2016年01月03日

孤狼の血(ころうのち) 柚月裕子

孤狼の血(ころうのち) 柚月裕子(ゆづき・ゆうこ) 角川書店

 孤独な狼(男・刑事)の血でいいのだろうか。「警察小説」、「暴力団小説」です。
 主人公は、広島県警呉原東署捜査二課主任大上彰吾44歳、16年前に妻子が交通事故死しています。物語の進行役が、日岡秀一25才、採用後3年経過した広島大学卒、捜査二課職員です。時代設定は、昭和63年です。信用金庫職員上早稲二郎(かみわせ・じろう 33才)が行方不明です。暴力団加古村組がからんでいます。

 女性作家さんで、暴力団抗争事件を作品化することは珍しい。
 冒頭付近にある喫煙・タバコのシーンは、昭和63年だから許される行為であって、現在は、どこもかしこも禁煙ゾーンとなっている。まだ、72ページまでしか読んでいないので、引き続き読み続けます。

(つづく)

 411ページのうちの205ページまで読みました。
 日本国の一地域のお話です。組織に関心もありません。淡々と読み進めています。ドラマや映画の原作とか脚本になるのだろうか。戸籍調査みたいな面もあります。
 テーマはなんだろう。作者からの読者へのメッセージはなんだろう。そんなことをさぐりながら読んでいます。
 捜査二課大上章吾は、違法行為をしながらも、市民の生命を守ろうとしている。正確には、暴力団との安定した共存を図ろうとしている。その是非を問う。(正か悪か)
 昭和60年代の時代背景を考えると微妙です。いわゆるグレーゾーンが当時は幅広かった。現代は、がちがちのコンプライアンス(法令遵守)が求められる時代です。大上タイプは排除されます。

 相方として、日岡秀一に関しては、広島大学卒がとても誇り高いこととして記述されています。これもまた、昭和時代の名残でしょう。また、彼と大上の亡くなったこどもさんとの関連は、166ページあたりで気づきました。

(つづく)

 読み終えました。そういうことか。なかなかいい…。よくできた構成です。伏線も効果的に働いています。
 「気力」、「胆力」、「度胸」、「けじめ」を前面に出しながら、作者の計略が成功しています。
 各章の冒頭に結果報告があります。続いて、経過報告です。判明していることについて、詳細説明をする。小説としては、未来を始めに提示することから続けて読む興味をそがれてしまいます。そこに、この小説の仕掛けがあります。最後にわかります。(途中、報告書の行が塗りつぶしで削除されていることに疑問をもちます。しかし、あとになって、それには理由があることがわかります。)
 
 登場人物が多すぎて読んでいるとわけがわからなくなります。しかし、それも、後半部になるとわかります。主要人物だけ押さえればいいのです。
 
 黒電話、公衆電話、ポケベル、チェーンスモーカー、ジッポーライター、なにもかもが昭和時代の遺産です。

 警察に限らず、ことに公務員世界で、人事・労務管理にあたっている管理職の方が読むと実感が湧いてくる小説です。不祥事、内部告発、対価はお金か、人事か、もみ消しか。緊張感を伴う判断があります。

 作者のメッセージは、「育成」とか「継続」とか「誕生」、人のそばに悪ありということです。


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