2013年12月29日

2013年 今年読んでよかった本

2013年 今年読んでよかった本

手鎖心中・江戸の夕立 井上ひさし 文春文庫
かなり面白い。「江戸の夕立」のほうがよかった。今年読んでよかった最初の物語です。力作です。まず、前提があります。一昨年の秋に車で東京湾を一周しました。都市高速道路の湾岸線を右回りに横浜-羽田-浦安-幕張-市川-海ほたると回りました。また、千葉県房総半島にある鋸山(のこぎりやま)に登りました。この物語の冒頭付近では、江戸時代末期の時代設定で、江戸の薬問屋の若旦那清之助とたいこもちの桃八が品川で時化(しけ、海が荒れる)に遭い遭難します。ふたりが東京湾内を漂流しながらながめる場所が、さきほど書いた地名の場所です。とても身近に感じました。

ふくわらい 西加奈子 朝日新聞出版
哀愁に満ちた幻想的な物語でした。人はかよわいものであることが、ひしひしとこの身に伝わってきます。主人公である鳴木戸定(なるきどさだ、25歳女性、編集者)の個性設定が成功しています。定は肉親がなくひとりぼっちです。母親は腎臓病でしたが、無理をして定を出産し、定が4歳のときに腎臓病で亡くなっています。父親は紀行作家でしたが、小学生だった定と一緒にアフリカ冒険旅行中、ワニに喰われて亡くなっています。おとなになった定の感情には、喜怒哀楽がありません。思考回路もふつうではありません。頭脳のなかには、幼児の頃から好きだった「ふくわらい」がぐるぐる回っています。

晴天の迷いクジラ 窪美澄 新潮社
登場人物は、田宮由人(ゆうと、24歳、広告デザイン会社勤務、うつ病、実家は北関東の盆地にある農家、26歳のひきこもり兄と22歳のヤンキー妹がいる)、中島野乃花(48歳、社員8人田宮由人が勤める倒産寸前の会社経営者)、正子(16歳、母親と対立しているリストカット少女)です。3人は一緒に車に乗り合わせます。3人の目的は自殺です。3人は、瀕死の状態で湾に打ち上げられているクジラの死を見てから自死したい。

楽園のカンヴァス 原田マハ 新潮社
どういった趣旨の物語なのだろうと思い描きながら読んだ最初の100ページでした。疑心暗鬼、つかみどころのない不安を伴いました。ところが、100ページを過ぎると、グイグイと展開にひきずりこまれました。いっきに最終ページ294ページまで疾走しました。フランスへ行きたいとまで思わせてくれたこの本は、読み手をヨーロピアン(ヨーロッパ人の意識)に変えてくれます。情景描写では、モンマルトルの丘とか、布施明さんのカルチェラタンの歌が聴こえてきます。

チャーシューの月 村中李衣(むらなかりえ) 小峰書店
読み始めで強い力に引っ張られました。午後3時前に読み始めて、午後4時37分に読み終えました。骨太な内容です。
児童養護施設で暮らす少年少女たちの暮らしぶりです。最初の数ページを過ぎたあたりから、泣けそうになります。最後は涙がにじみました。子どもを育てる気のない親はいらない。

はるかなるアフガニスタン アンドリュ-・クレメンツ 田中奈津子訳 講談社
いい作品でした。最後のページを読みながら、胸にジーンと湧いてくるものがありました。書名にある「はるかなる」は、アメリカ合衆国とアフガニスタンとの実測距離だけではなく、心の隔たりをさしています。第三者の立場であるアジア人として、仲介役をつとめるべき立場で、自分はなにをしたらいいのだろかという課題が浮かびあがってきます。両者を援助しつつ、「自由」の獲得とか、「平和」の維持をしていかねばなりません。「誠実に生きる」という言葉がぴったりの物語です。

娘が学校に行きません 野原広子 メディアファクトリー
作者の実体験を四コママンガ集にしてあります。不登校当時の作者の娘さんは、小学校5年生でしたが、巻末で、中学生に成長した娘さんが、描いていいと母親に賛意を表わしています。
親にとって、子の不登校は、重大かつ深刻な問題です。母親のとまどいの内容は素直です。日記のように書かれた四コママンガから母親の苦慮がよく伝わってきました。

