2025年02月05日

ぐうたら旅日記 恐山・知床をゆく 北大路公子

ぐうたら旅日記 恐山・知床をゆく 北大路公子(きたおおじ・きみこ) PHP文芸文庫

 『わたしの、本のある日々 小林聡美(こばやし・さとみ) 毎日文庫』で、こちらの作家さんが紹介されていたので取り寄せてみました。
 その本を読んだ時には、『いやよいやよも旅のうち 北大路公子 集英社文庫』という本のことが書いてあったのですが、関連で、青森県恐山のことが書いてあるこの本も読みたくなりました。
 2年ぐらい前でしたか、NHKのテレビ番組、『72時間』で、恐山(おそれざん)を訪れる人たちのことが放送されていたのを見て、ちょうど、高齢だった妻の両親(義父母)が相次いで亡くなって間もなくの時期であったので、一度恐山にお参りに行きたいねと夫婦で話しました。
 番組企画は、歴代のベスト10を決めるような内容だったと思います。『ドキュメント72時間 恐山 死者たちの場所 2014年6月6日放送(平成26年)』
 されど、放送された当時はコロナ禍であり、その後、クマが出たり、地震の心配もあったりして、恐山への旅はまだ実現していません。
 とりあえず、この本を読んで、行った気分になってみたい。
 本に書いてある旅の内容は、恐山と知床が、2011年(平成23年)、積丹半島(しゃこたんはんとう)が、2006年~2008年(平成18年~平成20年)ですから、ちと古い。

(1回目の本読み)
 わたしは、実用書の類(たぐい)は、まず、ひととおりゆっくりページを最後までめくりながら、どんなことが書いてあるのかを把握してから、最初のページに戻ってゆっくり読み始めます。

 後ろ向きな言葉、後ろ向きな態度から文章が始まりました。旅はめんどくさいから嫌いだそうです。めんどくさがりいのおばちゃんですな。

 70ページ、『ヒグマはあなたのすぐ横に』という記事があります。知床ですな。

 もうずいぶん昔のことになりますが、自分たち家族が子ども連れで北海道へ行ったときに訪れた場所が、本に、次々と出てきます。レンタカーを運転して北海道を回りました。まだ、こどもたちも小さかった。
 摩周湖、硫黄山、川湯温泉(横綱大鵬(たいほう)の故郷)、阿寒湖、屈斜路湖、網走、帯広、本の記事では、場所は、青森県に移って、三内丸山遺跡(さんないまるやまいせき。確か、縄文時代の遺跡が展示してありました)、それらは、わたしも訪れたことがある観光地です。

 後半は、旅とは関連のないエッセイも含まれているようです。

(2回目の本読み)

『春の恐山四人旅』
 2011年5月の旅です。
 20ページあたりまで読んで、うーむ。これは失敗したかもしれない。作品として成立するのだろうか。旅の雑記です。
 旅した時期もかなり古い。2011年5月ですから、東日本大震災が3月11日にあったあとです。どうしてもそのことが頭の中にありながらの旅行記読書になってしまいます。

 中年男女の春の恐山紀行です。40代女子が3人、男子がひとりというメンバーです。
 男子は、『コパパーゲさん、編集者』、女子は、『シマさん、自営業、女子』、『みわっち、編集者』、そして、著者です。

女衒(ぜげん):女を遊女屋に売る仲介人

 著者は、北海道から青森にフェリーで渡るのですが、フェリーの朝風呂で、おっぱいの大きな女の人を見ます。(フェリーに、ふろがあるのか。驚きました)
 苫小牧からの出発ですが、到着地がどこかは書いてありません。調べたら、青森県八戸市でした。7時間半から8時間30分かかります。なんだか、旅の参考にはならない本のようです。

 青森駅近くで、他のメンバーと合流し、『尻屋崎(しりやざき)恐山のずいぶん東の岬の突端』へと車を運転しながら移動します。変わったルートです。
 なんか、40代男女のとっぴょうしもない旅が予想されます。結婚されているような雰囲気がありません。
 
 ああ、先に恐山に寄ってから、尻屋崎に向かうのか。それなら納得です。

 わたしが行って見たいなあと思っている、『恐山』の記述があるのですが、読んでもそれほど参考にはなりません。このあと間をおいて、再び、『恐山』を訪れた記事が出てくるはずです。
 あまり得るものがないような旅行記です。雑記にすぎない。
 なんというか、全体的に雑記、日記のたぐいの文章です。読む価値があるのだろうか?と思いつつも、まだ読み始めたばかりだからという気持ちで文章を目で追いかけています。
 
