2013年11月06日

陽だまりの彼女 映画館と小説

陽だまりの彼女 映画館と小説

 小説の出来が良く、事前の調べでは、映画も好評だったので、映画館で観てきました。客層は、若い女性や女子高校生、カップルなどで、わたしたち中高年家族は場違いでしたが、館内が暗くなればわからないと気にしませんでした。
 映画の冒頭とラストは小説と異なりますが、映画は映画、小説は小説とわりきることができました。映画では、綿密に張りめぐらせてある伏線が観客の心を揺さぶる効果を生んでいます。ネタを知っていたので、観ながらああそうかと理解しながら先へ進むことができて楽しみました。ジャングルジムに平然と登るのも魚をおいしいと言うのも、高所から飛び降りても傷一つ負わないのも理由がわかります。
 上野さんは演技がうまい。ガラス窓を複数指でなぞるのも彼女がもつ秘密です。目に見えないものを見る。耳に聞こえないものを聞く。撮影者による映像の優しさと、音楽の暖かさで、登場人物の気持ちが観客によく伝わってくる名画となりました。
 めんどくさいという怠け心を抑えて、映画館まで車を走らせて観に来たかいがありました。


以下は小説の感想です。

 陽だまりの彼女 越谷オサム 新潮文庫

 鎌ヶ谷西中学校で学年有数のバカと呼ばれたいじめられっ子の渡来真緒(わたらいまお)と25歳で再会した同級生奥田浩介のラブロマンスです。味付けのひとつは、真緒には、13歳以前の記憶がありません。 さわやかな出会いではあるけれど、どことなく、淋しさや悲しさがただよっています。冒頭部を読んで、ふたりは最後には結ばれないと予測しました。中学時代、イジメにあった女子と彼女をかばいつづけた男子が、仕事の取引の場で再会します。
 「陽だまりの彼女」とは、自分(男子)にとって、彼女が陽だまりのような存在であることであろうと思って読み始めました。
 ふたりの結婚へのエネルギーの強さに驚きながらも、何かしら不安な未来を肌に感じます。前半はほのぼのとしたLoveが続きました。中盤以降、どんな嵐に巻き込まれるのか惹(ひ)かれます。
 読書の途中で考えたことです。真緒が生まれてから13年の間に何があったのか。知ろうとしないほうがいい。13年後に起点をおいて、そこから歴史を形成すればいい。真緒発見時の彼女の言葉として、「中学生」、「学校に行きたい」があります。彼女が天使のような気がしてきました。
 277ページ最終行まできて、悪い意味ではなく、続きを読みたくなくなりました。不幸なシーンが出てきそうです。ふと、頭をよぎったのは、民話「鶴の恩返し」でした。
 「(結婚したら)ふたり仲良く」が作者からのメッセージです。このあと、作者はどう終わらせるのか。(読み終えました。)いい話でした。心に響いた文節を書いて終わりにします。
 『真緒は真緒』
 「もう、受けいれなければならない」


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