2019年12月28日

このつぎ なあに 山中恒

このつぎ なあに 山中恒(やまなか・ひさし) 栗田八重子・絵 あかね書房

 楽しみました。こどもさん向けの児童文学です。たぬきがおじいさんを化かすのですが、化けかたがへたくそなので、おじいさんに気づかれてしまいます。孫とおじいさんのやりとりをみたあとのような読後感でした。ベースは、「愛情」で、心がぬくもるいいお話でした。

 「むかし、むかし…」から始まるなつかしい出だしです。
 おじいさんの息子が、出稼ぎに行って帰ってきません。何年も帰ってきません。動きのない最初の部分です。
 さし絵がきれい。色が美しい。ブルーの空が気に入りました。春とか、冬の季節の絵がいい。もちろんたぬきが化けたときの絵もいい。
 大入道(おおにゅうどう、巨人)の訪問にはびっくりしました。ゲタをはいた足の絵が怖い。すね毛がぼうぼうです。大きな足の裏で踏みつぶされそうです。怖い足に比べて、お顔が単純です。怖くありません。その落差が笑いを誘います。
 オレオレ詐欺で、だまされたふり作戦を演じるようなおじいさんです。
 お年寄りの「孤独」が描かれていると思います。
 大入道の次に出てきたのは大蛇です。びっくりしました。意外性があります。だけど、かわいい大蛇です。顔がたぬきなのです。たぬきもさびしいのかも。
 タイトル「このつぎなあに」の意味がわかってきました。このつぎは、なにに化けようかなです。
 冬の季節の文章に味わいがあります。本当に寒そうです。
 長い歳月が流れて、やがて、家を出て行った息子が帰ってきました。でも、おじいさんは、たぬきが息子に化けて出てきたと勘違いします。本当の息子なのに。
 今年読んで良かった1冊です。
 たぬきくんが、抜けている部分があるからおもしろい。化けかたがへたな方がいいのです。
 1969年初版のロングセラーです。

この記事へのトラックバックURL

http://kumataro.mediacat-blog.jp/t137489
※このエントリーではブログ管理者の設定により、ブログ管理者に承認されるまでコメントは反映されません
上の画像に書かれている文字を入力して下さい