 わたしは、ふだん、『学び』があるブログを作成しようと心がけています。わたしの文章を読んだ方に、『発見』がある。なにかひとつ知識が増えて、得をしたという気分になる。そういう文書を書こうという気持ちが、書き手である自分のスタンス(立ち位置)だと思っています。
 ゆえに、わたしは逆に、『学び』があるブログをフォローしています。自分が見て、読んで、ほうそうなのかと気づきを与えてくれるブログをけっこうたくさんフォローしていて、なるべく毎日見たり読んだりするようにしています。自分が体験していなくても、読むだけで、体験した気持ちになれます。

 そんなこんなを考えていると、この本は、読んで、『学び』があるのだろうかと疑問を持ちながら読んでいるのです。

 お酒のみの人たちのようです。
 いらぬ話ですが、ときおり、ネットやテレビ報道で、『貧困』の話が出るのですが、貧困に至る原因を観察してみると、たいていは、アルコール、ニコチン、ギャンブルでお金を使い果たしての貧困なのです。なかなか同情する気持ちにはなれないのです。

 移動がひんぱんな旅です。旅の目的はなんだろう。
 奇怪な(きっかいな)岸壁の仏ヶ浦(ほとけがうら)、(マグロ漁で有名な)大間(おおま)、大間-函館のフェリー、前の車の中で、カップルがキスをした、函館五稜郭(ごりょうかく)、文章にはリズムがあります。啄木小公園(石川啄木(いしかわたくぼく)の公園)、なんだか忙しい。車であちゃこちゃ回ります。札幌市内の渋滞では、車がほとんど動かない。

『夏の知床ミステリーツアー』
 2011年8月の旅です。(平成23年)。メンバーは、3人。著者と30代女性と40代編集者男性です。

 なんか、地理を知らない著者です。頭の中にある北海道内の地図が、正常ではありません。まあ、地理を知らない人はたくさんいるのでしょう。世の中は誤解と錯覚で成り立っているのです。
 先日テレビで、野球のルールを知らない人が、球団のオーナーになっていたということを放送していたのを聞いて、なんだかなあと思いました。権力とお金をもっている人間はなんでもやれちゃいます。

 斜里町、『津軽藩士殉難慰霊の碑(つがるはんしじゅんなんいれいのひ)』
 1807年、江戸時代、ロシア方向からの侵略を防ぐ。100名中、寒さで、72名が死去。28名が生存。(そんなことがあったのか)

 まあ、日記みたいです。

 『(刑事)コロンボ』(なつかしい。中学生ぐらいの頃好きでいっしょうけんめい見ていました。NHKで流れていた刑事ドラマです。成人して見て、キライになりました。コロンボは、わざと容疑者をだますようにして逮捕に結びつけるのです。姑息な手段だと思いました。こそく:卑怯者(ひきょうもの)

 摩周湖:自分も行ったことがあります。本の中では霧の中で湖面も見えなかったとありますが、わたしが行ったときは全体がはっきりと見えました。カラスが多かった。7月という夏だったのに、とても寒かった。

 ときおり著者は、気に入らない人たちに、心の中で呪いを(のろいを)かけます。
 著者は子供がキライみたいです。子供がさきざき、ぐれて家族に迷惑をかけるといいなというような呪いの言葉が多い。
 わたしはたまに考えることがあります。結婚していない、配偶者がいない、こどもがいない、当然孫もいない、そういう人って、年齢を重ねて、どんな感じなのかなあと。
 以前、そういう人たちにそのような質問をしたことがあります。答えは、『わからない』という返事でした。体験したことがないから、配偶者やこども、孫がいるという環境とか感覚がわからないそうです。
 わたしが思うに、単身の人の頭の中は、18歳ぐらいの意識のままで、歳(とし)をとって、加齢で肉体が衰えていく状態なのだろうということです。永遠の少年・少女なのです。だから、家族持ちと単身者は、お互いにわかりあえないということはあろうかと思います。

 わたしも訪れたところが次々と出てきます。屈斜路湖(くっしゃろこ)、阿寒湖(あかんこ)、ただ、読んでいて、その場所の描写が薄いような……

『恐山再びの旅』
 2011年10月の旅です。
 旅のメンバーは、著者と高校の同級生女子ふたり、40代編集者男性です。なんだかへんな組み合わせです。男性は著者のなんなのか。互いに異性を感じない親友なのか。

 どういうわけか、奈良公園の鹿の写真があります。それから、神戸の中華街の写真もあります。恐山の旅レポートではないのか。なんでもありです。まあ、いいけど。
 アルコールばっかり飲んでいます。いとうあさこさんたちの旅番組みたいです。お酒のみですなあ、

