王とサーカス 米澤穂信

王とサーカス 米澤穂信(よねざわ・ほのぶ 男性) 東京創元社

 時代は2001年6月1日、場所は、標高1300mネパールの首都カトマンズ、主人公は、トーキョーロッジ202号室に旅行ルポ取材のため滞在する28歳太刀洗万智(たちあらい・まち 女性らしい。東洋新聞元記者、現在フリーライター)で始まります。
 個性的な人物たちが彼女の脇を固めます。いま、100ページまで読みました。11歳、現地人少年サガル、仏僧八津田源信、白人大学生ロブ、月間深層編集部牧野太一、食堂店主吉田さん、ロッジの女主人チャメリ、軍人ラジスワル准尉、食器を買い絨毯を売るインドの商人シュクマルなどです。

 BBCニュースが速報を伝えました。ネパールのビレンドラ国王とアイシュクリャ王妃がディペンドラ皇太子に射殺された。皇太子は自殺した。(そこになにか秘密の匂いがします。後刻、詳報で、皇太子は重篤、生存が判明します。)

 おもしろかった表現として、日本語の「おいしい」を、「ゴハンガホシクナル」と訳す。

 わからなかった言葉として、「喜捨:僧や貧者に金品を寄付すること」、「トピー帽:つばがなくて、頭にすっぽりかぶせるネパールの帽子」、「マオイスト:毛沢東主義の信奉者。共産主事思想。(よくわからないが、本書では、取材の相手方から記者の太刀洗に対する批判として、太刀洗が興味本位で取材と報道をしようとしている。彼女個人や彼女が所属する会社が、お金を稼ぐために情報を得ようとしているととれます。」、「梵天勧請:ぼんてんかんじょう。偉い神さま梵天が、釈迦に、釈迦が悟った教えを梵天に説いてくださいと説得したでいいのだろう。たぶん。」、「乾屎橛:かんしけつ。常識を打破するで、いいような気がします。」、「銃創が盲管:銃弾が体内にとどまっている」、「発射残渣はっさざんさ:銃を撃った後に手のひらほかに銃や弾の金属の粉などがつく」、「チヤ:ネパールの紅茶、ミルクティー」、「(軍の位として)准尉じゅんい:中隊のボス。叩き上げ。現地部隊を動かす実力者」、「ガンジャタウン:大麻を吸える街、生産地でいいのだろうか。ネパールは大麻の産地とされています」、「1ネパールルピー:日本円で1円」、「トランジット:航空機の燃料補給にともなう立ち寄り。同じ飛行機で飛び立つ。」、「祇園精舎ぎおんしょうじゃ:インドにある寺院(日本の寺院だったのだろうと思い違いをしていました)」、「莞爾:かんじ。にっこりと笑う」、「晒す:さらす。この物語の中では、死体を民衆の目にさらすという意味」

 この小説は旅行ガイドの要素ももっています。ネパールでは1日2食、朝の10時頃と夜の7時頃。(ただし、間食が多いとあとで出てきました。)

 人生の教えとして、「時間は有限」(知人を自殺で亡くした太刀洗の思い)

 月刊誌の記事の書き方として、国情の概説-事件の経緯-現地の生の声

(つづく)

 実は、読み始めの頃、カトマンズは、インドにあると思っていました。100ページ過ぎで、ネパールにあると気づいてよかった。

 皇太子の乱射によって、皇太子以外のビンドラ国王系の皇族全員が死亡しました。(他の系列は残っています。)天皇家と徳川家のように、王家(18世紀後半成立)と宰相家(ラナ家)、1951年にラナ家から王家に権限移譲、1990年に民主化と説明されています。
 インドの陰謀説が出てきました。

 ネパールはヒンドュー教の国。生命輪廻だから死は悲しくないとの記事を読んで、ネパールは、ダライ・ラマのラマ教だと思っていたので、勘違いばかりです。ダライ・ラマはチベットか。
 
 ここには書けませんが、ネパール国内の政情は不安定になります。政府筋による事実の隠蔽が始まりました。日本人記者太刀洗万智が取材に挑みますが危険です。ここまできて、彼女が仕事人間であることがわかりました。言い方は悪いけれど、家族とか親族づきあいを捨てた人です。仕事に生き、仕事で死んでもかまわないのでしょう。

 太刀洗万智は、5月31日にネパールに入国した。6月1日、宮中晩さん会で国王ほかの親族が命を落とした。太刀洗は、6月2日午前2時30分にその事件を知った。同日、葬儀が営まれた。6月2日の朝8時過ぎ、太刀洗はチャメリに頼みごとをした。同日深夜、チャメリから返答を得た。6月3日午後2時、太刀洗は取材相手に会った。同日午後6時にロッジに戻った。
 王とサーカスというのは、王は王である。サーカスは、自分とは無関係な人間の不幸を喜ぶ民衆の気持ちを指す。(ちょっと理解するのがむずかしい。)
6月4日午前10時40分頃、路上で死体が発見された。太刀洗は午前10時42分に死体を見た。(死者の死亡推定時刻は、3日夜午後7時前後、6時半から7時半の間)、警察への通報時刻が4日午前10時35分だった。
4日午後1時40分、地元警察官4人が、太刀洗のところへなだれ込んできた。
6日午前5時45分に、太刀洗は、レポートを日本に送る予定。

(つづく)

 1週間ぐらいかけて、読み終えました。今年読んで良かった1冊です。大昔からあるテーマですが、改めて、人間の悪に迫る佳作でした。マスコミ関係者を対象としてありますが、人間界への警告です。外国人による日本人への評価・批判もあります。 フリーライターの太刀洗万智は善人ではありません。ただし、本人はそれに気づけていませんでした。
 354ページ付近で、作者はあと残り59ページで、読者にどんな発想を提示してくれるのか期待しました。期待どおり、深い心理描写を提供しれくれました。サンキューです。
 読者は、自分なりに犯人探しを試みますが、犯人のめぼしはついても、動機をはじめとした理屈付けができません。

Posted by 熊太郎 at ◆2016年01月10日00:11読書感想文

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