ロンドン貧乏物語 ヘンリー・メイヒュー 悠書館
少年時代貧乏暮らしだったので、貧乏話には興味があります。この本は、英国作家によるロンドンで呼び売り商人(行商人、店舗をもたず商品を街頭で売る)から取材した結果をまとめた本です。作家は西暦1812年に弁護士の息子として生まれ、1887年に74歳で亡くなっています。日本の時代におきかえると、江戸時代後期から明治時代初期にあたります。141ページまで読みましたが、日本の50年ぐらい前の暮らしと共通する点もあります。読んでいると、過去へ行っている感覚があり、今年読んでよかった1冊になりそうです。

陽だまりの彼女 越谷オサム 新潮文庫
 鎌ヶ谷西中学校で学年有数のバカと呼ばれたいじめられっ子の渡来真緒(わたらいまお)と25歳で再会した同級生奥田浩介のラブロマンスです。味付けのひとつは、真緒には、13歳以前の記憶がありません。 さわやかな出会いではあるけれど、どことなく、淋しさや悲しさがただよっています。冒頭部を読んで、ふたりは最後には結ばれないと予測しました。中学時代、イジメにあった女子と彼女をかばいつづけた男子が、仕事の取引の場で再会します。  

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2013年12月28日

2013年 今年観てよかった映画

2013年 今年観てよかった映画

転々 映画 DVD
 奇妙な筋書きですが、とても楽しめました。「転々」とは、東京都内を転々と散歩することを指します。散歩するのは、三浦友和さんとオダギリジョーさんです。福原愛一郎を演じる三浦さんは、夫婦喧嘩の最中にカッときて、どうも奥さんを殺してしまったらしい。自首するために自宅賃貸マンションから霞ヶ関にある警視庁方向へ歩き出します。途中で拾った大学8年生のオダギリジョーさんが、道連れです。オダギリさんは、天涯孤独、感情をもたない人格設定で、涙を流すことがありません。

のど自慢 映画 DVD
 久しぶりに泣ける映画でした。なにゆえかは書きません。人それぞれ、映像に現れる登場人物たちと共通体験があるかないかです。
 歌。昔、歌と人は密着していました。歌は世につれ、世は歌につれ。歌を聴くと、その当時の思い出がよみがえりました。また、昔のように、歌がはやってほしい。

県庁の星 映画 DVD
 いい出来です。心があたたまります。「本当に大事なものを見つける」映画です。
 県庁から研修目的でスーパーマーケットに派遣された野村聡(みんなから県庁さんと呼ばれる)とスーパーで16才からバイトを続けて、今では裏店長と格付けされているパートの二宮あきさんとが対立します。ふたりは衝突を克服して仲良しになります。最後は結婚すればいいのにと視聴者は期待感をもつところで終わります。

陽だまりの彼女 映画館
 小説の出来が良く、事前の調べでは、映画も好評だったので、映画館で観てきました。客層は、若い女性や女子高校生、カップルなどで、わたしたち中高年家族は場違いでしたが、館内が暗くなればわからないと気にしませんでした。映画の冒頭とラストは小説と異なりますが、映画は映画、小説は小説とわりきることができました。映画では、綿密に張りめぐらせてある伏線が観客の心を揺さぶる効果を生んでいます。

ゼログラビティ(無重力) 映画館 4DX
 映画館で予告編を観て以来、ぜひ観たいと願っていた洋画です。宇宙で作業中の女性宇宙飛行士が、事故が起きて、宇宙空間でひとりぼっちになってしまう。最後は、地球に生還するのでしょうが、どうやってというところに強い興味をひかれました。
 観賞前に見た映画評では、宇宙空間から見える地球が美しい。映像はいいが、中身がないというものでした。中身はありました。今年観てよかった映画の1本となりました。満足しています。  

