2013年11月12日

ゼツメツ少年 重松清

ゼツメツ少年 重松清 新潮社

 久しぶりに重松作品を読みました。涙が止まらなくなるのが作品の個性ですが、本作品にはその力がみられませんでした。輝きは尽きたのか。
 物語の中に、実在の人物を挿入する手法は成功していません。わかりにくい。
 センセイがいて、中学2年生のタケシがいる。小学5年生のリュウ(父子家庭)と同じく5年生ジュン(女子、姉死亡)がいる。彼らはいじめほかが原因で不登校になっている。場面は化石の発掘作業から始まります。
 ゼツメツ=死に絶える。ぼくたちという同じ色のグループが絶滅しそうだからと、小説家であるセンセイに助けを求めます。
 わかりにくさから解釈を誤っているかもしれません。タケシもリュウもジュンもすでに死んでいる。霊魂とのやりとりが物語になっている。彼らにとっての逃げ場は天国だった。
 小学5年生リュウ、小さい頃、母親を病気で亡くしているけれど、小学5年でここまで母親を慕うだろうか。疑問が残りました。亡くなった母のための正義を貫くことで、彼はクラスの中で疎外されます。
 小学5年生女子、ジュン、両親から死んだ姉と比較される。
 中学2年生、タケシ、兄から陰湿ないじめを受ける。
 彼らは自分たちを古代のクジラにたとえる。陸にあがったクジラは、陸で生きていくことができなくて、海に戻った。「ゼツメツ」にこだわり続ける文脈が続きます。
 センセイは言う。生き抜くために「想像力」をもつ。最初は、将来の夢をもつということだと理解しましたがどうも違うようです。
 物語の中に、同作者の他作品の人物が出てきます。複雑な構成です。小中学生向けの物語なので、彼らがどう把握するのかはわかりません。
 こども3人が家出をして、心の強い人間に変わるのかと期待しましたがそうではありませんでした。彼らは行方不明になり、靴だけが発見されます。3年の時が経過して、親は孤独です。ナルニア国物語のようなファンタジーの様相がありますが、3人は生きていません。
 「レモン」が「命」を表わします。趣旨をつかめない。
 ブックの表紙絵、細い描画が今風のこどもの心を表わしています。淋しげです。こどもたちの感情は沈んでいます。
 以下は印象に残ったセリフなどです。
 <僕たちに逃げ込む場所を与えてください。>
 <大事なのは想像力です。>
 「旅に出るんだ。」
 サイテーのヤツらがいる、ここが、オレの世界
 イエデクジラ
 時間を止めた部屋
 325ページから続く夢見のシーンはさわやかでした。

(その後)
 なにかしら腑(ふ)に落ちない。(合点がいかない。納得できない。)
 1週間かけて読んだ物語を1日かけて読み直しました。
 いじめが原因で自殺した中2の娘と同じくそれがショックでその1年後に病死したその父親(作者の友人)のために捧げた小説でした。
 昔、インドは島国だった。ユーラシア大陸とインド島との間にあったのが、テーチス海です。また、その昔海にいたクジラは進化して陸にあがった。クジラは陸でいじめにあって(弱肉強食で淘汰(とうた)されて)再びテーチス海に戻りその海底で暮らした。
 夏休み中、切り立った高い崖の下、3人の少年たちがいた。友人や兄、親から虐げられて(しいたげられて)、「自死」を身近に感じている。つまり、「ゼツメツ絶滅」しそう。
 タケシから作者に何通もの手紙が届く。タケシはすでに亡くなっていた。手紙はテーチス海の海底から作者へ届いていた。
 後半は幻想的です。自転車で星空を飛んだ洋画「ET」、亡くなった人と再会できる邦画「ツナグ」、最愛の人を亡くすと時が止まる邦画「アルゼンチンババア」などの要素が織り込まれてあります。そこまでつなぐための伏線として、冒頭付近に読者から作者に届くクレームが配置してあります。
 作者の過去作品からも登場人物たちが顔を出します。「ナイフ」、「きよしこ」、「卒業」、「その日の前に」などが思い浮かびます。
 レモンの時限爆弾は、梶井基次郎作品とありますが、読んだことはありません。これから読むかどうかはわかりません。
 物語は、悲惨な状況-ぬくもり-悲哀-強くなれの励ましと変化していきます。文節「ずっとひとりぼっちだった」はつらい。
 3人の少年少女たちは、53ページ、雷雨の中、斜面から濁流渦巻く川へ落ちていった。今頃は、テーチス海の海底でクジラになっている。
 以下、記憶に残った表現です。
 ステラー大海牛は、心が優しかったから絶滅した。
 いじめられても死ななかった。
 いろんな場所にレモンを置いて、あの人は死にたかった。(自分の存在を記憶しておいてほしかった。存在を無視されて自殺した少女がいた。)
 子どもを亡くした親はみんな悔やんでいる。生きてほしかった。


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