2017年12月23日

盤上の向日葵 柚木裕子

盤上の向日葵(ばんじょうのひまわり) 柚木裕子(ゆづき・ゆうこ) 中央公論新社

 将棋ばやりである。今年はブームでした。
 
 50ページぐらいまで読みました。
 なかなかおもしろそうです。
 犯人は棋士らしい。
 証拠が将棋の駒らしい。

 鉄道とか、人間臭い刑事とか、世界は古いけれど、魅力があります。

(つづく)

 563ページの長編ですが、1日でいっき読みになるかもしれません。(結局は二日間、読み終えたのは翌日深夜11時58分でした。)
 第二十三章までで、序章と終章がつけてあります。

 舞台は山形県天童市(将棋の駒の産地)から始まりました。
 刑事は、埼玉県大宮北署地域課佐野直也巡査30歳過ぎ将棋のプロを目指していたことありと、埼玉県警捜査一課石破剛志(いしばつよし)警部補45歳、がらっぱちの昭和時代風刑事です。

 名作「砂の器」のように鉄道から始まりました。
 将棋の記述は、今年爆発した14歳の藤井君を思い出させてくれます。
 将棋をあまり知らない者にとってはわからない推理小説かもという懸念が脳裏をよぎりましたが、読み進んでみると、そんなことはありません。(知っているとさらに楽しめます。)
 
 P26、今の時代に煙草の記述はやめたほうがいい。(ページ106,183,282,292, 313,365,397,518。たばこ会社となにかつながりがあるのだろうか)4年前、ようやく禁煙できた身としては、タバコを吸って気持ちいいというような表現文章は読みたくない。ようやく最後のほうのページに、「禁煙しろよ」の文字を見つけました。

 今旅している本の中の世界は、平成6年8月3日です。
 45ページはじめ、鎌倉あたりの記述の感じがいい。石破刑事の個性設定もいい。
 他の章も含めて、昭和時代の雰囲気がどっぷりです。

 昭和46年1月です。長野県諏訪湖近くに住む唐沢光一朗63歳元小学校教員夫婦がいる。
 ふたりに子はない。社会福祉とか、教育とか、そんなことが物語進行の下地になっていきます。

 石破剛志刑事はなぜ駅弁にこだわるのか。伏線かもしれない。(結局伏線ではなかった。)

 登場人物がいっぱいです。メモとして利用している使用済みカレンダーの裏面が文字だらけになってきました。

 マージャン(かけごととして)やアル中、人間へのかたよった意識のもちかた(悪人だという)が気にかかります。読み手へのイメージ付けがきつすぎる。現実社会では、健全にマージャンしたり飲酒したりする人が大半です。

 昔、貧乏な家の小中学生は、新聞配達や牛乳配達をやったものです。なつかしく思い出しました。

 虐待とは育児放棄であり、預けて働くことも該当するような気がする。
 子を虐待する親がなぜ虐待するかというと、親もまた虐待されていたからであり、人は、自分が育てられたようにしか自分の子どもを育てられない。

 こどもさんである上條桂介父子の暮らしを読んでいるとわびしくなってくる。こんなにひどいだろうか。また、酒飲みは病人だから口だけで、けんかの腕力はこんなに強くない。

仙台駅で、牛タン弁当とえんがわ寿司

 警察には貸し借りがあるらしい。

 独特の暗さが、こどもさんの成長とともに明るい方向へ向かっていくのが救いです。

322ページから急速に読む気が薄れてきた。つまらない展開です。純粋だった川の流れが汚れました。賭けマージャン劇画みたいになってきました。あと2時間ぐらいで読み終えそう。

 ルールってなんだろう。人が生きていくときの倫理は、ひとりひとりが考えて、感じて決めてもいいのではないか。

 実際に訪れたことがある場所が次々と出てくるのでリアルに感じます。

 男は、物語のように、母を想うだろうか。男が思うのは、恋人や妻だ。母のことは忘れる。そして、この物語の場合、(主人公が夫の立場なら)妻をそう(向日葵と)想う。作品は幻想的な雰囲気を帯びる。

 現実にこんな父親がいるのかなあという大きな疑問をもちながら読んでいました。自分の子どもです。虐待していても自分の分身ですから、最後の愛情のかけらはあります。ひどすぎる。488ページ付近、ようやくドラマができあがりました。

以下は調べたことなどです。
「奨励会:プロ棋士を育成する会で東京と大阪にある。(12ページには)プロになるためには26歳までに4段に昇格が要件。(P230には)21歳までに初段、31歳までに4段」、「怯懦:きょうだ。臆病で気が弱い」、「頭を擡げる:もたげる」、「尊崇:そんすう。尊敬」、「揮毫:きごう。毛筆で言葉や文章を書くこと」、「憚られる:はばかられる」、「社交辞令:人づきあいをよくするために行うほめ言葉やあいさつ」、「封じ手:対局が2日制のときに、1日目最終の差し手を書いて封をして公平とする」、「駒師菊水月:将棋の駒をつくる職人のうちのひとり」、「窘めた:たしなめた」、「宥める:なだめる」、「満更:まんざら」、「夭折:ようせつ。若くして死ぬこと」、「7七歩:左右が筋で数字の1から9(右から左に書く)、上下が段で漢字の一から九(上から下に書く)」、「好事家:もの好きな人。マニア」、「杦田:すぎた」、「大洞:おおくら」、「心火:しんか。激しく燃え立つ怒り」、「怖気:おぞけ。恐怖心」、「勝負にアヤをつける:勝負の勝ち負けに影響する微妙な作戦、かけひき」、「頽れる:くずおれる」、「将棋、棒に負けた:銀を棒のようにまっすぐ進めていく戦法」、「脳内エンドルフィン:脳内神経伝達物質、多幸感をもたらす」、「懇ろ:ねんごろ」

良かった表現として、「人生はいいときもあれば、悪いときもある」、「(104ページの)続けろ」、「取り調べではなく聞き取り」、「似た者同士(将棋の天才、奇才)」、「人間はろくでなし、仕事(将棋)は一流」、「プロになれよ、おまえならなれる」

 最後に、申し訳ないけれど、自分にとっては、「駒は駒」です。価値を見出せません。

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