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2012年12月31日

2012年 今年観てよかった映画

2012年 今年観てよかった映画

ロボジー 映画館

 映画館で予告編を観たときから楽しみにしていました。
おじいさんがロボットの中に入ってやりたい放題をするお話です。

スミス都へ行く 映画 DVD

 ラストシーンでは、たどり着けないところに、ようやくたどり着けたという感動が押し寄せます。
原題は、「スミス、ワシントン(政治の都)へ行く」です。
スミスというヒーローがサンダースという女性秘書の力を借りて、政治家たちや裏社会のボスたちが形成する巨悪に挑戦するドラマです。

天使のくれた時間(THE FAMILY MAN) 映画 DVD

 映画評を見て興味が湧き観ました。なかなかの感動ものです。ラストをどうまとめるのか予測がつきませんでした。
今年観てよかった映画の1本です。

地上5センチの恋心 映画 ケーブルTV録画

 最初はミッションインポッシブルのように上から吊るされた人物が地上すれすれで恋をする物語を想像しました。作家に対する恋だったことから本読みの距離5cmかと思いましたが近すぎます。宙に浮かぶほど、うきうきする恋というたとえです。

椿三十郎 映画 三船敏郎 DVD

 傑作です。痛快でした。
 他の映画感想ブログ複数を見て好評だったので購入しました。
 侍(さむらい)映画というと切腹とセットで血なまぐさく暗いイメージがあります。この映画はカラリと乾燥しています。ラストは西部劇シーンのようでした。人間臭いやりとりにユーモアがあり笑えます。ことに城代家老(じょうだいかろう)の奥方(おくがた、おくさん)とそのお嬢さんの言動が間延びしていてほっとします。三船さんはさすがです。豪放快活で万人から好かれる個性設定となっています。立ち回りはアーノルド・シュワルツネッガーのようでした。

ALWAYS 三丁目の夕日 映画 ケーブルTV録画

 断片的なシーンをテレビで観たことがありますが、今回始めて、夕日町三丁目の春夏秋冬を最初から最後まで観ました。東京を中心として東北方面、東日本の人たちが観て楽しむ映画という先入観がありました。 主役の吉岡さんはドラマ「北の国から」での子役の印象が強く残っており、おとなになってからの彼の演技には違和感がありました。観終わってみると、後世に語り継がれる名作でした。世界中の人たちに観てほしい。

ALWAYS 続・三丁目の夕日 映画 ケーブルTV録画

 昨日に引き続き続編を観ました。最初のものが2005年、今回のものが2007年の公開です。感情はラスト付近で凝縮されます。涙、涙で、むせかえります。

HOME 愛しの座敷わらし 映画館

 お客さんは入っていませんでしたがいい映画でした。今が5月で、小説を読んだのは昨年の9月でした。その頃から映画の公開を楽しみにしていました。リアルで身につまされて泣けます。とくにお父さんを讃える映画となっています。

川の底からこんにちは 映画 ケーブルTV録画

 いい映画です。久しぶりに映画を観たという実感にひたりました。
 23才ぐらいの佐和子は東京での生活に疲れ果てていた。勤め先の×1子持ちおまけに会社クビになった健一と佐和子の実家へ帰郷する。
 だらだらしたなりゆきと雰囲気にいやされます。フツーの生活を扱ったちょっぴり勇気をもらえる内容です。日本国の8割ぐらいの人口はこのような暮らしを送っているに違いない。
 昔は、自分が中流階級という意識をもった人が多かった。今はどうかわからないけれど、作中で佐和子は「自分は中の下、あなたたちだって同じじゃない!」と叫びます。それで何が悪いと開き直り、家業であるシジミ売りにまい進してゆきます。素敵です。

