2022年11月01日
五重塔(ごじゅうのとう) 幸田露伴(こうだ・ろはん)
五重塔(ごじゅうのとう) 幸田露伴(こうだ・ろはん) 岩波文庫
作者である幸田露伴氏一家が住んでいた住居を見学したのは、愛知県犬山市にある明治村で、今年の4月桜の花が咲きほころぶ頃でした。
同宅では、滝廉太郎氏や幸田姉妹が音楽談義などをしていたと本で読んだことがあります。
幸田姉妹の兄である幸田露伴氏の小説を読んだことがなかったので、この五重塔を読み始めましたが、明治時代初めの作品であり、文章を読むことがなかなかむずかしい。(読み終えてから、何度か映像化されていたことを知りました)
最初をちょっと読んだあと、まず最後尾にある『解説 桶谷秀昭(おけたに・ひであき)』を読みました。
のっそり十兵衛が主人公です。彼は、がんこ者で人の意見をきかない。世渡り下手。寺社建築の大工。職人仲間からさげすまれ、貧乏暮らしとあります。
もうひとりの中心的登場人物が、川越の源太(かわごえのげんた)。同じく大工職人です。
東京谷中の感王寺(やなかのかんのうじ)にあるお寺の敷地内に建造する五重塔のお話です。
お寺の上人(しょうにん。優れた僧。高僧)は、五重塔を川越の源太に棟梁(とうりょう。リーダー)として造ってほしいのですが、のっそり十兵衛が、自分に棟梁をやらせてくれと申し出るのです。十兵衛はわがまま者です。今回の件については自分の欲求を譲りません。
本文は、落語を聴くような文章です。リズムとメロディーがあります。
お経(おきょう)を読むようでもあります。ただ、昔の言葉づかいなので、意味をとることがむずかしい。読んでいて内容をすんなりとは理解できません。
エゴイズム:自分の利益だけを考えて人のことを考えない。自分本位。のっそり十兵衛のことです。
川越の源太は、五重塔の建築工事をのっそり十兵衛に譲ります。ただ、源太はかなり怒っているようです。ふたりでつくろうとか、十兵衛が主で、源太が副のポジション(地位)でもいいと十兵衛に申し出ましたが、十兵衛は嫌だと突っぱねました。
この文学作品が出るまでは、日本には、自己主張を通すという内容の作品はなかったそうです。
そのことが当時の文学界において新鮮だったそうです。
幸田露伴(こうだ・ろはん):1867年(江戸時代・慶応2年)-1947年(昭和22年)79歳没。作品『五重塔』は1892年(明治25年)の作品。
(本文を読み始めました)
漢字には、ふりがながふってあります。
言葉が明治時代のもので、むずかしい。
清吉:大工。源太の弟分。
お吉(おきち):源太の妻。
鋭治:源太の兄貴分。
お浪(おなみ):十兵衛の妻
猪之(いの):十兵衛とお浪のこどもでまだ小さい。男児。
文章は『其の一(そのいち)』から始まり『其の三十四』まで続きます。
(つづく)
読み終わりました。
言葉や言葉づかいが、江戸時代が終わったあと20年後ぐらいの明治時代のものであり、あわせて、自分に読解力がなく、不十分な理解で読み終えました。
考えてみれば、江戸時代以前の人たちが、日常会話で、どんな日本語を使って会話をしていたのかは、わかりそうでわからないような気がします。
くわえて、当時の方言(ほうげん。地方なまり)は、けっこうきつく、江戸や東京という場所で、どうやってお互いの意思疎通(いしそつう)を図っていたのかとも思いがめぐります。鹿児島県薩摩藩の藩士の方言はどうやって江戸の人たちに意味が通じたのだろう。
テレビもラジオもない世界です。明治時代初期は、鉄道も短い距離しかまだできていません。
文字の読み書きができない人たちも多かった時代の文学作品と読書です。現在の日本とは大きく異なる世界です。
さて、文脈の雰囲気を味わう読書で終わりましたが、感じたことです。
のっそり十兵衛という人間はわがままなのです。とにかく自分のいうとおりにさせてほしい。自分で五重塔をつくりたい。源太には手伝ってもらいたくない。
でも、最後はまわりが受け入れるのです。発注主の僧侶(上人様。しょうにんさま)が許可します。
そういうこともある。いっけんわがまま勝手でも、最後は、しかたがないなあと容認するのです。
そういうことって今の時代でもあります。
結果的に平和的解決に至ることもあります。『しょうがない』でやりすごすこともあります。
それが人間界、それが人間の世の中のひとつの出来事OKパターンとしてあります。正しいか正しくないかではなく、そういうことがあるかないか。あればあれでよしなのです。
人情、成長、教育、教え、そんなことを考えました。
最後には、十兵衛建築の立派な五重塔が完成しました。風雨の嵐に襲われてもびくともしませんでした。
わがままを受け入れて育む(はぐくむ)という人情噺(にんじゅうばなし)です。
そして、万人が満足できる上等な作品(今回の場合は五重塔)をつくるために全力を注ぐ(そそぐ)がんこな職人魂が表現されています。
