2016年05月01日

サブマリン 伊坂幸太郎

サブマリン 伊坂幸太郎 講談社

 読書記録を見ると、2012年10月に同作者作「チルドレン」の記事があります。次に、この本の帯には、あれから12年とあります。過去に書いた感想文の出だしにあるのは、銀行強盗事件での陣内君と武藤君の出会いです。
サブマリンでは、ふたりとも公務員(家庭裁判所調査官・東京家裁、以前は埼玉家裁)で少年犯罪を担当しています。少年法の世界です。武藤君は妻子持ち、陣内君は変わり者独身扱いです。

 ふたりが担当しているのは、棚ボタ君と呼ばれる棚岡佑真19歳が起こした無免許スピード違反交通死亡事故です。45歳男性(妻子とは離別の孤独者)が犠牲となっています。加害者棚ボタ君の両親は彼が4歳のときに高速道路で交通事故死しています。また、彼が9歳のときに、小学校同級生が一緒に登校中のところへ突っ込んできた暴走車の犠牲になっています。(彼の隣を歩いていた栄太郎君が死亡)

 少年犯罪としては、最近某市であった両親と別離して祖父母宅に預けられた少年がナイフで町内会の役員を刺殺した事件、また別の事件として、某市で、家庭内暴力に耐えかねた家族が逃げ出して、ひとり家に取り残された少年がレンタカーを借りて繁華街の歩道に突っ込んで犠牲者が出た事件、某県内で、朝の小学生の集団登校の列に少年が運転するスポーツタイプの車が突っ込んで死傷者が出た事件などがこの小説のヒント・原案発想になっていると察しました。

 作者の設定したテーマは何だろうという疑問を抱えながら217ページまで読みました。あと50ページ程度です。テーマはまだわかりません。

 理路整然とした文章は感嘆に値します。心地よい。言葉づかいがうまい。

 ネット、ジャズ、個人情報、自動車へのこだわりがあります。作者独自の独特なものでしょう。ジャズのことがたくさん書いてありますが、読み手である自分にはわかりません。そして、作者は、「因果関係」に強い興味を示しています。

 棚ボタ君の動機は推測できる。

 気にいった表現として、「二度あることは三度ある」、陣内は、威張り腐っている父親が嫌いだった。10年前に車で9歳の栄太郎を跳ねて死亡させた若林20代後半の実父に対する評価として、会社の上司には頭が上がらないくせに、弱い人には威張るタイプだった。相手によって、態度を変える人だった。(陣内が若林の父親に、おまえの態度のせいで、息子が事故を起こしたと責めた過去が判明する。以降、若林の会社の上司のパワハラに対抗して、上司のほめ殺しを陣内がやる。本作品のテーマのヒントはこのあたりか。)、それから、なんでもかんでもインターネット頼みか(悲観的な意味で)

 わからなかったこととして、「イワンのばか:ロシア民話。純朴愚直だが、最後は幸運を手にする男」

(つづく)
 
 読み終わりました。
 何かしら悲しくなった245ページ付近でしたが、最後266ページ付近にある調査官の仕事について、どうして調査官をしているかというくだりがよかった。

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