ぼくは怖くない イタリア映画 ケーブルTV録画

 自分の息子と同い年の少年を誘拐する父親なんているのだろうか。父親として思ったことです。
 中身は深い。濃厚です。設定の発想がいい。名作にはいる1本です。
  

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2012年12月30日

2012年 今年読んでよかった本

2012年 今年読んでよかった本

更級日記 菅原孝標(すがわらのたかすえ)の女(娘) 平塚武ニ 童心社

 訳者の前書きを読む。歴史をひと筋の川の流れにたとえてあります。過去と現在はつながっている。昔の人と今の人との心は溶け合っているとあります。しみじみしました。

まるまるまるのほん エルヴェ・テュレさく 谷川俊太郎訳 ポプラ社

 お勧めの絵本です。発想が豊かです。感嘆しました。作者は巻頭で「びっくりさせます」とメッセージをおくっています。びっくりしました。

晩鐘 上・下 乃南アサ 双葉文庫

 同作者著「風紋」の続編になります。風紋のおさらいをしておかなければなりません。車の中で、主婦高浜則子の死体が発見されます。殺された則子には17才の娘真裕子がいます。母を殺したのは高校教師松永秀之で、裁判途中で冤罪(えんざい)報道がなされます。松永の妻が香織で、長男が大輔です。「晩鐘」は、小学校5年生になった大輔の記述からスタートします。

日本人の知らない日本語3 蛇蔵&海野凪子 メディアファクトリー

 いつものようになぎこさん登場です。3冊全部読みました。以前の記事で外国人留学生が「日本では駐車場までもが励ましてくれる」(「前向きに」という看板を見て)はおかしくて今も覚えています。読み終えてみると、このナンバー3が一番充実しています。

だじゃれ日本一周(だじゃれにっぽんいっしゅう絵本)長谷川義史 理論社

 子どもさん向けです。まだ読みかけですが感想を書き始めます。なかなかいい本です。
(1回目の本よみ)
 絵が力強い。かといってまじめで、がちがちではなく、ユーモラスでゆるゆる、ときには下品で笑えます。

ココロ屋 梨屋アリエ 文研出版

 自分の心をお店「ココロ屋」においてある心と交換するという構成です。なかなかいい本でした。

キッドナップ・ツアー(再読) 角田光代 新潮文庫

 実の父親と娘なのに「出会い」と「別れ」があります。夫婦仲がうまくいかなくて別居状態の父親が路上で小学校5年生の娘ハルに声をかけ、借用中の車に彼女を乗せてユウカイするところからお話は始まります。父親に女の影はありません。ただひたすら貧困です。  

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2011年12月31日

2011年 今年観てよかった映画

2011年 今年観てよかった映画

さや侍 映画館
 「さや侍」ということから、刀の刃がない状態で、どうやって、チャンバラをやるのかと興味をもちました。チャンバラではありませんでした。母親を失くした失意の若君を30日以内に笑わせることがさや侍の役目でした。笑わせることができなかったら切腹です。

うさぎドロップ 映画館 
 祖父のお葬式シーンから始まります。ひとり暮らしをしていた祖父の隠し子がりん6才、祖父と顔がそっくりな孫がだいきち26才ぐらい、そのふたりの擬似父子家庭の暮らしです。この映画は甥(おい)だいきち26才ぐらいと叔母りん6才という奇妙な関係の擬似親子物語です。

ハンサムスーツ DVD
 はちゃめちゃな内容ですが、よくできています。日本映画もがんばれ!と声援を送ります。タイトルのとおり、スーツを着るとハンサムになるのですが、元の人の顔がよくなるのではなく、別人になるのです。それなりの不自由さが待ち受けています。

ワイルドスピードメガマックス 映画館
 素直に楽しめる映画です。タイトルのとおり乱暴でスピーディなアクションが連続的に繰り返されます。どうやって撮影したのだろう。ものすごい費用がかかっているようですが興行は成功して回収するでしょう。
 ブラジル・リオデジャネイロの急斜面にあるスラムを根城にして、いわゆる義賊(ぎぞく、弱気を助け強気をくじく悪人)が、本物の悪人と悪人と結託した警察職員たちを叩くストーリー運びとなっています。アクションシーンでは、たくさんのスポーツカータイプの乗用車が用いられています。車好きの人たちへのサービス映画です。

