にした。
 「哀」がうまく伝わってくる。
 最後は泣けました。
 メッセージは、「謝罪」でした。
 よかった!

響いた部分です。「役者をほめ続けるのが、演出家の仕事ではない」、「演劇が世界に対してできること」、「父親は過酷な肉体労働者」、「かなしかたよ」、「地元で根を張る覚悟を決めた」、「演劇は実験であり、発見である」、「沙希の声はラジオのなかから聞こえてくるようだった」

「蹂躙:じゅうりん。ふみにじる」、「桟敷:さじき。見物席」、「コミット:約束する。誓う」、「ソフィスティケート:趣味、態度が洗練すること」、「蠢く:うごめく」、「オムニバス形式:独立した短編をまとめてひとつの作品に構成して仕上げる」、「劇場近くのヴィレッジヴァンガード:雑貨屋。もとは、ジャズクラブ」、「腫れも、毛も、穢れて:はれも、けも、けがれて」、「お前を弄んだ:おまえを、もてあそんだ」  

Posted by 熊太郎 at 19:05Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2017年04月06日

か「」く「」し「」ご「」と「 住野よる

か「」く「」し「」ご「」と「 住野よる 新潮社

 鍵カッコが間に入るタイトルです。
 よく売れる作品を世に送り出す作家さんです。正体不明の部分があります。
 かくしごとは、「隠し事」と「書く仕事」の意味があるととりました。各仕事ではないし、隠し子と、でもないでしょう。

 5編の短編で、それぞれ関連があります。2編読み終えました。
か、く。し!ご?と
か/く\し=ご♡と
小説雑誌に掲載された作品の集合体です。
 登場人物を愛称に変えていることが秘密を抱えさえることにつながっていますが、わかりにくい。
 高校2年生男女のあるいは女子・女子同士の恋心もからめてあると把握しました。
 
 表記とか表音にこだわる小説であり、その点での挑戦です。
 冒頭付近の試行は、成功しています。
 1ページ目から話が動き出しました。短文のうちに、話がどんどん進んでいくことはGoodです。今の時代に合っています。昔は、嚙みしめるように読んで味わう叙情文章が受けました。

 本作者の主人公設定における個性設定は、気が弱い。(できるだけ目立ちたくない)、観察する。空気のような存在でいたい。<しかし、登場人物「京」は主役のようで、主役ではありませんでした。>

 三角関係があるようだと読んでいたら、第二編で、ひっくりかえしがあり、いい効果を上げています。

(つづく)

か1く2し3ご4と
 1234は、「わん、とぅ、すりぃ、ふぉ」と読み、それは、行進の音頭です。以前この作家さんの作品の中で見かけた記憶があります。ほかにも、以前の作品に出ていた項目らしきものがこのあとの短編でも登場します。
 最初は理屈っぽい内容ですが、じきに種明かしがあり、ほんわかとした気分にさせられます。修学旅行での鈴のやりとりが素材です。(鈴を渡した相手と一生関係が継続するという都市伝説)
 気持ちを、リズムを測定するというように表す部分が良かった。
 
(つづく)

か♠く◇し♣ご♡と
 各人は3年生に進級しました。
 表と裏、相反する心理があります。人間って、めんどうくさい。されど、愛すべき言動です。登場人物「エル」に関して、読み手はもっと文章量がほしいと思う。期待できるキャラクターです。

か↓く←し↑ご→と
 気持ちを記号化する作品群です。
 267ページ付近は、人生の教訓です。的確です。老成して初めてわかることです。作者が、20代の男性とは思えないのです。以下の表現も含めて。

「ビリアン:色のことのようでもあり、メーカー名のようでもあり」、「トレンド:時代の流れ、流行」、「びっくりマーク:感嘆符!」、「所為:しょい。振る舞い」、「褒めた:ほめた」、       「躊躇って:ためらって」、「手練れ:てだれ。腕利き」、「イカズチ:雷」、         「レフティ:左利きの人」、「吝か:やぶさか。(否定はしない。)」 、「蹲って:うずくまって」

良かった表現として、「悩んだような拍手」、「数瞬後」、「仲がいいことと恋愛は違う」  

Posted by 熊太郎 at 19:30Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2017年04月03日

雑談力 百田尚樹

雑談力 百田尚樹 PHP新書

 なにかと放言の多い作者ですが、作品、「永遠の(ゼロ)」は気に入っています。
 自ら暴言が多いとはじめのほうに書いてあります。自分でわかっていても防げないようです。

 繰り返しの訓練が大事なのでしょう。
 それから、「つかみ」が大事
 相手の立場に立つよりも自分の関心のあることを話すというのは意外でした。
 おもしろい話と言うのは、つくり話のような気がするのです。害を与えない虚構です。大げささもあります。当然、小さな嘘ものせてあります。
 その加減がむずかしい。やりすぎると、不信感をもたれます。そもそも話なんかおもしろくなくてもいいとなると、この本の意味はもともこもなくなります。されど、そう言う人ほど、面白い話ができそうです。

 アウトプットするために、大量にインプットする。受ける話もするし、受けない話もする。やはり、量と繰り返しの挑戦、そして、整理整頓です。

 複雑さを取り除いて、シンプルな形を築く。

 ハゲの養毛剤話には笑わされました。あと、大便ちびりもよろしゅうございました。
 意外なこともありました。中学時代、成績が最下位みたいなものだった。「永遠の0(ゼロ)」を出版してくれるところがなかなか見つからなかった。成績が悪くて、よくこれだけの大ヒット作をつくれたものです。売れるのに扱わない出版社も不思議でした。

 政治、株、宗教の話は話題にしない。

 後半は事例の紹介になるのですが、あまりおもしろくなかった。ページ稼ぎのような気がしました。

「蘊蓄:うんちく。読めませんでした。蓄えた深い学問や知識」  

Posted by 熊太郎 at 19:27Comments(0)TrackBack(0)読書感想文