2016年01月11日

あこがれ 川上未映子

あこがれ 川上未映子 新潮社

 本には、2本の作品が収納されていて、最初の「ミス・アイスサンドイッチ」を読み終えて、次の「苺ジャムから苺をひけば」に突入して、しばらくしたところで、感想を書き始めます。最初のほうは、小学校4年生ぐらいの男児「ボク」が主人公で、次は、小学校6年生ぐらいの女子が主人公らしい。卒業間近らしい。設定は、外国です。(あとで書きますが、外国ではありませんでした。)

「ミス・アイスサンドイッチ」
 別れを素材にした作品です。女性作家が小学生男児に成り代わって、しみじみと別れの心理を上手に落ち着いた雰囲気で表現します。
 文章・文脈にリズムとかメロディーがあります。ページ全体にびっしり文字が並んでいますが、読むのに苦痛は伴いません。本という薬を飲んでいるようです。
 小学生男児のサンドイッチ屋で働く女性へのあこがれみたいな淡い心理、ひとり親家庭でいるいまはいない父親への思慕があります。
 父子家庭のクラスメートである女子・愛称ヘガティ、寿命で別れが近い祖母などが彼のそばにいます。
 “アル・パチーノ”というが、アメリカ人俳優の氏名なのですが、ここでは、サヨナラのあいさつに用いられます。気持ちがこもっていれば、言葉表現はなんでもいいのです。一期一会とか、永遠の別れとか、切ないようでそうでもない。当然の人の営み。読みながら、いろいろ考えは巡り、最後には、相手が別れの主役になるばかりではなく、自分自身が主役になるときもあるという結論に達します。
 文章表現、流れるような文体・文脈作成は、挑戦ではなく、この作家さんがもつ資質・才能なのでしょう。
 作品の奥底には、生き続けていくために、強くなりなさいというメッセージが置かれています。
 いっけん「ボク」は、自閉症児のようでもありました。以前映画で見た、タイトルが長くて覚えていないのですが、「ものすごくうるさくて、なんたらかんたら」という映画に出ていた少年に「ボク」は似ていました。個性としては、数値へのこだわりがあり、絵を描くことが好きです。
 わかりにくかった単語として、「ビリジアン:やや青みがかった緑色(読んだときは、だいだい色かと思いました。)」、「銀ガニ:おそらく、パン屋さんで、買いたいパンをはさむときの道具だと思います。うまく言えませんが、大きな洗濯ばさみ方式の道具」、「大統領と首相の違い:権力をもった国家の代表者(大統領、国民参加の選挙で選出)、国家元首ではない(首相、議員の中で選出、行政のトップ)」

(つづく)

 「苺ジャム…」のほうを読み始めて、気づいたのは、登場人物の名前が外国人名のように見えるのですが、実は、全員、日本人であり、カタカナ名は、愛称であるということでした。
 2作目で、1作目のふたりの小学生は、小学4年生から6年生に成長しています。作品自体も2年後に完成されています。
 父子家庭の女子ヘガティー(おならが紅茶のにおいがしたから、屁へがティー(お茶)というニックネーム)、母子家庭の男子麦(むぎ、本名は麦彦)、ゲームに詳しいドゥワップ(由来不明)、チグリス・ユーフラテスという愛称の姉妹、それからリッスンという男子(質問がしつこい)。

 母子家庭の男子と父子家庭の女子が、女子の異母姉に会いにいく物語です。小学生ゆえに自分ではどうすることもできない環境があります。子どもの側から見ると切ない話です。
 家出はいけません。せめて、義務教育を卒業するまでは、枠の中で生きねばなりません。短絡的にならず、チャンスを待てばいいのです。合法的な家出は許されます。できるなら、18歳、高校を卒業するまでは枠の中で、耐えたほうがいい。

 ふたりは、人間関係にもまれながら、強く生きていかねばならぬことを学びます。昨日、辻村深月作品「朝が来る(特別養子縁組制度を扱った小説)」を読んだのですが、2冊の本の内容が、気持ちで重なる部分があり、連続して読んだ結果、深層心理に深く刻まれる感情が生まれました。本作品の後半にある小6女子が書いた病死した母親あての手紙を読むと、かなり泣けます。がんばれ!


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