 イタコの口寄せについて体験記が書いてあります。
 まあ、霊がおりてくるというのはうそですな。
 それでも行列ができていて、4時間は待たねばならぬようです。
 まあ、ほかにやることもないからですな。

 マグロ漁の大間に行きます。(おおま)
 浅虫温泉(あさむしおんせん)にも行きます。(わたしも宿泊したことがあります)
 棟方志功さんの記念館のことが書いてあります。わたしは去年、棟方志功の本、『板上に咲く 原田マハ 幻冬舎』を読みました。棟方夫婦の心温まる(こころあたたまる)物語でした。
 酸ヶ湯温泉(すかゆおんせん)と八甲田連峰(はっこうだれんぽう)は、わたしも訪れたことがあります。11月下旬にロープウェイで山頂へ上りました。一面の銀世界(雪が積もって)で、感動しました。無音の世界で、空気が澄んでいました。岩木山が近く見えました。
 八甲田山雪中行軍記念館:わたしは、小説を読んで、映画も見ました。日露戦争のための訓練で、大勢の人たちが亡くなりました。
 映画の感想メモが残っています。
 『不朽の名作(ふきゅうの、後世まで残る秀作)です。明治35年(1902年)雪山での軍事訓練中に参加者が大量死した事件・事故です。
音楽・映像・脚本・原作、そして演技、いずれも魂がこもっています。史実と映画は異なることでしょうが、女性案内人に対する高倉健さんの心熱い感謝の姿勢が気持ちを揺り動かしました。映画は夢です。希望です。こうあったらいいなという人の気持ちに触れることができます。
この映画はいくつかの対比を含んだ作品です。北大路欣也さんと高倉健さん、それぞれの隊の雪中行軍の形態は正反対です。二次的なこととして自意識過剰・能力不足の上司をもった部下の不幸が描かれています。一次的なことは反戦です。雪中行軍で帰還した高倉健さんたちも、のちの日露戦争で戦いに勝利したものの本人たちは戦死しています。戦争で失うものは大きい。立派ないい人材が命を落としていきます。日本国の損失です。

『ぐうたら夜話』
 なんというか、旅の行き先はあまり意味がないのかなあ。
 みんなで、わいわいがやがややる雰囲気がまずはだいじなのです。

 本のタイトルは、『ぐうたら旅日記』なのですが、どういうわけか、この部分は、旅とは無関係ない内容です。
 短いお話が数本入っています。
 まえがきを読み直してみると、インターネットの交流サイトに投稿したショート・ストーリーだそうです。
 丸川ヤマオという人物が登場したりしなかったりします。『湯』、『完璧なゆで卵』、『そろばん師』、『アンケート』、『家族』。

丸川ヤマオ:地方公務員。お大師様の夢をみる。お大師様:弘法大師。空海。真言宗。和歌山県高野山。

 まあ、なんというか、あまり中身のないお話でした。
 
『心のふるさと積丹(しゃこたん)をゆく』
 ウニへの道とあります。みんなでウニを食べに行くようです。
 2006年8月の旅です。(もうずいぶん昔のことです。平成18年です)
 同行者は、30代女性、40代女性姉妹、さらに40代女性、30代女性、いつもの40代男性編集者、著者を入れて合計7人です。

 おたる水族館、移動しながらのアルコールの話が多い。アワビの話。
 なつかしい。『水戸黄門の歌』が出てきました。
 ふと思い出したことがありました。わたしは中学生のころ、熊本県の天草(あまくさ)という島で一時期暮らしていたのですが、海が近くにあったので、中学校が終わると、級友と漁船が泊まる港の岩場へ行き、ウニやサザエを取ってきて、家へ持ち帰り、七輪(しちりん)の火で貝類を焼いてみんなで食べていました。なつかしい。

『新ウニへの道』
 2007年(平成19年)8月の記録です。
 著者を含んで16人大所帯での旅です。
 車3台で出発です。
 ルートは前回と同じ、のんだくれの大騒ぎが続きます。
 カニの話やら、ジンギスカンやら。北海道はうまいものがたくさんあります。

『ウニツアーというよりウニ合宿』
 2008年(平成20年)8月、合計12人です。
 ケモノのようなおばちゃんたちです。
 おばちゃんたちは強い。

『あとがき』
 2012年11月の日付で書いてあります。
 『私は読者の方から「本当にエッセイに書かれているようないい加減な暮らしをしているのか。いい年してそれはどうか』と説教されるそうです。(わたしも同感です)

(読み終えて)
 なんだったのだろう。なにも得るものがなかった。
 読書に要した時間を返してほしい……
 これは、旅ではない。
 おおいなる人生の時間つぶしだ。
 されど、そこが人生のいいところなのだろう。
 そう思うしかない。

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