2012年09月09日

天平の甍(てんぴょうのいらか) 井上靖



天平の甍(てんぴょうのいらか) 井上靖 新潮文庫 

 15年ほど前の早朝、仕事のことでむしゃくしゃしていたら流れてきたテレビコマーシャル、「そうだ、奈良へ行こう」に触発されて以来、毎年のように奈良を訪れるようになりました。奈良は京都と違って、広々としたところが気に入っています。高松塚古墳がある明日香村の畑を見ると自分が小学生だった頃の想い出がよみがえります。畑にはキャベツ、キャベツの上には青虫、青虫はさなぎになってやがて綺麗なチョウチョになる。その上を天高くひばりが舞い上がり空中でさえずる。わたしが子どものころの春の風景です。
 天平の甍とは中国の高僧鑑真がつくった唐招提寺の瓦をさすのだと思います。本の中に書かれている奈良県の寺には行ったところがたくさんあります。東大寺奥の戒壇院(かいだんいん)を訪れたときには、どうして真面目である僧侶を取り締まる必要があったのだろうかと不思議でした。(にせものうそつき僧侶が横行していたそうです。)
時代は奈良時代です。西暦700年代。日本の僧侶たちが遣唐使で唐へ行き鑑真を日本へ連れて帰るための辛苦(しんく)が記述されています。戒律ができる僧侶を求めて唐へ渡る。遣唐使は命がけの船旅であり、唐へ行くと15年ぐらい帰国できなかったり、その行程で亡くなったり、帰国できず唐で生涯を終える者が出てくる。私は本を読みながら先人の苦労に感謝したのでした。鑑真を日本へ送り届けるために努力した興福寺の栄叡(ようえい)の死は悲しい。

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