Mr.&Mrs.Smith ミスター アンド ミセス スミス DVD
 競合する殺し屋組織をロミオとジュリエットの下地にのせる。それぞれの代表がミスター・スミスとミセス・スミスとする。ただし、前者では結婚できず悲劇となるが、後者では新婚さんという設定にする。
 夫婦の育成番組のようです。最初はお互いが殺し屋であることを知らない。ふたりのカウンセリングシーンから始まります。お互いに殺し屋であることが秘密となっているので、夫婦仲がしっくりいっていません。ラストシーンもカウンセリングシーンです。夫婦仲は円満へと変化しています。途中経過で何があったのか。壮大な夫婦喧嘩がありました。お互いを狙った銃撃戦に始まり、殴ったり蹴ったり、爆発物が破裂したり、いやはや気持ちがいい。最後にふたりはお互いを認め合い、誤解も解けて、しっかり抱きあうのです。

レインマン DVD
 涙なしでは見られない。しっかり見ないと涙は出ない。亡くなった父親と母親の愛情のもと、自閉症の兄レイモンド(発音の続き具合からレインマン)と施設に入所した兄の存在を知らずに大人になったチャールズ(メインマン親友)のコネクティング(つながり)づくりを描いた映画です。知らない身内がどこかにいるという設定は、現実にもあります。

ウォーターボーイズ DVD
 もう何度も見ました。2001年の作品になります。男子高校生が文化祭でシンクロナイズドスイミングをする内容となっています。当時は、男子がシンクロナイズドスイミングをするということは、考えられないことでした。さらに、映画化することも思いつくものではありませんでした。洋画「クールランニング」では、常夏の国ジャマイカの陸上選手が冬季オリンピックのボブスレーに出場しています。スイミングもボブスレーも実話が映画化のきっかけになっています。

キューポラーのある街 DVD
 吉永小百合さん17歳の体当たりの演技が光ります。前半は彼女の弟、小学校6年生タカユキくんと在日朝鮮人であるさんちゃんたちの言動に笑わされます。明るいところがいい。ドリフターズの喜劇を見ているようです。社会問題を背景にしながら思うようにならない貧困暮らしと希望をめざして歩く人々の姿が濃厚に描かれます。まじめだけでは生きていけない生活環境があります。

雨に唄えば DVD
 映画には2種類あると思うのです。「娯楽映画」と「芸術映画」です。わたしは、人がしあわせな気分になれる映画を見たい。だから、「娯楽映画」が好きです。

ライフ・イズ・ビューティフル DVD
 妻ドーラがいて、夫グイドがいて、息子ジョズエ5才がいて、人生は素晴らしいという映画です。見終わってから、俳優さんたちのインタビュー特典を見て、また最初からもう一度見て、半日が終わりました。イタリア系ユダヤ人収容所での出来事です。わたしは、ユダヤ人が何なのか、なぜ差別されるのかはわかりません。明るいイタリア語の響きがあって、息子を守るための嘘で固めた父子関係があって、最初から最後までぴんと張っているのは、グイドはドーラが大好きだ!という恋愛です。グイドはドーラのために息子ジョズエを守ったのです。彼は男の中の男です。

三銃士 3D 映画館
 英国・インド映画「スラムドック$ミリオネラ」では、クイズミリオネラの最終問題が三銃士の名前でした。アトス、アラミス、ポルトスです。3人のうちのだれかは高いところを俊敏に動き回り、もうひとりは捕(つか)まえても怪力だから捕まえたことにならず、最後のひとりはなんだったか忘れました。ダルタニアンは三銃士のひとりではなく、あとから仲間になった若者です。三銃士の3Dはたいへん美しい。衣装の色や細工、建物内の絵画、登場人物の皮膚の状態、加えて戦闘飛行船の映像は迫力があります。

十三人の刺客(しかく、暗殺者・殺し屋) DVD 
 内容は、とある藩の内紛です。時代は1845年頃、暴君というよりも鬼畜(きちく、残虐行為を行う者)である藩主を暗殺する計画です。鬼畜でも主君に仕えることが武士の努めと主張する体質の武士群と天下万民のために(下が支えてはじめての上と主張)命を賭ける13人の闘いです。

