2020年06月08日

おかあさんの木 邦画DVD

おかあさんの木 邦画DVD 2015年

 素直ないい映画でした。複雑にひねらず、すんなりと悲しみが心にしみるようにつくってあります。この映画を観るであろう年配の女性、こどもさんたちを意識したのでしょう。国家間の戦争が個人の幸せを奪っていくことがよくわかりました。
 こどもさんたちが、次々と戦死します。こどもさんの存在がわかりやすいように、名づけがシンプルです。一郎、二郎、三郎、四郎、五郎、誠(養子に出したからひとりだけ違うパターンの名前)、六郎(生まれたのは七番目)です。
 出征していく息子さんを死なせまいと、駅のホームで、軍服姿で列車に乗り込もうとする息子の体にしがみついて引き留める母親の姿には、胸が引き裂かれる思いがします。母親に対して、厳しく強く責める罵声(ばせい)や非難が浴びせられます。息子が、母親に声をかけます。「かあさん、お願いです。離してください」母親に対して、どけー、離せー、非国民!の怒号が飛び交います。
 
 1915年、大正4年からスタートします。
 文字が読めないまだ若いミツさんが、ラブレターをもらいます。そういえば、今から、半世紀ぐらい前、50年ぐらい前でも、文字の読み書きができないお年寄りはちょこちょこいました。教育を受けられなかったからです。戦後、義務教育が始まってからだいぶ改善されたのでしょう。
 冒頭付近では、自転車で郵便配達をするシーンが出てくるのですが、昔、長嶋一茂さんが主役で出た「ポストマン」という映画を思い出しました。自転車で配達すること、『手紙』を大事にすること。ふたつのことにとことんこだわる映画でした。今の時代にあてはめると、ずれているのでしょうが、感じ方しだいで、必要なこととも思えます。

 自宅で産婆さんにとりあげてもらう出産が一般的でした。わたしやわたしのきょうだいもそうでした。病院での出産の歴史は浅い。
 子だくさんで、養子に行くこどももいる。ふつうのことでした。日本人の歴史をさかのぼる映画でもあります。
 徴兵検査:人間を品物のように分けていきます。差別的です。甲種(身長152cm以上、頑健、合格)、乙種(合格)、丙種(国内勤務のみ)、丁種(不合格、心身に不適格あり)、戊種(病人)
 
 雪の上で、まだこどもだったおおぜいの兄弟たちが、楽しく遊ぶシーンがあります。人生でいちばん幸せだった時期かも。こどもを戦争で次々と亡くしていく母親の悲しみがあります。母親は、家のそばに木を植えて、こどもの名前を付けた木と会話をします。

 「すべてはお国のため」映画全体に、国家とか行政組織に対する強い批判の意識が流れていました。戦争に行かせるために子どもをたくさん産ませて、子どもたちを戦争でたくさん死なせたことを、してはいけないことだったと後悔しています。
 思うのは、駅のホームで、見送っていた人たちは、母親を責める気持ちの人たちだけではなく、こんなことはおかしいと思っていた人たちもいたはずです。だけど、声を出せなかった。『発言の自由』は大事です。

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