2012年11月07日

速さのちがう時計 星野富弘

速さのちがう時計 星野富弘 偕成社

 以前、栃木県日光市からレンタカーでトンネルをくぐり、右へ左へと曲がる山道を45分ほど走って群馬県内にある富弘美術館に到着しました。
 1970年6月(昭和45年)中学校の体育教師をしていて運動中に頚椎損傷を損傷し手足が動かなくなる。口に筆をくわえて絵や文を書き始める。
 タイトルの本はペン画です。美術館で鑑賞をしていて、作者の本音がもっとも表れているのがペン画だと感じて購入しました。陰と陽、光と影、体が不自由になったことに対する暗い気持ちとがんばろうという明るい自分への励ましが、黒と白の色彩に描きこまれています。
 勉強もできてスポーツにも長(た)けている。事故は相当のショックだったでしょう。24歳からの9年間の寝たきり入院生活は絶望の淵にいたとお察しします。展示室冒頭の経歴紹介コーナーでは、ガッツあふれる人だと涙がにじみました。
 「ひとりしずか」まっすぐな姿、形がいい。12ページにある「背負い台」は、わたしの実家がある九州では背負子(しょいこ)と言っていました。「とんぼ」の絵と言葉がいい。「ぶどう」を分かち合うのがいい。「ききょう」、「月見草」以下には、作者の苦しさが現れています。
 口に絵筆をくわえて描く。おそらく1枚を仕上げるのにひと月ぐらいかかるのではないか。緻密な観察で丁寧に描かれています。最初から上手だったのではなく、徐々に上達したのでしょう。自分の死後に自分がこの世に存在していた証を残したいと人は考えます。一枚一枚の絵は彼にとっては「こども」なのでしょう。
 あるがままを受け入れる。勇気が湧いてきます。
 87ページ「弁当の時間」に胸を打たれました。


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