ニュー・シネマ・パラダイス DVD
 「泣ける映画」という記事を読んで観てみました。イタリア・フランス映画です。2時間ぐらいの劇場版と別に完全版があるようで、見たのは完全版の3時間近い長編となります。第二次世界大戦後まもなくの敗戦国イタリアの暮らしは貧しい。シチリア島の青い海が美しい。大人の映画です。焦点を絞ると、田舎から都会に出て初老期を迎えた男性向きの映画です。途中、これでは泣けないと、紹介記事の詐欺性を疑いました。しかし、ラストシーンで、胸にじんときました。泣けます。映写技師アルフレードはトトに、お詫びと励ましのメッセージをプレゼントしています。

シェルブールの雨傘 DVD
 ミュージカルでした。すべてのセリフが歌詞になっています。この映画は1964年のフランス映画です。20才の男とその年下の恋人女性が好き同士になるも結婚できなかった。歳月が流れて、互いに伴侶とこどもを得たときに偶然再会し、立ち話をしたあと、永遠に別れるという筋立てになります。雪が降るガソリンスタンドでのやりとりと情景には胸が詰まります。いい映画でした。

ステキな金縛り 映画館
 満員でした。こどもさんからお年寄りまで楽しめる映画です。笑えます。泣けます。
 落ち武者の幽霊である更科六兵衛(さらしなろくべえ)を、法廷の証人として呼ぶことになって、六兵衛が深津弁護士に「大丈夫、大丈夫?!」と何度も念を押す。深津弁護士の「大丈夫!」という返事が安心感を生んだ。

ショーシャンクの空に DVD
 こういう映画があることを知りませんでした。ネット検索で見つけました。94年の作品です。この年はほかに有名になった映画があって、その映画の陰に隠れてしまったそうです。名作に数えられています。アメリカ合衆国にあるショーシャンク刑務所に無実の罪(射殺による殺人)で入れられたアンディ(銀行職員)と同房にいたレッドとの物語です。お話はレッドの語りで引っ張られていきます。

素晴らしき哉(かな)、人生! DVD
 ラストシーンでは目頭が熱くなります。涙がにじみます。途中で、最後はそうなるのかなと思わせますが、いったん打ち消しの意識が硬く根付きます。淀川長治さんの解説にあるように「善人万歳」の映画です。観てよかった1本でした。
 1946年のクリスマス・イブ映画で白黒です。前半はアメリカ映画らしく明るく豪快で一直線です。白人の映画だと少々嫌悪感を抱きました。後半は、イタリア系移民の監督(フランク・キャプラ)らしく、人心に深く刻み込まれる情愛が広がります。先日観た「ステキな金縛り」劇中の白黒映画2本からこの作品にたどり着きました。三谷幸喜作品の源泉がここにあります。

ミッション・インポッシブル4 ゴースト・プロトコル 映画館
 筋立てはよくわかりませんが、ストーリーは無視して、迫力に満ちた映像、耳をつんざく大音響、こんなことよくできたなというアクション(格闘・立ち回り)、そして音楽を楽しむ映画です。

リアル・スティール 映画館
 何度も繰り返して観たい。最高でした。  

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2011年12月29日

2011年 今年読んでよかった本

2011年 今年読んでよかった本

永遠の0(ゼロ) 百田尚樹(ひゃくたなおき) 講談社文庫
有益な書物です。575ページあります。淡々と読み続けて、2日半で最後のページにたどりつきました。太平洋戦争末期、特攻という攻撃がありました。日本軍航空機によるアメリカ軍艦船への自爆攻撃です。冒頭から後半近くまでは、NHKこども向け教育番組のような構成です。祖父が特攻で亡くなった姉と弟による関係者へのインタビューとなっています。内容はリポートです。ところが、530ページまでの長文を経て、その後、物語の展開は、すさまじい変貌を遂げて、本作品は光り輝くがっちりとした1本の小説となります。

母に捧げるバラード 武田鉄矢 集英社文庫
30年前に発行された本になります。この本を読んだあと映画「黄色いハンカチ」を見ると感慨が湧きます。作者の原点と言うか、源泉が母親であることがわかります。ちょっとマザコンぽくもある。されど、心に残る1冊でした。読みながら何度か涙ぐみました。151ページ、人は1冊の本に出会うことで人生が変わります。作者の場合は坂本竜馬でした。そして220ページにある太宰治作品でした。

