2010年09月29日

ローマの休日 DVD

ローマの休日 DVD

 遠い過去に見たことがある映画でしたが、歳月を経てあらためて見て胸を打たれました。白黒画面は気になりません。アン王女が泣きはらしたあとのはれぼったい顔がよくわかります。
 構想から完成までに10年はかかった映画ではないかと感じました。よくできています。とある国の若い王女が滞在先のイタリアローマで宿泊先をこっそり抜け出すという設定は、ありそうでありえません。舞台となるローマの風景、そして人情味あふれるローマ人とのかけひきがおもしろおかしくて楽しい。
 冒頭から豊かな音楽が流れます。でも後半の肝心なところでは無音になります。この時代はまだ無声映画の名残があるのではないか。言葉のない空間に人間の心情とユーモアがあふれています。
 儀式の場に象徴として立つことは王女の仕事であり役割です。人は食べていくために働かなければならないのです。1日のうちの数時間を労働で拘束されるのは当然のことです。とはいえ、スクリーンのなかの彼女を見ていると気の毒になります。世論が許せば王族を離脱してもいいではないかと同情します。
 心に残る作品の条件として、「お金がないこと」、「美」があること、「人間として超えてはいけない一線を超えない厳しさ」があることについて考えました。
 舞台のローマには、現代の中国のような活気と、他方、ゆるい人情にあふれた昔の日本の面影があります。王女の心の迷いは薬では治らない。お金のために魂を売るケダモノになってはいけない。人間は、心に秘密を秘めて生き続けていく。恋愛には節度が必要。古い映画を見ることは、考古学に似ている。現代人が忘れたものがあの時代にはあった。そんなことを考えながら鑑賞しつつ、最後には背筋が寒くなるほどの感動を味わいました。

(2011年11月某日再鑑賞)
 1年ぶりに観て、また感動しました。
 エピソードのつなぎ方がうまい。シンプルで、すっきりしています。

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