2021年05月01日

きょうりゅうのかいかた くさのだいすけ

きょうりゅうのかいかた くさのだいすけ・文 やぶうちまさゆき・絵 岩波書店

 1983年(昭和58年)初版の絵本です。
 読み終えてみて、昭和時代の匂いが伝わってきて、なつかしさにつつまれました。登場人物たちが来ている服を見てそう思いました。

 珍しく、姉と妹の姉妹が恐竜を飼育するお話になっています。男性優先の日本国の傾向にあって、たいていは兄と弟の兄弟が主人公になるような気がするのですが、昭和58年という時代背景で珍しいことだと思いました。
 姉の名前が「まき」で妹の名前が「めぐみ」です。きょうりゅうのこどもをもらってきてくれたのが、おとうさんで、姉妹だけではなく姉妹の友だちも加わってたくさんの人数で、きょうりゅうのこどもの世話をします。いわゆるおもしろい空想ほら話です。
 (このあとよーく確認したら、まきさんは男でした。でもわたしには女子に見えます)

 文章を区切る句読点(くとうてん)が不思議でした。「、」ではなく「,」カンマになっています。最初は違和感がありましたが、読み進めるうちになんとも思わなくなりました。

 きょうりゅうのこどもの名前は「どん」です。
 地球上にいた恐竜が隕石の衝突で滅亡したのが、たしか6600万年前でした。現代の人類の祖先が登場したのが、20万年前ぐらいでした。(クロマニョン人ほか)両者が同時に地球上に生存していたことはなかったわけですが、物語では可能です。

 恐竜に家はいらないような気もしますが、まず、恐竜のこどもの家づくりから始まりました。どんの体長は10m、体高は5mもあります。どんの絵は、大きいけれど、童顔の可愛い恐竜です。
 大工さんたちが来てくれました。レトロな昭和の雰囲気がただよっています。古きよきものを懐かしむ感覚です。
 今は聞かなくなった「おひゃくしょうさんたち」という言葉が出てきます。
 「ばきゅーむかー」もなつかしい。今も残っているところはあるのでしょうが、昔はたいていが汲み取り式便所で、ばきゅーむかーがきたときに、汲み取り券を従事者に言われて渡していました。「おくさーん、きょうは〇枚ねー」というぐあいです。
 懐かしさから、今年読んで良かった一冊です。
 
 物語のほうは食べる・排泄するの世話です。
 乳幼児の世話と同じです。
 
 恐竜のどんは、ワンちゃんみたいです。市役所から獣医師さんが来て、きょうりゅうのこどもであるどんに予防注射を打ってもらいました。
 
 みんなが、きょうりゅうのこどものどんに運動をさせるようすを見ていて、もう寿命で亡くなってしまいましたが、動物園にいた歳をとったアフリカゾウを思い出しました。
 いっしょにいた仲間のゾウたちが亡くなって、一頭だけになってしまったアフリカゾウと飼育員さんが飼育スペースにある広場で遊んでいるのを時々見かけました。
 飼育員さんがひとりぼっちになったアフリカゾウの家族や仲間の代わりでした。

 高い木の葉っぱを食べる恐竜の絵はキリンのようでもあります。
 
 いきようよう:得意げで威勢がいい。誇らしい。
 生きているということは、いい気分でいようということだと解釈しました。  

Posted by 熊太郎 at 07:21Comments(0)TrackBack(0)読書感想文