BOX! ボックス 百田尚樹(ひやくたなおき) 太田出版
「ボックス」=ファイトの意味です。「ボクシングをする」からボックス(たたかえ!)という言葉になっています。高校生のアマチュアボクシングが素材で、舞台は大阪です。うさぎとかめの物語でもあります。うさぎは、鏑矢(かぶらや)という高校1年生の天才ボクサーです。彼は才能に溺れており、しっかりとした練習をしません。かめは、彼の幼馴なじみ木樽優樹(きたる)でです。彼は鏑矢にあこがれてボクシング部に入部し、愚直にパンチの練習を始めます。

愛しの座敷わらし(いとしの)上・下 荻原浩 朝日文庫
感服しました。文章運びがうまい。2012年のゴールデンウィークに映画が上映されます。きっとヒットするでしょう。高橋晃一、47歳食品会社勤務課長職は、水谷豊さんが演じるとあります。適役です。家族の再生物語です。でも、家庭内暴力とか、こどもが非行とか、両親に離婚話があるとか、そういったことはいっさいありません。どこにでもある平凡な家族です。しかし、お互いの気持は、崩壊寸前の家庭です。

我家の問題 奥田英朗 集英社
現在(いま)のわたしの置かれた状況、あるいは過去にあった環境にぴったりくる設定の短編が6編収められています。しみじみしました。短編の内容に共感します。今年読んでよかった1冊です。

ヤマトシジミの食卓 吉田道子 くもん出版
 タイトルからシジミのお味噌汁を想像する人が多いのではないでしょうか。わたしも味噌汁だと思って読み始めました。老夫婦が、食事をしながら苦労した昔をふりかえるという内容を予想しました。本の数ページをめくりおえて、はたと気づきました。本のカバーには、ちいさなチョウチョが描かれています。こどもの頃、身近に飛んでいたベニシジミという蝶がいたことを思い出しました。シジミは貝ではなく、蝶だと気づいたのです。

記憶喪失になったぼくが見た世界 坪倉優介 朝日文庫
 衝撃的な内容です。つっぱりだった18才の著者は、雨の中、原付バイクを運転中に駐車中のトラックに衝突する。10日間意識不明となったあと息を吹き返す。大声で叫んで暴れて、病室のベッドにくくりつけられたあと数日して、急におとなしくなる。意識が戻った彼は、自分がだれなのかわからない。家族に会っても相手が何者かわからない。18年間の記憶が消えている。字は読めない。物の名称も覚えていない。現象の意味を理解できない。実話です。最後まで、記憶はほとんどもどりません。

わたしのワンピース にしまきかやこ こぐま社
創意工夫(やりかたを考えて発想すること)することをさりげなく教えてくれる本です。空から飛んできた1枚の布が次々と変化してゆきます。白い布は生命の誕生(赤ちゃん)を表しています。1個の個体が個性をもっていくのです。今年読んでよかった1冊になりました。

ミンティたちの森のかくれ家 キャロル・ライリー・ブリンク 谷口由美子訳
 ママが死んだ3人家族(パパ、長女、次女)と両親を亡くした少年は、いずれもホームレスです。時代背景は1930年代、大恐慌(不況)で職がありません。彼らはアメリカウィスコンシン州にある空き家、他人の家に住みつきます。長女の名はミンティで、その家をかくれ家と称します。
 幸せになるために必要なものは誠実な心と、この物語は教えてくれます。具体的には、あたりまえのことをあたりまえにすることです。書中に表現がある「親切というお金」が幸せづくりを補助してくれます。

マルカの長い旅 ミリヤム・プレスラー 徳間書店
 ユダヤ人医師であるハンナ・マイ、その娘ミンナ16歳、そして同じく娘のマルカ7歳の3人によるドイツ軍からの逃避行です。捕まれば強制収容所へ送られて最悪の場合、死を迎えることになります。3人は逃げ遅れました。母ハンナは、病気になった7歳の娘マルカを途中のピリピーツという町で他人である支援者宅に置き去りにしました。マルカは、支援者宅から追い出されたあと、悲惨な体験を味わうことになります。  

Posted by 熊太郎 at 17:01Comments(0)TrackBack(0)熊太郎の語り