2016年09月23日
スタフ 道尾秀介
スタフ 道尾秀介 文藝春秋
最初にわからないのが、タイトルの意味「スタフ staph」、調べました。作者のインタビュー記事をみました。最後まで読めばわかるようになっているので読んでくださいとあります。そうします。
次にわかっているようでわかっていないのが、「ランチワゴン」。本を読み始めると、お弁当類の移動販売車で、昼食時間帯に、会社が集まっている地域で商売をすると読み取れます。駐車場所は、あっせん会社から仲介を受ける。あと、保健所の指導が入る。以前、ランチのアッコちゃんという作品を読んだのと同じ商行為でしょう。
最後によくわからないのが、この本のカバーや帯が赤色でどぎついこと。なにか意味とか意図があるはず。これまた読めばわかるのでしょう。とにかく、読み始めてみます。
登場人物たち
掛川夏都(かけがわ・なつ)32歳。9月前に離婚。現在独身だが、わけあるらしく、姉の息子(甥にあたる)掛川智弥、中学2年生とふたり暮らしをしている。収入源は、ランチワゴンによるお弁当販売。少し前まで、デザイン事務所で働いていた。夏都はなにやかにや(おもにお金のこと)で追い込まれている。
昭典、掛川夏都の元夫だが、女ができて、夏都に家を追い出された。
学習塾講師 菅沼 40代なかば。よれたジャケット、白い自転車、半白前髪
学習塾塾長 馬場
ランチワゴンの停車位置
月水金が、西新宿、火木土が、高田馬場にある塾長馬場さんのところの塾の駐車場
言葉のお勉強です。「ロコモコ丼:ハワイ料理。丼。ハンバーグと目玉焼き」、「バットのなかからおにぎりをとりだす:浅い箱型の容器」、「懊悩おうのう:悩みもだえる」、「意固地いこじ:かたくなに意地をはる」、「メンターズ:メンターは、助言者、指導者の複数形」、「タギング:ネット上でカウントを稼ぐために関係のないものをくっつける。タグのing形」、「ディストーション:音のひずみ、ゆがみ」、「ボウモア:スコッチウィスキー」、「エントロピー:熱力学の数量」、「胸襟を割って:きょうきんをわって、思っていることをすっかりうちあける」、「キャプチャー:パソコンに現れた静止画、動画を保存する」、「モックアップ:スマートフォンのダミー」
繊細な文章です。おはしのもっていきかたもうまい。今22ページ付近を読んでいますが、笑いました。予想どおりになるのですが、ひっかけかたがうまい。一度記憶に残して、他の出来事を入れて、前出の件を忘れた頃に出して、ストンと落とす。オチです。さすがでした。さらに男と女のエッチな部分の表現もうまい。
感銘・共感した表現の趣旨などです。「変わらないことにも、けっこうエネルギーがいる」、「大事なことはあとになってから気づく」、「ひとつの行動にひとつの理由があるわけじゃない」、「(祖父母の住む長崎の田舎町に)光がない」、「数学はものごとを簡単にするためにあるのです」、「(数学のこの)公式は、200年前に小学生が発見した。(以下、公式は、つくるものではなく発見するもの)」、「移動販売車のハッチ:開閉する部分」、「攫われた:さらわれた」、「ラッチ:かんぬき、掛けがね、扉、門」、「クレッシェンド:音楽用語、だんだん強く」、「薙ぎ払う:なぎはらう」
(つづく)
236ページまできました。途中つまらなくなり期待はずれかと思いましたが、今は少しその気持ちを取り戻しつつあります。
期待外れの要因は、脅迫・恐喝のネタとなるメールが、証拠としての確実性に欠けることです。偽造可能だと思うのです。
犯行に、主人公掛川夏都(なつ)の姉冬花(とうか)が関わっているような気がする。
「枕営業」という言葉があります。人格否定の行為です。女の武器を使って、利益を得る。幾度かこの言葉が出てくると不快感を生じます。
女優の姉とネットアイドルの妹、その年齢差が15歳、両親は離婚、父はどこかへ、母は育児放棄、姉が妹を育てた。変則的な生い立ちです。
(つづく)
読み終えました。
「スタフ」というのは、「引き留める」という意味ととりましたが、それでいいのかどうかはわかりません。
作者の取り組んだ主題は、年配の世代にとっては、特殊で狭い世界のことですが、現代若者にとっては一般的なことでよくあるものなのでしょう。現代の世相に合った人間性とか、人間心理の奥深い部分にメスを入れて切り開き観察し分析するものでした。
仕掛けはなかなかいい。最後の章の前に、物語は終結を迎えたような状態になるのですが、その後のつなぎは、最初、ぎこちなく。終わってみれば、納得のいくものでした。
扱った素材、そして、テーマは暗い。感動とまでには至りませんでしたが、若い人たちが読むと共感する作品でしょう。
現代若者が、社会を生きにくい、育ちの環境が描かれています。
同じ人間。今、老いている人間も、今、若々しい人間も、中身は同じ。ただ、周囲の環境が異なるから、順応の仕方が違う。
共働きとか、女性の社会進出、シングルマザー、育児放棄を否定する内容でもあります。保守的、封建的でもあります。されど、こどもにとっては、そのほうが、すこやかに育ちやすい。そういうメッセージを受け取りました。画一的な結果には至らないので、是も否もあるでしょう。
(その後)
「スタフ」は最終的に「スタッフ」(構成員)と理解しました。カグヤを中心において、ある目的のためにメンバーが集まる。あるいは、集める。そして、物語は、予定どおりに始まる。舞台の幕は上がった。
