2020年11月12日

花のき村と盗人たち 新美南吉

花のき村と盗人たち(はなのきむらとぬすびとたち) 新美南吉 電子書籍 青空文庫

 日本的ないいお話でした。
 人から冷たくされて育った盗人の親方が、親切にされて改心するお話です。
 登場人物は、「かしら」「釜右衛門(かまうえもん)釜づくり職人」「海老之丞(えびのじょう):錠前屋じょうまえや。鍵職人」「角兵ヱ(かくべえ):獅子舞をする芸人」「鉋太郎(かんなたろう):大工」という盗人仲間です。
 頭(かしら)以外は、これから盗人になろうとしている者たちです。そして、彼らは正直者たちです。

 五人組の盗人たちは、平和な「花のき村」で、温かい待遇をうけます。
 ことに親方は、生まれて初めて人として信用されます。親方の目からは涙が延々と流れ続けます。
 以前報道で、事件を引き起こした犯人が、病院に運ばれて治療を受けて、「初めて人から優しくされた」と話したと聞きました。うれしかったようです。やはり人は、人から優しくされないと、人に優しい人にはなりにくいです。

 花の撓(とう):神事において神さまに花を供える(そなえる)儀式。名古屋市にある熱田神宮の儀式。豊年祭。
 家尻(やじり):家や蔵のうしろのほうの壁。盗人が壁を切ってものを盗む場所の位置
 足駄ばき(あしだばき):高下駄(たかげた)。雨の日にはく。
 かたり:人をだまして金品を巻き上げる。  

Posted by 熊太郎 at 06:34Comments(0)TrackBack(0)読書感想文