作者である幸田露伴氏一家が住んでいた住居を見学したのは、愛知県犬山市にある明治村で、今年の4月桜の花が咲きほころぶ頃でした。
同宅では、滝廉太郎氏や幸田姉妹が音楽談義などをしていたと本で読んだことがあります。
幸田姉妹の兄である幸田露伴氏の小説を読んだことがなかったので、この五重塔を読み始めましたが、明治時代初めの作品であり、文章を読むことがなかなかむずかしい。(読み終えてから、何度か映像化されていたことを知りました)
最初をちょっと読んだあと、まず最後尾にある『解説 桶谷秀昭(おけたに・ひであき)』を読みました。
のっそり十兵衛が主人公です。彼は、がんこ者で人の意見をきかない。世渡り下手。寺社建築の大工。職人仲間からさげすまれ、貧乏暮らしとあります。
もうひとりの中心的登場人物が、川越の源太(かわごえのげんた)。同じく大工職人です。
東京谷中の感王寺(やなかのかんのうじ)にあるお寺の敷地内に建造する五重塔のお話です。
お寺の上人(しょうにん。優れた僧。高僧)は、五重塔を川越の源太に棟梁(とうりょう。リーダー)として造ってほしいのですが、のっそり十兵衛が、自分に棟梁をやらせてくれと申し出るのです。十兵衛はわがまま者です。今回の件については自分の欲求を譲りません。
本文は、落語を聴くような文章です。リズムとメロディーがあります。
お経(おきょう)を読むようでもあります。ただ、昔の言葉づかいなので、意味をとることがむずかしい。読んでいて内容をすんなりとは理解できません。
エゴイズム:自分の利益だけを考えて人のことを考えない。自分本位。のっそり十兵衛のことです。
川越の源太は、五重塔の建築工事をのっそり十兵衛に譲ります。ただ、源太はかなり怒っているようです。ふたりでつくろうとか、十兵衛が主で、源太が副のポジション(地位)でもいいと十兵衛に申し出ましたが、十兵衛は嫌だと突っぱねました。
この文学作品が出るまでは、日本には、自己主張を通すという内容の作品はなかったそうです。
そのことが当時の文学界において新鮮だったそうです。
幸田露伴(こうだ・ろはん):1867年(江戸時代・慶応2年)-1947年(昭和22年)79歳没。作品『五重塔』は1892年(明治25年)の作品。
(本文を読み始めました)
漢字には、ふりがながふってあります。
言葉が明治時代のもので、むずかしい。
清吉:大工。源太の弟分。
お吉(おきち):源太の妻。
鋭治:源太の兄貴分。
お浪(おなみ):十兵衛の妻
猪之(いの):十兵衛とお浪のこどもでまだ小さい。男児。
文章は『其の一(そのいち)』から始まり『其の三十四』まで続きます。
(つづく)
読み終わりました。
言葉や言葉づかいが、江戸時代が終わったあと20年後ぐらいの明治時代のものであり、あわせて、自分に読解力がなく、不十分な理解で読み終えました。
考えてみれば、江戸時代以前の人たちが、日常会話で、どんな日本語を使って会話をしていたのかは、わかりそうでわからないような気がします。
くわえて、当時の方言(ほうげん。地方なまり)は、けっこうきつく、江戸や東京という場所で、どうやってお互いの意思疎通(いしそつう)を図っていたのかとも思いがめぐります。鹿児島県薩摩藩の藩士の方言はどうやって江戸の人たちに意味が通じたのだろう。
テレビもラジオもない世界です。明治時代初期は、鉄道も短い距離しかまだできていません。
文字の読み書きができない人たちも多かった時代の文学作品と読書です。現在の日本とは大きく異なる世界です。
さて、文脈の雰囲気を味わう読書で終わりましたが、感じたことです。
のっそり十兵衛という人間はわがままなのです。とにかく自分のいうとおりにさせてほしい。自分で五重塔をつくりたい。源太には手伝ってもらいたくない。
でも、最後はまわりが受け入れるのです。発注主の僧侶(上人様。しょうにんさま)が許可します。
そういうこともある。いっけんわがまま勝手でも、最後は、しかたがないなあと容認するのです。
そういうことって今の時代でもあります。
結果的に平和的解決に至ることもあります。『しょうがない』でやりすごすこともあります。
それが人間界、それが人間の世の中のひとつの出来事OKパターンとしてあります。正しいか正しくないかではなく、そういうことがあるかないか。あればあれでよしなのです。
人情、成長、教育、教え、そんなことを考えました。
最後には、十兵衛建築の立派な五重塔が完成しました。風雨の嵐に襲われてもびくともしませんでした。
わがままを受け入れて育む(はぐくむ)という人情噺(にんじゅうばなし)です。
そして、万人が満足できる上等な作品(今回の場合は五重塔)をつくるために全力を注ぐ(そそぐ)がんこな職人魂が表現されています。
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