最初にわからないのが、タイトルの意味「スタフ staph」、調べました。作者のインタビュー記事をみました。最後まで読めばわかるようになっているので読んでくださいとあります。そうします。
次にわかっているようでわかっていないのが、「ランチワゴン」。本を読み始めると、お弁当類の移動販売車で、昼食時間帯に、会社が集まっている地域で商売をすると読み取れます。駐車場所は、あっせん会社から仲介を受ける。あと、保健所の指導が入る。以前、ランチのアッコちゃんという作品を読んだのと同じ商行為でしょう。
最後によくわからないのが、この本のカバーや帯が赤色でどぎついこと。なにか意味とか意図があるはず。これまた読めばわかるのでしょう。とにかく、読み始めてみます。
登場人物たち
掛川夏都(かけがわ・なつ)32歳。9月前に離婚。現在独身だが、わけあるらしく、姉の息子(甥にあたる)掛川智弥、中学2年生とふたり暮らしをしている。収入源は、ランチワゴンによるお弁当販売。少し前まで、デザイン事務所で働いていた。夏都はなにやかにや(おもにお金のこと)で追い込まれている。
昭典、掛川夏都の元夫だが、女ができて、夏都に家を追い出された。
学習塾講師 菅沼 40代なかば。よれたジャケット、白い自転車、半白前髪
学習塾塾長 馬場
ランチワゴンの停車位置
月水金が、西新宿、火木土が、高田馬場にある塾長馬場さんのところの塾の駐車場
言葉のお勉強です。「ロコモコ丼:ハワイ料理。丼。ハンバーグと目玉焼き」、「バットのなかからおにぎりをとりだす:浅い箱型の容器」、「懊悩おうのう:悩みもだえる」、「意固地いこじ:かたくなに意地をはる」、「メンターズ:メンターは、助言者、指導者の複数形」、「タギング:ネット上でカウントを稼ぐために関係のないものをくっつける。タグのing形」、「ディストーション:音のひずみ、ゆがみ」、「ボウモア:スコッチウィスキー」、「エントロピー:熱力学の数量」、「胸襟を割って:きょうきんをわって、思っていることをすっかりうちあける」、「キャプチャー:パソコンに現れた静止画、動画を保存する」、「モックアップ:スマートフォンのダミー」
繊細な文章です。おはしのもっていきかたもうまい。今22ページ付近を読んでいますが、笑いました。予想どおりになるのですが、ひっかけかたがうまい。一度記憶に残して、他の出来事を入れて、前出の件を忘れた頃に出して、ストンと落とす。オチです。さすがでした。さらに男と女のエッチな部分の表現もうまい。
感銘・共感した表現の趣旨などです。「変わらないことにも、けっこうエネルギーがいる」、「大事なことはあとになってから気づく」、「ひとつの行動にひとつの理由があるわけじゃない」、「(祖父母の住む長崎の田舎町に)光がない」、「数学はものごとを簡単にするためにあるのです」、「(数学のこの)公式は、200年前に小学生が発見した。(以下、公式は、つくるものではなく発見するもの)」、「移動販売車のハッチ:開閉する部分」、「攫われた:さらわれた」、「ラッチ:かんぬき、掛けがね、扉、門」、「クレッシェンド:音楽用語、だんだん強く」、「薙ぎ払う:なぎはらう」
(つづく)
236ページまできました。途中つまらなくなり期待はずれかと思いましたが、今は少しその気持ちを取り戻しつつあります。
期待外れの要因は、脅迫・恐喝のネタとなるメールが、証拠としての確実性に欠けることです。偽造可能だと思うのです。
犯行に、主人公掛川夏都(なつ)の姉冬花(とうか)が関わっているような気がする。
「枕営業」という言葉があります。人格否定の行為です。女の武器を使って、利益を得る。幾度かこの言葉が出てくると不快感を生じます。
女優の姉とネットアイドルの妹、その年齢差が15歳、両親は離婚、父はどこかへ、母は育児放棄、姉が妹を育てた。変則的な生い立ちです。
(つづく)
読み終えました。
「スタフ」というのは、「引き留める」という意味ととりましたが、それでいいのかどうかはわかりません。
作者の取り組んだ主題は、年配の世代にとっては、特殊で狭い世界のことですが、現代若者にとっては一般的なことでよくあるものなのでしょう。現代の世相に合った人間性とか、人間心理の奥深い部分にメスを入れて切り開き観察し分析するものでした。
仕掛けはなかなかいい。最後の章の前に、物語は終結を迎えたような状態になるのですが、その後のつなぎは、最初、ぎこちなく。終わってみれば、納得のいくものでした。
扱った素材、そして、テーマは暗い。感動とまでには至りませんでしたが、若い人たちが読むと共感する作品でしょう。
現代若者が、社会を生きにくい、育ちの環境が描かれています。
同じ人間。今、老いている人間も、今、若々しい人間も、中身は同じ。ただ、周囲の環境が異なるから、順応の仕方が違う。
共働きとか、女性の社会進出、シングルマザー、育児放棄を否定する内容でもあります。保守的、封建的でもあります。されど、こどもにとっては、そのほうが、すこやかに育ちやすい。そういうメッセージを受け取りました。画一的な結果には至らないので、是も否もあるでしょう。
(その後)
「スタフ」は最終的に「スタッフ」(構成員)と理解しました。カグヤを中心において、ある目的のためにメンバーが集まる。あるいは、集める。そして、物語は、予定どおりに始まる。舞台の幕は上がった。
この記事へのトラックバックURL
http://kumataro.mediacat-blog.jp/t118723
※このエントリーではブログ管理者の設定により、ブログ管理者に承認されるまでコメントは反映されません