2016年10月27日

九十歳。 何がめでたい 佐藤愛子

九十歳。 何がめでたい 佐藤愛子 小学館

 たしかこの方は、わたしが高校生だった頃、50代だった。まだ、ご存命とは思わなかった。驚いた。本が出せるのは、出版社がお金になる人と見込んでいるからでしょう。著者は、1923年生まれ、92歳とあります。自分が中学生の頃の有名人の名前が次々と登場します。そのうちの幾人かは、すでに、天上の人たちです。

 過去の記述はありますが、未来の記述はありません。昭和時代はよかった。そんなことが書かれてあります。平成生まれ、平成育ちの人の中には、「もう、昭和の話なんか聞きたくない」という人もいます。わたしは中間世代です。昭和時代に30年間生きて、平成時代に30年間生きようとしています。だから、両方の気持ちがわかります。

 年寄りが敬意を払われなくなったのは「文明の進歩」とありますが、そうは思いません。お年寄りが、わがままだからです。いつまでも君臨しようとされるからです。昔は良かった、今はだめだの主張はしょせん今となっては遠吠えでしかありません。自分が元気を取り戻すために悪口を言うとあります。言われる身にもなってほしい。

 口述筆記ではありません。しっかり文章を書かれています。そこが、長生きの秘けつと知りました。一話ずつかみしめながら読んでみる。味わいがあります。
出版社から原稿依頼を受けるまで、なにかしら老齢の失意で、うつ病の状態だったとあります。「読み・書き・計算」は、生きていくうえでの心の栄養剤です。本書は、物語めいているし、ユーモアがあるし、創作であることから、真剣に怒りながら読む本ではありません。気楽に楽しむ本です。著者は、お金持ちだからそんなにケチケチしなくてもと思う部分もあるのですが、それは、著者が読者を楽しませようと文章を書いているのだと思いながら読みました。

むずかしかった漢字として、「謗られ:そしられ。人格、行動を他人に否定される」、「出任せ:でまかせ。いいかげんなことを言う」、「宿痾:しゅくあ。長い間治らない病気。持病」、「妄執:もうしゅう。迷いによる執着。仏さまの世界の言葉。成仏できない」、「懐旧:かいきゅう。昔のことをなつかしく思い出す」、「水洟:みずばな。はなみず」、「物識り:ものしり。広く物事を知っている。博識」、「忖度:そんたく。他人の心をおしはかる」、「萬難:ばんなん。多くの困難」、「女史:じょし。社会的地位のある女性に敬意を払って付ける」、「嗟嘆:さたん。嘆くこと」、あまりに難しいと読み手に意味が伝わってきません。聞いたことすらない古語もあり、ある意味、言葉を発掘する気分で調べながら読みました。「進軍!:しんぐん。軍隊が前進すること」

 人生相談とか、人生案内の記事が多い。女性が興味をもつ世界と思います。男性はそうでもない。

印象に残ったこととして、「(今は)義理人情よりも自己都合を優先する世の中」、「どうせ何を言ってもわかってくれないから。あきらめて、反論しない。(今のこどもたちの教師や親に対する気持ちとして)」、「マスコミは、報道によって、人心を操作するというような表現(同感です。だから、今のテレビ番組に見る価値があるものは少ない)」

 カバーをとったあとの本の表面(名称の単語を知りません)に書いてある絵はだれが書いたのか、読み終えてから興味をもちました。案外、著者本人のような気がして楽しい気分になれました。

 本にありますが、結局、今の日本は、「平和」なんだ。

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