2016年02月08日

異類婚姻譚 本谷有希子

異類婚姻譚(いるいこんいんたん) 本谷有希子(もとや・ゆきこ) 講談社

 タイトルに好感を抱けません。異なる者同士が結婚したお話という意味でしょうが、他にタイトルの付け方があるような気がします。読んだあと、自分だったらと考えてみます。

 昨日から読み始めて、あと、20ページぐらいで読み終えます。
 今は、キタヱさんに頼まれて、おしっこちびりになってしまった老いたネコを群馬の山に放ちに行くところです。ドライバーが、主人公の女性サンちゃん、後部座席には、キタヱさんとご主人のアライくんが乗っています。

(つづく)

 読み終えました。
 捨てるお話です。奥さんが、だんなさんを捨てるのです。さきほどのネコのように山に捨てるのです。タイトルは「断捨離(だんしゃり)」がいい。

 蛇ボールの話が出てきます。夫婦というふたりが共食いをしてひとつの蛇になるのです。
 夫婦は似てくるとよく言われています。それでいいならそうするし、いやならどうするかです。いやなので、書中では、間に「石」をはさむと表現されます。
 同化の是非に、正解はありません。ふたりで選択、あるいは、いっぽうが選択するのです。

 サンちゃんは、4年前に結婚しました。結婚相手の男性は、元妻が女優さんみたいに美しい女性でした。旦那さんは、最近どうもうつ病らしく、会社を休みがちです。会社を辞めて、主婦をめざし始めたようです。ぐうたら亭主です。楽することばかりを考えています。一日に必ず3時間、テレビを見なければ気がすみません。生産性のないゲームもします。体は動かしません。運動もしません。商品価値なしです。
 そんな旦那に奥さんのサンちゃんが似てきます。体重は7kg増えました。顔のパーツがくずれて、だんだんふたりとも、人間の形を失ってきていると、マンション友達のキタヱさんのご主人であるアライくんから指摘があります。

 ふたりとも妻になる。あるいは、ふたりとも夫になる。加えて、家事はルンバをはじめとした機械がやるから主婦仕事の量は激減した。
 役割が違うから、夫婦という形態が成立する。
 人間としての役割を果たせなくなったら、山に捨てられる。

 詩的です。人間が犬になる。あるいは、顔のパーツの位置がずれて、表情が垂れ下がっていく。人間の形態・形状を失っていく。

 南米、マチュピチュ遺跡への旅、結婚式の二次会の準備、旦那という「土」で育つ自分という「植物」、自分を道具扱いする旦那、旦那にとっての単なる便利屋でしかない主婦という自分、錯乱状態があります。

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