雲をつかむ話 多和田葉子 講談社

 幻想的です。ページ全体に文字があるので、かなりの文字量です。
 作者はドイツで暮らしていて、内容は、日記をもとにした一人称の物語のようです。刑務所で服役中の死刑囚が、仮出所中に小説家である作者のもとを偶然たずねてくるところから始まります。
 囚人は、作者が書いた本を売ってくれと言うのですがそれは空き巣に入ろうとして失敗した口実です。
 本がもたらす有益性が書いてあります。刑務所内図書館もあります。
 
 ベルリンとか、ハンブルグとか(ドイツ北部貿易都市)、エルベ川、ふだんなじみのない地名です。スイス、オーストリア、ヴォルフスブルグの駅。

 セリフの「 」の行変えがなく、文章中に「 」がある筆記スタイルです。ゆえに大量の文字数です。

 「家元制度反対」とは、昔あった1980年の切り付け事件がヒントなのでしょう。

 「終身刑」というのは、一生涯だと思っていましたが、作中では、終身刑で15年は、普通は8年で出られるとあり、そういうものかと。

 印象に残った表現の趣旨として、ケチを表すために、「洗濯を重ねて木の皮のようになった風呂場のタオル」

 「思い出の記」そういうイメージです。むずかしい漢字は使用されていません。外国文学(翻訳)を読んでいるようです。「つぶやき文学」です。

 「監獄に入れられている人のことが自分のことのように思える」という発想は、ふつう思いつきません。

 脳の研究書のようでした。

 「人生は退屈で幸福であればいい」は、説得力があります。

「鱒男:ブレーメンの青年」「マボロシさん」「亡命詩人」「双子のひとりがオズワルド」「ブリッタ」「あやこ」「フライムート」「紅田(ハンブルグ生まれ)」「「マヤ(フライブルグ生まれ)」

(再読)
 ゆっくり読みなおすことにしました。

 かなり時間をかけて読み終えましたが、わたしには理解できませんでした。
 事実とは違う虚構の世界です。
 上質なエッセイ(思索をまとめた散文)なのでしょうか。
 作者の日常生活が半分、虚構が半分という成り立ちで、収監者との関わりが書いてあります。
 
 心に残ったのは、詐欺的な「電話族」による勧誘。彼らは信用できない。  

Posted by 熊太郎 at 06:11Comments(0)TrackBack(0)読書感想文